消滅時効の期間は、債権の種類によって異なります。
そこで、主な債権とその消滅時効の期間について表にまとめました。
| 債権の種類 | 時効の期間 |
|---|---|
| 一般債権 (民法第166条) |
・知ったときから5年 ・行使できるときから10年 |
| 給与・残業代 (労働基準法第115条) |
・行使できるときから3年 |
| 損害賠償金 (民法第724条) |
・知ったときから3年 ・不法行為のときから20年 |
| 損害賠償金(生命・身体に関するもの) (民法第724条、第724条の2) |
・知ったときから5年 ・不法行為のときから20年 |
| 保険金 (保険法第95条) |
・行使できるときから3年 |
| 年金 (国民年金法第102条1項など) |
・権利が発生してから5年 |
さらに本記事では、債権を有している方に向けて、以下の内容について説明します。
- 債権の消滅時効に関する基礎知識
- 主な債権の種類とそれぞれの消滅時効期間
- 債権が時効にかかりそうなときに取るべき対処法
- 債権回収・時効対策について弁護士に相談するメリット など
本記事で債権の時効について確認し、今すぐ何をすべきか把握できるようになりましょう。
債権は消滅時効によって回収できなくなる可能性がある!
債権の消滅時効とは、一定期間権利を行使しない場合に債権の請求権を消滅させる制度です。
(債権等の消滅時効)
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。
3 前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。
引用元:民法 | e-Gov 法令検索
長期間にわたって行使されない債権は、法律的に不安定な状態にあるといえます。
そこで時効によってその債権を消滅させ、債務者を保護するための制度となっています。
債権者については「権利の上に眠る者は保護しない」という格言が使われることも多いでしょう。
主な債権の種類とそれぞれの消滅時効期間
債権の消滅時効は、民法やそのほかの法律によって定められています。
ここでは、売掛金・労働債権・損害賠償金の消滅時効の期間についてそれぞれ説明します。
1.売掛金など一般的な債権の時効期間
一般的な債権の時効期間は、以下のとおりです(民法第166条)。
- 権利を行使することができることを知ったときから5年
- 権利を行使することができるときから10年
一般的な債権には、売掛金・家賃・地代などが該当します。
民法やその他の法律で時効が規定されていない場合は、このルールに従う必要があるでしょう。
2.給料・残業代など労働債権の時効期間
給料・残業代などの労働債権の時効は、労働基準法で定められています。
(時効)
第百十五条 この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
第百四十三条
(中略)
③ 第百十五条の規定の適用については、当分の間、同条中「賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間」とあるのは、「退職手当の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)の請求権はこれを行使することができる時から三年間」とする。
給料や残業代の本来の時効は5年ですが、現在は経過措置期間のため「3年」となっています。
なお、退職金の時効期間は「5年」となっているため、給料などとは異なるため注意しましょう。
3.不法行為に基づく損害賠償債権の時効期間
不法行為に基づく損害賠償債権の時効は、民法によって定められています。
(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。
(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条の二 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。
引用元:民法 | e-Gov 法令検索
不法行為に基づく損害賠償債権は、原則知ったときから3年、不法行為のときから20年です。
ただし、生命・身体を害する不法行為の場合には、知ったときから「5年」へと延長されます。
このことから「不法行為の損害賠償金の時効は3年・5年・20年」と説明されることも多いです。
債権が時効にかかりそうなときに取るべき3つの対処法
債権が時効にかかりそうなときは、以下のような対応を取ることをおすすめします。
- 内容証明郵便を使って催告する
- 債務者に債務の承認をしてもらう
- 支払督促や訴訟などの法的措置を取る
ここでは、債権が時効にかかりそうなときに債権者側が取るべき対応について説明します。
1.内容証明郵便を使って催告する
まずは、内容証明郵便を使って債務者に催告しましょう。
(催告による時効の完成猶予)
第百五十条 催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。
引用元:民法 | e-Gov 法令検索
催告には「時効の完成猶予」といって、6ヵ月間時効の進行を止める効果があります。
あくまで進行を止めるだけで、時効期間そのものがリセットされるわけではありませんが、この間に交渉や法的手続きの準備をすることが可能です。
内容証明郵便の役割や書き方などについては、以下のページで確認できます。
2.債務者に債務の承認をしてもらう
話し合いができる場合は、債務者と交渉するのもひとつの方法です。
債務者から債務について承認を得られれば、時効を更新(リセット)することができます。
(承認による時効の更新)
第百五十二条 時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。
2 前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。
引用元:民法 | e-Gov 法令検索
承認については、合意書・念書などの作成だけでなく、一部を弁済してもらう方法でも可能です。
「少しでいいから払ってほしい」と交渉することも時効対策としてはおすすめの方法といえます。
3.支払督促や訴訟などの法的措置を取る
債務者との交渉が難しい場合は、以下のような法的手続きに移行するのがおすすめです。
- 支払督促:裁判所書記官に金銭の支払いを命じてもらう手続きのこと
- 少額訴訟:裁判所の1回の期日で審理を終える簡易的な手続きのこと
- 民事調停:裁判所の調停委員を介して債務者と話し合う手続きのこと
- 訴訟:裁判所に訴えを起こして、裁判官から判決を得る手続きのこと
このような手続きによって、和解や勝訴判決などを得られれば時効を更新することができます。
(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)
第百四十七条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 裁判上の請求
二 支払督促
三 民事訴訟法第二百七十五条第一項の和解又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)による調停
四 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加
2 前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。
引用元:民法 | e-Gov 法令検索
債務者が支払いを拒絶しているような場合には、法的措置も候補に入れつつ対処しましょう。
債権が時効にかかりそうなときは弁護士に相談するのもおすすめ
債権が時効にかかりそうなときは、債権回収が得意な弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。
債権回収・時効対策について弁護士に相談・依頼するメリットには以下のようなものがあります。
- いつ時効が成立するのかを判断してもらえる
- 具体的にどのように回収するか教えてもらえる
- 内容証明郵便をすぐに送付して時効の進行を止めてくれる
- 債務者との交渉や法的手続き(訴訟など)について任せられる など
債権が時効にかかりそうなときは、債務者は時効成立を目指して対応してくる可能性もあります。
早めに弁護士に相談・依頼して、できる限り債権を回収できるように動くほうが望ましいでしょう。
債権の時効に関するよくある質問
さいごに、債権の時効に関するよくある質問に回答します。
Q.債権の消滅時効の起算点はいつなのか?
消滅時効の起算点には、主観的なものと客観的なものがあります。
- 主観的起算点:債権者が権利を行使できるのを知ったときから
- 客観的起算点:債権が発生し、権利を行使することができるときから
条文にも「知ったときから○年」「行使できるときから○年」などと規定されています。
Q.時効の完成猶予と更新はどのような制度なのか?
時効の完成猶予と更新は、それぞれ債権者のための重要な制度です。
- 時効の完成猶予:時効の完成をストップさせる制度のこと
- 時効の更新:時効をリセットさせて、新しく時効をカウントする制度のこと
時効の完成猶予には、債務者への催告や法的手続きの開始などが挙げられます。
また、裁判所から判決を得られたり、当事者同士で和解したりした際は、時効が更新されます。
Q.毎月請求書を送付していれば時効を止められるか?
毎月の請求書だけでは、時効の完成を止めることはできません。
そもそも催告による時効の完成猶予は、一度限りです(民法第150条2項)。
時効を更新(リセット)させたいなら、支払督促や民事訴訟などをおこなうほか、債務者から債務承認を得る方法などがあります。
Q.時効が完成してしまうと債権の回収はできなくなる?
時効が完成したとしても、債権を回収できる可能性はあります。
ポイントは、債務者が援用(意思表示)をしているかどうかです。
援用がまだの段階なら、早めに支払いを求めて承認を得るようにしましょう。
なお、除斥期間が経過した債権については、援用がなくても回収できなくなります。
さいごに|債権は時効によって回収できなくなる可能性があるので注意しよう
債権の時効が成立すると、金銭を回収できなくなるリスクがあります。
もし時効にかかりそうな債権がある場合は、まず催告で時効の進行を止めることが重要です。
また、ひとりでの対処が難しいときは、早めに弁護士に相談・依頼するほうがよいでしょう。
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