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債権譲渡をする上で、譲受人にとって契約書の作成の重要性は高いです。契約書とはいわば、自分の利益・権利を守るための書類であり、不測の事態が生じた際に主に効力を発揮します。
しかしながら、債権譲渡する方は、法人から個人まで事情は様々でしょう。今回の記事では債権譲渡契約書を作成する上で、抑えておくべき点について紹介していきたいと思います。
いきなり債権譲渡契約書を作成することになっても、どのような内容を含めるべきか、法律的な文言から契約書特有の書式は分からないと思います。
基本的事項として、簡単に作成するルールとしては、①タイトルを債権譲渡契約書にする、②文面の内容は手書きでも可能である③住所・署名は自筆にする、④押印は実印にする、計4点は最低限のルールとして抑えておきましょう。
また、債権譲渡契約書は、債権を受け取る譲受人の利益・権利を守るための書類であり、そのために含めるべき内容がいくつかあります。実例を元に、実際にどのように契約書を作成していくべきなのか見ていきましょう。
まず、個人間または法人における債権譲渡において、譲渡人から譲受人から債権を買い取る場合の契約書について確認していきます。
債権譲渡契約書 譲渡人A(以下、「乙」という。)と譲受人B(以下、「甲」という。)は、甲が債務者C(以下、「丙」という。)へ有する債権の譲渡について、以下の通りに締結した。 第1条(債権譲渡の内容:債権の購買価格) 乙は、乙が丙へ有する下記債権を甲に対して、平成○年○月○日、代金○円をもって譲渡するものとする。また甲はその代金を甲へ支払うことで同債券を譲受する。(以下、「本件譲渡債権」という。)。 記(債権の内容をなるべく特定する) 乙・丙間の平成○年○月○日の○○売買契約に基づく売掛金債権○○円 第2条 乙は丙に対して、確定日付のある証書と共に本件債権譲渡の通知をし、当該手続きに要する費用は乙の負担とする。 第3条(対抗要件を取得するための項目) 丙が第2条における通知を受けるまでに、乙に対して生じた理由を持って、甲に対抗した場合、甲は、催告を要せず本契約を解除することができる。この場合、甲は乙へ譲受した債権を譲り戻し、乙は甲へ譲渡代金を返還するものとする。 平成○○年○○月○○日 |
この契約書において、大切なことは譲渡する債権の内容を特定することと、債権の金額、債権の購買価格をはっきりさせることです(第1条)。
また、債権譲渡においては譲渡する債権の債務者・第三者への対抗要件を満たさなければ譲受人は効力を発揮することができません。対抗要件を満たすための記述として第2条の内容を記述することが必要です。
また、もし債務者と譲渡人との契約内容に問題がある場合、債務者が譲受人からの取り立てに応じてくれない場合があります。債務者から債権を回収できなければ、譲渡人から債権を購買した意味がありません。
そのため、譲渡人と債務者との間から生じた問題によって、譲受人が債権を回収できなかった場合に備えて、第3条の項目が必要になります。
また、株式会社Aが株式会社Bに対して、売買契約によって生じた未回収の債権における債務額を株式会社Bから弁済してもらうために、株式会社Bから債権を譲渡してもらう場合について見ていきましょう。
債権譲渡契約書 株式会社A(以下「甲」という)と株式会社B(以下「乙」という)は、債権譲渡契約について以下の通りに定める 第1条(債権譲渡の目的:債務の弁済) 乙は甲に対する平成○年○月○日付の売買契約に基づく、代金債務金○○円の弁済のために、甲が株式会社C(以下、丙とする)に対して所有する下記債権を甲へ譲渡するものとする。(以下、「本件債権譲渡」という) 記 債権者 譲渡人(甲) 第2条 乙は、確定日付のある証書をもって本件債権譲渡の通知を、丙に対し行わなければならない。 第3条 甲は、本件譲渡債権につき不存在、無効、取り消し、相殺、禁止特約等、丙から乙に対抗しうる何らの事由もないことを保証する。 第4条 乙は、甲の承諾なしに、譲渡した債権の取り立て、譲渡、その他、甲の権利行使における妨げをしてはならない。 第5条(債務者への通知の代理権の取得) 乙は債権譲渡通知書を作成し押印の上交付をすることで、甲が丙に対して内容証明郵便にて債権譲渡通知を発送する権限を与えるものとする。 譲渡人 株式会社B |
債権譲渡通知書の代理
まず、弁済目的の債権譲渡においては、譲渡人と譲受人との間に発生している債務額に関する記述を、債権譲渡における目的として、契約書の導入部分に最初に断りを入れることが必要です。
また、弁済を目的とした債権譲渡において譲渡人側が、対抗要件を満たすための処置を怠る場合があります。
第三者・債務者への対抗要件を満たすためには、内容証明郵便を介して債務者へ債権譲渡の通知を郵送することができますが、譲渡人側に通知する義務があり、譲受人にはその権利がありません。
そのため、代理人として通知ができるよう、第5条のように代理人を委託する文面を含めましょう。
参照:「債権者代位権とは|債権者代位権の概要と具体例」
株式会社Aが株式会社Bから未回収の債権における債務の弁済のために、株式会社Bが、株式会社Cとの取引における、株式会社Cに対する債権を、株式会社Aへ債権譲渡した場合を想定してください。
この場合、株式会社Cの業績悪化などに伴い、株式会社Cからの弁済総額が、株式会社Bの債務額へ満たされなかった場合、または弁済総額が、債務額を超えた場合の例を見ていきましょう。
債権譲渡契約書 株式会社B(以下「乙」という。)と株式会社A(以下「甲」という。)は、次のとおり、債権譲渡契約を締結した。 第1条 甲は乙へ債務(以下、「本件債務」という。)の弁済の為に、甲が債務者である株式会社C(以下「丙」とする)に対して有する以下の債権を乙へ譲渡する。 記 1.債権の種類 第2条 乙は、本契約締結後遅滞なく、確定日付のある証書をもって丙に対し債権譲渡の通知を行うか、または丙から(民法467条に基づき)確定日付のある丙の異議のない承諾を得るものとする。 第3条 1. 乙は、本件譲渡債権につき、丙から相殺、不存在、無効、取消、禁止特約等の抗弁事由を含む瑕疵が一切ないことを甲へ保証しなければならない。 第4条(弁済総額の過不足における規定) 甲は、乙への弁済額の全額について、その支払い期日に丙から弁済をうけるものとする。 第5条(債務の消滅における規定) 乙が丙から受けた支払いがの総額が、本件債務の総額に達した場合、甲から乙への債務の支払いがあったものとみなし、本件債務は消滅するものとする。 平成○年○月○日 |
株式会社B(譲渡人)と株式会社A(譲受人)の間に発生した債務において、その債務が発生した両者間の取引における契約書において債務が完済する期日が設けられています(債権譲渡契約書とは別の契約書)。
この際、債権譲渡によって、株式会社Aは、株式会社Bからの弁済の代わりに、株式会社Cから債務の弁済を受けることが可能です。
この、契約書における第4条に従うと、もし、株式会社Cからの弁済総額が、AB間で発生した債務の期日までに、債務総額へ到達しなかった場合、株式会社Bは株式会社Aへ残りの債務額を弁済しなければなりません。
また、その逆のしかりであり弁済額が債務額を超越してしまった場合、株式会社Aは株式会社Bへ超過分を支払う義務があります。この第4条は、譲受人が損することなく未回収の債権を回収するための項目です。
また、譲渡人は早く譲受人への債務から解放されたいと思っているため、譲受人と譲渡人との債務が消滅する場合を設けた項目が第5条になっております。
債権譲渡契約書を作成する上で、注意すべき点において紹介します。
まず契約書の内容は、譲渡人と譲受人との間にだけ有効であるということを忘れないでください。そのため、債権譲渡が行われたからといって、譲受された債権の効力を債務者へ施行することができるわけではありません。
譲受人が権利を主張するためには、債権に対する対抗要件と、第三者への対抗要件を満たす必要があり、そのためには債務者へ内容証明郵便を介して通知をするのが一般的です。
しかしながら先ほども紹介した通り、譲受人には通知する権利がないため、契約書の内容に代理人になるための文面を含めましょう。またここでは詳しくは触れませんが、債権譲渡登記制度を活用して対抗要件を満たすことも可能です。
また、契約書を作成する前に、事前に譲受される債権の効力が有効かどうか調べる必要があります。債権の効力が無効であった場合の処遇を契約書内に含めることで、リスクを回避することが可能ですが、無駄な時間と費用を割かないためにも事前リサーチは大切です。
まず確認しておきたい点としては、債務者と譲渡人との間で債権譲渡禁止特約が交わされていないかです。債権譲渡禁止特約とは、債権譲渡を禁止するための債務者を保護するための契約であり、特約が結ばれていると債権譲渡の効力が発揮されません。
しかしながら近年では特約について知らないまま、債権譲渡契約を結んだ場合、債権譲渡が有効とされるケースが多いですが、詳しくは下記の記事を参考にしてください。
参照:「債権譲渡禁止特約の知識と債権譲渡が無効になる場合のまとめ」
また、債務者からの弁済が既に完了している債権は当然ながら債権としての効力はありません。そのため既に弁済済みでないか、譲渡人側から、譲受される債権における債務者との取引内容、売掛金帳簿などの書類を元に、借入残高を確認しましょう。
同時に、譲受される債務者の調査も必要になります。債務者に破産などされたら回収できる債権も回収できません。そのため債権における財務状況を確認する必要があり、譲渡人から売掛金帳簿などの書類を元に確認することが必要です。
債権譲渡契約書を作成するためにはどれくらいの費用がかかるのでしょうか。
一般的に弁護士など専門家に書面の作成を依頼した場合、3万円~10万円の費用を目安にしてください。費用は各事務所によって異なるため一概には言えませんが、契約書に含める債権譲渡の債権の数に応じて高額になる傾向にあります。
また、契約書の作成を専門家へ依頼する方(主に法人)が多いのも事実です。契約書の内容における法的な問題は素人目にはわかりません。契約書の効力を発揮するためには、契約書内における法的な妥当性を説く必要があり、そのためには専門家へ依頼するのは効果的です。
また、依頼人の権利を保護する上で、契約を依頼主に有利な方向に進めるためにも専門家に依頼することをオススメします。
また、債権譲渡契約書を作成すると別途で印紙税を納めなければなりません。契約書に記載された契約金額が1万円未満であれば、非課税として扱われますが、1万円以上の場合は200円の印紙税がかかります。
参照:「印紙税額の一覧表|国税庁」
債権譲渡契約書を作成する上で、譲受人にとって譲受される権利や利益を保護するためにも、見落としがないか何度も確認し添削することが求められます。
しかしながら、先ほども申した通り法律的な正当性を示すためにも、細心の注意が必要です。そのため作成する時間が限られている人は特に、弁護士など専門家へ作成を任せるのがかえって効率的だと思います。
債権譲渡を弁護士に依頼することで、主に以下のようなメリットがあります。
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