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2021年に東京オリンピックを控えて、今後、訪日外国人はますます増加することが予想されます。病院側としては、今後増加しうる「外国人患者による医療費未払い問題」について、あらかじめ対策を講じておいた方が安心でしょう。
この記事では、外国人患者に医療費を踏み倒されないようにするための対策や、外国人に対して未払いの医療費を請求する方法などを解説します。
2019年8月更新版の厚生労働省の調査資料「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査について」によると、外国人の受入実績のある病院2,174院の中で、外国人患者による医療費未払いを経験した病院は386院あるとのことです。
さらに病院あたりの医療費未収金の発生率は6.7件、総額は平均43.3万円との結果も公表されています。なお回答した病院の中には、未収金の総額が100万円を超える病院もあったとのことです。
訪日外国人は年々増加傾向にあります。日本政府観光局が2020年に発表した「目的別訪日外国人(訪日外客)数の推移」によると、2018年の訪日外国人の数は31,191,856人という結果となっています。2021年は東京オリンピックの開催が予定されていることもあり、今後さらに増加していくことが予想されます。
日本にやって来る外国人が増えると、それだけ急な病気や怪我で病院を受診する外国人の人数も増えることでしょう。これは今まで外国人の受入経験のなかった病院も他人事ではありません。訪日外国人が一気に増える前に、医療費の未払いや踏みたおし対策を整えるべきではないでしょうか。
医療費の未払いや踏みたおしなどの対策をするために、病院側としては具体的にどのような方法を講じればよいのでしょうか。対策としては以下の4つが考えられます。
まず1つ目はクレジットカード決済とキャッシュレス決済の導入です。病院がクレジットカード決済やキャッシュレス決済に対応することで、日本円での現金払いが難しい外国人患者が医療費をスムーズに支払ってくれる可能性があります。
キャッシュレス推進協議会が公表する「キャッシュレス・ロードマップ 2019」によると、日本のキャッシュレス決済の比率は、2016年の時点で約20%です。対して、訪日外国人の出身国の中には、キャッシュレス決済比率がより高い国がいくつも存在しています。
たとえば2016年の韓国のキャッシュレス決済比率は96.4%で、イギリスは68.6%。オーストラリアやカナダ、スウェーデンでもキャッシュレス決済比率は50%を超えています。日本よりはるかに高い比率を誇っているのです。
病院の医療費の支払い方法にキャッシュレス決済を導入することで、キャッシュレス決済に慣れている外国人患者の支払いがスムーズにされることが期待されます。結果、医療費の未払いの予防につながる可能性があります。
なお、日本クレジットカード協会が2014年に行った「訪日外国人へのクレジットカード利用状況調査」によると、訪日外国人の3人に1人が「日本でカードを利用したいという意向を持っていながら使えない状況に直面した経験がある」と答えています。
外国人患者に対して、いざ未払い医療費を請求したいと考えても、「既に帰国してしまい連絡先が分からない」ということは十分あり得ます。外国人患者の身元・所在が把握できていないという場合、いざ請求したいと考えても何もできません。
実際、外国にいる相手に法的な請求を行うことは現実的に困難なことがほとんどですが、相手に対する心理的圧迫という観点からも、せめてパスポートのコピーくらいは取っておいて損はないでしょう。
なお、外国人旅行者の場合には、海外旅行に付帯された保険サービスを利用して病院を受診することも多いはずです。この場合には、保険会社担当者の連絡先を控えることは必須と言えます。
外国人を患者として受け入れる際に困るのが、言語の問題です。外国人患者に治療内容の説明や本人確認、支払いの説明などを行いたくても、言葉が通じないと難しいはずです。
今では医療用の自動翻訳機や通訳サービスなども普及しておりますので、円滑な治療や医療費回収のためにも、自動翻訳機などの導入は重要です。
あらかじめ弁護士と相談したり顧問契約を締結したりして、外国人患者の医療費未払いについて予防策や対応策を講じておくことも検討に値します。例えば、弁護士と相談しつつ、外国人患者への医療費請求や未払いの対応を定めたマニュアルを策定しておくことで、未払いの問題についてスムーズに対応することができるかもしれません。
また、健康保険を利用しない外国人患者については、所定の契約書を用意しておくことも検討に値します。健康保険を利用する場合には、診療報酬については一定のルールがありますので、契約書の有無が問題となることはほとんどありません。
しかし、健康保険を利用せず、自由診療で治療を受けるような場合には、診療報酬でトラブルとなる可能性もゼロではありません。外国人旅行者の場合には、健康保険に加入していない・利用できないというケースも考えられますので、この場合に備えた所定の契約書を用意しておくことも検討に値します。
さらに、保証人や保証金を活用することも考えられます。外国人旅行者に限ったことではありませんが、支払いに不安があるような相手の場合、信用ある者・機関に保証人となってもらったり、治療にあたって一定の金額を保証金として差し入れてもらったりということは、検討しても良いかもしれません。
相手が外国人であっても日本国内にいるのであれば、基本的な医療費回収の流れは日本人からの回収とほぼ同じです。
まずは督促により任意の支払いを求め、支払いがなければ法的手続きを検討するという流れです。他方、相手が日本国内に居住しない場合には、相手が医療費についての保険サービスに加入している場合や任意に支払う場合を除いて、基本的に回収は困難と思われます。
医療費の支払いがない場合には、電話、メール、書面等で支払いを促すことが初動の基本です。相手が単に支払いを忘れているに過ぎない場合は、督促により支払われることがほとんどでしょう。
督促しても任意の支払いが期待できない場合には、相手に対して法的手続きを履践することを検討するべきですが、相手が日本国内に居住していない場合には基本的に難しいと思われます。
外国人旅行者は日本国内に居住していないので、このような旅行者相手に法的手続きを起こそうと思っても、書類等の送達が難しく、手続きを起こすことができない場合がほとんどと思われます(居住地を把握していれば、そこに書類送付をするという手段は理論的にあり得ますが、コストや回収可能性を考えれば非現実的と思われます)。
したがって、外国人旅行者について任意の支払いがされず、海外旅行保険の保険会社からも支払いが期待できないという場合には、病院側は泣き寝入りを強いられることがほとんどと思われます。
訪日外国人が増えれば、日本で医療機関を受診する外国人も増えます。2021年は東京オリンピック開催により、訪日外国人数はさらに増加することでしょう。
外国人患者の未払い医療費については、病院にとって早期に対策すべき問題ではないでしょうか。現実的には難しいことが多いと思われますが、本記事を参考にしていただければ幸いです。
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