少額訴訟を進めるにあたって、「弁護士に依頼すべきなのか判断したい」「費用倒れするリスクをなくしたい」と考えている方もいるのではないでしょうか。
少額訴訟は、弁護士を立てなくても個人で手続きを進められる制度ですが、費用倒れが怖い場合や確実に回収したい場合は、弁護士に依頼した方がよい可能性があります。
本記事では、少額訴訟における弁護士費用の相場・内訳や依頼するメリット、費用を安く抑える方法を解説します。
少額訴訟とは|60万円以下の金銭を請求する際に利用できる裁判手続き
少額訴訟とは、60万円以下の金銭トラブルを原則1回の審理で解決するための裁判手続きです。通常の訴訟は判決まで数ヵ月以上かかるケースも珍しくないですが、少額訴訟なら即日判決が言い渡されるため、時間と費用が最小限に済みます。
少額訴訟が向いている主なケースは、詐欺の被害金を取り戻したい場合や、未払いの売掛金を回収したい場合などです。判決には仮執行宣言が付くため、相手が支払いに応じなければ、すぐさま預貯金や給与の差し押さえ(強制執行)の準備に移れます。
また、弁護士を立てなくても原告本人で手続きが比較的簡単に進められるのも大きなメリットです。一方、少額訴訟をおこなえるのは同一の裁判所につき年間10回まで・被告が拒否すれば通常訴訟へ移行するといったルールがあります。
少額訴訟ができる6つの要件
少額訴訟をおこなうには、以下6つの要件を全て満たす必要があります。
- 請求金額が60万円以下であること(利息・遅延損害金は除く)
- 金銭の支払いを求める訴えであること(物品の返還・行為の請求は不可)
- 簡易裁判所が管轄する案件であること
- 当事者一名につきあたり年10回までの制限内であること
- 被告が通常訴訟への移行を申し立てていないこと(被告が最初の期日前に申述すれば通常訴訟に移行する)
- 裁判所が少額訴訟による解決を相当だと判断していること
いずれかひとつでも満たさない要件があれば、少額訴訟は利用できません。事前に簡易裁判所の窓口で確認しておくと安心です。
少額訴訟で本人訴訟が多い3つの理由
少額訴訟は、弁護士を立てずに自分で手続きを進める本人訴訟も多く利用されています。少額訴訟で本人訴訟が多い主な3つの理由を解説します。
①通常訴訟よりも手続きが簡単だから
少額訴訟は、専門知識がなくても個人で対応できるほど手続きが簡単です。書類の書き方は裁判所の窓口で指導を受けられ、審理も原則1回で終了するため、仕事や生活への負担を最小限に抑えられます。
法廷での対決ではなく、裁判官が当事者双方の話を聞きながら進行し、通常訴訟に比べると、話し合いを重視した比較的柔軟な進め方がされることもあり、心理的なハードルも低い傾向です。裁判所によっては定型の訴状用紙も用意されており、記載例を見ながら作成できるため、法律の知識がなくても準備がしやすいです。
少額訴訟は、法的知識がなくても自力で完結できるように手続きが簡略化されているため、弁護士を介さずに本人訴訟を選ぶ方が多い傾向といえます。
②激しい対立が起こる場面が少ないから
少額訴訟は、通常訴訟に比べて激しい対立が起こりにくい傾向にあります。多くの場合、未払いの事実や金額には互いに納得しているが、支払いが滞っているといったシンプルな内容です。
審理では、どのように払っていくかという現実的な支払い方法の相談が主軸となります。裁判官も双方の事情を聞き、分割払いや和解を提案してくれるため、話し合いの延長線上で決着するパターンが一般的です。
ただし例外として、一方が「そんな金は借りていない」と真っ向から否定するなど激しい争いがある場合は、相手方が通常訴訟への移行を申し立ててくるケースもあります。多くの場合は、相手が未払い自体を認めていれば激しい対立が起こる場面は少ないです。
③弁護士に依頼すると費用がかかるから
弁護士に依頼すると費用がかかるのも、自分で少額訴訟を進める方が多い理由のひとつです。少額訴訟は請求額が少額なので、弁護士費用を支払うと手元に残る金額が少なくなるリスクがあります。
大前提として、少額訴訟は弁護士費用を捻出しにくい少額トラブルを迅速・簡易に解決するために設計された制度です。たとえば、60万円以下の請求に対して数十万円の着手金・報酬金を支払えば、回収額よりも費用が上回る可能性があります。
場合によっては、勝訴しても得られるお金は実質ゼロという結果になりかねません。金額面のバランスをふまえて、コストを最小限に抑えるために自力で少額訴訟を進める方が多いのが現状です。
少額訴訟を弁護士に依頼するメリット
少額訴訟は自力で対応する部分がどうしても多いですが、確実にお金を回収したい・手続きに時間を割けない場合は、弁護士に依頼するのが有効な手段です。少額訴訟を弁護士に依頼する主なメリットを2つ解説します。
裁判の手続きを全て代行してくれる
弁護士の力を借りれば、訴状の作成から判決確定までプロセスを依頼することが可能です。少額訴訟は簡易的な手続きですが、管轄の選定・答弁書の精査・期日への出頭などの時間を要する作業が発生します。
そのほか、相手方から金銭の支払いを求める書面が届いた場合などは、自力での判断が難しい可能性があります。弁護士が代理人になれば、依頼者が裁判所へ足を運ぶ必要が基本的になくなり、書類作成や手続きの不備も防げるため、スピーディーに判決をもらうことが可能です。
少額訴訟を弁護士に依頼して裁判の手続きを代行してもらえば、精神的・時間的な負担も最小限に抑えられます。
裁判の場でさらに立場を有利にできる
少額訴訟を弁護士に依頼すれば、裁判の場でさらに立場を有利にできる可能性が高まります。少額訴訟においても、もし証拠の出し方や弁論の仕方を誤ると思わぬ反論で立場が逆転したり、判決後に異議を申し立てられたりするリスクがあります。特に、少額訴訟は1回の裁判期日で審理を終了し、後から主張や証拠を追加することはできないので、申立てには入念な準備が必要です。
曖昧な証拠を出さずに法的根拠のある主張に徹すれば、相手方に反論の余地を与えずに1回の期日で望ましい判決を得ることも可能です。もし、相手が異議を申し立て通常訴訟へ移行した場合も、最初から弁護士に依頼していれば対応をそのまま引き継げます。
確実に債権を回収し、訴訟のやり直しが起こるリスクをなくしたい場合は、弁護士に依頼するのがおすすめです。
少額訴訟にかかる弁護士費用の相場・内訳
弁護士費用は、着手金・報酬金・相談料・実費に分けて考えることが重要です。費用倒れを防ぐためにも、依頼前に相場感を掴んでおきましょう。
相談料|30分〜1時間で5,000円程度
弁護士の相談料は30分〜1時間で5,000円程度ですが、近年は初回相談を無料としている事務所も増えています。相談の場では、まずは弁護士が状況を整理し、訴訟の可否や見通しを判断します。
弁護士との相談は、弁護士との相性や料金体系の明瞭さを判断する機会なので、無料相談を活用して複数の法律事務所を比較検討するのがおすすめです。
着手金|請求金額の5〜10%程度
少額訴訟を弁護士に依頼した際の着手金は、およそ請求金額の5%~10%程度です。着手金とは、弁護士が訴状の作成や裁判所への対応などの実務を進めるための基本料金です。
着手金は、原則として依頼が正式に決まった段階で結果の成否にかかわらず支払います。多くの法律事務所では請求金額の5%〜10%程度を基準に設定していますが、10万円~のように最低金額が設けられている場合もあります。
なお、被告に対する請求額が極端に低い場合や着手金の金額が高い場合は費用倒れになるおそれがあるので、事前に見積もりを確認することが重要です。
報酬金|回収できた金額の10〜20%程度
報酬金の相場は、実際に回収できた金額の10%~20%です。報酬金とは、得られた利益の度合いに応じて支払う成果報酬です。
少額訴訟においては、実際に債権の回収に成功した際に報酬金が発生します。ただし、勝訴しても相手に支払い能力がなければ回収できないリスクもあるので注意が必要です。
弁護士に依頼する前に、成功報酬の発生条件は何なのか事前に確認しておきましょう。
実費・諸経費|訴訟の進行状況ごとに異なる
実費・諸経費の費用は、訴訟の進行状況によって異なります。実費とは、事件を処理するために実際に出費される費用のことです。具体的には、収入印紙代・郵便切手代・交通費などが挙げられます。
日当は、弁護士が事務所以外での活動時に発生する費用であり、裁判所に出廷するごとにかかる出廷日当と出張ごとに発生する出張日当に分けられます。
費用は法律事務所によって異なりますが、半日程度の場合は3万円~5万円程度、終日の場合は5万円~10万円程度です。
弁護士費用を安く済ませる方法4つ
費用倒れを避けながら少額訴訟を進めるには、コスト管理が重要です。費用を抑えるための方法を4つ紹介します。
①自分で少額訴訟の手続きを進める
弁護士に依頼せずに全ての工程を自分でおこなうことが、弁護士費用を最小限に抑える方法です。少額訴訟はもともと個人でも利用しやすいよう設計されているので、自分で手続きを進めれば弁護士費用をゼロにできます。
具体的には、請求額が60万円以下の場合は弁護士費用をかけずに実費総額1万円前後で裁判を起こせるので、回収額を最大化できます。自分で進める場合に必要な実費は、裁判所へ納める収入印紙代と予納郵券代のみです。
また、簡易裁判所の窓口では書類の書き方を丁寧に教えてもらえるので、法律の知識がなくてもイチから手続きを始められます。たとえ自分の時間や工数をかけてでも、弁護士費用を抑えたい場合は、自力で少額訴訟の手続きを進めるのが有効な手段です。
②自分で書ける書類は自分で書く
少額訴訟において、自分で書ける書類は自ら作成するのも弁護士費用を抑える方法のひとつです。手続き自体を弁護士に任せる場合でも、一部の書類を自作して弁護士の作業工数を減らせば、事務手数料や書面作成代行費を抑えられるケースがあります。
具体的には、弁護士側の負担を軽減するために証拠資料の整理や事実関係をまとめた陳述書を用意し、弁護士費用の減額を交渉しましょう。
なお、時系列をまとめたメモやLINEのやり取りなどの証拠を整理しておくだけでも、相談時間を短縮でき、相談料の節約にもなるのでおすすめです。全て丸投げするのではなく、可能な範囲で共同作業をおこなう姿勢がコスト削減につながります。
③費用が安い弁護士事務所を選ぶ
少額訴訟を弁護士に依頼する際は、複数の事務所の料金体系を比較し、自分の予算に合った法律事務所を選ぶことが重要です。弁護士費用は各事務所が自由に設定できるので、着手金ゼロや初期費用を低く抑えている事務所も存在します。
具体的には、「少額訴訟 注力」「着手金無料」などのキーワードで検索し、相見積もりを取ってください。経済的に依頼が難しく、一定の資力要件などを満たす場合は、法テラスを利用すれば弁護士費用の立替制度を利用できる場合もあります。
安さだけでなく、提示された費用の中にどこまでのサポートが含まれているかを見極めることも大切です。
④弁護士の初回無料相談を活用する
弁護士に依頼するときは、弁護士の初回無料相談を積極的に活用しましょう。相談料を無料に設定している法律事務所を選べば、初期段階のコストを大幅に抑えることが可能です。
初回無料相談を利用すれば相談料を浮かせられるだけでなく、事務所次第では正式依頼後に相談料を報酬から免除してくれる場合もあります。また、初回相談無料を掲げる複数の事務に相談すれば、費用体系や弁護士との相性を比較検討できるのもメリットです。
相談の場では、費用の総額・成功報酬の計算方法を具体的に確認しておくと、後々の費用トラブルを防げます。弁護士費用をできるだけ抑えるために、弁護士の初回無料相談を活用しない手はありません。
少額訴訟に強い弁護士を探したい方はベンナビ債権回収がおすすめ
少額訴訟を有利に進めたい方、確実に未払金を回収したい方には、「ベンナビ債権回収」がおすすめです。ベンナビ債権回収とは、少額訴訟・債権回収に注力した弁護士を全国から検索できるポータルサイトです。
ベンナビ債権回収では、対応分野だけでなくエリアやオンライン相談可といった条件でも絞り込めるので、地方在住の方も安心して利用できます。自分のケースで弁護士を立てるべきか迷っているという段階でも気軽に相談できるので、まずは話を聞いてみるだけでもOKです。
初回無料相談に対応している法律事務所も多いので、気軽な相談から始めてみてはいかがでしょうか。
少額訴訟に関するよくある質問
最後に、少額訴訟を検討している方から多く寄せられる疑問をまとめました。手続きを進める前に確認しておきましょう。
Q1.相手が出廷しなかったらどうなる?
A.相手が欠席しても裁判は進行し、原告勝訴の判決が出る可能性が高いです。被告が正当な理由なく欠席した場合、反論なしとみなされるので、裁判所は原告が提出した訴状や証拠のみに基づいて判断を下します。
主張が合理的で証拠が揃っていれば、その場で勝訴が決まることも多いです。ただし、請求内容に矛盾がある場合や証拠が不十分な場合は、欠席裁判でも棄却されるリスクがあります。
相手の出欠にかかわらず、裁判官を納得させられるだけの十分な証拠準備が重要です。
Q2.判決までにどのくらい時間がかかる?
A.訴状の提出からおよそ1〜2ヵ月で、原則として即日判決が言い渡されます。少額訴訟は迅速な解決を目的とした制度なので、通常の訴訟のように何度も期日を重ねるのではなく、1回限りの審理で結論を出します。
審理がスムーズに進めばその日のうちに判決が出されるので、解決までのスピードはほかの裁判手続きと比べて段違いです。判決までにかかる時間を最小限にしたい方にとって、非常に有効な手段です。
Q3.判決に不服があるときはどうする?
A.控訴はできませんが、判決書を受け取ってから2週間以内に異議申立てをすれば、同じ簡易裁判所で通常訴訟として再審理を受けられます。控訴とは、上級の裁判所に裁判のやり直しを求めることです。
異議申立て後は通常の民事訴訟として扱われ、新たな証拠の提出なども可能になります。ただし、異議後の通常訴訟で下された判決に対しては、上級の裁判所へ控訴することは認められていません。
もし異議申立てをしても、簡易裁判所が出す次の判断が最終結論なので、最初の少額訴訟の段階から確実な証拠と主張を整理しておくことが重要です。
Q4.相手が少額訴訟を拒否したらどうなるの?
A.被告が通常訴訟への移行を申し述べた場合は、事件は通常訴訟へ移行します。被告が答弁書を提出せず、期日を欠席した場合、裁判所は、原告の主張を踏まえて判決を出します。
一方、正当な理由がない無視や欠席は自らの反論権を放棄したとみなされるので、注意が必要です。相手が「通常訴訟にしてほしい」と回答書を出せば、裁判は数ヵ月続く通常の形式に切り替わります。
逆に、相手が何もせず期日に来なかった場合は、あなたの主張が認められ即日勝訴となるケースが一般的です。
Q5.弁護士に依頼せず自分でやる場合、費用はいくら?
A.請求額によりますが、概ね1万円前後の実費だけで済みます。本人訴訟であれば弁護士報酬は発生せず、裁判所へ納める収入印紙代と切手代のみで手続きが可能です。
たとえば、60万円を請求する場合、収入印紙代は6,000円、切手代は3,000〜5,000円程度なので、合計11,000円ほどで裁判を起こせます。少額訴訟は、弁護士費用を払うと赤字になるリスクを避けるための制度です。
コストを最小限に抑えたいなら、裁判所の窓口に相談しながら自分で進める方法が合理的です。
まとめ|少額訴訟を弁護士に依頼して速やかに問題解決を図ろう
少額訴訟は個人でも対応できる制度ですが、確実な回収や手続きにかける時間と工数を最小限にしたい場合は、弁護士に依頼するのもひとつの手です。
本記事で解説したポイントを改めて整理します。
- 少額訴訟は60万円以下の金銭トラブルを原則1回の審理で解決できる手続き
- 多くの人は、手続きの簡単さと費用対効果をふまえて本人訴訟をおこなう
- 弁護士に依頼すれば手続きを全て依頼でき有利な条件で手続きを進められる
- 弁護士費用の相場は、着手金が5%~10%程度・報酬金が10%〜20%程度
- 弁護士費用を抑えるには、自力対応・無料相談の活用・複数事務所の比較が有効
少額訴訟の手続きを自分で進めたくない方や勝訴する可能性を最大限まで高めたい方は、弁護士に相談するのをおすすめします。まずは費用倒れのリスクも含めて、法律のプロ目線で状況を整理してもらうのが正解です。
ベンナビ債権回収には、少額訴訟に強い法律事務所が多数掲載されています。まずは初回無料相談を利用して、気軽な相談から始めてみましょう。
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