弁護士に依頼することで、諦めていた債権も回収できる可能性があります。弁護士に依頼するメリットや、成功事例を見てみましょう。
差し押さえとは、その言葉のとおり債務者の何かを強制的に差し押さえて回収することですが、近年、家賃滞納が原因で差し押さえられるといった事案も目立ってきています。債権者としては、やはり悪質な滞納者をいつまでも野放しにしておくことはできません。
しかし、かなり悪質な場合であっても差し押さえはそう簡単にできるものではなく、法的な手続きを段階的に進めていかなければなりません。今回の記事では、この法的な手段について詳しくまとめていきたいと思います。
滞納している家賃を回収したい方へ
滞納している滞納は、財産の差し押えで回収できる可能性があります。また、弁護士を通し、滞納者に内容証明や督促状を送ることで、強制執行しなくても支払ってくれることもあり得ます。このほか、弁護士に依頼することで以下のような事も望めます。
- 強制執行の手続きを依頼できる
- 滞納者と交渉してもらえる
- 各書類の作成・送達を依頼できる
- 立ち退きなどの申立ての手続き
弁護士から強制退去を検討している旨を伝えることで、支払いに応じてくれる可能性もあります。債債務者が破産・再生手続きを行う前に、弁護士にご相談ください。
家賃滞納者に対して差し押さえが可能になる条件
差し押さえを行うには、最低限以下の条件をクリアしないといけません。
債務名義があること
差し押さえは、必ず判決に基づいて行われることになります。したがって、判決、及び判決に準ずる以下の債務名義と呼ばれるもののいずれかが必要になります。
債務名義 |
|
確定判決 |
裁判所に支払い請求の訴訟を起こした際に出された判決 |
仮執行宣言付判決 |
『仮執行の宣言』のついた判決 |
執行証書 |
金銭の一定額の支払、またはその他の代替物、または有価証券の給付を目的とする請求についての内容を公証人が作成した公正証書 |
和解調書|調停調書 |
裁判中に和解した場合と訴え提起前の和解の場合に作成されるもの、または調停委員会で合意した場合に作成されるもの |
(参考:「差し押さえにかかる費用と費用を出来るだけ抑える方法」「債務名義の取得」)
財産調査が済んでいること
家賃滞納者が現在どれだけの財産を持っているのか、という点を調査しておくことで差し押さえ可能なものの有無が明確になります。差し押さえられるものが全くない状態で差し押さえの手続きをとっても、費用倒れになってしまい兼ねません。
裁判所の許可が出ていること
裁判所に対して、「この判決書に基づいて」「相手のどこにあるこの財産を差し押さえたい」という申し立てを行い、それに対しての許可がおりなければ、差し押さえを実行に移すことは出来ません。
家賃滞納者の給料を強制執行で差し押さえる3つの方法
家賃滞納者の給料を差し押さえる手段が一般的ではありますが、ここでは法による差し押さえの方法として3つご紹介していきます。(参考:「差し押さえの方法|差し押さえ可能なもの一覧と注意点」)
家賃滞納者の債権を差し押さえる方法:債権執行
給与や預金を含めた債権を差し押さえる方法で、差し押さえる相手の勤務先が判明していることが条件になります。給与の場合は4分の1を差し押さえることが可能になり、家賃滞納者としては勤務先に家賃を滞納していることがばれてしまうので、厄介な問題になります。回収には2週間から1ヶ月程度を要します。
①裁判所への申立
債務執行の手続きは裁判所で行うことになり、裁判所にまず債権執行の申請にするにあたり、以下のものを裁判所に提出します。
・当事者目緑
・請求債権目録(債権者が債務者に対して有する債権の情報)
参考:裁判所|書式一覧
・差し押さえ債権目録(債務者の債権情報)
・債務名義(執行文付与付き)
・送達証明書(相手の手元に債務名義の謄本が送達されたことを証明する書類)
・手数料
②債権差押え命令の発送→差し押さえ
申立が受理され次第、裁判所からは債務者、また第三債務者(例:預貯金債務の場合は銀行、給与債権の場合は雇い主である会社)への債権差押命令が発送されます。その後に差し押さえが行われ、交付されるのが一般的です。
債権執行にかかる費用 |
家賃滞納者の動産を差し押さえる方法:動産執行
家や土地などの不動産を除いた動産、車や家財道具や家電製品などを差し押さえる方法になります。回収までが2週間~1ヶ月と早いですが、換価金額が小さいと回収に繋がらないリスクがあります。
①裁判所の執行官への申立
動産執行は、差し押さえる家財道具などがある家や場所を管轄する地方裁判所所属の執行官に対して執行の申立を行うことになりますが、その執行の申立に必要なものは以下となります。
・当事者目録
・債務名義正本(執行文付与付き)
・送達証明書(相手の手元に債務名義の謄本が送達されたことを証明する書類)
・執行場所を記した位置図(地図のコピーなど)
・手数料
動産執行の費用は予納金としてあらかじめ納めますが、実際にかかった費用を予納金から差し引き、残金は返還してくれます。
②申立の受理→差し押さえ
申立が受理されて予納金も収めた後に動産執行となりますが、執行官と債務者がいそうな日時の打ち合わせを行い、その日時になったら執行官が直接現場に出向きます。
ここでは動産であれば何でも自由に差し押さえることが可能であり、請求金額に達するまで差し押さえていくことになります。
③動産執行後→弁財
差し押さえたものを競売にかけ、その代金から債権者に対して弁財がされます。
動産執行にかかる費用 |
家賃滞納者の不動産を差し押さえる方法:不動産執行
家や土地などの不動産を差し押さえる方法になります。不動産に担保が付いていない場合は、高価値であることから回収できる可能性が一番高いというメリットがあります。しかし現況の確認や、不動産鑑定士による評価など慎重な手続きが必要であるため、半年~1年ほどという長い時間を要することになります。
①裁判所への申立
債務者の所有する不動産所在地を管轄する地方裁判所で申立を行うことになりますが、その際には以下のものを提出します。
・債務名義正本(執行文付与付き)
・送達証明書(相手の手元に債務名義の謄本が送達されたことを証明する書類)
・登録事項証明書
・固定資産税評価証明書
・執行場所を記した位置図(地図のコピーなど)
・委任状
・手数料
②競売開始決定
裁判所が添付書類等を確認して申立が受理されると、不動産競売の開始決定がなされます。この時点で、その不動産の登記には「差し押さえ」の登記がなされ、勝手な財産処分や売却等が禁止されます。また、競売開始決定がなされた時点で、不動産に対する登記の費用が発生します。これは債権額の0.4%の金額と登録免許税法で定められており、これも裁判所へ提出し、裁判所が登記嘱託書と共に法務局へと送付します。
③裁判所の不動産調査
差し押さえる不動産の現況調査や、不動産鑑定士による価格の評価などが裁判所側で行われます。調査終了後、その不動産の最低売却価格などが決定されます。
④入札と売却手続き
競売手続きでは、入札期間を裁判所が決定し、購入希望者は裁判所にその機関内に希望金額を届け出ます。その中から最も高い金額を申し出た方が購入者となり、指定の期限内に代金を現金一括払いで納付します。納付がなされた時点で不動産は購入者の所有となります。
⑤配当手続き
購入者から納付された代金の配当手続きが始まります。この配当手続きでは、債権者が指定の機関内に自己の有する債権額を届け出て、競売にかかった費用や抵当権付債権、税金などの代金を受け取ります。そこから残った分を債権額に応じて債権者に分配します。
不動産執行にかかる費用 |
家賃滞納者に対して差し押さえを行う際の注意点
ここでは、差し押さる側が注意すべきことについてまとめていきます。
執行停止の申し立てをされることがある
たいていの場合は差し押さえの判決がなされた時点で、差し押さえが開始される前に支払いを済ませて差し押さえを回避しようとしますが、債務者に不服がある場合は、差し押さえの手続きにストップをかける請求異議の訴えを起こすことがあります。
差し押さえる財産がなければ費用が無駄になる
前述した通り、「ない袖は振れない」ではないですが、差し押さえられるものを持っていない家賃滞納者からは、差し押さえは行えません。この場合、差し押さえの手続きに移行する際の費用は全て無駄になってしまいます。
家賃滞納から5年以上経過している場合は時効になる
借金には時効という制度がありますが、家賃の場合も借金に含まれるために、民法169条に基づき時効制度が適用されます。
≪民法169条(定期給付債権の短期消滅時効)の条文≫
年又はこれにより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、5年間行使しない時は、消滅する。
ただし、4月1日以降に発生した債権に関しては、権利行使可能であることを知ってから5年に統一されました。
家賃の時効の起算点
最後に「請求された」もしくは「支払いをした」日から数えて5年になります。なお、この数えかたですが「支払い期限(の翌日)」から5年です。つまり、5年間債権者側は支払いの請求をせず、差し押さえにも至らず、家賃滞納者が1円も支払わなかった場合は、滞納したぶんの家賃の支払い義務がなくなるということになります。
家賃滞納者から家賃を回収する差し押さえ以外の手段
以下は本、来差し押さえを検討する前に行っておくべき手段になります。つまり、差し押さえという強制力を持った執行はあくまでも最終手段であるということです。
裁判外での交渉を行う
まずは電話や訪問、内容証明郵便(いつ、誰が、誰に対して出したものかを証明する郵便)を用いて請求を行いましょう。任意交渉の時点で家賃滞納分の支払いに応じてくれるのであれば、それに越したことはありません。少なくともこの任意交渉は3~4ヶ月は根気よく行うようにしましょう。
ADR(裁判外紛争解決)を利用する
法的トラブルに対し、裁判を起こすのではなく第三者が関わることで解決を図るのがADR(Alternative Dispute Resolutionの略)です。相手が直接交渉に応じない場合や、裁判などの大事にはせずに中立的な専門家の力を借りたい時などはこのADRを考慮してみるのも有効です。ADRに関する詳細はコチラをご覧ください。
少額の場合は少額訴訟を行う
請求額が60万円以下の場合は、少額訴訟を起こしてみるのも手段の一つです。少額訴訟とは、1日で審理、判決が終了する簡易的な裁判で、テレビやドラマで見るような堅苦しいものではなく、比較的和やかな雰囲気の中で執り行われるものになり、手続き自体も簡単に行えます。
まとめ
もしも家賃を滞納している債務者が、全くお金がなく定職にもついておらず、どうしても家賃回収が見込めない場合、そのまま部屋を貸し続けるよりかはやむを得ず強制退去を検討してみても良いかもしれません。(参考:「強制退去させる方法|強制退去までの流れと注意点」)
いずれにせよ、すぐに差し押さえをしようと決めつけるのではなく、自分のケースではどういった債権回収法が適しているのか、一度弁護士へ相談してから決めるべきでしょう。
滞納している家賃を回収したい方へ
滞納している滞納は、財産の差し押えで回収できる可能性があります。また、弁護士を通し、滞納者に内容証明や督促状を送ることで、強制執行しなくても支払ってくれることもあり得ます。このほか、弁護士に依頼することで以下のような事も望めます。
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