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取引先からの入金が遅れてしまうと、会社のキャッシュフローに大きな影響を及ぼします。
短期間であればまだしも、長期間入金がない場合は資金ショートによって黒字倒産に陥るおそれもあるでしょう。
入金遅延の原因は、取引先の単なる手続きミスから深刻な財務問題までさまざまです。
原因をはっきりさせて冷静かつ適切に対応することで、トラブルを最小限に抑えながら回収することができます。
本記事では、催促の具体的な方法から最悪のケースまで、どのようにすればよいのか、法的手続きも含めて実践的な方法を紹介します。
会社代表者や経理担当者であっても、個人事業主であっても、取引先から未入金のお金がある方はぜひ参考にしてください。
企業は現預金から商品やサービスを生み出しています。
また、従業員への給料の支払いやオフィスの家賃なども現預金から支払っているでしょう。
会社の資金繰りは、予定された入金を前提として、その先の支払いをすることで成り立っています。
そのため、取引先からの入金は事業になくてはならない資金源です。
売り上げによって現金を得ることができなければ、最悪なケースでは資金ショートに陥ってしまうでしょう。
資金ショートとは、現預金が不足してしまい自社が支払うべき代金・経費・従業員の給料などが支払えなくなってしまう状況です。
資金ショートしてしまうと倒産するしかなくなります。
そうなると別の取引先や顧客に大きな迷惑をかけるでしょう。
そのため、未払いの売掛金が発生したら、できる限り早急に回収に着手することが重要なのです。
実際に未入金が発生したら、どのような対応をおこなうべきでしょうか。
取引先から入金がないからといって、焦って催促せず、適切なステップを踏んで対応しましょう。
不要なトラブルを起こさないよう、以下のような対応をおこなってください。
まずは、取引先に送った請求書に間違いがなかったかどうかを確認しましょう。
自社のミスで正しい請求がなされていないケースもあるからです。
取引相手の企業名・住所・部署・担当者の名前・請求内容・支払期日・口座番号などの自社情報を確認します。
請求先が間違っていたり、支払期日が間違っていたりしないかを調べましょう。
そのうえで、請求内容について、問い合わせがきていないかメールなどの履歴を合わせてチェックすることも大切です。
また、未入金が発生している売掛金の契約書を確認することも忘れてはいけません。
請求している内容が契約書に則っているかどうか、きちんと調べてから連絡するのがポイントです。
請求書や契約書を確認したうえで、間違いがなければ取引先の担当者に連絡をしましょう。
未入金があることを伝え、支払いが遅れている理由と支払いが可能な期日を確認してください。
未入金は、故意でおこなわれるわけではなく、取引先による支払い忘れや請求書の紛失などの小さなミスが原因となるケースも少なくありません。
そのような場合は、担当者に連絡をした時点ですぐに支払いをしてくれるでしょう。
一方で、自社が納品した商品やサービスに対して取引先が不満を抱いている場合や、取引先の資金繰りがうまくいっておらず支払いを渋っている場合は、状況に応じた対応や交渉をしなければなりません。
いずれの場合であっても、いきなり強い態度で催促をすることは避けましょう。
支払いをしていない相手に落ち度があるとはいえ、今後の関係性を考えると丁寧な言葉遣いはもちろん、柔らかい表現で伝えることが大切です。
連絡手段は電話でもメールでも構いません。
電話のほうが迅速に進む可能性もありますが、メールであれば証拠が残せるため、万が一法的措置を検討するような場合は有効です。
いずれにしても先方と連絡がついたら、入金予定日を必ず確認しましょう。
担当者と連絡がついても、相手に支払う意思が見られない場合や、担当者自身には支払う意思があっても会社に資金がなくて支払えないというケースもあります。
未入金があると伝えても入金されないときは、必要に応じて商品やサービスの提供を一時的に停止しましょう。
すでに未入金が発生しているにもかかわらず、さらに商品やサービスを提供し続け、売掛金を増やすことは、自社の資金繰り悪化や資金ショートのリスクを高めることにつながります。
ただし、急に商品やサービスの提供を停止してしまうのではなく、相手に理由と時期を通知したうえでおこないましょう。
相手方の債権ともしも相殺が可能であれば、相殺によって売掛金をなくすこともできます。
相殺とは、自社と取引先が同じ種類の債権を持っている場合、お互いの債権を帳消しにすることができる仕組みです。
同じ種類の債権というのは、売掛金なら、売掛金同士であればよいということです。
たとえば、自社の商品を100万円で売り、その100万円が未入金であるとします。
また、取引先から自社も何らかのサービスを100万円分買っていたとします。
この場合、100万円同士を打ち消し合って帳消しにすることができるのです。
なお、同額ではなく差額がある際、差額分は別途支払わなければなりません。
また、相殺するには弁済期が到来しているという条件もあるので、どちらも支払期日が来ていなければならないことを覚えておきましょう。
相殺は、事前に契約書によって取り決めをしなくてもおこなうことができます。
一方からの意思表示のみでも実施できるため、相殺できる債権があるなら相殺通知書を取引先に送付すれば相殺が可能です。
ただし、契約書に「相殺禁止特約」が設けられている場合は利用できません。
相殺を検討している場合は、きちんと契約書を確認しましょう。
取引先による未入金が続いている際、未払い金を回収するためには、どのような対処をおこなえばよいのでしょうか。
ここからは、正しい方法で未払い金を回収するための流れを説明します。
まずは、取引先への電話やメールによって請求をしましょう。
これまでも取引がある会社の場合は、電話のほうが迅速に請求できる可能性があります。
しかし、メールであれば証拠として残せるため、法的措置を検討する場合は有効です。
電話をかける場合は時間帯に気をつけましょう。
いくら未入金が続いているからといって、早朝や深夜に電話をしたり、何度も連絡をかけすぎたりすると、関係が悪化してかえって回収が難しくなることがあります。
電話の場合、伝えたことや聞いたことをきちんとメモや音声記録として残しておくのがポイントです。
メールをする場合は、相手の記録にも残るため、文面に気をつけましょう。
再三連絡しても未入金が続く場合は別として、はじめのころは丁重な文章を心がけるのがよいでしょう。
催促メールの文章例を紹介しますので、参考にしてください。
件名:請求書番号XXXXX-XX入金のご確認をお願いいたします |
株式会社〇〇〇〇 〇〇事業部 〇〇〇〇様 大変お世話になっております。 株式会社〇〇〇〇の〇〇です。 8月末にお送りした請求書につきまして、10月10日現在ご入金を確認することができておりません。 何らかの手違いかと存じます。改めてご確認くださいますよう、お願い申し上げます。 請求書番号:XXXXX-XX お支払い期日:2024年9月31日 念のため、改めて請求書をメールに添付いたしますので、ご確認くださいませ。 このメールと行き違いですでにご入金いただいている際は、ご容赦願います。 その場合は、お手数ですがその旨をご一報いただけますと幸いです。 よろしくお願いいたします。 |
件名:【再送】請求書番号XXXXX-XX入金のご確認 |
株式会社〇〇〇〇 〇〇事業部 〇〇〇〇様 大変お世話になっております。 株式会社〇〇〇〇の〇〇です。 度々のお願いとなり誠に恐れ入ります。 8月末にお送りした請求書につきまして、現在もご入金を確認することができておりません。 すでに10月10日にも、ご確認のお願いをいたしております。ご状況はいかがでしょうか。 請求書番号:XXXXX-XX お支払い期日:2024年9月31日 本メールと行き違いでご入金いただいている際は、申し訳ございません。 念のため、前回のメールの内容を再度掲載いたします。 <前回のメール内容> お手数をおかけいたしますが、ご確認のほどよろしくお願いいたします。 |
電話やメールで催促をしても支払いがなされない場合、内容証明郵便を送付しましょう。
内容証明郵便とは、いつ、どんな内容を、誰から誰へ宛に送ったのかを日本郵便が証明してくれる制度です。
未収金の回収方法として、一般的に利用されています。
また、内容証明郵便は法的手続きにおいても重要な書類になるため、相手に対して法的措置を取られるかもしれないという心理的なプレッシャーを与えることができます。
弁護士名義で送付すればより効果を高められるでしょう。
ただし、内容証明郵便自体に法的な拘束力があるわけではありません。
なお、内容証明郵便による催促は、消滅時効を一時的に中断させられます。
すでに期日を大幅に過ぎている場合は、一度内容証明郵便を送ることで、時効の成立を防げられるでしょう。
電話やメールにも応じず、内容証明郵便を送っても入金がなされない場合は、取引先企業に訪問することも検討しましょう。
労力はかかりますが、対面で話すことができれば、その場で入金手続きをおこなってもらえる可能性もあります。
ただし、取引先が遠方にある場合などは、労力のほうが回収できる売掛金よりも上回る可能性があるでしょう。
上司とよく話し合うなどして、訪問すべきかどうかじっくり検討してください。
また、行き過ぎた訪問をおこなうと通報されるリスクがあり、営業妨害をしているなどとして自社の立場を悪くしてしまいかねません。
アポイントメントなく訪問したり、頻繁に訪問したりするのは避けましょう。
ここまでの手段を講じても未入金が続いている場合は、法的措置を検討するしかありません。
各種法的措置を通じて正当に売掛金回収をするには、どのような手段があるのでしょうか。
主な手段を紹介します。
支払督促は、簡易裁判所に申し立てることによって、自社ではなく裁判所から債務者に対して支払いを命じる督促状送ってもらう制度です。
裁判ではないため、比較的手軽に利用できます。
しかし、支払督促を受け取った相手が異議を申し立てると訴訟に移行します。
そのため、必ずしも手軽で便利とはいえないかもしれません。
支払督促が債務者に送達したあと2週間以内に異議が申し立てられなければ、仮執行宣言を申し立てることができ、仮執行宣言付支払督促を送付して確定すれば強制執行が可能です。
異議申し立てがおこなわれずにスムーズに強制執行までできる場合は、非常に有用な手段でしょう。
民事調停とは、簡易裁判所において当事者同士が話し合いをおこない解決する方法です。
当事者同士だけでおこなうのではなく、裁判官1名と裁判所が指定した民事調停委員2名以上が参加し、当事者が合意できるよう調整してくれます。
民事調停委員として指定されるのは、弁護士や専門家などです。
合意がまとまれば調停調書が作成され、調停調書は訴訟の判決と同じ効力を持ちます。
つまり、調停調書をもとに強制執行の手続きなどを進められるということです。
しかし、あくまでも任意での話し合いです。
いずれかが納得できないときは調停が不成立のまま終わってしまうケースもあります。
訴訟を提起するという手段もあります。
請求金額が60万円以下の場合は、少額訴訟の利用が可能です。
それ以上の金額であれば通常訴訟をおこなってください。
少額訴訟は簡易裁判所でおこなわれ、原則として1度の審理で判決が確定されます。
そのため、通常の訴訟よりも費用や時間を大幅に抑えられるでしょう。
勝訴すれば強制執行の申し立てができるようになります。
ただし、相手が少額訴訟を望まない場合は通常訴訟に移行することになります。
また、判決に不服が残る場合であっても控訴ができません。
デメリットを踏まえて、少額訴訟を提起するべきかどうかは慎重に検討すべきでしょう。
どちらを利用すべきか迷う場合は弁護士に相談しましょう。
強制執行は、支払督促・民事調停・訴訟の結果をもとにおこなえる手続きです。
債務があることを証する書面を提出し、地方裁判所へ強制執行の申し立てをおこないます。
債務があることを証する書面とは、債務名義と呼ばれるもので、訴訟における確定判決などを指します。
強制執行が許可されれば、取引先の財産から債権を回収可能です。
たとえば、取引先の銀行口座にある預貯金や、商品や在庫などを売却した代金などから支払いを受けることができます。
強制的におこなうため、法律上厳格なルールがあります。
強制執行を申し立てる場合は、弁護士に依頼するのがおすすめです。
未払い金の回収をおこなう際は消滅時効に気をつけましょう。
消滅時効とは、一定の期間を過ぎると債務が消えてしまうことをいいます。
つまり消滅時効が成立すると支払いを受けることができなくなるのです。
未払い金の消滅時効は2020年4月1日以降の未払い金の場合、の以下のうちいずれかの早いほうが到達したときです。
売掛金の場合は、基本的に取引が成立したときに支払期限が決められるでしょう。
そのため、取引成立日が「債権者が権利を行使することができると知ったとき」にあたり、取引成立日から5年が経過すると債権は時効を迎えると考えるのが通常です。
取引成立日から5年が経ってしまわないうちに売掛金回収をおこないましょう。
未払い金を回収できないまま貸し倒れになってしまったら、どうすればよいのでしょうか。
回収見込みのない売掛金や貸付金は、会計上は損金として貸倒損失処理をおこなうしかありません。
貸倒損失としての会計処理が認められるケースは次の3つです。
取引先の業績が悪化し、会社更生法や民事再生法が適用された場合、規定によって金銭債権が切り捨てられることがあります。
自社の売掛金が切り捨てられてしまった場合を「法律上の貸倒れ」といい、その事実が生じた事業年度の損金額に算入することが可能です。
売掛金の一部は回収できたものの、全額回収が不能になった場合は「事実上の貸倒れ」といい、その事実が明らかになった事業年度に貸倒れとして損金に算入することが可能です。
ただし、担保があるときは、担保を処理したあとでないと損金にできません。
取引を停止したあと1年以上回収できないときや、回収コストが債権額を上回ったときは「形式上の貸倒れ」として損金額に算入できます。
ただし、損金にできるのは売掛債権のみです。
役員や子会社などへの貸付をはじめとした売掛金以外の債権は、形式上の貸倒れとしての損金額には算入できません。
取引先から未入金が発生したあと、どのような対応をするかも大切ですが、そもそも未入金が発生しないよう準備することも非常に大切です。
取引先からの未入金を防ぐためにできることを2つ紹介します。
まずは、普段から請求情報をきちんと管理することが大切です。
当然のように思えるかもしれませんが、実は子会社や部署が多い企業などにとって、請求情報の管理の徹底は容易なことではありません。
しかし、取引先からの未入金を防ぐためにはやはり厳密に管理することが重要です。
請求情報をきちんと管理するには、債権管理表・売掛金残高一覧表・売掛年齢表などを作成しましょう。
たとえば、債権管理表には、取引先名・前月末の債権残高・当月の債権発生額・当月の入金額・入金後の債権残高・滞留債権の有無・備考欄などの項目を設け、エクセルや債権管理システムで管理してください。
未払い金の発生を未然に防ぐには、与信管理を徹底することも重要です。
与信管理とは、取引先の経営状況や支払い能力を見極め、取引をしても大丈夫かどうかを検討し、取引をおこなうのであれば適切な取引額を設定することなどを指します。
相手に支払い能力があるかどうかを確認しないまま取引をしてしまうと、自社がリスクを背負うことになります。
ポイントは、決算書などで財務状況を把握することやインターネット・交友関係を活用して口コミなどの情報を分析すること、取引先の業界の商流についてもリサーチすることです。
継続的に取引が続いている会社であっても、定期的な情報収集や取引額の見直しによって未入金の発生を防ぐことが大切です。
取引開始までに時間がかかるかもしれませんが、先々のリスクを最小限にするため、与信管理を徹底しましょう。
取引先からの入金遅延は、支払われない金額や期間によっては大きなリスクになります。
なるべく早く適切な対応を取り、リスクを最小限に抑えましょう。
まずは催促からはじめ、必要に応じて弁護士への相談を検討してください。
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