給料未払いが発生した場合、労働基準監督署に相談するのが一つの対処法です。
労働基準監督署により、勤務先の会社に対する監督指導が行われれば、未払いの給料が支払われる可能性があります。
ただし労働基準監督署は、労働者の代理人ではなく、あくまでも監督官庁に過ぎません。
そのため、給料未払いについて労働者が受けられるサポートの内容には、一定の限界が存在することに注意しましょう。
この記事では、給料未払いにつき、労働基準監督署で受けられるサポートの内容や、労働基準監督署への相談の限界について解説します。
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未払い給料を会社に請求したい方へ
給料未払いについて「労働基準監督署に相談すれば解決する」と思っている方も多いかもしれません。
しかし、労働基準監督署は明確な証拠がないと動いてくれないこともあります。
また労働基準監督署が動いてくれたとしても、会社との仲介はしてもらえず、是正勧告に強制力がないので、必ず解決できるとは限りません。
その点、弁護士であれば以下のような対応が望めます。
- 自分の代わりに会社へ請求してくれる
- 給料未払いの証拠がない場合は証拠の集め方をアドバイスしてくれる
- 労働審判や労働訴訟などの裁判手続きも一任できる など
労働基準監督署では対応してくれない案件でも、弁護士であれば解決できることもあります。
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労働基準監督署はどのような機関?
労働基準監督署には、給料未払いをはじめとして、労働者が抱えるさまざまな問題の相談を受け付けています。
まずは、労働基準監督署がどのような機関であるかについて、基本的な点を理解しておきましょう。
労働法令を管轄する厚生労働省の出先機関
労働基準監督署は、厚生労働省の「出先機関」という位置づけになっています。
出先機関とは、国や地方公共団体の事務を分掌するために、地方に置かれる補助機関です。
国の出先機関は、法的には「地方支分部局」と呼ばれます(国家行政組織法9条)。
労働基準監督署は、労働基準法などの労働者を保護する法令に関する事務を取り扱い、市区町村単位で管轄が定められています。(これに対して、上位機関である「労働局」は、都道府県単位で設置されています。)
つまり、労働法令に関する規制を地方の隅々まで及ぼすために、国の機関として役割を果たすのが「労働基準監督署」なのです。
労働基準監督署の主な業務
労働基準監督署が取り扱う主な業務は、以下のとおりです。
労働者からの相談受付
労働基準監督署は、勤務先による労働基準法違反などについて、労働者からの申告を受け付けています。
また、労働法令に関する一般的な相談についても受け付けています。
そのため、労働条件について少しでも疑問に思ったら、労働基準監督署の窓口で質問してみるとよいでしょう。
企業への監督指導・警察事務
労働者による申告その他の契機によって、企業が労働基準法などに違反している疑いを持った場合、労働基準監督署が「臨検監督」を行います。
調査の結果、違反が判明した企業については、労働基準監督署の権限で行政指導などが行われます。
さらに度重なる指導にもかかわらず、労働基準法違反などが是正されない場合には、労働基準監督署が刑事事件として強制捜査を行うケースもあるのです。
臨検監督の具体的な流れについては、後述します。
労働者の安全・衛生に関する業務
労働安全衛生法などに基づき、職場における労働者の安全・健康を確保するため、各事業場に対する指導などを行います。
特に工場などの危険作業が発生する事業場や、有害な化学物質を取り扱う事業場では、安全・衛生に関する調査・確認が入念に行われます。
それ以外に、職場での健康診断の実施状況を調査することも、労働基準監督署の業務の一つです。
労災保険給付に関する業務
労働者が業務上または通勤中に負傷し、または疾病に罹った場合、労災保険給付の対象となります。
労働基準監督署では、労働者による労災保険給付の請求を受け付けています。
労災保険給付の詳細については、以下の厚生労働省HPをご参照ください。
参考:労災保険給付の概要|厚生労働省
労働基準監督署の設置場所
労働基準監督署は、全国各地の市区町村に設置されています。
管轄は市区町村ごとに決まっていますので、以下のページから、ご自身がお住まいの地域の労働基準監督署を検索してください。
参考:全国労働基準監督署の所在案内|厚生労働省
給料未払いについて、労働基準監督署で受けられるサポートは?
給料未払いの事実を労働基準監督署に申告すると、労働基準監督署は「臨検監督」を行い、労働基準法違反等の是正に乗り出します。
また、裁判手続きや未払賃金立替払制度など、給料未払いについて労働者が救済を受けるための方法も教えてくれます。
事業場への臨検監督
「臨検監督」とは、労働基準法違反等の調査・改善指導・処分に関する、労働基準監督署による一連の対応の総称を意味します。
労働基準監督署の臨検監督の大まかな流れは、以下のとおりです。
立ち入り調査(臨検)
まず、労働基準法違反等の事実確認のために行われるのが、労働基準監督署による事業場への立ち入り調査(臨検)です。
立ち入り調査の場では、事業主に対して帳簿や書類の提出が求められたり、事業主や労働者に対する事情聴取が行われたりします(労働基準法101条1項)。
労働基準監督署は、立ち入り調査で獲得した資料を精査したうえで、事業主に対する処分・指導の内容を決定します。
なお、後述する文書指導後に、再度立ち入り調査が行われる場合もあります。
文書指導
立ち入り調査の結果、労働基準法違反等の事実が認められた場合、労働基準監督署は事業主に対して「文書指導」を行います。
文書指導とは、事業主に対して、違法状態の是正を勧告・業務の改善を指導する内容の文書を交付することをいいます。
文書指導自体には、事業主に対する法的拘束力はありません。
しかし、従わなければ刑事処分が行われる可能性が高いため、事業主は文書指導に事実上拘束されるのです。
悪質なケースでは送検・起訴
事業主が文書指導に従わず、法令違反の状態を放置している場合、労働基準監督署は警察権限を行使します。
労働基準法違反の行為には、さまざまな罰則が設定されています(労働基準法117条以下)。
そして労働基準監督官には、労働基準法違反の罪について、司法警察官の職務を行う権限が与えられています(労働基準法102条)。
つまり労働基準監督官には、令状に基づいて事業主を逮捕したり、事業場を強制的に捜索したりする権限が認められているのです。
このように労働基準監督署には、事業主に対して労働基準法等の遵守を徹底させるため、強力な規制権限が与えられています。
利用可能な裁判手続きの紹介
労働基準監督署では、未払いとなっている給料を勤務先に支払わせるため、労働者が利用できる裁判手続きの説明・紹介を受けられます。
労働基準監督署で説明・紹介を受けられる主な裁判手続きは、以下のとおりです。
①支払督促
裁判所書記官が、書面の審査のみを行い、未払い給料の支払いを勤務先に命じる手続きです。
仮執行宣言付き支払督促が確定すると、強制執行の手続きをとることができます。
ただし、勤務先から異議が申し立てられた場合には、訴訟手続きに移行します。
参考:支払督促|裁判所
②民事調停
非公開の場で、調停委員が労働者と勤務先の言い分を聴き取り、話し合いによる給料未払いの紛争解決を図ります。
両当事者が合意すれば調停成立となり、調停の内容に従って未払い給料が支払われます。
参考:民事調停|裁判所
③労働審判
裁判官(1名)と労働審判員(2名)からなる労働審判委員会が、原則3回以内の期日において審理を行い、審判によって未払い給料の支払いを命ずる手続きです。
一般的な訴訟に比べると、迅速な紛争解決が期待できます。
参考:労働審判手続き|裁判所
④訴訟(通常訴訟・少額訴訟)
公開法廷において主張・立証を戦わせ、最終的には裁判所が判決によって、未払い給料の支払いを命じます。
なお請求額が60万円以下の場合に限り、原則として1回の期日で審理が終了する「少額訴訟」を利用することができます。
参考:少額訴訟|裁判所
未払賃金立替払制度の利用受付
使用者の倒産によって給料未払いが発生している場合、労働者は「未払賃金立替払制度」を利用し、未払い給料の8割に当たる給付を受けられます。
労働基準監督署では、未払い賃金立替払制度の利用申請を受け付けています。
なお、未払賃金立替払制度の利用要件は、以下のとおりです。
要件を満たすと思われる労働者の方は、一度労働基準監督署に相談してみましょう。
- ①使用者が1年以上事業活動を行っていたこと
- ②使用者が倒産※したこと
※法律上の倒産(破産・特別清算・民事再生・会社更生)および事実上の倒産(事業活動の停止・再開見込みなし・賃金支払能力なし)の両方が該当します。
- ③労働者が、以下のいずれかの期間に退職したこと
(a)法律上の倒産の場合:倒産申立ての日の6か月前の日から2年以内
(b)事実上の倒産の場合:労働基準監督署への申請日の6か月前の日から2年以内
参考:未払賃金立替払制度の概要と実績|厚生労働省
給料未払いを労働基準監督署へ相談することの難点は?
労働基準監督署には、給料未払いについて無料で相談できます。
また、臨検監督によって職場全体の労働条件が改善する可能性がある点もメリットといえるでしょう。
しかしその反面、労働基準監督署に給料未払いの相談をすることには、以下の難点があることに注意が必要です。
間接的な監督指導にとどまる
労働基準監督署は、あくまでも監督官庁としての立場で、事業場に対する臨検監督を行います。
言い換えれば、労働基準監督署は個々の労働者の代理人ではなく、個別具体的な労務紛争の解決を目的とはしていないのです。
したがって、労働基準監督署による臨検監督がなされたとしても、すでに発生した給料未払いの問題が自動的に解決するわけではありません。
労働者としては、改めて会社に対して未払い給料の支払いを求めなければならず、二度手間になるおそれがあります。
きめ細かいサポートは受けられない
繰り返しになりますが、労働基準監督署は、個々の労働者の代理人ではありません。
そのため、給料未払いの問題を解決するために受けられるサポートには、自ずから限界が存在します。
労働基準監督署に対して、紛争の解決方針などについてアドバイスを求めること自体は可能です。
しかし労働基準監督署の助言は、あくまでも客観的な立場からの一般論ベースにとどまり、労働者に寄り添った助言を受けられるとは限りません。
相談資料を労働者が自分で準備しなければならない
労働基準監督署の人的リソースは有限なので、日々寄せられる労働者からの申告につき、当否を取捨選択して対応に当たっています。
そのため、労働基準監督署による臨検監督を行ってもらうには、労働基準法違反(給料未払い)の事実を証明する客観的な資料を提出することが必要です。
労働基準監督署に提出する資料は、当然ながら労働者自身で準備する必要があります。
たとえば弁護士などに依頼する場合は、請求に当たってどのような資料を準備すべきかなど、きめ細かくアドバイスを受けられます。
これに対して労働基準監督署への相談・申告の場合、どの程度の資料があれば臨検監督を実施するのかについて、明確な基準を示してもらえることはまずありません。
臨検監督には時間的・人的なコストがかかるため、労働基準監督署として、実施を確約することはできないからです。
結果的に、労働者は手探りで提出資料を準備しなければならず、準備が大きな負担となってしまう可能性があります。
未払いの給料を回収するには弁護士への相談がお勧め
勤務先からの給料が未払いとなっている場合、労働基準監督署ではなく、最初から弁護士に相談する方が直接的な解決に繋がります。
給料未払いの問題を弁護士に相談する主なメリットは、以下のとおりです。
労働者の代理人として、直接未払いの給料を回収してもらえる
弁護士に依頼をすると、「会社に対する請求→未払い給料の支払い」という形で、迂遠な工程を省いて直接的・迅速に未払い給料を回収することができるメリットがあります。
これに対して労働基準監督署の場合、「臨検監督→事業場の労働条件改善→給料の適正な支払い」という形で、間接的に未払い給料問題が解決される可能性があります。
しかし、弁護士に依頼する場合と比べると間接的かつ迂遠であり、労働者救済の確実性・迅速性の観点からは劣ると言わざるを得ないでしょう。
労働者の意向を尊重した、きめ細かいサポートを受けられる
労働基準監督署が公的機関・監督官庁であるのに対して、弁護士は、依頼者である労働者の代理人です。
弁護士は代理人として、労働者から丁寧なヒアリングを行い、具体的な問題状況に合わせた対応による解決を目指します。
そのため、対応の内容も必然的にオーダーメイドとなり、労働者にとってきめ細かいサポートを受けられるメリットがあります。
依頼者である労働者は、もしわからないことがあれば、弁護士に対してすぐに質問ができる点も大きなメリットです。
解決方針に関する希望も、遠慮なく弁護士に伝えることで、労働者の意向に沿った解決が実現する可能性が高まるでしょう。
法的手続きへの対応も全面的に依頼できる
会社に対して未払い給料の請求を行う場合、和解交渉がまとまればスムーズに解決しますが、交渉が決裂してしまうことも考えられます。
その場合、労働審判や訴訟などの法的手続きを利用することになりますが、法的手続きへの対応は非常に煩雑です。
弁護士に依頼していれば、和解交渉が決裂した際にも、円滑に法的手続きの準備を整えることができます。
法的手続きについて適切に対応することで、労働者の権利が実現する可能性が高まりますので、手続きに精通した弁護士への依頼は大きなメリットといえるでしょう。
労働者の時間的・精神的負担が大きく軽減される
給料未払いに関する会社との交渉や、労働審判・訴訟などの法的手続きには、準備に多大なる時間を要します。
また、経済力やマンパワーなどに勝る会社に対して立ち向かうことは、労働者にとって精神的にも大きな負担となるでしょう。
弁護士に依頼すれば、未払い給料の請求の準備を代行してもらえるため、労働者にかかる時間的負担を軽減できます。
また会社との交渉や法的手続きへの対応も、弁護士が矢面に立つことで、労働者の精神的負担は大きく軽減されるでしょう。
まとめ
労働基準監督署は、給料未払いをはじめとして、労働基準法違反等に関する相談を広く受け付けています。
ただし労働基準監督署は、あくまでも監督官庁としての規制権限を行使するにとどまるため、直接的な救済に繋がりにくいのが難点です。
もし勤務先からの給料が未払いとなった場合には、弁護士にご相談ください。
弁護士は労働者の代理人として、迅速・円滑に未払い給料を回収するため、親身になってサポートしてくれます。
未払い給料を会社に請求したい方へ
給料未払いについて「労働基準監督署に相談すれば解決する」と思っている方も多いかもしれません。
しかし、労働基準監督署は明確な証拠がないと動いてくれないこともあります。
また労働基準監督署が動いてくれたとしても、会社との仲介はしてもらえず、是正勧告に強制力がないので、必ず解決できるとは限りません。
その点、弁護士であれば以下のような対応が望めます。
- 自分の代わりに会社へ請求してくれる
- 給料未払いの証拠がない場合は証拠の集め方をアドバイスしてくれる
- 労働審判や労働訴訟などの裁判手続きも一任できる など
労働基準監督署では対応してくれない案件でも、弁護士であれば解決できることもあります。
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