未払いの給料を会社から回収する8つの方法!3年間の時効あり|ベンナビ債権回収(旧:債権回収弁護士ナビ)
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未払いの給料を会社から回収する8つの方法!3年間の時効あり

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齋藤 健博 弁護士
監修記事
未払いの給料を会社から回収する8つの方法!3年間の時効あり

会社(使用者)からの給料が未払いの際は労働審判などの話し合いによる回収方法か、民事調停での話し合いによる回収方法がありますから、状況に応じて適切に対応しましょう。また給料回収にあたっては3年の時効期間もあるため速やかに行動するのが望ましいです。

時効成立までは短期間ですがこの記事で予め知識をつけておくことで効率的に対処できるでしょう。また、未払い給与を獲得できる可能性も高まるかもしれません。

このコラムでは未払いの給料を会社から回収する方法や会社との話し合い方などを徹底解説します。

1カ月以上会社から給料が振り込まれない方、勝手に給料を減額された悩みがある方はこの記事で紹介する回収方法を参考にしてみましょう。給料を回収して転職をするなど、すっきりとした気分で新しい生活を始めたい方はぜひ最後までご覧ください。

未払い給料を請求したいと考えている方へ

給料・残業代は労働に対する正当な対価です

給料・残業代が未払いであれば、それを会社に請求するとは当然のことです。

 

しかし、会社に未払い給与を請求したところで、素直に認めるでしょうか?

労働審判・訴訟に発展したら、未払い給料があったことを明確に示す証拠が必要になります。

 

未払い残業代を請求したい方は、弁護士への相談・依頼がおすすめです。

弁護士に相談・依頼すれば、下記のようなメリットがあります。

 

  • あなたが持っている証拠で未払い給料を請求できるかどうかが分かる
  • 未払い給料を請求するための証拠集めのアドバイス
  • 会社との交渉を代理してもらえる など

 

初回相談が無料な弁護士事務所も多数掲載しているので、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事に記載の情報は2023年11月01日時点のものです

給料未払い・不当な減額は労働基準法違反

法律上、給料未払い(賃金未払い)は下記の労働基準法24条2項に違反しています。

(賃金の支払)

第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。

(略)

② 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。

【引用】労働基準法|e-GOV法令検索

以上のように労働基準法24条では次の2つが定められています。

  1. 労働者に直接賃金を全額支払う必要があること
  2. 毎月1回以上、一定の期日を定めて支払う必要があること

賃金は毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならないと法律で決まっている以上、給料が毎月支払われていない状況は労働基準法に違反していると解釈できます。したがって、給与が支払われてない場合には給与未払い請求を行うことが通常です。

会社都合での給料未払いは30万円の罰金

会社の業績悪化や社員への個人的な感情など、会社都合による給料未払いは契約違反であると共に、労働基準法にも抵触します。労働基準法120条1項では給料未払いは30万円以下の罰金が定められています。

第百二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

一 第十四条、第十五条第一項若しくは第三項、第十八条第七項、第二十二条第一項から第三項まで、第二十三条から第二十七条まで、第三十二条の二第二項(第三十二条の三第四項、第三十二条の四第四項及び第三十二条の五第三項において準用する場合を含む。)、第三十二条の五第二項、第三十三条第一項ただし書、第三十八条の二第三項(第三十八条の三第二項において準用する場合を含む。)、第三十九条第七項、第五十七条から第五十九条まで、第六十四条、第六十八条、第八十九条、第九十条第一項、第九十一条、第九十五条第一項若しくは第二項、第九十六条の二第一項、第百五条(第百条第三項において準用する場合を含む。)又は第百六条から第百九条までの規定に違反した者

【引用】労働基準法|e-GOV法令検索

罰則も定められていますから給料未払いは違法行為であると、はっきりわかるでしょう。

会社都合で給料を減額するのも違法行為

会社都合で合意なく、一方的に給料を減額する下記のケースも労働基準法に抵触します。

  • 業績が悪化している場合
  • 会社側が社員のパフォーマンスを悪いと感じている場合

会社側に何らかの事情があるとしても、契約どおり給料を支払うことは会社の義務であり、この義務を果たさない行為は違法行為です。会社が社員の給料を減額するためには次の手続きを行う必要があります。

  • 労働者との間で明確に合意する
  • 就業規則を変更する

以上の正当な手続きを行った上で給料は減額されなければなりません。また、会社側の都合のみで形式的に合意をとっても、その合意は無効となる可能性が高いですし、就業規則の変更も有効性を否定される可能性が高いです。

ちなみにですが就業規則を変更して減給する際は労働基準法91条で次のように定められています。

第九十一条 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

【引用】労働基準法|e-GOV法令検索

したがって、会社が一方的な都合で給料を支払わなかったり、減額したりすることは、法的には極めて困難です。

給料未払い対処の事前準備|まずは証拠を集めよう

未払い給料を回収するその前に、まずは可能な範囲で下記の証拠を集めましょう。

  • 給料明細
  • 雇用契約書
  • タイムカード
  • 業務日誌の控え
  • 会社から配布されている勤怠表
  • 就業規則・退職金制度が確認できる書類
  • 労働する際に提出を求められている書類
  • その他会社から配布されている給料、勤怠に関する資料

【関連記事】労働基準監督署を活用し給料未払いの相談・申告する際の基礎知識

労働基準監督署や弁護士に依頼して未払い給料を回収する場合は根拠として、労働時間などを確認できる証拠が必要になってきます。タイムカードや業務日誌の控えなど、実物を用意するのが難しい場合はスマホで撮影しましょう。

何もないよりは目で確認できる証拠があると、給料を請求しやすくなるはずです。

万が一証拠がない状態だと、会社側が「給与は支払った」と言い通す可能性があります。また、弁護士や労働基準監督署は給与未払いの証拠を元に会社側へ請求するので、あなたに給料が支払われていない事実が客観的に証明できる証拠を求められるでしょう。

ちなみに未払いの給料がある場合、原則として源泉徴収は行われません。

未払い給料を回収する8つの方法

実際に給料の未払いが起きてしまった方向けに、給料を回収する8つの方法を解説します。これらいくつかの対処方法を知っておくことで給与回収の選択肢が増えるでしょう。

  1. 会社と協議する
  2. 労働基準監督署に申請する
  3. 会社に書面やメールで請求する
  4. 民事調停・ADR(裁判外紛争解決手続)を利用する
  5. 裁判所の支払督促を申し立てる
  6. 簡易裁判所へ少額訴訟をする
  7. 労働審判、民事訴訟をする
  8. 弁護士に相談する

まずは会社との協議や労基署へ申請する方法が試しやすいでしょう。ちなみに自分で回収するのが難しい、なんだか面倒と感じた方は弁護士に相談するのが向いています。

弁護士ならすべての手続きを任せられる上、自身で行うよりも早い給料の回収が期待できます。

①会社と協議する

未払い給料の回収には様々な方法がありますが、まずは会社と給料の支払いについて協議するのが理想的です。給料を支払う必要があるのは、会社側も当然認識しているはずですから、なぜ支払われないのかその理由を問いましょう

もしかしたら人為的なミスで給料が支払われていない可能性もあります。いきなり法的手段を取ると会社との関係が悪化する可能性もありますから、支払いがない理由、支払いの見込み等について説明を求めるのが一般的です。

結果、給料の未払いが一時的なものに留まるのであればその間は様子を見ると良いでしょう。仮に給料支払いの見込みが立たないのであれば、別の手段で回収を目指します。

なお、会社に労働組合があれば、一度相談してから会社と協議しても良いかもしれません。従業員として給料を受け取る権利はあるのですから、様々な窓口に相談して交渉方法を探ることが大切です。

②労働基準監督署に申告する

あなたの会社が給料を支払わないなら労働基準法に違反している可能性が高いですから、その旨を労働基準監督署に申告しましょう。あなたに代わり、労基署が会社側に給料の支払いを勧告してくれる可能性があります。

ただし労基署は給料未払いの証拠が揃っていないと動いてくれないでしょう。また、労基署は様々な問い合わせに対応しますから優先順位をつけて行動します。

相当悪質な事案でなければ対応してもらえないかもしれません。そのため労基署があなたの問題を後回しにすると認識した上で相談しましょう。

労働基準監督署に対応してもらう方法とは?

労基署に対応してもらうには以下の5つのコツがあります。

  • 申告(通報)を行う
  • 直接窓口へ伺う
  • 給与未払いの証拠を用意する
  • 状況を説明する資料を作成する
  • 弁護士に意見書を書いてもらう

必ずすべて行う必要はありませんが、証拠を用意した上で窓口から直接申告すると、電話から連絡して相談するよりは対応してもらえる可能性が高まるかもしれません。

それぞれの方法が気になる方は下記の関連記事をご覧ください。

【関連記事】労働基準監督署を活用し給料未払いの相談・申告する際の基礎知識

③会社に書面やメールで請求する

会社に給料支払いがないと協議したことや、支払いを求めたことを形で残したい場合は書面やメールで支払いを求めましょう。口頭のやり取りと異なり、明確な支払い要求があれば会社も無視はできないので、何かしらの対応がされるかもしれません。

更に強い姿勢で未払い給料回収に臨みたいのであれば、会社に対して内容証明郵便で支払いを求めても良いかもしれません。内容証明郵便は、それ自体に給料支払いの効力があるものではなく、法的な意味合いは書面やメールでの督促と変わりません。

ただ内容証明郵便は、書面を送付した事実送付した内容について郵便局に記録されますから、後日会社から「そのような書面は受け取っていない」とはぐらかされるリスクを排除できます。また内容証明郵便は、法的な手続きに入る準備行為として行われることも多いので、例えば弁護士名義での内容証明郵便を会社側に送れば、会社側も訴訟されるリスクを考慮して任意の支払いに応じる可能性があります。

④民事調停・ADR(裁判外紛争解決手続)を利用する

民事調停は裁判所の調停員を介した協議により、紛争解決を目指す手続きです。民事調停は裁判ではなくあなたと会社側の当事者同士の話合いでトラブルを解決します

また、裁判所以外で話合いにより解決を目指す手続き(ADR)としては、労働局の実施するあっせん手続き弁護士会が運営する紛争解決センターの仲裁手続きなどがあり得ます。裁判所が当事者間の話合いに応じない場合にはこれらの公的・準公的な協議の場を利用して、解決する方法もあり得ます。

【参考】裁判外紛争解決手続(ADR)情報|裁判所

⑤裁判所の支払督促を申し立てる

支払督促は裁判所の法的な手続きです。具体的には所管の簡易裁判所へ会社に対する請求内容を記載した支払督促申立書を提出し、裁判所のチェックを受けた上で会社側(相手側)に発送する流れになります。

裁判所からの支払督促書面が相手方に送達され、相手方が2週間以内に異議申し立てをしない場合、申立人は支払督促について仮執行宣言を付すように追加で申し立てることが可能になります。仮執行宣言についても相手方が2週間以内に異議を述べなければ、支払督促の内容が法的に確定して、申立人は相手方に対して強制執行の措置を取れます。

このように支払督促は相手方が申請を無視し続ければ、あなたの主張する通りの権利が確定してしまう強力な手続です。そのため、相手方としても督促を無視することができず、なんらかの対応が期待されます。

なお、相手方が支払督促に異議を述べた場合には通常訴訟(裁判)に移行するので、相手方が異議を述べる可能性が高い場合は最初から通常訴訟を提起しましょう。

⑥簡易裁判所へ少額訴訟をする

簡易裁判所には通常の訴訟とは別に、少額訴訟という手続きがあります。簡易裁判所は請求額が140万円以下の事件を取り扱う場所ですが、請求額が更に低く60万円以下の場合には少額訴訟という非常に簡易的な裁判手続きを利用できます

少額訴訟は、基本的に1回の期日で判決に至る非常にスピーディな訴訟手続きであり、少額債権を迅速に回収するときに有用な手続きと言えます。加えて判決が確定すれば原告は被告に対して強制執行手続きが可能です。

少額訴訟を行うためには相手方が手続きに同意することが必要であり、相手が少額訴訟で行うことに異議を述べた場合には通常訴訟に移行します。そのため、相手が少額訴訟に同意しない場合には、こちらも最初から通常訴訟を提起します。

⑦労働審判・民事訴訟をする

もしも会社側が争う姿勢を見せる場合は、裁判所に裁定を求める手続きを検討しましょう。具体的には、労働問題に特化した調停・裁定手続きである労働審判手続きや通常の民事訴訟手続きです。

労働審判手続きは、裁判官を構成員に含む労働審判委員会が労働問題について審議する手続きであり、民事訴訟手続きに比べて迅速な処理がされます。労働審判ではまず話合いでの解決を目指しつつ、これが難しい場合は裁判所から心証に基づく一定の審判が下されます。

この審判に異議があれば通常訴訟に移行しますが、労働審判の決定が通常訴訟で大きく覆ることは少ないです。民事訴訟は当事者が主張・立証を尽くす重厚な手続きのため和解を試みることはありますが、基本的には判決も見据えて手続きが積み重ねられていきますから、時間がかかります。

労働審判での調停・審判の内容や民事裁判の判決が確定した場合、債権者側はこれを債務名義として強制執行などの手段を用いて給料の回収が可能です。

⑧弁護士に依頼する

「自分の立場上会社に請求しにくい」「労働基準監督署に行っても相手にしてくれない」「裁判の申立ては難しくてよく分からない」という方は法の専門家である弁護士に依頼しましょう。専門家に相談することによってそれらの問題解決の確実性が高まるでしょう。

弁護士はあなたに代わって弁護士は給料回収のために会社へ請求したり、法的手続きを行ったりしてくれます。

特に債権回収に注力している弁護士であれば経験や実績がありますから、弁護士を選ぶ際はどんな分野に注力しているのかをポイントにしましょう。また、弁護士であれば未払い給料の他に未払い残業代や不当解雇に関する問題をまとめて解決できる可能性もあります。

給与の未払い以外にも問題を抱えている方や、未払い給与や残業代の計算方法や請求方法を複雑に感じている方は一度弁護士に相談してみましょう。当サイトでは債権回収に注力している弁護士のみが掲載されていますから、近くにどんな弁護士事務所があるのか参考にご覧ください。

弁護士費用はかかりますが手続きや交渉を代理人として全て任せられるメリットがあります。これ以上の精神的負担をかけたくない方は弁護士への依頼がおすすめです。

未払い給料の回収を弁護士に依頼するメリット

未払い給料の回収を弁護士に依頼すると次のメリットがあるでしょう。

  • 時間と手間をかけずに給料を回収できる
  • 回収できる給料を算定してくれる
  • 時効前に給料を請求できる可能性が高まる

時間と手間をかけずに給料を回収できる

弁護士に依頼すると先ほど紹介した給料を回収する方法を、代行してもらえるでしょう。つまりあなたは何か書類や文書を用意したり、メールを作成したりしなくても良いので時間や手間をかけずに給料を回収できます。

1人で給料の請求を行う場合、会社や裁判所とやり取りする期間は日常生活の時間が奪われてしまいます。しかし弁護士に依頼すれば自分の時間を確保して、たとえば転職の準備を進めたりしながら給料の振り込みを待つことも可能になるでしょう。

回収できる給料を計算してくれる

たとえば退職した方の給料が未払いになっている場合は遅延損害として遅延利息(付加金)をつけて請求できます。付加金の請求は違反があったときから5年とされていますが、退職した日か、指定された支払日までに支払われなかった場合は最大年14.6%の利息がつくのです。

弁護士に依頼すればその他未払い賃金の対象になる以下の賃金から、全額でいくら回収できるのか算定してくれるでしょう。

労働基準法第11条では、賃金は名称の如何を問わず、労働の対償として使用者から労働者に対して支払うすべてのものを言うと定められています。そのため、給与やボーナス、手当なども「賃金」と考えられます。

  1. 定期賃金
  2. 退職金
  3. 一時金(賞与・ボーナス)
  4. 休業手当(労基法第26条)
  5. 割増賃金(労基法第37条)
  6. 年次有給休暇の賃金(労働法第39条)
  7. その他法第11条に定める賃金に当たるもの

【参考】未払い賃金とは|東京労働局

本当は残業代も回収できたのにと、時効を過ぎてから後悔したくない方、1円でも多く請求したい方は弁護士に算定だけでもしてもらいましょう。

時効前に給料を請求できる可能性が高まる

個人で給料を請求する場合、慣れない作業のためにスムーズに請求が行えないケースが考えられます。そのため時効までの期間が残り半年とギリギリの場合から準備をしても、時効を迎えてしまうリスクがあります

証拠を自分で確保できて会社や労基署、裁判所などと問題なくやり取りできれば良いのですが、そうでない方はやはり弁護士に依頼するのが望ましいでしょう。

退職後に時効を迎えてしまうケースも少なくありません。給料未払いの問題がある場合には可能な限り早めの相談がおすすめです。

給料未払いの時効は3年

未払給料債権の消滅時効は労働基準法で2年とされていましたが、2020年4月の民法改正に伴い給料未払いの時効は次のように変更されました

  • 定期賃金・残業代…3年
  • 退職金…5年

時効はいつからカウントされるのかというと、本来給料を支払うべき日です。たとえば2021年5月25日に支払われるべき給料が未払いだった場合は、その日から3年後の2024年の5月25日に請求期限を迎えます。

時効を過ぎてから会社側に給料の支払いを請求しても時効が成立したことを理由に、支払われない可能性が高いでしょう。

会社が給料の未払いを認めた時点で時効は中断される

会社と協議したり、メールでやり取りをしたりして「給料の未払いがある」と認めた発言をした場合はそこから時効は中断されます。たとえば、メールの返事で「後ほど支払います」や「給料の未払いを確認しました」など、の発言は給料の未払いがあると認めている証拠になりますから、このようなやり取りが確認できたら保存しておきましょう。

もしも給料の一部がすでに支払われたなら、それも会社が未払いの給料があったと認めている証拠になる可能性があります。

時効を中断・延長させる具体的な方法

3年間の時効を中断・延長させる方法は以下の通りです。

  1. 内容証明郵便を送る(催告)
  2. 労働審判の申立て
  3. 訴訟(裁判)を起こす

まずは比較的手続きが簡単な内容証明郵便を送りましょう。

内容証明郵便を送る(催告)

時効を止めるには催告(※)を行ってあなたが未払い給料の支払いを要求したと証明する必要があるのですが、その際に内容証明郵便を利用します。

※催告(さいこく)…相手方に請求すること

内容証明郵便はいつ、だれがだれに、どんな内容を送付したか記録される郵便物なので催告を行った証拠になります。会社側に未払い分の給料を請求する旨を内容証明郵便で伝えれば送付した翌日から6ヶ月間時効が中断されます。

【参考】内容証明|郵便局

労働審判を申し立てる

『未払い給料を回収する8つの方法』で解説した労働審判は時効を2年間延長できます。労働審判を申し立てて労働審判が確定したタイミングで、そこから2年間さらに時効が延長されるのです。

申立ての確定に時間がかかることが考えられますから、内容証明郵便を送った後に手続きをすると良いでしょう。

訴訟(裁判)を起こす

訴訟は時効をリセットできますから、3年間延長するようなイメージです。訴状を裁判所に提出して受理されたタイミングで時効がリセットされます。

こちらもまずは内容証明郵便で催告をした後で手続きをすると良いでしょう。

経営不況・倒産しそうな会社から回収できる?

未払い給料の回収で問題になるのが、経営状況が悪化している会社や倒産しそうな会社からでも回収できるかどうかです。結論から言うと未払い分の給料を全額回収するのは困難かもしれません

経営不況でも会社に支払い義務はある

経営状況が悪化している会社や経営不振で倒産しそうな会社であっても、原則は給料を支払う義務があります。会社の経営状況が悪化したからといって、給料の支払義務が消滅したり、減少したりするケースはありません

しかし、会社が法的な倒産手続きに入った場合は給料債権も倒産手続きに含まれるので、請求できなくなる可能性がありますので注意しましょう。また会社が完全に破綻しており、資金がまったくない場合には請求できる権利があったとしても、給料の回収は困難でしょう。

倒産してしまったら未払賃金立替払制度を利用する

会社が倒産した場合や事実上破綻している場合には、権利があっても請求ができない可能性があります。このような場合は、公的な制度を利用します。会社が倒産して給料の支払いが受けられなかった場合は、労働基準監督署及び独立行政法人労働者健康安全機構が実施する、未払賃金立替払制度の利用が可能です。

未払賃金立替払制度とは企業の倒産などにより賃金が未払いのまま退職した労働者に対して、賃金の一部を立替払いする制度です。

【参考】未払賃金立替払制度の概要と実績|厚生労働省

未払賃金立替払制度の利用により、同機構から未払い給料の8割が立て替えて支給されます(但し、退職時の年齢に応じて88万円~296万円の上限額あり)。たとえ会社が倒産しても一部は回収できるので、諦めないでください。

ちなみに令和元年度では総額86億円が立替払いされています。

企 業 数:1,991件(対前年度比6.7%減少)

支給者数: 23,992人(対前年度比1.9%増加)

立替払額: 86億3,779万円(対前年度比0.7%減少)  

【引用】令和元年度の未払賃金立替払事業の実施状況|厚生労働省

厚生労働省が発表した数字によると、会社が倒産して(倒産状態も含む)事実上の給与未払いになった方の多くが建て替えを受けているようです。会社が倒産して打つ手がない…といった場合に活用したい制度といえるでしょう。

まとめ

給料の未払いは労基法違反とされており、未払いを受けた側には給料の請求権があります。未払い給料の対処法は労基署に申請したり、簡易裁判を行ったり様々ですが、まずは証拠を確保する必要があります。

証拠がないと会社側に「すでに給与は支払った」と主張されかねませんし、労基署や弁護士も証拠がなければ会社側へ給与請求の交渉を行えません。未払い給与の回収はまず、証拠集めから始めましょう

もしも自分で給料を回収するのが難しいと感じた方は弁護士事務所に相談してみましょう。具体的な未払い額や、どんな方法で請求できるのかアドバイスをもらえます。現在は無料相談を設ける弁護士事務所も多数ありますので、無料相談を受けつけている「労働トラブルに注力する弁護士」を探してみましょう。

実際に弁護士に給料の回収を依頼すればすべて弁護士に任せて、会社や裁判所とやり取りをせずに給料を回収できるでしょう。未払い給料は3年経つと時効が成立して請求できなくなりますから、回収を考えている方は今日にでも弁護士事務所を見つけましょう。

未払い給料を請求したいと考えている方へ

給料・残業代は労働に対する正当な対価です

給料・残業代が未払いであれば、それを会社に請求するとは当然のことです。

 

しかし、会社に未払い給与を請求したところで、素直に認めるでしょうか?

労働審判・訴訟に発展したら、未払い給料があったことを明確に示す証拠が必要になります。

 

未払い残業代を請求したい方は、弁護士への相談・依頼がおすすめです。

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編集部

本記事はベンナビ債権回収(旧:債権回収弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ債権回収(旧:債権回収弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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