内容証明郵便とは、文書の内容・差出人・宛先・作成した年月日とともに、郵送した事実を公的に証明することができる郵便です。
内容証明郵便自体に法的拘束力はありませんが、さまざまな効力があるため、一般的に法的手段へ訴える前段階で利用されます。
内容証明郵便を上手に活用することで、今まで無反応だった相手が手の平を返したように、すぐに支払いに応じてくれるケースがあります。
今回の記事では、内容証明郵便の効力や利用方法、無視された場合の対処法について解説します。
内容証明郵便を使って債権回収しようと考えている方へ
内容証明郵便で催促した場合、受取拒否や無視をされることは珍しくありません。
しかし弁護士が対応することで、相手の態度が変わって債権回収に成功することもあります。
弁護士であれば、以下のようなメリットが望めます。
- 内容証明郵便に関する手続きを一任できる
- 弁護士名義で送付することでプレッシャーを与えられる
- 裁判で有利に働くような内容に作成してもらえる など
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内容証明郵便の6つの効力
内容証明郵便の具体的な効力についてご紹介します。
1:法的手段における証拠になる
債権回収は、債務者が弁済に応じない場合、最終的に裁判で決着をつけることになります。
法廷ではこちら側の主張を立証しなければなりませんが、内容証明郵便は裁判における証拠として効力を持ちます。
2:弁護士から送れば強いプレッシャーを与えられる
内容証明郵便に弁護士名・事務所名が記載されているだけで、相手側にとっては「裁判になってしまう可能性がある」「支払いを逃れられない」という気持ちにさせやすくなるでしょう。
特に相手方が、企業の場合、裁判を行い社会的信用性を失うリスクを発生させるより、支払いに応じるほうが得策と、すぐに応じてくれるケースが多くなっています。
3:時効中断事由の催告になる
債権には時効期間が設けられており、一定の期間を超えると債権は消滅してしまいます。
債権内容 |
時効期間 |
商取引による売掛金債権 |
2年 |
商取引による貸付金債権 |
5年 |
個人間による貸付金債権 |
10年 |
ただし、4月1日以降に発生した債権に関しては、権利行使可能であることを知ってから5年に統一されました。
内容証明郵便を郵送することで、6ヶ月の時効期間を延ばすことができるので、時効を迎える寸前の債権の効力を消さないために、相手方に催告をすることが必要となります。
催告は、口頭でも普通郵便による書面でも効力を生じますが、万一、後日相手方に「催告など受けていない」などといわれると、債権が時効消滅しかねません。
そこで、時効中断の催告には、内容証明郵便を利用することが一般的となります。
他の時効期間を延ばす方法
内容証明郵便を介して時効を延ばすことは、一度しかできません。
そのため、時効期間を迎える寸前の債権を所有している方は、他の時効中断の方法も検討するべきでしょう。
以下、各時効中断の方法と時効期間の延長期間になります。
|
延長期間 |
裁判上の請求 |
振り出し |
債務者からの承認 |
債務名義の取得 |
10年 |
4:確定日付の取得による効力が得られる
内容証明郵便を利用することで、相手方に内容証明郵便が送達された日付(確定日付)を取得することができます。
契約書に弁済の期日が指定されていない場合、相手方に遅延損害金(弁済期日を守らなかったことによる罰金)などを請求するには、相手方に弁済を請求したことと、請求した日付が必要となります。
内容証明郵便で請求し、かつ確定日付を取得することで遅延損害金を請求するための確実な証拠とすることができます。
5:契約の解除通知になる
賃貸借契約などで相手方に債務不履行があった場合、契約を解除できる場合がありますが、いずれにしても、契約の解除は相手方に通知しなければなりません。
内容証明郵便で解除を通知しておけば、後日、裁判で相手方が解除の通知を争ってきた場合でも、解除を通知したことと、通知した日時等を証拠に残すことができます。
6:債権回収の用途として利用できる
内容証明郵便を利用することで、相殺や債権譲渡の効力を得られます。
相殺
お互いに未回収の債権が発生している場合、互いの債権を相殺することが可能です。
例えば、相手側がこちら側に500万円の債権を有しており、こちら側が相手側に300万円の債権を有している場合、300万円の債権を相殺することができます。
その結果、相手方がこちら側に有している債権額(こちら側が相手方に負っている債務額)は500万円-300万円=200万円になります。
相殺は一方の主張で成立することができますが、効力を得たことを後に証するために内容証明郵便が有効です。
債権譲渡
債権譲渡とは、自己が有する債権を第三者へ譲渡することを意味します。
未払いの債権の弁済をしてもらうために、債務者が有している債権を譲渡してもらうことが債権回収の場面では一般的です。
債権者は、譲渡してもらった債権の効力を発生させ、また、第三者に対抗できるようにするために、内容証明郵便を使用することが多いです。
債権譲渡について詳しくは以下の記事を参考にしてください。
内容証明郵便の利用方法
内容証明郵便の効力を確認したとことで、続いて内容証明郵便の利用方法について確認していきましょう。
基本的に以下の流れで作成します。

では、具体的に紹介します。
①催告書を作成する
まず内容証明郵便で送る催告書を作成します。
【催告書のテンプレート】
平成○年○月○日
東京都新宿区西新宿○-○-○
株式会社A
甲野太郎殿
催告書
弊社は、貴社との○年○月○日に
締結した売買契約により、代金○○万円で
貴社へ商品〇〇を売り渡しました。
しかしながら、繰り返しの
催促に関わらず、現在まで代金○○万円の
支払いを受けておりません。
○年○月○日までに、上記○○万円を
下記口座にて支払うよう催告いたします。
上記の期日までに支払いいただけない場合、
法的措置も検討いたします。
記
○○銀行○○支店
普通預金
口座番号:
口座名義人:乙山花子
住所:東京都新宿区東新宿○-○-○
株式会社 B
代表:匿名花子 印
|
もし、債務者との契約で弁済期日を設けていなかった場合、催告書に弁済期日を指定してください。
すでに弁済期日が設けられているが期日が過ぎているのであれば、早急に支払いに応じるように促しましょう。
また、支払いに応じなかった場合には法的手段に訴える旨を記載してください。
内容証明郵便を作成する際の決まり
まず郵送する催告書を作成しますが、内容証明郵便で郵送する文書には文字数が指定されています。
- 縦書きの場合:1行20文字以内に対して26行以内
- 横書きの場合:1行あたり13文字以内に対して1枚40行以内、または26字以内に対して20行以内です(句読点、括弧も文字数にカウントされる)
文中に挿入する文字がある場合は、挿入箇所の上に挿入する文字を加え、括弧で挿入位置を指定してください。
また、誤字が不安な場合は、ワープロやワードを使用しましょう。
②内容証明郵便を作成する
内容証明郵便の文書にはサイズの指定はありませんが、郵送用、控え、郵便局用に計3枚の文書を用意する必要があり、サイズは揃える必要があります。
文書が2枚以上の場合は、綴じ目に契印をしなければなりません。

また、催告書の内容は郵便局で確認されるので、封筒の封は閉じないでおきましょう。
③郵送の手続きをする
内容証明郵便は、全ての郵便局で利用できるわけではありません。
地方郵政局長から指定された集配郵便局で利用することができるので、詳しくは郵便局のホームページにて確認しましょう。
オプションと料金
内容証明郵便は、内容証明以外にいくつかのオプションがありますが、その中でも配達証明は内容証明を使う上で必須となります。
配達証明を付けた内容証明郵便の利用料金は、一般的には1,200円程度ですが、送達する文書が2枚以上の場合や、速達で郵送したい場合、複数の債務者へ同じ文書を郵送する場合には、追加料金がかかります。
④相手の反応に応じて対応する
内容証明郵便を送るだけで債権回収はできません。
内容証明郵便送付後は、相手の反応に応じた対応をしなければなりません。
例えば、すぐに返済すると応じた場合、直接交渉を行い、返済期日や方法、滞納した場合の対応などを話し合い、合意した内容を示談書にまとめ公正証書にします。
もし、無視されたり不誠実な対応を取られたりした場合、裁判を提起する等の対応を行うことになります。
なお、これらの対応はすべて弁護士に依頼することが可能です。
受け取り拒否された場合の対応と注意点
そもそも内容証明郵便を受け取ってもらえないケースがあります。
その場合の対応と注意点についてご紹介します。
内容証明を拒否された場合の対応
受け取り拒否や居留守・不在の場合、内容証明郵便は7日間郵便局で保管され、その間に債権者から受け取り等の連絡がないと、手元に戻ってきます。
その際、「相手方不在」や「〇月〇日に受取拒否」などと記載されています。
受取り拒否や居留守・不在で返送された場合でも、相手方に通知をしたことの証拠となりえますので、必ず封筒毎保管しておいて下さい。
ただし、そのような通知でどのような法的効力が生じるかはケースバイケースなので、その後の流れとして、弁護士に相談していないのなら、一度弁護士から送付してもらうのもひとつの方法です。
弁護士から送付してもらうことで、今まで支払う気のなかった相手が、弁護士からの督促で急に返済を申し出るケースも多く見受けられます。
もし、弁護士から送付している場合は、内容証明などを証拠に支払い督促もしくは、裁判を行い、最終的に強制執行を行うことになる可能性もあるでしょう。

受け取り拒否された場合の対応の注意点
内容証明を拒否された場合、どうしても届けたくなってしまいたくなる場合もあると思いますが、相手の職場や相手の親族など保証人ではない相手にも内容証明を送りつけることは絶対にやめましょう。
借金は個人的なものになりますので、名誉棄損などでこちらが不利な立場になってしまう可能性もあり得ます。
内容証明郵便が無視された場合の対応
内容証明郵便を送ったからといって、債務者が弁済に応じるとは限りません。
債務者が内容証明郵便を無視された場合、以下のような対応ができます。
自分で送った方は弁護士から再度送ってもらう
内容証明に弁護士名や事務所名が入っているかどうかでは、大きく異なります。
記載されていることで、相手に精神的なプレッシャーやこちらの意思をつよく伝えることができるため、送付後すぐに解決するケースもあります。
そのため、自分で送ったものを無視された場合は、裁判などの大事にする前に弁護士をとおして請求するのもひとつの方法です。
支払督促
支払督促は、裁判所から督促をしてもらう方法です。
基本的に書類のみの申し込みのため簡易で時間が掛かりません。
また、支払督促をすることで強制執行するのに必要な債務名義を獲得できます。
ただし、支払督促に対して相手方が異議を申立てると、通常の民事訴訟に移行してしまいます。
ですので、支払督促自体が簡易といっても、実際には通常の民事訴訟に移行した場合も想定して準備を進める必要があります。
少額訴訟
少額訴訟は、債権額が60万円以下の場合に利用できる裁判制度です。
通常の民事裁判より簡易なため、費用も時間も抑えることができます。
手続きなどを弁護士に依頼することもできますが、個人間の債権の場合、費用倒れする可能性もありますので、慎重な判断が必要です。
民事訴訟
債権額が60万円を超える場合は、民事訴訟(一般的に利用される裁判)を行うことになります。
少額訴訟と比較すると、費用や時間はかかりますが、確実に債権回収をするためにも有効な手段といえるでしょう。
また民事訴訟は、相手方の所在が分からず、内容証明を届けられないような相手でも訴えることができます。
他方、手続きが煩雑になり、口頭弁論を行う必要もありますので、弁護士に依頼することをおすすめします。
強制執行(差し押さえなど)
紹介してきました法的裁判に訴えても返済の意思を見せない場合や、過去に裁判を行っていたり公正証書がある場合は、強制執行により相手の財産を差し押さえるのも有効的な手段です。
基本的に給与か預貯金を差し押さえることになります。
給与の場合、制限があるものの、一度申請したら相手が退職もしくは回収するまで、差し押さえを続けることが可能です。
また、預貯金を差し押さえる場合、残高によっては一気に回収できる可能性もあります。
さいごに
上記のとおり、内容証明郵便には多くのメリットがあります。
また、弁護士を通して請求すればより高い効果を得ることができるでしょう。
万が一内容証明が受け取り拒否もしくは無視されても対抗手段は多くありますので、状況に合わせて最適な方法を選ぶのがポイントです。
債権回収には、時効がありますので、できるだけ早く対応することをおすすめします。