債権トラブルの解決方法として、銀行口座の差し押さえがあります。
たとえば「何度も催促しているにもかかわらず、債務者が借金の返済を滞納している」というようなケースでは、銀行口座を差し押さえることで回収が望めます。
ただし、債務者の銀行口座を差し押さえる場合は事前準備が大切で、知識のない状態でむやみに実行すると空振りに終わるリスクもあります。
なるべく債権回収の成功率を高めたいのであれば、債権回収が得意な弁護士に相談・依頼することも検討しましょう。
本記事では、債権回収で債務者の銀行口座を差し押さえるまでの流れや、差し押さえの手続きをおこなう際の注意点などを解説します。
口座差押えをご検討中の人へ
口座差し押さえが成功すれば、まとまったお金を回収することが可能です。
その分、タイミングなどが重要になります。
口座差し押さえなどの強制執行をご検討中の方はできるだけ早く弁護士にご相談ください。
弁護士に依頼するメリットは以下の通りです。
- 差し押さえのタイミングの検討
- 差し押えの手続き・書類作成
- 差し押え後の債権回収・手続き
- 債務者との交渉 など
弁護士に依頼することで、最大限の金悪を回収できる可能性があります。
初回相談が無料の弁護士事務所も多数掲載しているので、債務者が破産・再生手続きを行う前に、まずはお気軽にご相談ください。
銀行口座の差し押さえとは
銀行口座の差し押さえとは、債権回収の手段のひとつです。
債権者によって差し押さえの手続きがおこなわれた場合、差し押さえられた部分については、債務者による払戻しが制限され、債権者は所定の手続きを経て銀行から支払いを受けることで借金の回収ができます。
なお、銀行口座の差し押さえと混同されやすいものとして「給与差し押さえ」や「口座凍結」などがあります。
以下では、銀行口座の差し押さえと、給与差し押さえ・口座凍結の違いについて解説します。
銀行口座差し押さえと給与差し押さえの違い
給与差し押さえとは、債務者が勤務先から受け取る給料のうち、一定額を継続して強制的に回収する手続きのことです。
銀行口座の差し押さえと給与の差し押さえでは、主に「差し押さえる金額の上限」や「継続性」などの点で大きく異なります。
銀行口座の差し押さえの場合、差し押さえる金額について法律上の上限はなく、銀行に差押命令が送達された時点の預金のみが差押えの対象となります。
その後の入金に差し押さえの効力が自動的に及ぶわけではありません。
一方、給与の差し押さえの場合、債務者の手取り額に応じて以下のような上限があり、完済に至るまで回収が継続します。
なお、養育費などの回収では、差し押さえられる上限が異なります。
| 債務者の手取り額 |
差し押さえの上限額 |
| 44万円以下の場合 |
手取り額の4分の1まで |
| 44万円を超える場合 |
33万円を超える部分 |
給与を差し押さえる際の流れやポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
口座差し押さえと口座凍結の違い
口座凍結とは、金融機関側の判断で口座の利用が一時的に停止されることです。
一例として、以下のようなケースでは口座凍結がおこなわれます。
- 金融機関が口座名義人の死亡を知った場合
- 金融機関が口座名義人の判断能力の低下・喪失を知ったとき(認知症など)
- 口座が不正取引・犯罪行為に利用された疑いがある場合(振り込め詐欺など)
- 口座が債務整理の対象となった場合 など
銀行口座の差し押さえと口座凍結では、主に「手続きの目的」や「口座の利用制限」などの点で大きく異なります。
銀行口座の差し押さえの場合、債権回収を目的におこなわれ、基本的には回収完了後も銀行口座は利用可能です。
一方、口座凍結の場合、債権回収や犯罪被害の拡大防止などを目的におこなわれ、原則として凍結解除されるまでは入出金や自動引き落としなどの全ての取引ができなくなります。
銀行口座が差し押さえられるまでの流れ
債権回収で銀行口座を差し押さえるためには、基本的に以下のような手続きが必要となります。
- 債務名義の取得
- 債権差押命令の申立て
- 債権差押命令の送達
- 銀行口座からの取り立て
ここでは、債務者の銀行口座が差し押さえられるまでの流れについて解説します。
1.債務名義の取得
債務者の銀行口座を差し押さえるためには、債務名義を取得しなければいけません。
債務名義とは、債権の存在や範囲などを証明する以下のような公文書のことです。
- 確定判決
- 仮執行宣言付判決
- 仮執行宣言付支払督促
- 強制執行認諾文言付公正証書
- 確定判決と同一の効力を有するもの(和解調書・調停調書・確定した労働審判) など
なお、原則として債務名義には執行文の付与が必要です。
執行文とは「債務名義に強制執行をおこなう効力がある」ということを公的に証明する文言で、裁判所や公証役場に申し立てることで付与されます(民事執行法第26条1項)。
債務名義の種類ごとの取得方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
2.債権差押命令の申立て
債務者の銀行口座を差し押さえるためには、原則として債務者の住所地を管轄する地方裁判所にて債権差押命令の申立てが必要です。
裁判所の管轄区域については「裁判所の管轄区域|裁判所」から確認できます。
主な必要書類は以下のとおりで、申立手数料や郵便切手代などの費用も発生します。
| 必要書類・費用 |
備考 |
| 申立書 |
申立書頭書・当事者目録・請求債権目録・差押債権目録など |
| 債務名義の正本 |
執行力があるもの |
| 送達証明書 |
- |
| 資格証明書 |
- |
| 申立手数料 |
請求債権1件につき4,000円(債権者・債務者・債務名義の数によって異なる) |
| 郵券切手代 |
3,000円程度(裁判所によって異なる) |
3.債権差押命令の送達
提出書類に不備・不足がなければ、債権差押命令の発令手続きへと移ります。
裁判所は第三債務者(銀行)に対し、当事者の情報や差し押さえの内容などについて記載された「差押命令正本」を発送し、これが銀行に届いた時点で差押えの効力が発生します。
その後に債務者に差押命令正本が発送されます。
問題なく送達が完了したあとは、債権者にも差押命令正本や送達通知書が送付されます。
4.銀行口座からの取り立て
原則として、債務者へ債権差押命令が送達されてから1週間が過ぎると、債権者には取立権が発生します(民事執行法第155条1項)。
取立権の発生後は、債権者は銀行に対して直接取り立てをおこなうことが可能となります。
銀行側と直接やり取りを進め、未回収だった分を回収すれば手続き終了となります。
銀行口座を差し押さえる場合の3つの注意点
債権回収で銀行口座の差し押さえを検討している方は、以下のようなポイントを押さえておきましょう。
- 債務者の銀行名や支店名を特定する必要がある
- 債務者の残高がない場合は空振りとなる
- 債務者が自己破産した場合は中止となる
ここでは、債務者の銀行口座を差し押さえる場合の注意点について解説します。
1.債務者の銀行名や支店名を特定する必要がある
債務者の銀行口座を差し押さえるためには、口座情報の特定が必要です。
裁判所で勝手に調査してくれるわけではなく、債権者側が動かなければいけません。
債務者の銀行名や支店名がわからなければ、原則として差し押さえはできません。
口座情報の特定方法については「銀行口座を差し押さえるために必要な情報の確認方法」で後述します。
2.債務者の残高がない場合は空振りとなる
債務者の銀行名や支店名が特定できても、十分な残高がなければ空振りとなります。
銀行口座の差し押さえでは、「債務者の口座残高が0円だった」「少額しか入っていなかった」というようなケースも珍しくありません。
差し押さえの対象となるのは「銀行に対して差押命令が送達されたタイミングの残高」で、一度の手続きでは一回のみの回収となるのが通常です。
債権回収を成功させるためには、事前に財産調査を済ませておくことも大切です。
3.債務者が自己破産した場合は中止となる
債務者が自己破産の手続きをおこなう場合、債権者による差し押さえは原則禁止・中止となります(破産法第42条1項)。
自己破産とは債務整理のひとつで、借金の返済免除を求める裁判手続きのことです。
債務者は生活に最低限必要な財産以外は処分しなければなりませんが、個人の債務者の免責許可決定が確定すると税金や養育費などの非免責債権を除く全ての借金の支払い義務が免除されます。
特に債務者が金銭のやり繰りに困っているようなケースでは、自己破産を選択して債権回収が失敗に終わるおそれがあります。
銀行口座を差し押さえるために必要な情報の確認方法
債権回収で銀行口座を差し押さえるためには、銀行名や支店名などの口座情報が必要です。
債務者の口座情報を特定する方法としては、主に以下のようなものがあります。
| 口座情報の特定方法 |
概要 |
| 過去の取引履歴のチェック |
過去の振込履歴や過去に交わした契約書などを探し、債務者の口座情報を確認する |
弁護士会照会
(弁護士法第23条の2) |
弁護士が弁護士会を介して、銀行に債務者の口座の有無や残高などの照会をかける手続き |
財産開示手続
(民事執行法第197条、第199条) |
債務者を裁判所に呼び出し、口座情報などの開示を求める手続き |
第三者からの情報取得手続
(民事執行法第207条) |
裁判所を介して、銀行から債務者の口座の有無や残高などの情報提供を受ける手続き |
銀行口座の差し押さえを弁護士に相談・依頼する3つのメリット
債権回収で銀行口座の差し押さえを検討しているなら、弁護士の力を借りるのが有効です。
弁護士に相談・依頼することで、主に以下のようなメリットが望めます。
- 自分に合った執行方法をアドバイスしてくれる
- 差し押さえる前の財産調査を代行してくれる
- 差し押さえで必要な手続きを一任できる
ここでは、債権トラブルでの弁護士の必要性やサポート内容などを解説します。
1.自分に合った執行方法をアドバイスしてくれる
弁護士に相談すれば、自分に合った執行方法をアドバイスしてくれます。
債権トラブルでは銀行口座の差し押さえが有効ですが、ほかにも貴金属類や美術品などを差し押さえる「動産執行」や、家や土地などを差し押さえる「不動産執行」などもあります。
状況に応じて最適な選択肢は異なり、ほかの手段を選択したほうが早期回収・全額回収につながる場合もあります。
弁護士のアドバイスを受ければ、選択ミスを回避できる可能性がありますし、具体的な手続きの進め方なども教えてくれてスムーズな進行も望めます。
2.差し押さえる前の財産調査を代行してくれる
弁護士に依頼すれば、差し押さえる前の財産調査を代行してもらうことも可能です。
債権回収の空振りを回避するためには、事前に財産調査をおこなって、債務者がどのような財産を保有しているのかを正確に把握しておく必要があります。
ただし、何の手がかりもない状態から調査するのは大変ですし、なかには債務者が財産隠しをしていて調査が難航するおそれもあります。
弁護士なら弁護士会照会を利用できますし、財産開示手続や第三者からの情報取得手続にも対応しており、状況に適した方法で迅速かつ確実な特定が期待できます。
3.差し押さえで必要な手続きを一任できる
弁護士なら、差し押さえのために必要な手続きを一任することも可能です。
銀行口座を差し押さえるためには、必要書類の準備や裁判所とのやり取りなどが必要で、債権回収の知識や経験のない法律の専門知識がない方にとっては大きな負担となります。
法律の専門知識がない方の場合、書類の不備・不足に気づかないまま提出したりして、裁判所とのやり取りが何度も発生して手続きが長引くおそれもあります。
弁護士は債権者の代理人として動いてくれて、差し押さえにかかる負担を大幅に軽減できますし、法律の専門知識がない方が自力で対応するよりも早期回収・全額回収できる可能性が高まります。
口座の差し押さえに関するよくある質問5選
ここでは、口座の差し押さえに関するよくある質問について解説します。
1.口座の差し押さえは2回目も可能?
銀行口座の差し押さえは、一度の手続きで一回のみの回収となるのが通常です。
なお、差し押さえのタイミングを誤ったりして全額回収できなかった場合は、再度手続きをおこなって同じ銀行口座を差し押さえることも可能です。
ただし、そのぶん手間も時間もかかるため、一回でスムーズに済ませたいなら弁護士の助けを得るのが効果的です。
2.ゆうちょ銀行やネット銀行も差し押さえの対象になる?
ゆうちょ銀行やネット銀行も、差し押さえの対象になります。
ゆうちょ銀行では「預金」ではなく「貯金」という名称が用いられていますが、法律上はほかの銀行と同様に「預金」として扱われるのが通常です。
実店舗のないネット専業銀行については、差し押さえにあたって支店名の記載は不要で、金融機関名の記載があれば足りるとされています(債務名義に基づく差押え|裁判所)。
3.差し押さえた口座の残高が0円の場合はどうなる?
差し押さえた口座の残高が0円の場合は、回収できずに空振りとなります。
なお、差し押さえの対象となるのは「銀行に対して差押命令が送達されたタイミングの残高」であり、送達後に入金があったとしても自動的に回収できるわけではありません。
差し押さえ後に入金された分を回収したい場合は、改めて差し押さえの手続きが必要です。
4.差し押さえた後の銀行口座はどうなる?
差し押さえ後の銀行口座については、差し押さえられた預金を引き出せない以外、基本的にそのまま利用可能です。
ただし「口座開設した銀行からの借入れを滞納した」というようなケースでは、銀行側の判断で口座凍結となる可能性があります。
銀行口座が凍結した場合は、原則として凍結解除されるまでは入出金や自動引き落としなどの全ての取引ができなくなります。
5.差し押さえの対象になる銀行口座はなぜわかる?
差し押さえの対象になる銀行口座は、以下のような方法で特定可能です。
- 過去の取引履歴のチェック
- 弁護士会照会
- 財産開示手続
- 第三者からの情報取得手続 など
ただし、債権回収の知識や経験のない法律の専門知識がない方では対応に苦労するおそれがあるため、弁護士のアドバイスやサポートを受けることをおすすめします。
さいごに|銀行口座の差し押さえを考えているなら、ベンナビ債権回収で相談を
債権トラブルでは、弁護士が債権者の心強い味方として尽力してくれます。
最適な回収方法や手続きの進め方をアドバイスしてくれるだけでなく、代理人として財産調査や回収対応を一任することもでき、早期回収・全額回収できる可能性が高まります。
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