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債務者の財産を差し押さえるためには裁判所で強制執行の申立てをする必要があり、そのためには債務名義が必要になります。債務名義とは、債権の存在、範囲を公的に証明した文書のことです。
差し押さえを検討する方の多くは、当事者間で契約書を作成していると思います。このような契約書は、合意内容を証明する文書ではありますが、権利内容を公的に証明する文書ではありません。そのため、契約書の権利に基づいて強制執行する場合には、別途債務名義を取得手続きが必要となります。
では債務名義を取得するためにはどうすればよいのでしょうか。
この記事では債務名義を取得する方法、債務名義の取得後に差し押さえをするために必要な手続きを紹介します。
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以下、各債務名義の取得方法についてまとめました。
通常訴訟とは、賃金の返還、不動産の明け渡しなど民事間のトラブルを解決するための訴訟手続きです。当事者の提出した主張と証拠に基づいて裁判所が事実を認定し、権利義務関係の有無について判決を言い渡します。
判決は確定判決と仮執行宣言付判決に分けることができ、どちらも債務名義に含まれます。
通常訴訟の手続きの大まかな流れは以下のとおりになります。
申立て~判決まで、約6ヶ月~1年の期間を要します。
関連記事:債権回収の民事訴訟を起こす上で抑えておきたい知識まとめ
少額訴訟とは、60万円以下の金銭債権(金銭の給付を目的とする債権)を対象とした訴訟手続きです。通常訴訟と比べて手続きが簡易的かつ、短期間(約1ヶ月程度)で判決がくだされますが、被告から異議申立てをされると通常訴訟へ移行します。
手続きの大まかな流れは以下のとおりです。
関連記事:少額訴訟とは?手続きの流れや債権回収費用をわかりやすく解説
支払督促とは、裁判所を介して債務者へ督促状を送る手続きです。督促に対して異議申立てがなければ債務名義を取得できます。
申立時以外、裁判所へ出向く必要がないため手続きは簡易的かつ短期間(1ヶ月程度)で終えることができますが、『支払督促の発布の通知』または『仮執行宣言付支払督促』の送達から2週間以内に、債務者から異議申立てをされると通常訴訟へ移行します。
なお、仮執行宣言付支払督促は債務名義に含まれるため、仮執行宣言付支払督促が送達された段階で、暫定的に相手の資産を差し押さえる手続に移ることが可能です。
上記の手続きの途中で、債務者と和解するケースは珍しくありません。和解に至った場合、裁判所書記官が和解の内容を記載した和解調書を作成します。
和解調書は債務名義に含まれるため、債務者が調書の内容に沿った弁済を怠った場合、差し押さえを申し立てることを検討しましょう。
民事調停は、裁判所の仲介の元、話し合い、互いの合意により当事者間のトラブルを解決するための手続きです。
参考:裁判所|民事調停
話し合いで合意に至ると、調停調書が作成されます。調停調書は債務名義に含まれるので、調書の内容に従って弁済できない場合は、差し押さえを検討しましょう。
即決和解とは、すでに互いが調書の内容に合意していることを前提に、裁判所を介して和解調書を作成するための手続きです。和解調書は債務名義に含まれます。
※一連の手続きには、大体1ヶ月の期間を要します。
参考:「訴え提起前の和解手続の流れ」
公正証書とは、公証人(公証事務を担う公務員)が作成する文書です。公正証書を作成するためには、まずは公証役場へ出向き、公証人に公正証書作成を申込み、所定の手続に従ってこれを作成することになります。
公正証書は執行受諾文言という特別な文言を付記すれば、単純な金銭債権については債務名義となります。
公正証書を作成する際には、債務者と債権者それぞれ以下の書類を持参する必要があります。
参考:「公証役場一覧 | 日本公証人連合会」
差押えすれば、諦めていた債権を回収できる可能性があります。まずは差押えで債権回収に成功した事例や、弁護士の選び方を確認しましょう。
債務名義の取得方法は多数あるので、どの方法で債務名義を取得すべきか判断に困るでしょう。以下でシチュエーション別に適した債務名義の取得方法をご紹介します。
債務者と支払い方法についてある程度、話がまとまっている場合、『即決和解』または『公正証書の作成』をおすすめします。費用を安く抑えたいのであれば『即決和解』、短期間で済ませたいのであれば『公正証書の作成』を検討しましょう。
《即決和解》
《公正証書の作成》
話し合いには応じてもらえそうだが、当事者間で話し合いをまとめることが難しい場合は、民事調停を利用して債務名義を取得することをおすすめします。
即決和解や公正証書の作成、民事調停は、債務者の合意があって成立するため、債務者が弁済に応じるつもりがなければ手続きは成立しません。そのため『すでに弁済の期日が過ぎているのに催促の連絡がつながらない』ような場合は、支払督促または少額訴訟を検討しましょう。
これらの手続きは相手側が異議申立てをすると通常訴訟へ移行しますが、通常訴訟と比べて短期間かつ費用がかからないため、まずは支払督促または少額訴訟を申し立てることが一般的です。
表:申立費用と手続きに要する期間(東京簡易裁判所の場合)
通常訴訟 |
少額訴訟 |
支払督促 |
|
手数料※1 |
1,000円~ |
1,000~6,000円 |
500円~ |
5,625円 |
3,910円 |
1,230円※2 |
|
450円 |
|||
登記簿謄本 |
600円 |
||
期間 |
約6ヶ月~1年 |
約1ヶ月 |
約1ヶ月 |
などの場合は支払督促を検討しましょう。
などの場合は、少額訴訟が適しています。
もし上記の方法を試しても効果がなかった場合やそもそも相手が争う姿勢を見せいているような場合は、通常訴訟への移行を検討しましょう。
場合によっては当事者の間で契約書を作成されていないこともあるでしょう。この場合、契約書以外の証拠(メールなど)で合意の存在を立証していく必要がありますので、専門家の支援を受けたほうが適切かもしれません。
債務者が債務名義の内容に従った弁済を怠った場合、差し押さえの申立てを検討しましょう。
差し押さえを申し立てるためには、まず、債務名義に執行文を付与してもらう必要があります。執行文とは、債務名義に強制執行(※)の申立てができることを公的に証明するための文書です。
なお、債務名義の中にはすでに執行力が付与されているものもあり、この場合は執行文付与の申立ては不要です。
執行文付与の申立てが必要な債務名義 |
執行文付与の申立てが不要な債務名義 |
|
|
執行文を付与させるためには、債務名義を取得した裁判所で執行文付与の申立てを行います。
《必要書類と費用》
参考:「裁判所|執行文付与」
公正証書へ執行文を付与させるためには、証書を作成した公証人へ執行文の作成を依頼します。執行文の作成には以下の費用、手数料が必要です。
《必要書類と費用》
債務者の財産を差し押さえるためには、裁判所を介して強制執行を申し立てる必要があります。差し押さえる財産によって手続きの内容が異なる上に、全額分回収できるとは限りません。
そのため債務者の財産を事前に調査する必要があります。手続きの内容や、費用倒れしないために申立前に注意すべき点について詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事:「強制執行(差押え)に必要な手続きの流れと費用倒れを防ぐ事前知識」
※強制執行 |
債務者へ裁判所を介して強制的に取り立てる手続き |
この記事では債務名義について詳しくまとめました。差し押さえを申し立てる上で参考にしていただければ幸いです。
債権回収を弁護士に依頼することで主に以下のようなメリットがあります。
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