支払督促は法的手段による債権回収の中では、手続きが簡易的ではありますが、やはり弁護士など専門家のサポートがあった方が心強いでしょう。不測の事態が生じた場合や、裁判所へ提出する書類における文言など少しでも不安があるのであれば、弁護士に依頼した方が確実に手続きを済ませることが可能です。
今回の記事では、弁護士に支払督促を依頼する上で抑えておくべき支払督促の知識、弁護士に依頼するメリットや弁護士を選ぶ基準、支払督促における弁護士費用などを紹介していきます。
支払い督促の利用をご検討中の方へ
支払い督促は誰でも簡易的に利用できますが、記入漏れなどが見つかった場合、申し立ては受理されません。
そして支払督促の申し立てが受理された後には、仮執行宣言申立書を作成しなければならないのです。
また支払い督促をしたことで、解決まで余計に時間がかかるケースも存在します。
支払い督促でお悩みの方は、弁護士に依頼するのがおすすめです。
弁護士に依頼をすれば、下記のような活動をしてもらえます。
- 自身の状況にあった債権回収のアドバイス
- 支払い督促に必要な書類を作成
- 債務者との交渉の代理
初回相談が無料の弁護士事務所も多数掲載しているので、まずはお気軽にご相談ください。
まず、弁護士に依頼する前に支払督促における最低限の知識は抑えた方が良いでしょう。支払督促とは、裁判所を介して債務者へ返済を促すための手続きでありますが、同時に仮執行宣言付支払督促という債務名義(公的に債権の存在を示すための書類)を取得するための手続きです。
この仮執行宣言付支払督促を取得することで、債務者に対して債務者が保持する金銭債権を強制的に差押えることで債権を回収することができます。仮執行宣言付支払督促を取得するまでの手順は以下の通りになります。
-
1.支払督促の申立
-
2.支払督促の発付:債務者へ通知
-
3.仮執行宣言の申立
-
4.仮執行宣言付支払督促の取得:債務者へ通知
参照:「支払督促の申立の手順と手続きの流れを抑える上で必要な知識」
債務者からの督促異議の申立
実際に、支払督促において、「支払督促の申立」、「仮執行宣言の申立」の2つの申立を行いますが、この申立てが裁判所から認められた段階で、各申立てにつき裁判所から債務者へ計2回、通知が届きます。
この通知には、債務者が異議を申立てるための、督促異議申立書が同封されており、書類の送達から2週間以内に債務者から送達があった場合、支払督促から通常の訴訟へ移行しなければなりません。
仮執行宣言付支払督促が取得後、つまりは2回目の通知による申立てであれば債務者は強制執行の手続きを止めることはできないため、訴訟へ移行するべきでしょう。
しかし、1回目の通知、支払督促発付後に申立てられた場合、訴訟の取り消しも検討された方が良いかもしれません。
債権者に落ち度がない場合
実際に、支払督促は手続きが簡易的であり、時間がかからない点が大きなメリットでしたが督促異議を申し立てられて訴訟へ移行してしまったら元も子もありません。
通常、督促異議を申し立てられる場合、債務者側が強気なケースが多く、そもそもの債権者と債務者との間の債権の取り決めに問題がある場合が多いです。そのため債務者に対して、こちら側に落ち度がある場合、支払督促はあまり債権回収において適切な手続きではありません。
逆に、こちら側に落ち度がなければ、そもそも弁済に応じない債務者が圧倒的に不利な立場であるため督促異議の申立はしてこないでしょう。
金銭債権による請求
また、支払督促は簡易的に済ませることができる手続きですが、簡易的な分、対象とできる債権は金銭債権に限定されています。それは支払督促が、裁判所が民事間における金銭関係における紛争を処理する上で、簡易的に済ませることを目的に作られた制度だからです。
そのため、支払督促では、金銭債権における債権回収を目的としている方が対象になります。
相手の所在地がわかっている
さらに支払督促では、相手側の所在地が分かっていない場合、公示送達が適用されないため利用することができません。支払督促は相手側の住所を管轄(法人である場合は会社の所在地)する簡易裁判所へ申立を行うため相手側の所在地が不明の場合は利用できないのです。
※公示送達:相手側の所在が不明の場合、法的に送達したことにするための手続き
前置きが長くなってしまいましたが、上記の内容を踏まえた上で支払督促を弁護士に依頼するメリットを確認していきましょう。
まず、簡易的な手続きとはいえ支払督促は、裁判所を介した手続きであり、申立書類の作成から収集まで手間と時間を要します。さらに裁判所の申立書類のチェックは厳しく、記入漏れや書類の不足があった場合、受理してもらえません。
そういった事態を防ぐためにも、裁判所の手続きに慣れている弁護士に書類の作成を任せることは負担を減らす意味で効果的です。
仮執行宣言の申立の期日は30日以内
また、裁判所から債務者へ支払督促の通知が行われた後、督促異議申立が2週間以内で行われなければ、仮執行宣言の申立を行いますが、通知の送達から30日以内に申立が受理されなければ支払督促の手続きは無効となってしまいます。
仮執行宣言の申立の時間が限られていることからも、弁護士に申立ての手続きを任せた方が確実に手続きを済ませることができます。
もし債務者から督促異議申立を行われた場合、訴訟へ移行することになりますが、訴訟の手続きは手間と時間を要するため負担が大きくなるでしょう。
訴訟を取り下げることも可能ですが、仮執行宣言付支払督促の取得後であれば、先ほども申した通り強制執行の手続きと並行して行うべきです。
訴訟と強制執行の手続きは別々で行わなければいけないため、より手続きの負担が重くなることが想定されますが、弁護士に依頼する大きなメリットとして、弁護士は訴訟における手続きから、出廷の際の代理人も任せることがあげられます。
せっかく取得した仮執行宣言付支払督促を有効にするためにも、弁護士の役割は大きいでしょう。
債権回収をする上で、支払督促は手続きが簡易的である理由から選択する方もいますが、債権の内容から債務者、または債権者自身の状況によって適切な債権回収の方法は異なります。
弁護士に依頼する大きなメリットは、数多く扱ってきた事案を元に依頼主に合った債権回収の方法を提示してくれるところです。そのため依頼主の目線に立って一番効果的な債権回収の方法を提案してくれます。
では実際に、支払督促をする上で、何を基準に弁護士を選ぶべきでしょか。
まず、一つ目は法人に債権回収に特化した弁護士に依頼することです。弁護士によって専門とする分野が異なるため、法人相手の債権回収の訴訟経験が豊富な弁護士を選びましょう。
弁護士事務所のホームページを参考に
また、選ぶ際は弁護士事務所のホームページの内容から、選択することをオススメします。もし実績のある弁護士事務所であれば、事務所の宣伝文句になるためホームページに経歴が掲載されているからです。
また、ホームページを見る際、更新頻度の多さにも目を配るといいでしょう。実際に、案件を多く扱っている事務所であればそれだけホームページに掲載する内容が多くなるからです。
また、依頼する弁護士と馬が合うかどうかも重要なポイントです。これから支払督促をするにあたり、弁護士とは二人三脚で取り組まなければなりません。
債権回収を依頼する方にとって、弁護士から最適な解決方法を見つけてもらうためには、弁護士側が依頼主と同じ目線に立って考えてもらう必要がありますが、互いの相性が悪いとそれも難しいでしょう。
支払督促を成功させるためにも、正式に支払督促を依頼する前に、相談の段階で弁護士と自分との相性の良さを確認する必要があります。
また、当然ですがトラブルの多い弁護士は避けるべきです。不当な額の弁護士費用の請求、依頼を受けたにも関わらず仕事をしないなど、問題の多い弁護士は弁護士会から懲戒を受けることになります。
「弁護士懲戒処分検索センター」から懲戒を受けた弁護士を確認することができるため、依頼をする前に確認してみましょう。
支払督促を弁護士に依頼した場合、発生する弁護士費用には、「相談料」、「着手金」、「成功報酬金」の3つの費用に分かれます。
弁護士に債権回収を依頼する際、弁護士へ債権回収に関する相談を行うのが一般的です。債権回収の方法、裁判所における手続きの内容などを相談することができますが、1時間あたりおよそ1万円(相場の費用)の相談料が発生します。
もし相談をした結果、弁護士へ支払督促を依頼するのであれば、弁護士が依頼を受けた段階で、着手金という費用が発生します。着手金は、実際に債権を回収できたのか、また仮執行宣言付支払督促を取得することができたかどうかに寄らず、予め支払うことが決められている費用です。
着手金は、支払督促で請求する金額に比例して高額になりますが、以下の料金が相場になります。
<着手金の相場金額>
無事に支払督促が完了したら、その時点で成功報酬金が発生します。成功報酬金は、仮執行宣言付支払督促へ記載されている弁済額の内、15%~20%を相場に考えてください。
また、ここで紹介した弁護士費用はあくまで相場であるため、実際のところ弁護士費用は各弁護士事務所によって異なります。そのためご利用の前に、事前に弁護士事務所へ料金表の確認を行ってください。
また弁護士費用とは別に、支払督促をする上で裁判所へ申し立てる際、申立費用を納めなければなりません。申立には支払督促申立、仮執行宣言申立の2種類がありますが、それぞれ手数料から郵券切手代がかかります。
支払督促申立
支払督促申立をする際にかかる費用として、収入印紙代(手数料)、と郵券切手代を納めなければなりません。手数料に関しては、請求する金額に応じて高額になりますが、「支払督促申立の費用」を参考にしてください。
参考:支払督促に必要な申立費用と弁護士費用の相場のまとめ
また郵券切手代は、債務者の数に応じて算出されますが、1000円×債務者の数+50円×債務者の数+80円です。さらに裁判所に納める費用とは別になりますが、申立ての際、申立人が法人の場合は資格証明書、債務者が法人の場合は登記簿謄本が必要になります。
それぞれは発行するにあたり法務省へ、資格証明書に関しては450円、登記簿謄本に関しては1000円の手数料を納める必要があります。
仮執行宣言申立
仮執行宣言申立に関しては、手数料を納める必要がなく郵券切手代のみであり、郵券切手代として当事者の人数分×1000円を裁判所へ納めることになります。
督促異議申立をされた場合の裁判所費用
債務者から督促異議申立をされたら、訴訟を取下げるか、訴訟へ移行するかのどちらかですが、訴訟の取下げには郵券切手代が必要な場合(最暗所によって異なる)がありますが、手数料は発生しません。
また、訴訟へ移行する場合は、債務者が申立を行った裁判所へ、支払督促の申立時に納めた時と同額の手数料と、郵券切手代の6000円を納めなければいけません。
もし支払督促における弁護士費用を工面するのが難しい方のための対応策についてまとめました。
まず最初に挙げられるのは、弁護士事務所が設置している無料相談を有効的に活用することです。その際に、予めホームページなどを介して無料相談が利用できる事務所をリストアップした上で、いつかの弁護士事務所を回ることをオススメします。
無料で相談できる時間が限られているので、質問したい内容を事前に幾つか用意して、各事務所ごとに違う質問をしてみましょう。自分に合う弁護士事務所を見つけるためにも、法律の知識を蓄えるためにも有効的な手段です。
次に、弁護士費用を抑えるために、自分でまかなえない範囲だけを弁護士に依頼することをオススメします。
支払督促について事前に勉強しておく
そのためには事前に、支払督促についてある程度、知識を蓄えることが必要です。予め知識があれば手続きにおける不明な点、心配な点だけを相談することができるので相談料を安く抑えることができます。
また書類の作成だけを依頼する、また訴訟に移行した時だけ代理人をお依頼するなど、依頼する内容を限定すれば弁護士費用を安く抑えることが可能です。弁護士事務所によってサービスの内容は異なりますので、費用に関しては弁護士とよく相談しましょう。
また、相談の段階で弁護士費用の見積書を作成してもらうことも大切です。支払督促は、場合によっては訴訟へ移行する可能性もありますし、仮執行宣言付支払督促の取得後に債務者が弁済に応じなければ、強制執行へ移行しなければなりません。
各手続きによって弁護士費用は異なるため、シチュエーション別に費用の見積もりを出してもらいましょう。弁護士に依頼する範囲を限定することで費用を安く抑えるためにも、事前に費用の見積もりを抑えておく必要があります。
また、支払督促を申し立てる際に、申立書に申立費用の請求に関する記述をすることで、債務者へ申立費用を請求することができます。しかしながら、弁護士費用に関しては請求できないので注意が必要です。
支払督促において、弁護士を有効に活用するために必要な知識についてまとめていきましたが、弁護士に依頼する前の事前知識として当記事がお役に立てたら幸いです。
支払い督促の利用をご検討中の方へ
支払い督促は誰でも簡易的に利用できますが、記入漏れなどが見つかった場合、申し立ては受理されません。
そして支払督促の申し立てが受理された後には、仮執行宣言申立書を作成しなければならないのです。
また支払い督促をしたことで、解決まで余計に時間がかかるケースも存在します。
支払い督促でお悩みの方は、弁護士に依頼するのがおすすめです。
弁護士に依頼をすれば、下記のような活動をしてもらえます。
- 自身の状況にあった債権回収のアドバイス
- 支払い督促に必要な書類を作成
- 債務者との交渉の代理
初回相談が無料の弁護士事務所も多数掲載しているので、まずはお気軽にご相談ください。