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未払いの残業代を請求するにあたって必ず意識しなければならないのが『時効』の存在です。
時効が成立してしまった部分の残業代は、会社に請求しても支払ってもらえないおそれがあります。
残業代請求の時効については、近年に法改正がおこなわれて期間が変更されているので注意が必要です。
未払いの残業代の請求に関する時効を確認していきましょう。
未払いの残業代は、時効が成立するまでに請求しなくてはなりません。
まずは、法改正の内容も含めて残業代請求の時効期間を確認しましょう。
すべての労働には、通貨で直接労働者に全額を毎月1回以上で一定の期日を定めて賃金が支払われなくてはなりません。
1日に8時間、1週間で40時間を超えた労働は『法定時間外労働』となり、1.25倍以上の割増率が適用された『残業代』が支払われます。
残業代がまったく支払われなかった、または労働時間や賃金の計算が不当で本来支払われるべき金額に満たない残業代しか支払われなかったといったケースでは、未払い残業代の請求が可能です。
ただし、民法には一定期間にわたって権利を行使しなかった場合にその権利が消滅する『消滅時効』という制度が存在します。
つまり、未払い残業代が発生している場合は、消滅時効の期限までに請求をしないと支払いを受ける権利が失われてしまうことになります。
残業代の請求権は、通常の債権とは異なる扱いを受けます。
平成29(2017)年までの民法では『短期消滅時効』という規定が存在していました。
旧:民法第174条(一年の短期消滅時効)
次に掲げる債権は、一年間行使しないときは、消滅する。
1.月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権
2.自己の労力の提供又は演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の代価に係る債権
※3~5は省略
民法上の規定では、未払い残業代の請求権はわずか1年となっていましたが、これでは労働者を保護するには不十分です。
そこで、労働者の保護を強化するため、労働基準法に別の定めが設けられました。
旧:労働基準法第115条(時効)
この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によって消滅する。
労働基準法の定めでは、賃金の請求権は2年です。
民法の短期消滅時効よりも1年長い期間が設定されたので、労働に対する賃金は民法の規定よりも手厚い保護が得られていました。
平成29(2017)年に改正され、令和2(2020)年4月に施行された新しい民法では、短期消滅時効の規定が削除され、消滅時効の期間も変更されています。
民法第166条1項(債権等の消滅時効)
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
1.債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
2.権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
【引用】民法|e-Gov
つまり、債権の消滅時効は一律で5年となったわけですが、これでは労働者保護を目的とした労働基準法第115条の「2年」は民法よりも短い規定を設けていることになってしまいます。
そこで、労働基準法も次のように改正されました。
労働基準法第115条(時効)
この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によって消滅する。
【引用】労働基準法|e-Gov
債権の消滅時効は民法改正によって5年になったので、本来であれば労働基準法における賃金請求権の時効も5年にそろえることになります。
ところが、これに猛反発したのが企業側です。
そこで政府は、施行日から「当面の間は3年」とする経過措置を講じました。
施行から5年後となる令和7(2025)年ころの状況を勘案して5年への延長を検討することになっているので、新たに政府からの発表があるまでは「残業代請求の時効は3年」ということになります。
未払い残業代がいくらになっているのか、いつ時効を迎えるのかを正確に把握するためには、時効計算の起算点を決めなくてはなりません。
残業代が発生するのは、実際に残業をした日です。
ただし、未払い残業代は「会社が残業代を支払ってくれなかったとき」に発生します。
たとえば、4月1日から4月30日までの賃金が5月31日に支払われる場合は、出勤日は毎日のように残業していたとしても未払いが発生するのは給料日の5月31日です。
さらに、債権の時効を計算する場合には民法の『初日不算入の原則』の影響を受けます。
民法第140条
日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。
【引用】民法|e-Gov
この原則に照らすと、時効計算では初日=給料日を算入しないので、未払い残業代の請求にかかる起算点は「給料日の翌日」となります。
時効は日々進行します。
令和2(2020)年3月以前に発生した未払い残業代は法改正前の制度が適用されるため、時効は2年しかありません。
残業代の未払いが常態化しており、長くその状態に甘んじてきたのであれば、給料日が到来するたびに1か月分の未払い残業代が時効を迎えることになります。
未払い残業代の請求を考えているのであれば、請求準備を進めているうちに時効が完成しないように、時効の進行に歯止めをかけなければなりません。
ここで挙げる方法を取れば、時効が『更新』されます。
更新とは、時効の進行がストップしたうえで、新たに時効がリセットされてふりだしに戻す手続きです。
旧民法では『中断』と呼ばれていましたが、実質的な意味とそぐわないため名称が変更されました。
会社側が「残業代について支払う義務がある」と認めた場合は、時効が更新されます。
これを『債務承認』といい、会社側の発言だけでなく、未払い残業代の一部が支払われた場合も承認があったとみなされます。
ただし、会社側が口頭で「残業代を支払う」と認めただけでは不十分です。
あとになって「言った・言っていない」のトラブルになるので、書面によって承認を担保するか、会話を録音しておく必要があります。
裁判所に労働審判の申し立てをしたときも、時効が更新されます。
労働審判とは、裁判所において労働審判委員会を間に労働者と会社が話し合いをする制度です。
ただし、労働審判を申し立てるにあたっては証拠収集や残業代の計算などの準備を進める必要があるので、未払いとなっている金額がはっきりしない場合は、まず別の方法で時効の進行を止めなくてはなりません。
裁判所に対して残業代の支払いを請求する裁判を申し立てた場合も同様です。
もっとも、請求内容を立証する責任は原告側にあり、訴状を提出するまでの準備に時間がかかってしまうため、やはり別の方法で時効の進行を止める必要があります。
会社が債務を承認せず、しかも労働審判や裁判を起こすための時間的な猶予がない場合に有効なのが『催告』です。
催告とは、相手に対して支払いを請求する行為をいい、未払い残業代の請求については「残業代を支払ってほしい」意思表示をすれば足ります。
ただし、時効の進行を止めるには、いつ、どのような催告をおこなったのかを証明する必要があるため、口頭ではなく内容証明を用いるのが一般的です。
催告をすれば、時効の進行が6か月に限ってストップします(時効の完成猶予)。
この場合、更新のように時効計算がリセットされるのではなく、6か月以内に債務承認を受ける、または裁判などを起こすなどほかの更新事由が発生しない場合は6か月で時効が完成してしまうので注意が必要です。
未払い残業代を請求する方法は4つです。
まずは会社の担当者と直接交渉を進めるのが基本です。
計算や法令解釈の間違いなどの可能性もあるので、この段階で解決できる可能性もあります。
直接交渉の際は、資料の保管や会話内容の録音などの証拠確保に努めましょう。
会社側が残業代の支払いを拒んだ場合は、管轄の労働基準監督署への申告も有効です。
労働基準監督署からの指導・勧告があれば、会社側も支払いに応じる可能性があります。
当事者間だけでの話し合いで解決できない場合は、裁判所の労働審判委員会を間にはさんで労働審判の場で話し合って解決することで解決が期待できます。
ただし、労働審判はあくまでも話し合いによる解決を目指す手続きなので、会社側がまったく主張を曲げないような場合は解決が期待できないかもしれません。
労働審判によっても問題が解決しない場合、または最初から労働審判による解決が期待できない場合には、裁判所へ労働訴訟を提起して裁判による決着を目指すことになります。
残業代が発生しており、未払いになっているという事実を示す証拠があれば、裁判官が支払いを命じる判決を下す可能性は高いでしょう。
未払い残業代の請求は、労働者が個人で対応することも可能です。
しかし、これまでに正規の残業代を支払っていないような会社なら、労働者が個人で交渉しても真摯な対応は期待できないでしょう。
未払い残業代の請求には、専門家のアドバイスやサポートが欠かせません。
割増賃金の適用を含めて、残業代の支払いは労働基準法第37条1項に定められた義務です。
これに反して残業代を支払わなかった場合は、同法第119条の規定によって6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
2~5 略第百十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一 ・・・、第三十七条、・・・の規定に違反した者
二~四 略【引用元】労働基準法|e-gov
つまり、残業代の未払いは単なる会社と労働者の間で生じた個人的なトラブルにとどまらず、刑罰も規定されている犯罪行為なのです。
労働基準監督署は、労働関係の法令違反を取り締まる機関であり、警察と同様に捜査・逮捕の権限が与えられています。
未払い残業代が発生している事実を申告すれば、労働基準法違反事件として捜査が始まる可能性があります。
ただし、労働基準監督署はあくまでも会社側に対して是正を求めたり、捜査を進めたりする立場であるため、個別のトラブルについて命令する権限を持ってはいません。
労働基準監督署からの指導・勧告によって会社側が自発的に残業代を支払う可能性はあるものの、会社側に「残業代を支払いなさい」と命令することはできないので、過度の期待は禁物です。
労働に関するトラブルを相談できる専門家としては社会保険労務士の存在も心強いでしょう。
おもに企業側の労務や社会保険・雇用保険・企業年金などの業務をサポートする性格の強い仕事ですが、厚生労働大臣が定める研修を終了したうえで紛争解決手続代理業務試験に合格した特定社会保険労務士は、裁判外紛争解決手続(ADR)において代理人としての業務が可能です。
ただし、社会保険労務士が代理業務を務めることができるのは、都道府県労働局の紛争調整委員会や民間のADR機関にあっせん申請をして、紛争解決手続がとられたときに限られます。
紛争解決手続が開始する前に代理人として事前交渉をすることは禁じられているため、交渉のみによる解決は期待できないという点には注意が必要です。
未払い残業代の問題について、すべての準備や手続きを一任したいと考えるなら弁護士への相談をおすすめします。
弁護士は依頼人の代理としてすべての業務を遂行できる唯一の存在です。
各種の証拠を取り揃えて正確な残業代を算出する業務はもちろん、会社との交渉、時効更新のための催告、労働審判や裁判の提起・出廷なども任せられます。
弁護士が代理人として交渉の場に立つだけで会社側の対応が一変して残業代が支払われるケースもめずらしくありません。
実際に未払い残業代が発生しているのかがはっきりしない、思ったように証拠収集が進まないといった悩みがある場合も、まずは弁護士に相談するとよいでしょう。
令和2(2020)年3月以前に支払われるはずだった残業代が未払いとなっている場合は、給料日の翌日から起算して2年で時効が完成してしまいます。
同年4月以降に発生した残業代の時効は、民法・労働基準法の改正によって「当面の間は3年」とされていますが、いずれにしても素早くアクションを起こすべきです。
会社が未払い残業代の存在を認めない、未払い残業代が発生していることは認めているが支払ってくれない、おそらく未払い残業代が発生しているはずだがはっきりとした金額がわからないなどのお悩みがあれば、まずは弁護士に相談しましょう。
残業代の未払いが常態化している場合は、給料日が到来するたびに1か月分の残業代が時効を迎えているおそれがあります。
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