1. 少額訴訟と通常訴訟の違い|通常訴訟への移行を回避する術

少額訴訟と通常訴訟の違い|通常訴訟への移行を回避する術

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弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
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少額訴訟とは60万円以下の金銭請求を起こす時に用いられる制度で、通常訴訟よりもはるかに簡易的な裁判です。どちらもお金を請求する裁判に変わりはありませんが、それぞれに特徴があり、訴訟を起こすのであればこの仕組みを知らないと、訴訟費用だけ無駄になってしまう事態にもなりかねません。
 
少額訴訟が通常訴訟に移行するケースもあるため、きちんと知識をつけておきましょう。裁判までの手続きを複雑に感じる人もいるかもしれませんが、今回はこの少額訴訟と通常訴訟の違いについて、また、手続きについてもわかりやすくまとめていきます。

 

個人間の債権回収の場合、債権額が100万円以下の人は、費用倒れになってしまう可能性があります

 

少額訴訟と通常訴訟の裁判の違い

早速、裁判における少額訴訟と通常訴訟の違いは何であるのかを簡潔にまとめていきたいと思います。
 

訴額制限の有無

少額訴訟制度は、「裁判には時間と費用がかかる」「当事者にとってわかりにくい」等の問題点の指摘を受けて、国民が利用しやすいようにという目的で民事訴訟の改正により導入されたもので、訴額(請求する金額)は60万円以下と定められています。この額を上回る金額の請求を行いたい人は、通常訴訟という選択を取るしかありません。
 

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解決までの時間

通常訴訟の場合は、原告と被告が何度も証拠の提出を行いながらやりとりせねばならず、早期解決を図ることは出来ません。一方、少額訴訟の場合は1日で審理が下りるので、手短に済ませたいという人にとってはうってつけの制度になります。
 

控訴の有無

通常訴訟とは異なり、少額訴訟の終局判決に対しては民事訴訟法377条(控訴の禁止)により、控訴をすることが出来ません。あくまでも少額訴訟は、迅速な解決をモットーに作られた制度であるためです。そのかわり、同裁判所に対して異議申し立てをすることは認められています。
 

裁判の雰囲気

法廷の正面に裁判官がおり、両脇に原告と被告、またその弁護士が同席して「異議あり!」と発しながら堅苦しく進行していく。こんな裁判を多くの人がイメージするのではないでしょうか。このような、よくドラマで見かけるシーンはまさに通常訴訟を含む裁判の雰囲気であり、少額訴訟は全く別モノの雰囲気になります。少額訴訟手続きの法廷には、裁判官の他に民間から選ばれた調停役の司法委員、書記官が同席し、円卓を囲み比較的和やかなムードで行われます。
 

少額訴訟を起こしたのに通常訴訟に移行するケース

少額訴訟を起こしても、100%少額訴訟手続きを取れるわけではなく、稀ではありますが、以下のような通常訴訟手続きを取らざるを得ないケースもあります。
 

被告が少額訴訟に反対した時

原告が少額訴訟の申請をきちんと行い、少額訴訟での解決を希望していても、被告側にも通常訴訟か少額訴訟か選択する権利があります。よって、被告が少額訴訟に同意しなければ通常訴訟に移行してしまうことが考えられます。
 

被告から異議申し立てが出された時

異議申し立ては、被告が判決書または調書の送達を受けた日から2週間以内にしなければなりませんが、申し立てが出された場合には、控訴は口頭弁論終結の段階に戻されることになります。この場合、同じ簡易裁判所で今度は通常手続きによる審理・裁判が行われることになります。
 
 

少額訴訟ではなく通常訴訟しか起こせないケース

少額訴訟を起こしたくても、条件を満たすことが出来ずに通常訴訟しか起こせないケースもあります。
 

訴額が60万円以上の時

冒頭でも述べたように、60万円以上を請求したい際には少額訴訟を起こすことが出来る条件には該当しません。訴額140万円以下の場合も少額訴訟と同様に簡易裁判所で手続きすることが可能ですが、60万円を超過しているためあくまでも通常訴訟となります。
 

少額訴訟利用回数の制限を超過している時

実は、同じ当事者が同じ裁判所で利用できる回数は10回までと定められています。これは従来、支払い督促制度など、簡易裁判所を利用する事件の多くがサラ金業者など消費者金融関連業者によって反復、独占利用される弊害を考慮して、庶民のための裁判所を目指した趣旨に沿って設けられた制限です。そのため、原告は少額訴訟を起こす際には当該裁判所で何回少額訴訟を手続きを利用したかを届けなくてはならず、定型フォームには回数の記入欄が設けられています。
 

公示送達しか送達の方法がない時

訴えたい相手の住所や居場所を知ることができない場合や、海外に住んでいてその文書の交付の証明が取れないときなどに、法的に送達したものとする手続きのことを公示送達と言いますが、この公示送達しか方法がない時、つまり相手の住所がわからない場合には、少額訴訟手続きを行うことが出来ません。
 
少額訴訟は被告の住所地(店舗であれば店舗所在地)を管轄する簡易裁判所で行われることを原則としています。したがって、明確に住所がわかっていることが条件となります。
 

少額訴訟と通常訴訟の手続き方法と費用の違い

少額訴訟と通常訴訟の2つの訴訟において、手続き方法やそれに伴う費用面はとのような違いがあるのでしょうか?以下で解説していきましょう。
 

少額訴訟の手続き

訴状の提出

被告の住所地を管轄する簡易裁判所に、作成した訴状を提出します。訴状は自分で1から作成しても構いませんが、簡易裁判所の窓口に備え付けの訴状用紙があります。または、裁判所のホームページから書式をダウンロードすることが出来ます。裁判所ホームページ記入の仕方がわからなければ、相談窓口で親切に教えてもらえますので、30分もあれば誰でも難なく作成することが出来ます。

(参考:「少額訴訟を起こす時の訴状サンプル|書き方と記載例」)

 

収入印紙と予納郵券が訴訟費用として必要

訴訟の目的の金額(訴額)に応じた手数料を収入印紙で納付します。

請求する金額(訴額)

手数料

~10万円

1,000円

~20万円

2,000円

~30万円

3,000円

~40万円

4,000円

~50万円

5,000円

~60万円

6,000円

※訴額に遅延損害金や利息等は含めません。
 
また、郵券とは切手のことで、必要分の切手を購入し裁判所へと提出します。この郵券は訴状の送達や判決の送付等に使用され、少額訴訟が終了した阿智に郵券が使用されずにあまった分は、申立人へと返却されます。郵券の価格は管轄の裁判所によりけりで原告と被告の人数によって加算されますが、おおよそ3,000~5,000円程度になります。
 

期日の連絡

提出した訴状が受理されると、審理・判決をする期日の連絡があります。「口頭弁論の期日の呼び出し状」が双方に送られ、被告には訴状も一緒に送付されるので、被告はこの時はじめて自分が裁判を起こされていることを知ります。原告に対しては手続き説明書が送られてきます。
 

事前聴取

少額訴訟の事前準備を行います。裁判所の書記官の要求に応じて、審事実関係の確認、追加の証拠書類の提出、証人の用意をしたりします。
 

答弁書の受け取り

相手方が提出した答弁書が届けられます。答弁書には相手の言い分や反論が書かれています。
 

法廷での審理

原告・被告・裁判官・書記官・民間から選ばれた調停役の司法委員が出席し、普通の話し合いのように審理が行われます。この審理では提出した書類や証人尋問などの証拠調べが行われ、場合によっては審理の場で話し合いによる和解が成立する可能性があります。証人をつける場合は証人尋問用の費用、証拠を鑑定する必要性がある場合は鑑定費用が発生します。
 

判決

原則として審理終了後に判決が行われます。少額訴訟の場合、原告勝訴率90%を超えると言われています。しかし、勝訴判決と債権回収とは別のものであり、”勝訴判決=債権回収できる”という方程式が成り立つわけではありません。裁判所の人が分割払い案や支払猶予などを求めてくるでしょう。
 

通常訴訟の手続き

訴状の提出

通常訴訟の場合は、訴額140万円以上であれば管轄の地方裁判所、140万円未満であれば簡易裁判所に訴状を提出します。裁判を起こすわけですから裁判費用が当然かかります。前述した少額訴訟の際の裁判費用を参考に、収入印紙代と予納郵券代を用意しておきましょう。

 

弁護士をつける場合は弁護士費用が必要

通常訴訟の場合は、原告被告共に弁護士をつけるケースが多くあります。弁護士費用は事務所によって様々ですが、以下を目安として下さい。
 

相談料

0~5,000円

着手金

訴額の5~10%

報酬金

回収できた金額の約10~20%

 

期日の連絡

提出した訴状が受理されると、審理・判決をする期日の連絡があります。この時の呼び出し状に「少額訴訟」という文字が書いてなければ通常訴訟であるということになります。訴えられた側は期日までに答弁書を提出しなければなりません。
 

法廷での審理

最初は訴状に対する被告の答弁書が出され(または口頭により)、原告の訴訟上の請求と、その原因とする事実の主張に対する認否があります。
 

判決

被告が原告の言い分を認めれば原告勝利の判決、またが被告の認諾調書作成で訴訟は終わりますが、事案に争いがあれば、期日を重ねて原告と被告双方の言い分を準備書面により出し合い、裁判所が争点を整理して絞ります。1日で判決が出る少額訴訟とは異なり、争点ややりとりが多くなれば多いほど判決までの時間を要します。
 

控訴→再度判決を争うことがある

敗訴した側は、判決に納得がいかなければ控訴をして争うことが出来ます。
 

少額訴訟を通常訴訟に移行させないためのポイント

手続きが簡単で一人でも行うことが出来る少額訴訟は行いたいけれど、通常訴訟は大事になるし嫌だという人は多くいます。少額訴訟が通常訴訟に移行してしまうケースがあることは前述したとおりですが、何とか少額訴訟で済ませたい、通常訴訟は行いたくないという人はどのような行動を取るべきでしょうか?以下にまとめていきます。
 

裁判所に訴えの取下書を提出する

通常裁判に移行してから、訴えの取下書、つまり一度訴えたことを取り下げさせて下さいという書類を提出することが出来ます。しかしこの場合、取下書を提出すればいいわけではなく、取下書に相手が同意をしないと取り下げることは出来ません。
 

弁護士へ依頼する

困った時に頼りになるのが弁護士です。法的な知識のある弁護士が行うわけですから判決まで迅速に進行でき、自分の主張にも力強さが増すので有利に立ちやすくなります。少額訴訟はしたいけれど通常訴訟になるのはちょっと…という場合には、その旨も予め弁護士に伝えておくと良いでしょう。そのための良案を提示してくれるはずです。
 

少額訴訟であっても100%勝てるだけの証拠を準備する

どのような裁判においても、勝てるだけの証拠をいくつ持っているかが重要になります。例え簡易的な裁判である少額訴訟においてもこれは同様であり、もし通常裁判に移行することを回避できなかった場合であっても十分に勝てるものを事前に準備しておく必要性があります。
 
 

まとめ

おさらいをすると、訴額が60万円以下で迅速に判決が出るものが少額訴訟、訴額が60万円以上で長期的な裁判になるものが通常裁判です。もしも、まだあやふやな点がある・疑問の解決に至っていないとのことであれば、法の専門家である弁護士に相談を行ってみるのも良いでしょう。

この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。

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編集部

本記事は債権回収弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※債権回収弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。


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