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売掛金などの債権を長期間回収できずにいると、「長期滞留債権」として企業経営に大きな影響を及ぼす可能性があります。
そのため、長期滞留債権はできるだけ早く回収するほか、そもそも未回収の債権を発生させない対策をすることも大切です。
本記事では、「長期滞留債権」とは何かや回収方法、再発防止策について詳しく解説します。
滞留債権・長期未収入金・不良債権などとの違いを理解し、効果的な回収手段や再発防止のための対策を講じましょう。
本記事を参考に、健全な経営を目指すヒントにしてください。
なお、すでに滞留債権が長期化して困っている企業の方は、本記事を参考に迅速に弁護士に相談するのがおすすめです。
「滞留債権」とは、法律上の定義はありませんが、期日までに回収できていない債権のことです。
支払い期日を過ぎても取引先などの相手方から入金がない債権を指します。
滞留債権は、基本的に「支払いは遅れているものの、将来的には回収が見込まれる債権」を意味します。
回収の見込みがなくなった債権は「不良債権」と呼び、取引先の倒産などで回収できなくなった場合などがこれにあたります。
債権の名称 |
期間の目安 |
---|---|
滞留債権 |
支払い期日〜6ヵ月後 |
長期滞留債権 |
支払い期日の6ヵ月〜1年後 |
長期未収入金 |
支払い期日の1年後〜 |
「長期滞留債権」は滞留債権のなかでも支払いの遅れが長期間にわたるもので、一般的には支払い期日から6ヵ月を超えても支払われていないものが該当します。
支払期日から1年以上回収されていない滞留債権については、会計上のルールとして「長期未収入金」という勘定科目で計上されることになります。
滞留債権が発生する原因は、以下のようにさまざまです。
滞留債権を放置して長期滞留債権となると、さまざまなビジネスリスクが発生します。
できる限り原因を追求し、適切な対応を検討し、回収に努めましょう。
ここからは、長期滞留債権を放っておくことで生じる企業経営上のリスクについて説明します。
長期滞留債権は時効を迎えることによって消滅する恐れがあります。
債権には消滅時効があり、一定期間を超過すると未回収債権は回収することができなくなってしまうのです。
債権の時効は、民法改正で大幅に変更されており、2020年4月以降に発生した滞留債権であれば、次のいずれか早いほうが適用されます。
企業間の契約では、契約中に支払時期を定めることも多く、そのような場合は当該支払時期から5年で時効となります。
なお、入金の督促など、時効の完成を猶予させる方法もあります。
時効の完成を猶予させるには、弁護士に相談することをおすすめします。
長期滞留債権は、黒字倒産につながってしまう要因にもなりえます。
本来、自社に入ってくるべきお金が入金されないということは、それだけ資金繰りが苦しくなるということです。
多くの預金がある企業であれば問題ないかもしれませんが、キャッシュフローの悪化は免れません。
自社としても固定費など毎月支払わなければならないコストがあるため、長い間入金されないお金があると、支払いが困難になる可能性もあるでしょう。
長期滞留債権は回収が見込めている債権である以上、帳簿上は黒字となっているかもしれません。
しかし、実際に手元には入金されていないので、その状態が続くといずれ倒産に至ってしまう可能性もあります。
これを黒字倒産と呼びます。
長期滞留債権の金額が大きいほど、大きな黒字倒産のリスクを抱えているといえるでしょう。
自社はきちんと商品やサービスを納品し、入金を待っている側であるにも関わらず、長期滞留債権を回収できないと、自社の社会的信用が低下する恐れがあります。
とくに、銀行などの金融機関から借入をしようとしても、応じてもらえなくなるリスクが高いといえます。
なぜなら、債権回収の能力が低く管理がずさんな企業であると見なされるほか、取引先の質が悪い企業だという印象を与えてしまうからです。
取引先の質が悪いと今後も回収が難しくなるため、お金を貸しても返済されるかどうか疑わしいと判断される可能性があります。
なかでも、長期滞留債権を回収することが難しいと判断し、貸倒損失として計上した場合は、その分の利益は見込めないことから、新規の借入はより難しくなるでしょう。
長期滞留債権を回収する手段として、主に次の4つがあります。
それぞれメリットとデメリットがあるため、弁護士などの専門家に相談しながら適した方法を選ぶことが大切です。
長期滞留債権を回収するには、まずは電話をかけたり直接会ったりと、取引先に接触することで回収を試みましょう。
滞留債権が長期化しているということは、すでに電話や対面による依頼はおこなっているかもしれませんが、相手が誠実に対応しようとしている限りは、なるべく直接の支払依頼がおすすめです。
直接連絡が取れる場合は、支払期限を少し延長したり、新たに支払を誓約する債務確認書を作成したりと、約束を取り付けましょう。
なるべく電話や対面での交渉をおすすめする理由は、取引先との関係悪化を防ぐためです。
長期的に支払いを滞らせている相手だからといって強硬な回収をおこなおうとすると、取引先との関係悪化だけでなく、取引先のグループ会社や関係企業などにも話が漏れて印象を悪くしてしまいかねません。
とはいえ、滞留債権が長期化するほどの事態であるからには、取引先との関係値ばかり気にしていられないこともあるでしょう。
相手方と連絡が取れない場合や、連絡を取ってもうやむやにされてしまう場合などは弁護士に依頼し、督促してもらうことも検討してよいでしょう。
弁護士からメールなどで連絡をするだけでもすぐに支払いがなされるということは珍しくありません。
電話や対面の回収よりも効果が高いのが内容証明郵便での督促です。
内容証明郵便は、長期滞留債権だけでなく、そのほかの債権回収方法としても広く活用されています。
内容証明郵便とは、郵便局が差出日時・差出人・受取人・内容を証明してくれる郵便物です。
内容証明郵便そのものに法的な拘束力があるわけではありませんが、訴訟などに移行したときに証拠として使うことができます。
そのため、取引先も「もしかすると訴訟を考えられているかもしれない」と懸念し、内容証明郵便が送られてきた時点で支払いに応じることがあるのです。
内容証明郵便に記載するのは、債権の金額・遅延損害金の額・支払期限・振込口座などです。
「期限内に支払いがなければ法的措置を講じる」という一文を加えることでより支払い確度を高めることもできます。
また、内容証明郵便などを利用して催促すると、催告の時から消滅時効の完成が6ヵ月猶予されることから、消滅時効が迫っている場合は、とくに内容証明郵便の活用をおすすめします。
直接交渉や内容証明郵便の送付によっても支払いがなされないときは、訴訟などの法的手続きをおこなうほかないでしょう。
以下では、長期滞留債権の回収に活用できる法的手続きを紹介します。
支払督促とは、電話や面会による交渉や内容証明郵便の送付で支払いを受けられない場合に、簡易裁判所に申し立てをすることによって、裁判所から債務者に対し支払いを督促してもらう手続きです。
支払督促手続きは、書類審査のみでおこなわれるため、訴訟のように裁判所に出向いたり証拠を提出したりする必要がなく、利用者にとって手間が少ないというメリットがあります。
また、支払督促をするにあたって裁判所に支払う手数料は訴訟をする場合の半分で済みます。
たとえば、100万円の支払いを求める場合、民事訴訟をするには手数料が1万円かかりますが、支払督促なら5,000円です。
取引先が滞納している金額によっては手数料も大きくなるため、支払督促で解決できれば、経済的な負担は少なく済むでしょう。
支払督促が仮執行宣言を付して発付されると、債務者が異議を申し立てない限り強制執行をすることができます。
強制執行によって債務者の財産を差し押さえ、そのなかから長期滞留債権を回収できるのです。
ただし、支払督促に異議が申し立てられると、支払督促の効力は失われ、通常訴訟に移行します。
支払督促の手続き自体は迅速におこなえますが、通常訴訟に移行すれば当初から訴訟を選択するよりも費用や時間がかかってしまう点に注意しましょう。
異議申し立てのリスクや、通常訴訟に移行した際の費用と時間の増加も考慮しながら、利用を検討してください。
どちらの方法が良いかも含め、一度弁護士に相談してみるのもよいでしょう。
民事調停手続きも、債権回収に有効な方法のひとつです。
民事調停は、裁判所において当事者間の話し合いを実施して解決を図る制度です。
話し合いは、第三者である調停委員が間に入っておこなわれます。
また、調停は法廷ではなく調停室にて非公開でおこなわれ、調停主任や調停委員には守秘義務が課せられているため、案件に関する情報が漏洩することはありませんので、安心して応じましょう。
調停委員が仲介することで当事者が冷静になり、取引先が弁済に応じることは少なくありません。
債務者が支払う意思を少しでも有している場合であれば、柔軟な解決方法を見つけられるでしょう。
民事調停が成立すると、合意内容についての調停調書が作成されます。
これは、裁判の判決と同様の法的効力を持ちます。
つまり、取引先が約束を守らなければ財産を差し押さえるなどの強制執行も可能になるのです。
なお、民事調停をおこなうと時効の進行もストップすることができます。
手続きが終わるまで消滅時効の完成が猶予され、調停が成立すれば時効が当初よりも長い10年に延びるという大きなメリットがあります。
民事調停にかかる費用は訴訟よりも安価で、訴訟よりも早く終了する傾向にあります。
多くのケースで調停は2~3回で、6ヵ月以内に終わることが多いです。
60万円以下の金銭の支払いを求める場合であれば、少額訴訟を起こすことも可能です。
少額訴訟は簡易裁判所に申し立てます。
原則1回の審理で完了し、即日で判決が言い渡されるため、迅速な解決が期待できます。
ただし、相手側が通常訴訟に移行すると申述した場合または民事訴訟法第373条第3項所定の事由がある場合には、通常訴訟に移行することになります。
また、少額訴訟の判決に対して異議が申し立てられると、通常訴訟として再度審理がおこなわれることになります。
長期滞留債権の請求額が60万円を超える場合は、はじめから通常訴訟を提起することになります。
通常訴訟では、そもそも滞留債権が存在していることや、債権の金額などについて裁判所を介して解決策を模索します。
裁判の判決には執行力があるため、裁判所が取引先に対して支払いを命じれば、取引先は応じなければなりません。
裁判所が公開しているデータによると、滞留債権に関する通常訴訟にかかる期間は、多くの場合で9ヵ月程度です。
何度も裁判所に行かなければならないのかと考える方もいますが、弁護士に依頼すればほとんど出頭することなく終えられます。
多くの場合、2〜3回程度で裁判は終了しますが、取引先が争わないケースや相手方の主張に理由がないケースなど1回目の裁判で判決が出ることもあるでしょう。
また、一括ではなく分割での支払いなど、取引先の状況を踏まえた案を受け入れることで、裁判上の和解が成立することもあり、早期に解決できることも少なくありません。
裁判所の判決で債務が確定し、支払いの指示があるにも関わらず相手が支払わない場合は、財産を差し押さえて債権を回収する強制執行手続きをすることができます。
いくら判決が出たからといって、自力で相手の財産を売却することは違法です。
法律に基づく強制執行手続きを取り、正当に財産を処分することによって滞留債権を回収しましょう。
財産を差し押さえるには、まず相手の財産を特定しなければなりません。
相手の財産状況がわからない場合、弁護士に依頼して調査をしてもらう工程が必要です。
財産が判明したら、裁判所に「債務名義」の執行文を付与してもらい、強制執行を申し立てます。
「債務名義」とは、確定判決書・和解調書・調停調書・公正証書などのことをいいます。
契約書だけでは強制執行はできないため、先に裁判や支払督促などの手順を踏まえましょう。
書類に不備がなければ、差押命令が発令され、回収を実行できるようになります。
ビジネスをしている以上、滞留債権が発生するリスクは常にあるものです。
しかし、滞留債権をなるべく長期化させず、たとえ遅滞があっても迅速に支払いをしてもらえるよう、日ごろから対策しておくことが大切です。
そのためにできる取り組みを3つ紹介します。
取引先が増えることは事業の成長につながるため、非常に喜ばしいことです。
しかし、取引先が増えると債権管理が疎かになりがちなのも事実です。
とくに、少額の売掛金は見逃されやすいため、少額が積もって大きな滞留債権額を生み出してしまうケースもあります。
どの取引先にどれくらいの債権があるのかを、しっかりと把握することは長期滞留債権を発生させないための基本です。
取引先への請求や滞留債権への対応が遅くなってしまわないよう、新たな管理システムの導入や経理業務の人員強化など、滞留債権を確実に回収するための対策をしましょう。
滞留債権の発生を防ぐには、定期的な売掛金の回収状況のチェックも欠かせません。
売掛金の回収状況の確認作業は、ひとりではなく複数名の担当者を配置して実施するのが望ましいでしょう。
詐欺でない限り、初めから支払わないつもりで契約する取引先はほとんどありません。
決まった期間に確実に請求し、少しでも遅れている取引先があればきちんと連絡をするなど、確実に支払いをもらうことを続けましょう。
それによって、滞留債権が長期化して長期滞留債権となることを防げます。
売掛金元帳や回収状況の定期チェックなどをしていたとしても、滞留債権を100%防ぐのは困難でしょう。
もし滞留債権が発生したら、まずは迅速に催促や督促をおこなうのが重要です。
長期滞留債権を発生させないよう、回収業務を怠らず、売掛金回収をはじめましょう。
自社の経営を守るためには、早期対応が重要です。
長期滞留債権の回収は、弁護士に依頼するのがおすすめです。
ここでは、弁護士に依頼するメリットについて紹介します。
弁護士に債権回収を依頼すれば、自社で回収に努めるよりも回収率があがるでしょう。
長期滞留債権となってしまっている以上、すでに何度も督促をしていることも考えられます。
これ以上自社で働きかけても、支払ってもらえる可能性は高くないはずです。
弁護士から催促すれば、相手は支払いを拒否できない状況になります。
何度も催促しているのに一向に支払ってくれなかった取引先であっても、弁護士が介入して交渉することで、スムーズに回収できるケースは少なくありません。
取引先も裁判や強制執行をされることは避けたいはずです。
そのため、弁護士からの督促があれば早い段階で支払いに応じてくれるでしょう。
それでも支払いをしない取引先に対しても、弁護士に依頼すれば、適切なタイミングで適切な法的措置を選択できます。
債権回収の方法や法的措置にはさまざまな種類があり、実行するために必要な書類や金額はそれぞれ異なります。
状況に合わせて最適な方法を選択できる点も、弁護士に依頼する大きなメリットです。
状況によっては、裁判をしても敗訴してしまうケースや、勝訴しても1円も回収できないケースもあります。
全額回収を目指すためにも、自社だけで判断するのは避けるべきです。
弁護士に相談し、取引先や自社の状況をしっかり把握してもらったうえで、どのような債権回収が適しているのか、判断してもらうのがよいでしょう。
滞留債権には時効があります。
すでに長期滞留債権になってしまっている場合、より迅速に解決に向けて動き出すことが大切です。
しかし、訴訟を提起するのはもちろん、自社で催告書を作成したり、郵送したりするだけでも大きな手間がかかります。
債権回収の期間としてインターネット上で公開されている情報は、基本的に弁護士に債権回収を依頼した場合の期間です。
そのため、自社で債権回収をおこなうと想像以上の期間がかかってしまうケースが少なくありません。
弁護士に依頼すれば、スムーズに適切な手段を講じてくれるため早期解決が見込めるでしょう。
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地域はもちろん、無料相談を受け付けている法律事務所など、法律事務所の特徴から検索可能です。
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ここからは、長期滞留債権に関して、よくある質問に答えます。
滞留債権は、あくまでも回収が遅れていると判断されている債権のことを指します。
つまり、回収の見込みがあるということです。
一方で、不良債権は回収が困難となり回収が見込めないであろう債権のことをいいます。
滞留債権が長期化し、長期滞留債権になったとしても、取引先が倒産していないなどの状況であれば回収が困難であるとは限りません。
回収できていない期間が1年を超えたとしても、回収が見込める場合は勘定科目を「長期未収入金」としますが、滞留債権が回収不能になったと判断すべき場合は、債権を「貸倒損失」という勘定科目にして処理をします。
滞留債権が長期滞留債権となり、最終的に不良債権となると、税務上は損益計算書の「販売費および一般管理費」に「貸倒損失」として計上することになります。
長期滞留債権を貸倒損失として計上するには、以下3つのいずれかの状況であることが要件です。
税務上、貸倒損失として損金算入すると、法人税負担を軽減できます。
法人税を計算するときの収益の金額から損金を引いた差額にのみ、法人税が課税されるため、損金が大きいほど課税対象額は小さくなるのです。
ただし、貸倒損失を計上することは会社の社会的信用度を下げるリスクもあるので注意しましょう。
長期滞留債権の回収は、すでに長期化している点で迅速な回収をおこなうことが大切です。
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