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債務名義の取得方法を徹底解説|差押えするために必要な知識とは

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梅澤 康二 弁護士
監修記事
債務名義の取得方法を徹底解説|差押えするために必要な知識とは

債務者の財産を差し押さえるためには裁判所で強制執行の申立てをする必要があり、そのためには債務名義が必要になります。債務名義とは、債権の存在、範囲を公的に証明した文書のことです。

差し押さえを検討する方の多くは、当事者間で契約書を作成していると思います。このような契約書は、合意内容を証明する文書ではありますが、権利内容を公的に証明する文書ではありません。そのため、契約書の権利に基づいて強制執行する場合には、別途債務名義を取得手続きが必要となります。

では債務名義を取得するためにはどうすればよいのでしょうか。

この記事では債務名義を取得する方法、債務名義の取得後に差し押さえをするために必要な手続きを紹介します。

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債務名義の取得方法

以下、各債務名義の取得方法についてまとめました。

通常訴訟

通常訴訟とは、賃金の返還、不動産の明け渡しなど民事間のトラブルを解決するための訴訟手続きです。当事者の提出した主張と証拠に基づいて裁判所が事実を認定し、権利義務関係の有無について判決を言い渡します。

判決は確定判決と仮執行宣言付判決に分けることができ、どちらも債務名義に含まれます。

  • 確定判決:上級裁判所によって取り消しできない=控訴できない状態の判決
  • 仮執行宣言付判決:上級裁判所へ控訴できるものの暫定的に執行可能な判決

通常訴訟の手続きの大まかな流れは以下のとおりになります。

手続きの流れ

  1. 相手方の管轄の裁判所へ申立て(▷必要書類について詳細はこちら)
  2. 法廷審理
  3. 期日の連絡
  4. 判決
※訴額が140万円以下の場合は簡易裁判所、140万円超の場合は地方裁判所へ申し立てます。

申立て~判決まで、約6ヶ月~1年の期間を要します。

関連記事:債権回収の民事訴訟を起こす上で抑えておきたい知識まとめ

少額訴訟

少額訴訟とは、60万円以下の金銭債権(金銭の給付を目的とする債権)を対象とした訴訟手続きです。通常訴訟と比べて手続きが簡易的かつ、短期間(約1ヶ月程度)で判決がくだされますが、被告から異議申立てをされると通常訴訟へ移行します。

手続きの大まかな流れは以下のとおりです。

手続きの流れ

  1. 相手方住所管轄の簡易裁判所へ申立て
  2. 期日の連絡
  3. 事前聴取
  4. 法廷審理
  5. 判決

関連記事:少額訴訟とは?手続きの流れや債権回収費用をわかりやすく解説

支払督促

支払督促とは、裁判所を介して債務者へ督促状を送る手続きです。督促に対して異議申立てがなければ債務名義を取得できます。

手続きの流れ

  1. 相手方住所管轄の簡易裁判所へ申立て
  2. 支払督促の発付の通知が送達
  3. 仮執行宣言の申立て(2の通知から2週間以内に債務者から異議申立てがない場合)
  4. 仮執行宣言付支払督促の送達
  5. 仮執行宣言付支払督促の確定(4から2週間以内に債務者から異議申立てがない場合)

申立時以外、裁判所へ出向く必要がないため手続きは簡易的かつ短期間(1ヶ月程度)で終えることができますが、『支払督促の発布の通知』または『仮執行宣言付支払督促』の送達から2週間以内に、債務者から異議申立てをされると通常訴訟へ移行します。

なお、仮執行宣言付支払督促は債務名義に含まれるため、仮執行宣言付支払督促が送達された段階で、暫定的に相手の資産を差し押さえる手続に移ることが可能です。

関連記事:支払督促とは|費用や流れ、申請書の書き方を解説

和解

上記の手続きの途中で、債務者と和解するケースは珍しくありません。和解に至った場合、裁判所書記官が和解の内容を記載した和解調書を作成します。

和解調書は債務名義に含まれるため、債務者が調書の内容に沿った弁済を怠った場合、差し押さえを申し立てることを検討しましょう。

民事調停

民事調停は、裁判所の仲介の元、話し合い、互いの合意により当事者間のトラブルを解決するための手続きです。

手続きの流れ

  1. 相手方の住所管轄の簡易裁判所へ申立て(▷申立所の書式・記載例はこちら、▷手数料についてはこちら)
  2. 当事者双方の呼び出し
  3. 調停期日
  4. 決定

参考:裁判所|民事調停

話し合いで合意に至ると、調停調書が作成されます。調停調書は債務名義に含まれるので、調書の内容に従って弁済できない場合は、差し押さえを検討しましょう。

即決和解

即決和解とは、すでに互いが調書の内容に合意していることを前提に、裁判所を介して和解調書を作成するための手続きです。和解調書は債務名義に含まれます。

手続きの流れ

  1. 相手方住所を管轄する簡易裁判所へ申立て (▷必要書類・手数料についてはこちら)
  2. 申立書の審査(内容を審査した上で必要があれば修正依頼が来る)
  3. 期日呼び出し(双方の合意が確認され、裁判所が妥当と認めたら和解調書が作成される)

※一連の手続きには、大体1ヶ月の期間を要します。

参考:「訴え提起前の和解手続の流れ

公正証書の作成

公正証書とは、公証人(公証事務を担う公務員)が作成する文書です。公正証書を作成するためには、まずは公証役場へ出向き、公証人に公正証書作成を申込み、所定の手続に従ってこれを作成することになります。

公正証書は執行受諾文言という特別な文言を付記すれば、単純な金銭債権については債務名義となります。

公正証書の作成の流れ

  1. 公証役場へ往訪
  2. 公証人と面接
  3. 公証人が原稿を作成
  4. 債務者・債権者が共に公証役場へ往訪(代理人を立てる場合は委任状が必要になる)
  5. 公正証書の作成

公正証書を作成する際には、債務者と債権者それぞれ以下の書類を持参する必要があります。

必要書類

  • 印鑑と印鑑証明書
  • 身分証明書(免許証、マイナンバーカード、パスポート、住基カードなど)と認印
  • 登記簿謄本または資格証明書と印鑑証明書(法人の場合)
  • 委任状(代理人を立てる場合)

参考:「公証役場一覧 | 日本公証人連合会

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あなたに合った債務名義を確認するためには?

債務名義の取得方法は多数あるので、どの方法で債務名義を取得すべきか判断に困るでしょう。以下でシチュエーション別に適した債務名義の取得方法をご紹介します。

話し合いに応じてもらえる場合

すでに話がまとまっている場合

債務者と支払い方法についてある程度、話がまとまっている場合、『即決和解』または『公正証書の作成』をおすすめします。費用を安く抑えたいのであれば『即決和解』、短期間で済ませたいのであれば『公正証書の作成』を検討しましょう。

《即決和解》

  • 対象:費用を安く抑えたい方
  • 期間:1ヶ月程度
  • 費用:2,635円

《公正証書の作成》

  • 対象:早く作成したい方
  • 期間:原稿が完成していればその日のうちに作成可能
  • 費用:5,000円~(▷詳細)※債権額に応じて手数料は変動します。

争点がある場合

話し合いには応じてもらえそうだが、当事者間で話し合いをまとめることが難しい場合は、民事調停を利用して債務名義を取得することをおすすめします。

すでに債務者が弁済に応じてもらえなかった場合

即決和解や公正証書の作成、民事調停は、債務者の合意があって成立するため、債務者が弁済に応じるつもりがなければ手続きは成立しません。そのため『すでに弁済の期日が過ぎているのに催促の連絡がつながらない』ような場合は、支払督促または少額訴訟を検討しましょう。

これらの手続きは相手側が異議申立てをすると通常訴訟へ移行しますが、通常訴訟と比べて短期間かつ費用がかからないため、まずは支払督促または少額訴訟を申し立てることが一般的です。

表:申立費用と手続きに要する期間(東京簡易裁判所の場合)

 

通常訴訟

少額訴訟

支払督促

手数料※1

1,000円~

1,000~6,000円

500円~

郵便切手代

5,625円

3,910円

1,230円※2

資格証明書

450円

登記簿謄本

600円

期間

約6ヶ月~1年

約1ヶ月

約1ヶ月

※1 手数料は訴額に応じて算出される
※2 当事者が1名増えるごとに1,100円加算される

支払督促を利用すべき場合

  • 債務者が多い場合
  • 裁判所へ出向く時間がない場合
  • 当事者間で争点がない場合(弁済が常識的に考えて当たり前である場合)

などの場合は支払督促を検討しましょう。

少額訴訟を検討すべき場合

  • 訴額が60万円以下である
  • 当事者間で争点がある場合(中には弁済が非常識と考える人がいる場合)

などの場合は、少額訴訟が適しています。

上記の方法で応じてもらえなかった場合

もし上記の方法を試しても効果がなかった場合やそもそも相手が争う姿勢を見せいているような場合は、通常訴訟への移行を検討しましょう。

そもそも契約書を作成していない場合

場合によっては当事者の間で契約書を作成されていないこともあるでしょう。この場合、契約書以外の証拠(メールなど)で合意の存在を立証していく必要がありますので、専門家の支援を受けたほうが適切かもしれません。

債務名義の取得後に債権回収するために必要なこと

債務者が債務名義の内容に従った弁済を怠った場合、差し押さえの申立てを検討しましょう。

債務名義に執行分を付与させる

差し押さえを申し立てるためには、まず、債務名義に執行文を付与してもらう必要があります。執行文とは、債務名義に強制執行(※)の申立てができることを公的に証明するための文書です。

なお、債務名義の中にはすでに執行力が付与されているものもあり、この場合は執行文付与の申立ては不要です。

執行文付与の申立てが必要な債務名義

執行文付与の申立てが不要な債務名義

  • (仮執行宣言付き)判決
  • 調停調書
  • 和解調書
  • 公正証書
  • 仮執行宣言付支払督促
  • 少額訴訟判決

申立方法【(仮執行宣言付)判決、調停調書、和解調書の場合】

執行文を付与させるためには、債務名義を取得した裁判所で執行文付与の申立てを行います。

《必要書類と費用》

  • 申立書
  • 債務名義の正本
  • 手数料:300円

参考:「裁判所|執行文付与

申立方法【公正証書の場合】

公正証書へ執行文を付与させるためには、証書を作成した公証人へ執行文の作成を依頼します。執行文の作成には以下の費用、手数料が必要です。

《必要書類と費用》

  • 公正証書の正本
  • 戸籍謄本または住民票
  • 免許書
  • 印鑑
  • 印鑑証明書
  • 手数料:1,700円

強制執行

債務者の財産を差し押さえるためには、裁判所を介して強制執行を申し立てる必要があります。差し押さえる財産によって手続きの内容が異なる上に、全額分回収できるとは限りません。

そのため債務者の財産を事前に調査する必要があります。手続きの内容や、費用倒れしないために申立前に注意すべき点について詳しくは以下の記事を参考にしてください。

関連記事:「強制執行(差押え)に必要な手続きの流れと費用倒れを防ぐ事前知識

※強制執行

債務者へ裁判所を介して強制的に取り立てる手続き

まとめ

この記事では債務名義について詳しくまとめました。差し押さえを申し立てる上で参考にしていただければ幸いです。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。

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編集部

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