未回収リスクとは?発生する原因と解消法、予防方法を徹底解説|ベンナビ債権回収(旧:債権回収弁護士ナビ)
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未回収リスクとは?発生する原因と解消法、予防方法を徹底解説

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原内 直哉 弁護士
監修記事
未回収リスクとは?発生する原因と解消法、予防方法を徹底解説

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ビジネスにおいて、取引先からの支払い遅延や未払いは、企業の資金繰りに深刻な影響をおよぼします。

未回収リスクとは、売掛金が期日通りに回収できないことで生じるリスクで、とくに中小企業にとっては経営を揺るがす大きな問題となりえます。

現状は未回収の債権が発生していない企業でも、事前に未回収リスクへの対策を講じることが大切です。

また、すでに未回収が発生している場合は、法的手続きも含めて適切に対応する必要があるでしょう。

本記事では、未回収リスクの基礎知識や発生原因、解決方法や予防方法について詳しく解説します。

目次

未回収リスクをはらむ売掛債権の種類

事業をしている限り、取引先から売掛債権が回収できなくなってしまうリスクがあることは否めません。

まずは、未回収リスクをはらむ売掛債権の種類について把握しましょう。

未回収リスクがある売掛債権には、次のような種類があります。

売掛金|商品販売やサービス提供の売上を将来的に金銭で回収する権利

売掛金とは、商品を販売した際やサービスを提供した際に受け取るはずの売上のことです。

物やサービスと引き換えにその場で受け取る金銭ではなく、将来的に受け取るタイプの金銭のことをいい、売掛金をはじめとした将来的に金銭を回収できる権利を売掛債権といいます。

売掛金を回収するタイミングは契約内容によって異なり、契約書やメールなどによって合意した条件が適用されます。

1月中に品物を渡し、2月末までに支払いをしてもらうなど、1ヵ月〜2ヵ月後に支払い期日を設けることが多いでしょう。

たとえば、卸売業では、製造者が段ボール50個分のお茶をスーパーに納品し、スーパーからは次の月末までに支払ってもらうというケースがあります。

また、IT業では制作会社が依頼を受けてWebサイトを作成して公開し、依頼をした企業からは2ヵ月後の月末までに支払ってもらうというケースもあるでしょう。

なお、ビジネスにおいては、契約書ではなく見積書や請求書によって売掛金や支払い期日を明示することも一般的です。

品物を引き渡したのに、支払いがなされなければ困るため、取引する双方に信用がなければ売掛金による契約は成り立ちません。

そのため、売掛金による取引は信用取引の一種だとされています。

受取手形|商品販売やサービス提供の代金を支払う約束をかたちにしたもの

受取手形も将来的に金銭を回収できる権利である「売掛債権」の一種です。

受取手形は、売掛金と同じく商品やサービスを提供した際の売上を将来的に受け取る権利ですが、売掛金とは異なり、約束の証拠として紙の約束手形が発行されます。

約束手形を発行するには当座預金口座が必要で、金融機関が商品やサービスの買い手に代わって、売り手に対して代金を支払う仕組みです。

そのため、当座預金の残高が足りないときであってもマイナス分を金融機関が立て替えてくれます。

もちろん、立て替えてもらった金額は金融機関に返済しなければなりません。

つまり、約束手形を利用した取引をおこなうためには、買い手の金融機関に対する信用が欠かせないのです。

手形には支払日が設定されています。

手形を受け取った側は、支払日に金融機関で現金化することができます。

電子記録債権|手形のデメリットを改善した新たなサービス

電子記録債権は、平成20年12月1日に施行された電子記録債権法によって定められた、事業者が資金調達を円滑におこなえるようにするための新しい金銭債権です。

仕組みは受取手形とよく似ていますが、大きな違いとして、受取手形を現金化するときのように、受け取り手が金融機関に出向かなくてよいという点があげられます。

電子記録債権の場合は、設定された期日になると金融機関が自動的に現金化してくれるのです。

実際に約束の証拠として紙の手形が発行される約束手形などと違って、インターネットで取引できるため、ペーパーレス化や業務効率化に大きく寄与しています。

また、受取手形の場合は10万円以上のの取引に印紙税がかかりますが、電子記録債権には印紙税が課税されません。

電子記録によって、簡易で迅速かつ安全に支払い手続きをおこなうことができるとして、多くの企業が導入し、経済産業省を筆頭に、2026年には紙の約束手形の廃止を実現するよう取り組んでいます。

未回収リスクが発生する3つの原因

売掛債権が回収できないということは、取引先が支払いをしてくれないということです。

どのようなときに未回収が発生してしまうのでしょうか。主な原因として考えられる3つについてみていきましょう。

1.取引先による単純なミス

支払い期日になっても取引先からの入金が確認できないときは、取引先が手続きについて何かミスをしているのかもしれません。

売掛債権が未回収になる原因の多くに、取引先が入金日であることを忘れていたり、入金期日を勘違いしていたりするほか、請求書を紛失したり、請求内容を他社のものと取り違ってしまったりといった単純なミスがあります。

入金や支払いの処理はデリケートな業務ですが、担当者が手作業でおこなっている企業も少なくありません。

なかには、担当者が銀行まで出向いて振り込みをしているという企業もあります。

そのため、ヒューマンエラーが発生しやすいのです。

単純ミスが原因である場合は、電話やメールで連絡をすれば、多くの企業が即時入金してくれるでしょう。

あるいは、新たに入金日を話し合うことで解決されることがほとんどです。

そのため、支払い期日に入金されていないからといって、最初から強い口調で催促をするようなことは避けるべきです。

取引先との良好な関係を保つためにも、まずは冷静に穏やかに、相手の状況を確認しましょう。

2.取引先の経営状況の悪化

電話やメールで支払いを依頼してもなかなか入金されないときは、取引先の経営が悪化してしまい、支払い能力が低下している状態かもしれません。

取引先の企業もビジネスをしている以上、さまざまなリスクがあり、支払いが困難に陥ることもあります。

健全に経営している会社であっても、災害・社会的な背景・ほかの取引先との関係によって、経営が立ち行かなくなることもあるものです。

全ての企業がよい経営状態を維持できるわけではないため、取引先の経営状況の悪化も見越して準備しておくことが大切です。

催促をしても売掛債権を回収できない場合、すでに経営状況が悪化している可能性があり、売掛金の回収が困難で自社の貸し倒れリスクが高くなっている状態だといえます。

放っておいても事態の改善は見込めないので、手遅れになる前に本記事の「未回収リスクを解消する方法」を参考に対策を講じましょう。

3.取引先が意図的に踏み倒そうとしている

取引先に十分な支払い能力があるにも関わらず、わざと支払っていないというケースもあります。

経営状況に応じて支払いを滞らせているだけであれば、資金が貯まったら支払ってくれるかもしれません。

しかし、連絡をしても誠実に向き合ってもらえない場合は、今後も支払われることはないと判断すべきです。

取引先が意図的に債権を踏み倒そうとしている場合、詐欺の被害に遭うことも考えられます。

故意による未払いは、なるべく迅速に法的手段をとることをおすすめします。

音信不通や夜逃げなど、売掛金回収が不可能になるリスクがあるからです。

被害に遭わないためには、事前に与信管理を徹底しておきましょう。

最低限の会社情報・業績・過去の実績・役員の変更・事例などを確認し裏取りをすることで企業信用調査をし、取引先の信用力をしっかり見極めることが大切です。

未回収リスクによって生じる影響

売掛金などを回収できないと、資金繰りの悪化や金融機関からの評価低下など、さまざまなリスクが生じます。

ここでは、未回収によるリスクについて解説します。

1.資金繰りが悪化する

売掛債権が未回収のまま終われば、自社の資金繰りが悪化する可能性があります。

売掛金は後払いで入金してもらう仕組みのため、自社側からはすでに商品やサービスは提供済みです。

売掛金が未回収になったとしても、商品やサービスの提供にかかった仕入れコスト・人件費・通信費・交通費などは戻ってきません。

本来、売上は従業員の給与・事業にかかる税金・ほかの取引先への支払いなど、あらゆることに使われます。

回収できない売掛債権が大きければ大きいほど、自社からどこかへ支払うべきお金が大きく損なわれるということです。

場合によっては、自社の支払いの遅れにもつながるでしょう。

未回収となる取引金額が大きいほど、経営破綻のリスクも高まります。

取引先の未払いが原因で自社が破産してしまうこともあることを覚えておきましょう。

2.金融機関の評価が低下する

売掛金の未回収があると、金融機関からの評価が下がる可能性が高くなります。

企業であれば、銀行などの金融機関から融資を受けることもあるでしょう。

金融機関は、融資をする際に、企業の貸付金の返済能力をチェックしています。

その際、企業の財務状況は当然調査されます。

審査内容は金融機関によって異なりますが、売掛金の回収状況も確認される可能性は大いにあるでしょう。

売掛金は、現代のビジネスにおいて一般的な取引方法です。

そのため、売掛金が多いこと自体は、将来入金される金額が多いと考えられ、事業が順調であると判断されることも少なくありません。

しかし、未回収の売掛金については、回収能力の低さと捉えられ、マイナスに働くこともあります。

売掛金の未回収をチェックされ、金融機関から資金管理がルーズな企業だと評価されれば、資金調達ができなくなる恐れがあるのです。

たとえ融資を受けられたとしても、融資期間の短縮や高金利での貸付など条件面で不利になる可能性があることも知っておきましょう。

3.利益が減少する

売掛金の売上が立った時点では、利益はあくまでも見込みであり確定していません。

利益は、売掛金が回収できてはじめて確定するものです。

売掛金を回収できなければ、見込んでいた利益はゼロになるということです。

売掛金の利益がゼロになるということは、いうまでもなく会社全体で得られるはずだった利益を減少させることになります。

加えて、売掛金を順調に回収できなければ、電話や書面による督促などの事務作業をおこなわなければなりません。

本来であれば不必要であった人件費や郵送コストなどがかかり、未回収額以上に実質的な損失額は大きくなるでしょう。

また、売掛金回収のために、ほかに取り組むべきだった業務の進捗に影響が出ることも考えられます。

そうすると、企業全体の生産性まで低下してしまい、波及してほかの案件で得られたであろう利益まで減少しかねません。

なお、回収しなければならない売掛金が少額であるほど、回収業務にかかるコストが売掛金を上回るリスクがあります。

そのため、仮に売掛金の回収ができたとしても、結果的に赤字になってしまうこともあるのです。

たとえ、会社全体としては赤字にはならない場合であっても、本来得るはずであった利益が減少することに変わりはありません。

会社全体の利益が少ないことは、上記の金融機関の評価の低下にもつながります。

未回収リスクを解消する方法

ここからは、未回収リスクを解消する方法として、6つの手段を紹介します。

1.内容証明郵便で督促状を送付する

支払いが遅れているにも関わらず、電話やメールでの催促に応じてもらえないときは、内容証明郵便を活用して督促をおこないましょう。

内容証明郵便とは、送付する文書の内容を郵便局が証明してくれるものです。

いつ・どんな内容の書類を・誰が・誰宛に送ったかを差出人が謄本を作成することによって証明することができ、郵便局では差し出した日から5年以内に限りこの謄本を確認することができます。

郵便局が督促を証明してくれるため、督促状を受け取った相手は知らないなどと白を切ることはできません。

また、内容証明郵便はその性質上、裁判などで有効な証拠となります。

督促をしても相手が応じない場合、法的手続きをおこなう際にも役立つでしょう。

とはいえ、内容証明郵便が送られてきた時点で、相手方は法的手段を取られるかもしれないと感じ、支払いがなされることもあります。

2.裁判所に支払督促を申し立てる

内容証明郵便で督促状を送っても支払いがなされないときは、裁判所を介して債務者へ支払いを依頼する支払督促を申し立てましょう。

支払督促は、裁判所から支払いを命じる督促状を取引先に送ってもらえる制度です。

法的手続きには、一般的に調停や訴訟がありますが、支払督促なら書類審査のみで強制執行へと手続きを進めることができます。

取引先が支払督促を放置していると、2週間が経てば強制執行が可能になります。

2週間経過すれば、裁判所に仮執行宣言の申し立てをすることができ、申し立てをおこなうと、裁判所から取引先へ、仮執行宣言付支払督促が送られます。

これに基づく強制執行によって、売掛金を回収することが可能です。

支払督促や仮執行宣言付支払督促を申し立てるのは、取引先の住所を管轄する簡易裁判所です。

相手の住所がわからないと利用できないため、個人間のやりとりでは活用できないケースもありますが、企業同士であれば住所はWebサイトや契約書に記載されているはずなので、スムーズに活用できるでしょう。

ただし、支払督促から2週間以内に取引先からの異議申し立てがあれば、自動的に訴訟に移行するのが支払督促の特徴です。

状況によっては、最初から訴訟を選択するほうがよい場合もあります。支払督促と通常訴訟のどちらを利用すべきかどうかは、弁護士と相談しましょう。

3.少額訴訟手続きを利用する

未回収の債権を回収するには、少額訴訟手続きを利用する方法もあります。

少額訴訟手続きとは、未回収の金額が60万円以下の場合に限って利用できる簡易な訴訟手続きで、自社または取引先の住所地を管轄する簡易裁判所に提訴します。

原則1回の審理で判決が出るため、何度も審理がおこなわれる通常訴訟と比べると簡易的に売掛金を回収可能です。

ただし、原則1回の審理ということは、控訴や反訴ができないということでもあります。

そのため、自社の主張が認められたとしても、取引先のことも考えた和解をすすめられることも少なくありません。

加えて、取引先の状況を鑑みて、分割支払い・支払猶予・遅延損害金の免除などを指示されることがあります。

そうなると、回収できたとしても得られるはずだった利益が少なくなる可能性があるでしょう。

また、被告となる取引先の希望があれば、控訴や反訴ができる通常訴訟に移行されます。

少額訴訟手続きが簡易な訴訟であるからといって、充分な証拠を揃えずに臨むと通常訴訟に移行したときに困るため、少額訴訟手続きをおこなうにあたってもしっかりと証拠書類などを揃えておきましょう。

4.通常訴訟を起こす

取引先と争いがない場合であれば、支払督促や少額訴訟を利用するのが一般的です。

しかし、取引先になんらかの言い分があり、あえて支払いがされていない場合には通常訴訟を起こすことになります。

通常訴訟の提訴をおこなう裁判所は、売掛金の額が140万円以下なら簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所です。

裁判所から取引先に支払いを命じる判決が出ても、支払いがなされない場合は、裁判所に強制執行を申し立てることができ、相手の財産を差し押さえられます。

通常訴訟を起こすには、基本的に弁護士への依頼が必要です。

そのため、弁護士費用がかかります。売掛金の金額などによっては、弁護士費用のほうが高額になる可能性もあるので、よく検討しましょう。

なお、近年は初回無料相談に応じている法律事務所も増えています。

まずは、無料相談をおこない、かかる費用や回収できる可能性などを踏まえて依頼するのがよいでしょう。

無料相談を受け付けている弁護士をスムーズに探すには、全国の法律事務所を検索できるポータルサイト「ベンナビ債権回収」を活用するのがおすすめです。

5.強制執行をする

支払督促や訴訟を通じて支払い命令が出ているのに支払いに応じてもらえないときは、取引先が持つ不動産・預金・売掛金などの財産を差し押さえて強制的に回収することになります。

強制執行手続きも、裁判所に対して申し立てます。

たとえば、取引先の銀行口座の預金を差し押さえることによって、銀行預金から直接支払いを受けることができます。

取引先企業が不動産を所有している場合は、これを差し押さえて競売にかけ、債権を回収可能です。

しかし、強制執行をおこなうにしても、取引先に換金性が高い財産があるとは限りません。

預金も売掛金も、少しも残っていないことがあり得るのです。

また、不動産を差し押さえる場合は強制競売や強制管理をおこなう必要があり、現金化できるまでに1年以上かかるケースもあります。

1年以上待つことができるのかどうかも、検討すべきでしょう。

強制執行に踏み切る可能性がある時点で、弁護士に依頼して取引先の財産をしっかり調査することが大切です。

6.債権譲渡をする

取引先の支払い能力が疑わしい場合、債権譲渡による回収ができる可能性もあります。

債権譲渡は、取引先が他社に対して持っている売掛金などの債権を、自社が譲り受ける方法です。

たとえば、他社であるA社が、取引先のサービスを100万円分購入したとします。

A社は、取引先に対して2ヵ月後に100万円を支払う予定です。

一方で、取引先は自社のサービスを100万円分購入し、すでに支払い期限が来ているにも関わらず支払えない状況です。

取引先の手元には現金がなく、A社からの入金があるまで残高がゼロだとします。

このようなときに、A社から取引先に支払われるのを待つのではなく、A社から取引先に支払われる売掛金を、A社から自社に支払ってもらう契約をするのです。

これが債権譲渡です。A社から自社に支払ってもらえれば、確実に100万円の売上が立つことになります。

この例のように同額でなく、A社からの支払いが90万円だったとしても、入金がゼロの状態よりはマシです。

A社から取引先に費用が支払われたら、取引先の残高は増えるのだからそのあと支払われるのを待てばよいと考えるかもしれませんが、すでにゼロの状況で取引先から自社へ100万円全額をきちんと支払われる可能性は低いと考えられます。

そのため、やはり債権譲渡契約を結んでおくのが賢明でしょう。

債権譲渡契約は取引先の同意が必要であり、確実な譲渡のためには契約書を交わさなければなりません。

また、A社と取引先の間で債権譲渡禁止特約が交わされているなど、債権譲渡ができないケースもあるため、注意が必要です。

債権譲渡による回収を検討するなら、まずは弁護士に相談しましょう。

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未回収リスクの発生を予防する5つの方法

ビジネスをしている以上、取引先の経営が困難になるリスクはつきものです。

未回収リスクは、なるべく事前に予防しましょう。未回収リスクの発生を予防する方法を5つ紹介します。

1.与信管理の強化|リスクの高い取り引きを避ける

未回収リスクの発生を防ぐには、まずは与信管理を徹底しましょう。

与信管理を強化することで、リスクの高い取引を回避することができます。

与信管理とは、取引先が支払い能力を持っているかどうかを事前に確認するプロセスです。

過去の信用情報・経営内容・財務状況をもとに取引先の信用度やリスクを分析し、評価します。

とくに、過去に貸し倒れがなかったか、資金繰りに問題がないかなどを確認しましょう。

取引先から直接入手できる情報もあれば、信用調査会社などの第三者から入手するできる情報もあります。

自社内やグループ会社のなかにある取引履歴などの情報も集めましょう。

調査結果によっては、取引を見直すことも重要です。

取引自体を控えたり、取引額の上限を制限したりすることも検討してください。

また、取引の開始前にだけおこなうのではなく、継続的に与信管理をすることで、未回収リスクを低減できます。

2.支払い期日の前倒し|取引実績が少ない企業などのリスク対策

売掛金を早期回収することでも、未回収リスクの発生を予防できます。

とくに、はじめて取引する相手や取引を開始して間もない企業には、支払い期日を早めるよう交渉することが重要です。

一般的なビジネスにおける取引では、商品を納品したり、サービスを提供したりした月の末日を締めとして、翌月の末日に料金を支払ってもらうパターンが多いでしょう。

この場合、請求書を発行してから30日前後が支払い期日となります。

たとえば、商品を納品した月の末日を締めとして、翌月の15日に支払ってもらえば、請求書を発行してから15日前後で支払い期日になるため、未回収リスクを軽減できます。

支払期日が遅いほど、取引先の経営状況が変わる可能性をはらみます。

支払い期日までの間に経営状況が悪化してしまう恐れもあるのです。

相手の希望よりも早く支払ってもらうように取引先に交渉するのは、容易ではないかもしれません。

しかし、取引実績が少ない企業や与信管理を通じてリスク回避をするべきだと判断した場合は、きちんと申し出ることが大切です。

とくに、自社が小規模な企業ほど、取引先との関係性を悪くしたくないからと、回収のタイミングを延ばす傾向にあります。

そうすると、回収できなくなるリスクが上がってしまうので気をつけましょう。

3.請求書は速やかに送付|取引先のミスや失念を予防するため

請求書を速やかに送付することで、取引先のミスを防ぐことも重要です。

迅速な請求書送付によって、取引先が支払い準備を整えやすくなり、支払い遅延のリスクを低減できます。

反対に、請求書の送付が遅いと、支払期日の管理がずさんな会社だと思われてしまいます。

今後の支払いを遅らせる口実にされてしまうかもしれません。

自社の対応によって未回収リスクを高めてしまわないように気をつけましょう。

取引先からの入金が遅れている場合には、すぐに連絡を取りましょう。

1日でも遅いときは連絡をして大丈夫です。

ただし、単純なミスによって遅れている可能性もあるため、遅延後すぐの連絡は穏やかな対応を心がけてください。

なお、確実な請求対応を実現するためには、支払い期日や支払い遅延を適切にチェックできるよう担当者をつけ、管理体制をきちんと整えることが大切です。

4.売掛保証を利用する|倒産などによる未回収が発生するのを予防する

取引先の倒産などによる未回収リスクを予防するには、売掛保証を利用しましょう。

売掛保証とは、取引先の経営が悪化することによって支払いを滞らせたり倒産したりする場合に備え、売掛保証会社が間に入って売掛金を補填するサービスです。

欧米では未回収リスクに備えた施策として、以前から広く活用されています。

近年は日本でも大手企業を中心として、積極的に取り入れられています。

事前に売掛保証会社と契約を結び、売掛保証会社が取引先についての信用調査を実施します。

あくまで自社と売掛保証会社が結ぶ契約であるため、取引先にはサービスを利用していることはわかりません。

そのため、取引先との関係に影響を与えずに売掛金未回収のリスクを抑えられるのです。

ただし、取引先が保証会社の審査を通過する必要があるため、確実に売掛保証会社のサービスを受けられるとは限りません。

審査を通過したとしても、売掛保証会社に対して自社から保証金を支払う必要があります。

契約が成立すれば、万が一取引先が倒産しても売掛金が保証されるため、未回収リスクを確実に回避できます。

売掛保証の利用には、与信管理の手間が軽減されるというメリットもあるでしょう。

5.ファクタリングを利用する|売掛金の早期現金化が可能

売掛金を確実に回収するだけでなく、早期に現金化したい場合は、ファクタリングの利用がおすすめです。

ファクタリングとは、売掛債権をファクタリングサービス会社に買い取ってもらえる仕組みのことです。

売掛金の回収リスクを大幅に軽減できるとともに、売掛債権を売った時点で早期に現金化できるため、資金繰りの改善も見込めます。

三菱UFJグループがファクタリングサービス会社を運営しているほか、りそなや三井住友グループがファクタリングサービス会社を介したサービスを提供しているなど、大手銀行でも取り扱っています。

償還請求権なしのファクタリング契約を結ぶことで、取引先が倒産してしまって売掛金を回収できない状態になっても、自社は支払い義務を負いません。

なお、ファクタリングサービス会社が買い取ってくれるのは、支払いが予定されている売掛債権です。

つまり、支払い期日を過ぎているのに回収できていない不良債権は買い取ってもらうことができません。

また、取引先との契約書に債権譲渡を禁止する条項があると、ファクタリングは利用できないので、利用の際には記載がないことを確認しましょう。

ファクタリング手数料がかかることにも注意が必要です。

未回収リスクを解消する際の注意点

支払われない売掛金をしっかり回収するために、さまざまな方法を紹介してきました。

ここからは、回収をするために留意したいことを説明します。

未回収債権には5年の時効がある

未回収債権には時効があります。時効が成立すると、請求する権利を失い、支払いを求めることができなくなります。

そのため、未回収の売掛金が発生した際には、すぐに対処を始めることが重要です。

債権の時効については、2017年に民法改正で大幅に変更されており、2020年4月以降は次のいずれかの早いほうが適用されます。

  • 請求権を行使できることを知ったときから5年
  • 請求権を行使できるときから10年

売掛金の場合は、請求書を出している時点で取引先は自社が請求権を行使できることを知っているはずです。

そのため、時効は、請求書を発行し取引先に共有した時点から5年間、権利を行使しない場合に成立することになります。

督促の際は取引先との関係に配慮する

未回収の売掛金などの督促をする際には、取引先との関係悪化のリスクを考慮する必要があります。

特別な事情がない限り、強硬な手段を取るのではなく、まずは穏やかなアプローチを試みることが大切です。

なぜなら、督促の話が取引先だけでなく、親会社・子会社・ほかの取引先にも広がる可能性があるからです。

相手が支払いをしていないにも関わらず、強硬な働きかけをしたことが噂されてしまうと、将来的な取引を敬遠され、自社の近隣地域や業界内での立場が危うくなってしまうという理不尽を被る恐れもあります。

このような場合に有効なのが、内容証明郵便です。

内容証明郵便自体には法的な強制力はありませんが、まずは丁重な催告書を送付することで、誰からみても真っ当な手段で、支払わない取引先に対して確実にプレッシャーをかけることができるでしょう。

回収率を高めたいなら弁護士へ相談

売掛金などの回収率を高めるためには、早い段階で弁護士に債権回収を依頼するのがおすすめです。

弁護士への依頼には、以下のように多くのメリットがあります。

  • 自分で請求するよりも回収率が上がる
  • 債権回収のスピードが上がる
  • 状況に応じた適切な債権回収方法を選択できる
  • 取引先と直接接触する必要がなくなり、負担が軽減できる

弁護士が介入することで、訴訟などを懸念し、相手がすぐに支払いに応じるケースは少なくありません。

そうでなくとも、弁護士への依頼を通じて法的措置を講じることで、支払いを拒否できなくなるため、全額回収できる可能性は高くなります。

諦めかけていた債権も回収できる可能性があるのです。

また、弁護士に依頼したほうが債権回収のスピードは確実に上がります。

法務担当者など手慣れている従業員がいる場合を除いては、自社でさまざまな手続きをおこなうのは手間がかかります。

債権回収に注力している弁護士であれば、全ての手続きを迅速に進めることができるので、依頼も検討しましょう。

弁護士であれば、書面での請求・直接交渉・法的手続きなど、状況に応じた適切な債権回収方法を判断し、実行することも可能です。

弁護士に依頼後は取引先と直接接触する必要もなくなるため、担当者の精神的な負担も軽減されるでしょう。

さいごに|未回収リスクの対策は早めにおこなおう

未回収の売掛金などが増えると、企業の資金繰りへの深刻な影響につながります。

ぜひ本記事を参考に、早期の段階で適切な対策を講じてください。

すでに回収が難航している場合や法的な手続きが必要な場合には、迷わず専門知識を持つ弁護士に相談しましょう。

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この記事の監修者
インテンス法律事務所
原内 直哉 (第二東京弁護士会)
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