【図説】未収金と売掛金の決定的な違いと共通点!

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安富総合法律事務所
安富 真人
監修記事
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未収金(みしゅうきん)、売掛金(うりかけきん)は、ものの売り買いやサービスの提供などによる取引を行った際、いわゆる「ツケ」をされたために代金がまだ回収出来ていない状態のお金のことです。

どちらも“後から支払ってもらうお金”という同じ性質のものなのでよく混同されがちですが、実は権利・義務のもととなった取引が異なるため、似て非なるものです。
 
この後払いシステムは日本ではわりとポピュラーなので、簿記の分野や日常的に経理業務に携わっている人は馴染み深いでしょうが、そうでない人はその違いをいまいち理解できていないかもしれません。
 
今回の記事ではこの未収金と売掛金の決定的な違い、また、共通する点について、知らなかったために損をしてしまった…ということがないように、本記事で詳しく解説していきましょう。

未収金と売掛金はどちらも資産であり債権

売掛金と未収入金はどちらも資産であることに変わりなく、金銭債権でもあります。したがって、税務上では違いを明確にしなくても法人税額や所得税額に悪い影響を及ぼすことはありません。

しかし、金融機関から融資を受ける場合は、しっかりと区別をつけないといけません。未収入金が多く計上されていると、金融機関側からは良く思われないからです。

融資対策のためにも、ほんのわずかな違いであっても覚えておくことが重要です。それでは早速、そんな未収金と売掛金の概要について解説します。

未収金とは?

未収金は、有価証券・固定資産の売却代金の未回収金、会社の余剰資金で購入した不動産の家賃収入など、メインの営業活動とは異なる取引で発生する債権のことと定義されています。(財務諸表上の正式な表示は未収入金となります。)

【例】八百屋さんが、包丁やエプロン(商品以外のもの)を売った際に後からもらうお金は未収金となります。

売掛金とは?

売掛金は、社内の業務の一環として販売した商品の未回収金や、製品を製造の販売、または提供したサービスに対する未回収金など、メインの営業活動から生じる債権のことと定義されています。

【例】八百屋さんが、果物や野菜(商品)を売った際に後からもらうお金は売掛金となります。

未収金と売掛金の違い

両者の違いに混乱する方は多いと思われますが、銀行から融資を受ける上で、評価の高い決算書を作成するためには両者の違いを明確にしておくべきでしょう。

一般的に未収入金は計上する上で、短期(決算日から数えて1年以内の入金)の場合は流動資産、長期(決算日から数えて1年超えの入金)の場合は固定資産に計上されます。

これに対し、一般的に売掛金は全て流動資産に計上されるため、期間によって区別されることはありません。

建設業における営業上の債権の取り扱い

さらに建設業を始め、一部の業種においては、営業上の債権に関わらず、勘定項目に売掛金と表記せずに未収金を使用する場合があります。

営業未収入金」、「完成工事未収入金」などが使用されますが、売掛金と表記されていなくても実質上は、売掛金と性質は変わりません。

未収金や売掛金の類義語

経理上において、未収金、売掛金の双方は債権となりますが、ではその反対に債務に該当する勘定項目はどうなるのでしょうか。経理や簿記の世界では、未払い金、買掛金が債務に該当します。

未払い金

未払い金は、業務上、直接は必要のない商品以外のものを購入した場合(営業外における債務)に、後で支払うお金のこと。(⇔未収入金)

例えばですが、光熱費や社内を改装するために発生した工事費などが未払い金に該当します。

買掛金

業務上、必要となる商品を購入したりサービスの提供を受けたりした場合(営業上の債務)に、後で支払うお金のこと。(⇔売掛金)
 
例えばですが、取引先から仕入れた商品を転売する事業を運営していた会社においては、取引先から仕入れた商品の代金が買掛金債務に該当します。

銀行からの融資において決算書の評価を上げるために必要な知識

銀行から融資を受ける上で、売掛金、未収金、買掛金、未払い金が表記された決算書を元に評価がされますが、決算書の評価を高くするためにはどうすればいいのでしょうか。

売掛金を多く・未収金を少なく計上する

一般的には売掛金を多く、未収金を少なく計上することが大切になります。

その理由は、売掛金の高さは営業利益の高さに繋がるためであり、未収金の高さは不正会計を疑われるため決算書の評価が低くなる可能性があるからです。

もちろん不正に売掛金を多く表記するべきではありませんが、売掛金と未収金の違いが理解できていないため売掛金と表記すべき債権を未収金の項目に計上してしまう場合が見られるため、両者の違いを正しく認識しておく必要があります。

売上に計上できる項目は計上する

また可能であるのならば、会社のメインの業務ではなくても、売上として計上できる債権は売掛金として計上しましょう。例えばですが、不動産を所有している場合、賃貸することで発生する家賃収入は売掛金として計上して問題ないと言われております。

主要な業務とは別に、他者と連携して代理店業務などを営んでいる場合は多いと思いますが、その種の業務から発生する債権は、融資を受ける際の決算書の評価を上げるために売掛金として計上しましょう。

買掛金はなるべく少なく計上する

買掛金は、営業上の債務(借金)であるため、営業利益と比べて買掛金の割合が高いと、会社の業務の採算が取れていない、業務の利回りが悪いと判断されてしまいます。

そのため、買掛金はなるべく少なく計上されてしまいますが、買掛金と未払い金の違いが理解できていないために未払い金と計上できる債務を、買掛金として計上するケースが珍しくありません。

買掛金と未払い金を間違えて計上しないことが必要ですが、双方の計上方法、そして売掛金、未収金の計上方法に関して詳しくは、専門家へ相談するのが無難でしょう。

売掛金が月の売上を上回ると決算書の評価が低くなる

基本的に、営業利益を高く見せる上で売掛金が高く計上されるに越したことはありませんが、月の売上に対して売掛金が高い場合、不良債権を抱えている疑いを持たれる可能性が高いです。

売掛金は、まだ回収できていないお金であるため債務者から売掛金を回収できて初めて会社の利益になります。売掛金の額が売上に見合っていないということは、それだけ回収に手こずっている売掛金債権があるということです。

銀行側は、決算書を評価する上で、売上と売掛金の割合から不良債権を抱えていないかをチェックするため、不自然に売上に対して売掛金の額が高い場合は、返って決算書の評価が低くなります。

そのため、回収の難しい売掛金に関しては別途で対処する必要がありますが、それでは売掛金債権を回収するために必要なことについて確認していきましょう。

未収金も売掛金も回収方法は同じ|回収のための全手順

未収入金にせよ売掛金にせよ、どちらにしても早く回収したほうが良いことにかわりはありません。以下には、未収金と売掛金の回収方法についてまとめていきまよう。基本的に回収方法は同じです。

①内容証明郵便による回収

どの弁護士に相談しても、真っ先に「まず配達証明付内容証明郵便を出しましょう」と提案してくることが大半なので、回収方法としてはオーソドックスなものであると言えます。

内容証明郵便とは、郵便物の内容文書について、いつ、いかなる内容のものを誰から誰へ宛てて差し出したかということを日本郵便が証明する制度です。

内容証明郵便は訴訟において当事者がいついかなる意思表示を行ったかという前提事実を示すための証拠として用いられることが多いのですが、内容証明郵便そのものには特別な法的効力はありませんので、これだけで債権回収の目的を達成できることは、残念ながらそれほど多くはないと思われます。

②交渉による回収

すぐに全額の回収ができないまでも、相手としては分割でなら支払えるという場合もあるので、支払内容を交渉で詰めて合意による債権回収を図ることがあります。

このような交渉による回収には、取引相手との関係悪化を回避できるコストを低く抑えられる訴訟と比べるとより柔軟な内容の解決が期待できる、等のメリットがあります。また、交渉の過程において、その後に法的手段をとる際の証拠を収集することもできます。

しかし当然ながら、相手方が交渉に応じてくれなければ、任意の支払いは期待できず、債権回収をはかることはできません。

③相殺による回収

相手に買掛金がある場合、売掛金と買掛金を相殺(そうさい)することで、実質的に債権回収を達成することができます。相殺は相手の同意を得ることなく行うことができ、また相手が破産や民事再生等の手続下にあっても可能な場合があります。

相殺による回収を行う場合は、内容証明郵便等々の方法でその旨を相手に通知することにより完了します。

④商品引き揚げによる回収

相手の同意を得た上で、販売した品を引き揚げる形での回収になります。くれぐれも、同意なく勝手に引き揚げると窃盗罪となってしまうので要注意です

尚、当然ながら、サービス提供の場合は引き揚げることは出来ません。

⑤債権譲渡による回収

相手が現金を持っていなくても第三者に対して売掛金や未収金を持っている場合は、それを譲渡してもらうことで回収することがあります。ただし、確実に回収できるかどうかは不透明な方法であると言えます。

⑥訴訟による回収

①~⑤の方法によっても回収できない場合には、以下の法的手段に出て回収することとなります。

公正証書

公証人役場で公正証書を作ってもらうと、そこに書かれているとおりに支払いをしなかった場合、裁判所の判決なしでいきなり強制執行が出来るようになります。

公正証書を作るには、債務者の実印つき委任状や印鑑証明が要ります。

しかし当然ながら、相手方が公正証書作成に応じてくれなければ、任意の支払いは期待できず、債権回収をはかることはできません。

支払督促

正式な裁判手続をしなくても、判決などと同じように裁判所から債務者に対して金銭などの支払を命じる督促状(支払督促)を送ってもらえる制度です。

【参考】
▶「支払い督促を介して仮執行宣言付支払督促を取得する方法
▶「支払督促に必要な申立書の書き方と添付書類の作成方法まとめ

民事調停

民事事件に関して裁判官及び調停委員会が当事者を仲介し、双方の主張を調整し、その間に和解の成立を図る非公開の手続きです。

参照:「債権回収における民事調停の有効性と利用方法のまとめ

少額訴訟

簡易裁判所において、60万円以下の金銭を請求する場合に、1回の期日で審理を終えて判決することを原則とする特別な裁判手続きです。

参考:「少額訴訟の金額と請求可能な金額|少額訴訟の条件と手続き

強制執行(差し押さえ)

訴訟を提起した後に得た勝訴判決等に基づき、裁判所に強制執行を申し立てることにより、債務者の同意を得ることなく、債務者名義の資産を差し押さえることができます。

【参照】
▶「強制執行で差し押さえするために必要な知識と方法のまとめ
▶「強制執行の一連の流れと差押さえまでの手順の解説

未収金にも売掛金にも時効がある|回収の有効期限

未収金にも売掛金にも共通して、回収を行うにもタイムリミットがあるということはきちんと把握しておきましょう。

未収金と売掛金の消滅時効とは?

未収金や売掛金が発生してから一定期間が経過すると消滅時効となり、債務者は支払い義務から解放されることになります。

民法改正により、令和2年3月31日までに発生した未収金・売掛金は、以下のように債務の内容によって消滅時効の期間は異なります。

時効期間

時効債務

1年で消滅

・宿泊料
・運送費
・飲食代金

2年で消滅

・月謝/教材費
・製造業/卸売業/小売業の
売掛金

3年で消滅

・診療費
・建築代金/設計費
・自動車修理費
・工事代金

5年で消滅

・上記以外の売掛金(商行為に基づくもの)

なお、令和2年4月1日以降に生じた未収金・売掛金に関しては、

  1. 債権者が権利を行使できることを知ったとき(主観的起算点)から5年間権利行使しないとき、
  2. 債権者が権利を行使できるとき(客観的起算点)から10年間権利行使しないとき、

は、債権は原則として時効によって消滅するものと改正されました(新民法第166条1項)。

時効が迫っている場合は中断することが出来る

債権者側は以下の手続きをとることで時効を中断することが可能です。

1:請求(新民法第147条一号)

債権者側から債務者へは、以下のように様々な請求を行うことが出来ます。

訴状の提出

訴訟を提起すること。裁判所に訴状が提出されたその時点で時効中断の効力を生じます。

支払催促

債権者が簡易裁判所に申し立て、裁判官ではなく書記官の判断で進行する簡易な法的手続。債務者から異議が出なければ、訴訟より早く債務名義(=強制執行できる原因書面)を取得することも可能です。

調停申立

調停委員会(裁判官1名+一般市民から選ばれる調停委員2名=合計3名による委員会)が双方当事者の言い分を丁寧に聞き取り、必要があれば事実も調べ、法律及び一般常識に基づいて当事者双方に建設的な歩み寄りを促し、双方が譲り合った当事者の合意によって実情に沿った柔軟な解決を図る手続です。

ただし、相手方が出頭せず、又は和解若しくは調停が調わないときは、一箇月以内に訴えを提起しなければ、時効の中断の効力を生じないこととされています。

催告書類の提出

裁判になる前に、「お金を返してほしい」という内容の催告書類を債権者から債務者に向けて送ることにより一時的に時効を中断させることが出来ます。
この場合、配達証明付内容証明郵便を用いることが、実務上は多いと思われます。

しかし催告書類が相手に届いた日から6ヶ月の間に訴訟を提起するなどの手段を講じなかった場合は、時効中断の効力を生じないこととされています。

2:差押え(仮差押え・仮処分)(新民法第147条二号)

訴訟や支払督促などの債務名義に基づき裁判所が債権者に強制執行決定を発令すると、債権者が債務者の財産を差し押さえることが出来、時効を中断することができます。

また、債務名義を得る前であっても、裁判所から仮差押ないし仮処分命令の発令を受けることにより、時効を中断することができます。

ただし、仮差押や仮処分の場合は、まだ債権者が債務名義を得たわけではなく、債務者に不当な損害が生じてしまう危険性が否定できませんので、債権者は一定額の保証金を供託する必要があるのです。
  

3:債務の承認(新民法第147条三号)

債務の承認とはその名の通り、債務者が債務の存在を認めることです。債務者が1円でも借金を返済したり、または支払を約束する書面へサインをしたりした場合、債務の承認にあたり時効は中断します。
 
参照:「債権回収するために必要な時効の中断方法と知識のまとめ

未収金と売掛金の回収は弁護士への依頼が有効

長らく支払いがみられない時には、債権回収を得意とする弁護士への依頼を検討してみても良いかもしれません。以下にそのメリットやデメリット、債権回収が得意な弁護士の探し方についてまとめていきましょう。

回収を依頼するメリットとデメリット

メリット

専門家が介入するというだけで相手にインパクトを与えることが出来る

「法的な手段に出ている」「本気で回収しようとしている」と相手に印象付けることが出来るので、相手に「早く支払わないと」という意識付けをさせる効果が期待できます。

精神的な負担を軽減出来る

債務者とは、逃げられないだけの距離感を保ちながらシビアな交渉をしていくことになりますが、場合によっては逆に脅されたりなどといったこともあるかもしれません。弁護士に依頼することで、このような精神的負担を肩代わりしてもらうことができます

借金回収にかかる労力と時間を節約出来る

当事者だけで話し合いをしても全くらちが明かないというケースは多々あります。弁護士であれば交渉に応じない相手には速やかに裁判所を使った手続きを選択し、迅速な解決が可能になります。

デメリット

債務者との間柄が険悪になる

「裁判も辞さない」という意思が相手に伝わることで、以降相手と良好な関係を維持することが困難になる場合もあります

相手が破産する可能性がある

これ以上返済することが困難であると判断され、精神的にも追い詰められ、相手が破産を選択してしまうこともあり得ます。破産をされると、以降取り立てることが不可能となります。

費用がかかる

弁護士に依頼して債権回収をする場合は、着手金と成功報酬が発生します。回収しようとする借金額が小さい場合、弁護士に依頼すると費用倒れになってしまうこともあり得ます。

債権回収が得意な弁護士の探し方

まずはホームページをチェックする

ほとんどの弁護士事務所がホームページを所有しているので、以下のポイントをチェックしてみましょう。

  • 債権の回収が得意との明記があるか?
  • 具体的な債権回収事例、実績の明記があるか?
  • 全体的に内容がわかりやすいか?
  • マスメディアや口コミなど、第三者から債権回収に精通した弁護士として評価されているか?

弁護士が取り扱う法律分野は多岐に渡ります。債権回収という分野において、十分な専門性・知識を持つ弁護士を選びましょう。

知人による紹介

安全策としては、知人に依頼して知っている弁護士を紹介してもらう方法があります。過去にトラブルを起こしたことがある弁護士や悪質な弁護士を避けることが出来、弁護士に対するクレームもその知人を通して伝えて解決することができます。

弁護士会からの紹介

各弁護士会では有料(30分5,000円程度)の法律相談を開いているので、そこでの相談後に弁護士を斡旋してもらうのも良い手段と言えます。

各弁護士会の場合、通常は法律相談を受けた担当弁護士が事件を受任しますが、希望を出せば他の弁護士にすることもできます。

弁護士費用(着手金、成功報酬)は、少額事件を除き、弁護士会の委員が決めます。弁護士に不都合なことがあれば、依頼者は弁護士会に相談できます。

まとめ

もしも経理業務に携わるのであれば、未収金と売掛金の違いを把握して、きちんと管理することが必要です。

未収金・売掛金双方ともに後に現金に変わる債権です。しかし一定の期間が経過してしまうと、現金に変わらなくなるということはくれぐれも覚えておくようにしましょう。

自身で回収を行うにせよ、弁護士に依頼をするにせよ、回収業務は時間との勝負であると言えます。

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この記事の監修者
安富総合法律事務所
安富 真人 (横浜弁護士会)
個人から企業まで、全額回収実績が多数あります。大家や管理会社の悩みである、家賃滞納では回収から立ち退きまでのワンストップ対応も可能です。定期的に未収金が発生する場合は継続してサポート致します。

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編集部

本記事は債権回収弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※債権回収弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。


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