強制執行で債権回収するために必要な知識のまとめ|ベンナビ債権回収(旧:債権回収弁護士ナビ)
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差押え・強制執行
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強制執行で債権回収するために必要な知識のまとめ

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強制執行で債権回収するために必要な知識のまとめ

強制執行とは、行政を介して強制的に債務者の財産、債権または不動産を差押えることで債権回収する法的手段です。

行政が債権者に代わって債務者から債権回収を行ってくれるため確実な回収が望めますが、債務者の財産(債権)の状況によっては、満額の債権が回収できないかもしれません。

そこで今回の記事では、強制執行をするのに必要な手続きの流れに加え、確実な債権回収をする方法、また強制執行される側の債務者の方に向けて強制執行を停止する方法について紹介していきます。

強制執行で財産の差し押えをご検討中の人へ

強制執行し財産の差し押さえが成功すれば、滞納している債権を回収できるかもしれません。その分、タイミングなどが重要になります。財産の差し押さえ(強制執行)をご検討中の方はできるだけ早く弁護士にご相談ください。弁護士に依頼するメリットは以下の通りです。

 

  • 差し押さえのタイミングの検討
  • 差し押えの手続き・書類作成
  • 差し押え後の債権回収・手続き
  • 債務者との交渉 など

 

弁護士に依頼することで、最大限の金額を回収できる可能性があります。債債務者が破産・再生手続きを行う前に、弁護士にご相談ください。

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強制執行とは|差押えによる債権回収

冒頭でもお伝えしましたが、債権回収とは行政を介して債務者の財産(債権)を強制的に差押えることで債権回収する法的手段です。強制執行する上で、差し押さえの対象とする財産(債権)の種類によって手続きの種類が異なりますが、債権執行、不動産執行、動産執行の3つに分かれます。

債権執行

強制執行の中でも法人間では、債権執行が一番、多く用いられるのではないでしょうか。債権執行とは、債務者が保有している債権を差押えるための執行手続きであり、実際には差押える債権に対する(第三)債務者から弁済をしてもらうことで債権回収をします。

対象の債権

一般的に個人の債権者を対象としている場合は、給与債権、預金債権を対象に債権執行を行うことが多いでしょう。また、法人の債権者に対しては、取引先が所有する売掛金債権、貸付金債権が債権執行の対象となる場合がほとんどです。

対象外の債権

また、個人の債務者を対象とする場合、必要最低限の生活を保護するために、給与債権に関しては給与の内、1/4までしか差押えることができません。

養育費の請求を目的とした債権執行においては、給与の内、1/2まで差押えることができます。また、公的年金は受給者の生活を保護するためのお金になるので、債権執行の対象にすることができません。

不動産執行

不動産執行は、土地や建物など債務者が保有する不動産を差押えるための執行手続きになります。個人を対象とした場合、債務者の自宅が対象となる場合が多いですが、債務者が法人の場合は自社ビルが対象となるケースが多いです。

また、債務者が登記した地上権(他者の土地に関わらず工作物や竹林を所有するための権利)も不動産執行の対象とすることができます。基本的に不動産執行は既に、銀行から不動産自身が抵当にかけられている場合が多く、いざ不動産執行をしてもあまり債権の回収できるかわかりません。

動産執行

動産執行は、債務者の不動産以外の換金価値のある所有物を対象とした執行手続きです。

対象の財産

個人の債務者へ動産執行を申立てる場合、骨董品、貴金属、現金(上限66万円)、小切手や株券など有価証券が差し押さえの対象になります。

個人の債務者へ動産執行をする際、執行官が債務者の自宅へ直接、訪問をするため訪問先で換金価値のある財産がなければ債権回収することができません。

動産執行は、申立費用も割高なため差し押さえをした財産よりも裁判所へ納める費用の方が高額であるケースが多いです。また、法人の債務者を対象にする場合は、相手側の社内にある商品の在庫を対象とすることが一般的でしょう。

対象外の財産

先ほど申した通り、個人の債務者を差押さえの対象とした場合は、必要最低限の生活を保護しなければなりません。そのため、債務者の所有物でも衣類、家具など暮らしに必要なものは動産執行の対象外です。

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強制執行の申立前に必要な手続きの手順

では、強制執行するためにはどうすればいいのでしょうか。強制執行の申立をする前に、債務者に対して債権が発生していることを公的に証明するための債務名義を取得しなければなりません。その上で、債務名義の執行文付与の申立、送達証明書の申請を行うことが必要です。

債務名義の取得

債務名義には、公正証書、調停調書、仮執行宣言付支払督促、少額訴訟判決、和解調書、仮執行宣言付判決、確定判決に分かれますが、それぞれ取得方法や強制執行における手続きの流れが異なります。

交渉による公正証書の作成

公正証書とは、債権者と債務者の同意の元、債務者の債権者への弁済方法に関する契約書を作成した上で、公証役場にて公証人の立ち合いの元、作成される書類です。

実務的には、以下で紹介する民事調停、支払督促、訴訟などの法的手段を用いる前に、債務者と弁済に関する話合いを行った結果、債務者から同意を得た場合、契約書を作成し、公正証書を作成します。

民事調停による調停調書

調停調書は、簡易裁判所にて調停委員の仲介の元、債務者と債権者の意見をまとめるための民事調停において調停委員によって作成される書類です。

費用に時間的コストがかからないことが民事調停のメリットですが、両者の合意の元に調停調書が作成されるため、債務者の同意なしでは成立しません。
 
参照:「債権回収における民事調停の有効性と利用方法のまとめ

支払督促による仮執行宣言付支払督促

仮執行宣言付支払督促は、支払督促の手続きによって得られる債務名義です。訴訟の手続きと比べ手続きが容易でかつ費用が安いことと、仮執行宣言付支払督促には既に、執行文の効力が含まれていることがメリットとしてあげられます。

通常の債務名義では、債務名義の取得後に執行文の効力を持たせるための執行文付与の申立を行いますが、その分の手続きが省くことができます。

また執行文付与の申立前に、債務者から強制執行停止の申立されることで、強制執行の手続きが止められる例がありますが、すでに執行文の効力が含まれているため執行停止の申立によって強制執行の手続きが止められることができません。

支払督促の手続きの方法に関しては、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
 
【参照】
▶「支払い督促を介して仮執行宣言付支払督促を取得する方法
▶「支払督促の申立の手順と手続きの流れを抑える上で必要な知識

少額訴訟による少額訴訟判決

少額訴訟とは、金銭債権を対象に、請求金額が60万円以下の場合に申し立てることができる訴訟手続きです。申立費用が安い上に、1回の審理で手続きが完了するため支払督促同様にハードルの低い法的手段になります。

手続きが無事完了すれば、債務名義として少額訴訟判決を取得することができますが、仮執行宣言付支払督促と同様に既に執行力が含まれているため、執行文付与の申立をする必要がありません。
 
参照:「少額訴訟の金額と請求可能な金額|少額訴訟の条件と手続き

訴訟によって取得できる債務名義

訴訟手続きは、時間も費用もかかるためハードルの高い法的手段になりますが、債務名義を取得する上では、一番確実性の高い方法です。

実際のところ法廷前、または法廷中でも裁判所からは双方が和解をすることを勧めることが多いため、和解で解決するケースも珍しくありません。その場合、債務名義として和解調書が作成されますが、和解に至らなかった場合は裁判所の判決に任せることになります。

勝訴した場合、債務名義として確定判決を取得することができますが、実際のところ、第一審で確定判決が降りることはほとんどなく、第二審以降です。

第一審でも債務名義として仮執行宣言付判決を取得することができるため、強制執行の手続きに踏み込むことができます。
 
参照:「債権回収の民事訴訟を起こす上で抑えておきたい知識まとめ

債務名義 取得方法 裁判所
公正証書 債務者との話合い ×
仮執行宣言付支払督促 支払督促
少額訴訟判決 少額訴訟
和解調書 訴訟
仮執行宣言付判決
確定判決

債務名義の執行文付与の申立

債務名義を取得した後は、債務名義に執行力を持たせるためにも執行文付与の申立を行います。先ほど説明した通り、少額勝訴判決と仮執行宣言付支払督促に関しては既に執行力が含まれているためこの手続きは必要ありません。

そこで公正証書、調停調書、仮執行宣言付判決における執行文付与の申立方法について確認していきましょう。

申立方法

公正証書における執行文付与の申立は、証書を作成した公証人に執行文付与を作成してもらう必要があります。その際、公正証書の正本、戸籍謄本、住民票、免許書、印鑑、印鑑証明書を用意した上で、手数料の1700円を納めなければなりません。

調停調書、仮執行宣言付判決に関しては、債務名義を作成した裁判所の書記官へ執行文付与を作成してもらうことになります。申立書と共に、債務名義の正本を添えた上で収入印紙代として300円を納めなければなりません。

申立書の雛形を参考にしたい方は、「債務名義の執行文付与の申し立て」を参考にしてください。

債務名義の送達証明申請

債務名義に執行文が付与された後は、債務名義の送達証明申請をしますが、申請するにあたり債務者へ債務名義の謄本、または正本を郵送しなければなりません。

公正証書が債務名義の場合は、公正証書の作成時、公証人から債務者へ謄本が渡されれば、その時点で送達の証明が完了しますが、手数料として1650円の費用がかかります。

また、公正証書以外の債務名義に関しては、債務名義が作成された裁判所の担当書記官へ送達の申請を行い、その後、証明書を発行することで完了しますが、証明の申請する際には、申請書と同時に印紙代として150円を納めなければなりません。

申請書のフォーマットを参考にしたい方は、「債務名義の送達証明申請」を参考にしてください。

強制執行の申立て方法と全体の流れ

強制執行の申立の準備が整ったところで、強制執行の申立を行います。債権執行、不動産執行、動作執行、それぞれの申立方法について確認していきましょう。

債権執行の場合

まず債権執行における申立方法について確認していきますが、債務者の住所を管轄する裁判所へ債権差押命令申立書と共に、以下の書類を添付した上で申請をします。

  • ・当事者目緑

  • ・請求債権目録:債権者が債務者に対して有する債権の一覧

  • ・差押え債権目録:差押対象の債権

  • ・債務名義(執行文付与付き)

  • ・送達証明書

債権差押命令申立書、当時目録、請求債権目録の雛形に関しては、「債権執行」を参考にしてください。また、差押債権目録に関しては「債権執行に関する申立ての書式一覧表|裁判所」から参考にしていただけたらと思います。

申立後の流れ

申立が裁判所から認められた場合、差し押さえの対象とした債権における債務者(第三債務者)へ直接、弁済を受けることが可能です。債権差押命令が債務者、第三債務者の双方に郵送されますが、この段階で第三債務者は債務者へ弁済することができません。

また第三債務者は、預金債権の場合は銀行、給与債権の場合は債務者の雇い主である会社、売掛金債権、貸付金債権に関しては弁済の滞納者が該当します。

もし、第三債務者からの弁済額が債権額に到達しなかった場合、債権者は再び、債務者へ残りの債権額を請求することが可能です。

不動産執行の場合

不動産執行をする場合は、差し押さえの対象となる不動産を管轄する地方裁判所へ、不動産強制競売申立書と共に、以下の書類を添えて申立をします。

  • ・債務名義の正本

  • ・送達証明書

  • ・当事者目録

  • ・物件目録:差押対象の物件の情報

不動産強制競売申立書と、物件目録のテンプレートに関しては、「不動産執行」を参照にしてください。

申立後の流れ

裁判所から申請が認められた場合、行政から最低売却価格を算出するために不動産の調査が行われます。金額が算出された後、裁判所から競売の日程が指定されますが、落札された金額が債権者へ配当される仕組みです。
不動産執行は、落札が決まるまでに1年以上の歳月を要することと、もし対象の不動産が抵当にかけられていた場合など、他に債権者が存在した場合、債権額に応じて配当金が分配されるため、満額の債権額を回収できないかもしれません。

動産執行の場合

動産執行をするためには、債務者の住所を管轄とする地方裁判所に所属する執行官へ、執行文が付与された債務名義の正本を持って申立を行います。

申立書は執行官室にて用意されているため、後は申立書に指定の箇所へ記入した上で、印鑑を押すだけで手続きは完了です。

申立後の流れ

申立が完了した後は、裁判所が指定した執行業者が債務者の自宅へ、債務者の所有する財産の差押えを行います。債務者の必要最低限の先生活を保護するため、必要な家具や衣類などは差押えの対象から外れますが、現金についてはその場で受け取ることが可能です。

また、換金価値のある財産は、一度、競売にかけ、換金した上で配当されます。
 
参照:「強制執行の一連の流れと差押さえまでの手順の解説

強制執行にかかる費用

実際に、強制執行するためには裁判所へ申立の費用を納めなければなりません。

基本的な強制執行費用の項目

主に強制執行における申立費用として、予納金(執行業者費用)、収入印紙代、郵券切手代の3つに分けることができます。

予納金

まず予納金とは、裁判所が実際に債務者へ差押えをするにあたり要する、事務処理や執行業者にかかる経費を元に算出される費用であり、差押えの対象物によって金額が大きく分かれます。

収入印紙代

また、強制執行の申立時には、申立書に収入印紙を貼った上で申請を行いますが、収入印紙代とは申立に要する手数料だと思ってください。

郵券切手代

申立が行われた事実、強制執行が行われる事実は債務者へ知らせる義務がありますが、そういった事実を債務者へ知らせるために必要な郵便費用が郵券切手代です。

債権執行の場合

債権執行における、申立費用は、債務名義1通あたり収入印紙代が4000円、郵券切手代が3000円~5000円が相場です。債権執行においては、債権者が直接、第三債務者へ債権の弁済をするため、差押えの際の人件費がかからないため予納金を納める必要はありません。

そのため、不動産執行と動産執行と比べ、申立費用が低額です。

不動産執行の場合

債権執行と異なり、不動産執行では、収入印紙代が4000円、予納金60万円以上、登録免許税が確定請求債権額の4/1000を申立ての際に納めなければいけません。

不動産の調査から落札最低価格を算出しなければならないため、その分、予納金が高額になりますが、郵券代に関しては裁判所によって取り決めが異なりますが、不要な場合が多いです。

動産執行の場合

動産執行に関しては、不動産執行よりは低額ですが相場として収入印紙代が4000円、郵券切手代が3000円、予納金が3万円~5万円を裁判所へ納めます。動産執行において予納金が高額なのは、執行業者が実際に債務者の自宅へ差押さえをするためです。

そのため貴金属や骨董品のような換金手続きが要する財産が含まれている場合、債務者の自宅を施錠する必要がある場合、その分の人件費が割り増しされるため、予納金が高額になるでしょう。

申立費用を債務者へ請求するためには

以上のことから、強制執行における申立費用は馬鹿にならないことがわかりました。

そのため申立にかかった費用を債務者へ支払わせるために、申立の際に、強制執行において裁判所へ納めた申立費用を、請求債権目録へ記載しましょう(参照:「強制執行申立から差押えまでの流れ」)。

参照:「強制執行の費用と弁護士費用の相場|強制執行を行う手順まとめ

強制執行で債権回収を失敗しないために必要な知識

強制執行において最も、恐ろしいことが債権回収できない以上に、申立費用すら回収できないことです。不動産執行に動産執行は特に、申立費用が高額ですが差押えを実行した結果、差押えを行った結果、十分な回収ができなかった例は珍しくありません。

その債権、回収できるかもしれません!

差押えすれば、諦めていた債権を回収できる可能性があります。まずは差押えで債権回収に成功した事例や、弁護士の選び方を確認しましょう。

差押えで債権回収に成功した事例を見る

差押えによって債権回収しやすい財産

強制執行を失敗しないためにも、まずは、差し押さえが容易な財産について知る必要があります。

債務者へ納入した商品(法人の場合)

債務者が法人である場合は、債務者が保管している商品を差押えることが一般的ですが、債務者が売買契約における取引先の場合は、債務者へ納入した商品を差押さえすることは容易でしょう。

しかしながら、元々は債権者自身の商品であるため、債務者が商品の引き上げに同意しなかった場合に、納入した商品の差押さえを検討してください。

納入した商品を転売したことによる売掛金債権(法人の場合)

また、債務者が自社から仕入れた商品を他社へ転売することによって発生した売掛金債権は、債務者が所有する他の債権よりも容易に差押さえすることができます。

債務者の経営が傾いている場合、他の債権者もこぞって強制執行の申し立てをしますが、差し押さえする財産を他の債権者と均等に分配する例は珍しくありません。

自社から納入した商品をきっかけに発生した売掛金債権であれば、他の債権者よりも優先的に弁済を受けることができるため、効果的なのです(「動産売買先特許権による物上代位」)。

給与債権(個人の場合)

個人の債務者を対象としている場合、一番、給与債権は債権回収という観点から、差し押さえする上で確実性が高いでしょう。債務者が社会人であれば、給料が定期的に入ってくるため安定して回収ができる上に、勤務先の情報さえ掴んでおけば強制執行ができるからです。

実務上は、給料を支払う義務のある会社(雇い主)側から直接、弁済を受けることになります。

預金債権(個人の場合)

また、個人の債務者を対象に強制執行を申立てる際に、預金債権の差押えが用いられる場合が多いです。債務者が預金している銀行名と支店名がわかれば、差押えることができますが、お金を預けている銀行側から直接、弁済を受けることになります。

相手側の財産の調査

次に、強制執行を通して費用倒れしないために、債権回収をしたい相手側の財産を調査する必要があります。強制執行は差押えの対象となる財産を特定しなければならないので、より効果のある債権回収をするためにも差押えする価値のある財産を特定することが必要です。

第三債務者の調査

法人を相手に強制執行する際、債務者が保有する売掛金債権、貸付金債権などを差押えする例が多いと思いますが、その際に債権に対する第三債務者の弁済能力を調べる必要があります。

もし差押える債権が、債務者に対する債権と同等の債権額の場合でも、第三債務者に弁済能力がなければ、堂々巡りだからです。

第三債務者に弁済能力があるかどうか確認するためにも、債務者と第三債務者間の取引における売掛金帳簿などを元に、第三債務者の弁済能力を判断することをオススメします。

債権者の数

不動産を差押えすることで、高額な債権回収が期待できると思われるかもしれませんが、住宅ローンの残高が高額な場合、あまり高額な回収は期待できないでしょう。

住宅ローンが残っている場合、すでに銀行から不動産へ抵当にかけられているため、競売によって換金された配当金は債権額に応じて、銀行を含め全ての債権者へ配当されるためです。

不動産に限った話ではありませんが、債務者の財産を差押える際、債務者の財産に抵当がついているかどうか、他の債権者の存在について調べましょう。

専門家へ依頼する

とはいったものの債務者の財産を調べるのは容易なことではありません。例えばですが債務者の預金債権を差押えるためには、預金口座の番号まで調べなければならない上に、その預金口座にお金が入っていない可能性もあります。

債務者がどこに、どれくらいの資産を所有しているのかを調べるためには手間と時間を要しますが、弁護士など専門家に依頼するのも一つの手段です。弁護士費用は安くありませんが、強制執行の手続きを無駄にしないためにも、弁護士に依頼するのは効果的だと言えます。

財産開示請求

もし債務者の財産調査をした結果、財産の様子がわからなければ、財産開示請求という法的手段により債務者の財産を開示することができます。

すでに、財産調査を行ったこと、債務名義をすでに取得していることが、財産開示請求をする条件になりますが、債務名義の中でも、仮執行宣言付支払督促、仮執行宣言付判決、公正証書は対象外です。

また申立の際には、申請理由、債務者の財産調査をした事実を記述した申立書と共に、収入印紙代の2000円、予納郵便切手代の6000円を納めなければなりません。
参照:「裁判所|財産開示手続

仮差押さえによる財産の処分の禁止

差押えの対象が明確であるにも関わらず、債務者が強制執行前に財産を処分してしまったら元も子もありません。そこで仮差押さえという法的手段によって、債務者の財産の処分を防止することができます。

仮差押えは債務名義を取得している方は対象外であるため、まだ債務名義を取得していない方が対象です。

申立方法

申立するにあたり、仮差押えの対象となる財産の所在地を管轄する裁判所にて、債務者の財産、被保全債権(仮差押の対象となる債権)が記載された申請書、被保全債権の存在、仮差押の必要性を証明するための文書を添えて申請します。

申請の費用として、収入印紙代の3000円、予納郵券代(下記に表示)、資格証明書が1社あたり1000円、不動産全部事項証明書が1社あたり1000円、登録免許税として請求額の0.4%を納めなければいけません。
 
<予納郵券代金>

  • ・債権仮差押え:3000円

  • ・不動産仮差押え:2000円

  • ・不動産仮処分:1000円

もし強制執行をされた場合は強制執行の停止を検討

強制執行の申立方法について紹介しましたが、今度は逆に強制執行をされた場合、強制執行の停止する方法について紹介していきます。

強制執行停止とは|その目的

主に法人間における強制執行における強制執行停止の必要性について説明していきますが、まず最初に言えることとして、強制執行を受けることは経営上、死活問題だということです。

その理由の一つとして、経営上、資金調達を目的に利用した銀行の預金債権が、差押さえの対象となった場合、預金が凍結するため銀行から融資を受けることができません。

取引先の損失の回避

また、多くの場合、取引先との契約内容には、差押えを受けた場合、取引先との契約を解除する項目が含まれています。そのため、強制執行を申立てられることで、多くの取引先を失うと同時に、信頼を失いかねません。

そのため、もし強制執行を受ける法人の方は、強制執行停止の手続きをするべきでしょう。

強制執行停止の申立て手順

では実際に、強制執行停止の申立方法について順追って解説していきますが、手続きの流れは以下の通りです。

  1. ①強制執行への異議申立

  2. ②強制執行停止の申立

  3. ③立担保命令から担保金の供託

強制執行への異議申立

まず、強制執行に対する異議申立を行いますが、債務名義の種類によって申立先から申立方法が異なりますが、訴訟(少額訴訟)によって発行された債務名義(確定判決、仮執行宣言付判決)に関しては、抗告申立書を控訴裁判所へ申請することで異議申立を行います。

そして調停調書・公正証書が債務名義の場合は、相手側が執行手続きを申立てた執行裁判所へ異議申立をしますが、その際、申立書は裁判所から郵送されるか、または裁判所の窓口で入手することが可能です。

仮執行宣言付支払督促に関しては、相手側が支払督促の申立てをした際に、裁判所から2回、督促異議申立の機会が与えられますが、申立書を受けとってから2週間の期限が設けられているため、期限内に提出しましょう。

強制執行停止の申立

強制執行停止の申立は、異議申立を申請した裁判所と同じ裁判所へ申請します。また申請の際に必要な資料として強制執行停止申立書の正本・副本、疎明資料(強制執行停止するための理由)を添付した上で、印紙代の500円、郵券切手代の1082円を納めなければなりません。

申立書の書式を参考にしたい方は、「強制執行停止決定申立」を参考にしてください。

担保金の供託

強制執行停止の申立が正式に受理されたら、裁判所から立担保命令が発令される可能性があります。立担保命令とは、強制執行停止をすることによって相手側が受ける損失に備えた担保金を法務局へ供託するためのものです。

供託する際は、保証供託書と共に立担保命令を発令した裁判所を管轄する法務局へ、担保金を供託します。保証供託書の作成方法に関しては、「強制執行停止の保証供託書|法務省」を参考にしてください。また、強制執行停止に関して詳しくは下記の記事を参考にして頂けたらと思います。
 
【参照】
▶「強制執行停止の申立の手順と手続きにおける2つの注意点
▶「強制執行停止の申立方法と手順|弁護士に依頼するメリット

強制執行を円滑に行うために弁護士に相談すべき理由

強制執行の手続きをスムーズに済ませるためには、まずは弁護士に相談すべきでしょう。

強制執行を弁護士に依頼するメリット

財産の調査

先ほどの話から分かる通り、強制執行が上手くいくかどうかは債務者に寄るところが大きく、そのためには債務者の財産調査を調べることが必要です。しかしながら相手側の財産状況を把握することはなかなか難しいでしょう。

そのため財産の調査に慣れた弁護士などの専門家に任せた方が財産の調査も上手くいきます。

依頼主に合った執行手続きの提案

依頼主の状況、または相手側が保有する財産によって、どのような執行手続きを踏むべきか異なります。

弁護士に依頼するメリットとして、相手側の状況からどの法的手段によって債務名義を取得するべきか、そしてどの執行手続きを選択するべきなのかを、依頼主の目線に立ってより効果の高い方法を提案してもらえることです。

手続きの負担の軽減

強制執行の手続きをするにあたり、書類作成から提出書類の準備をしなければなりません。裁判所からの書類の確認は厳しいため、内容に過不足がないか、また書面を通して法的な妥当性を主張しなければなりませんが、書類作成だけにも手間と時間を要するでしょう。

弁護士に依頼すると、こういった裁判所への手続きに精通しているため書類作成から裁判所の手続きを任せることができます。

弁護士費用の相場

では強制執行を弁護士に依頼した場合、どれくらいの費用が必要なのでしょうか。

請求金額に応じて高額

実際のところ、弁護士費用は各事務所によって取り決めが異なるので一概には言えませんが、共通して債務者への請求金額に比例して高額になる傾向があります。

弁護士費用には、弁護士が依頼を受けた時点で発生する着手金(必ず支払う費用)と、実際に強制執行によって回収できた金額を元に算出される報酬金の二つに分けることができます。あくまで相場になりますが弁護士費用の概算として以下の料金表を参考にしてください。
 
<着手金>

  • ・請求金額300万円以下:4%~8%

  • ・請求金額300万円超、3000万円以下:2.5%~5%

  • ・請求金額3000万円超、3億円以下:1.5%~3%

  • ・請求金額3億円超:1%~2%

<報酬金>

  • ・回収金額300万円以下:4%~16%

  • ・回収金額300万円超、3000万円以下:2.5%~10%

  • ・回収金額3000万円超、3億円以下:1.5%~6%

  • ・回収金額3億円超:1%~4%

債権回収が得意な弁護士の選び方

強制執行を弁護士に依頼するのであれば、債権回収に特化した弁護士へ依頼するべきです。では、どのような基準で弁護士を選ぶべきでしょうか。

企業間における債権回収の実績

一つは、企業間における債権回収の訴訟経験が豊富な弁護士を選ぶことをオススメします。訴訟は債権回収の中でも、一番手間と時間のかかる法的手段であるため、強制執行における事務手続きになれているはずです。

弁護士との相性の良さ

依頼する弁護士との相性も弁護士を選ぶ上での大切な基準です。共に強制執行の手続きを進めるにあたり、弁護士は依頼主と同じ目線に立つ必要がありますが、互いの相性が悪ければ難しいでしょう。そのため、対面時やメール、電話における弁護士からの対応から、自分との相性を確認しましょう。

過去にトラブルを起こした弁護士かどうか

当たり前ですが、問題を起こす弁護士は避けるべきです。トラブルの多い弁護士の特徴として、不当な額の弁護士費用を請求してくる、依頼を受けたのにちゃんと仕事をしないなどがあげられます。

問題があると判断された弁護士は、弁護士会から懲戒を受けますが、「弁護士懲戒処分検索センター」から懲戒を受けた弁護士かどうか、依頼する前に確認してください。

弁護士を探すには?

弁護士を選ぶ基準について紹介しましたが、その基準に叶う弁護士を見つけるための方法について紹介していきます

弁護士事務所のホームページ

まずは、インターネットから債権回収分野に特化した弁護士事務所のホームページを調べてください。ご自分の生活の範囲内で依頼できそうな弁護士事務所をいくつかリストアップしたら、その中から実績のある弁護士事務所を見つけます。

実績のある弁護士事務所を選ぶ基準としては、ホームページに記載されている経歴、更新頻度の多さに目を付けるといいでしょう。

実績のある事務所であれば、宣伝文句として自身のホームページに実績が掲載されていることと、多数の案件を扱っている事務所であれば更新頻度が高くなるためです。

無料相談を有効に活用する

また、弁護士事務所によって初回で無料相談を設けているので、無料相談を活用しながら自身に合った弁護士を見つけることもオススメな方法です。相談する際のポイントとして、実績のある弁護士であれば、無理に法的手段による債権回収を勧めてこないでしょう。

優秀な弁護士であれば、なるべく交渉の段階で債務者との話をまとめてくるためです。
 
参照:「債権回収を弁護士に依頼するメリットと費用相場

まとめ

強制執行は法的手段の中でも相手の財産を差押えるため確実に債権回収ができると思われがちですが、相手側の財産状況によって未回収のまま終わるケースも珍しくありません。

より効果の高い強制執行をするために当記事を参考にしていただけたら幸いですが、まずは弁護士など専門家へ相談されることをオススメいたします。

強制執行で財産の差し押えをご検討中の人へ

強制執行し財産の差し押さえが成功すれば、滞納している債権を回収できるかもしれません。その分、タイミングなどが重要になります。財産の差し押さえ(強制執行)をご検討中の方はできるだけ早く弁護士にご相談ください。弁護士に依頼するメリットは以下の通りです。

 

  • 差し押さえのタイミングの検討
  • 差し押えの手続き・書類作成
  • 差し押え後の債権回収・手続き
  • 債務者との交渉 など

 

弁護士に依頼することで、最大限の金額を回収できる可能性があります。債債務者が破産・再生手続きを行う前に、弁護士にご相談ください。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。

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編集部

本記事はベンナビ債権回収(旧:債権回収弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ債権回収(旧:債権回収弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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