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相手方の倒産などにて売掛金が回収不能な場合、企業は適切に仕訳対応を行う必要があります。
回収不能の場合は貸倒損失にて計上しますが、仕訳にあたっては一定の条件を満たしていなければなりません。誤った仕訳処理を行わないよう、適切な対応方法について知っておきましょう。
この記事では、売掛金が回収不能な場合の仕訳方法や、回収不能時の対応などを解説します。
相手方の倒産など、貸倒れの事実が発生して売掛金が回収不能な場合は貸倒損失で処理します。
ただし仕訳にあたっては条件があり、以下いずれかのケースに該当している必要があります。
ここでは、売掛金が回収不能な場合の計上方法や該当条件について、ケースごとに解説します。
「法律上の貸倒れ状態にあるケース」としては、以下のものがあります。
上記いずれかに当てはまる場合は、貸倒損失にて処理することができます。なお計上にあたっては、免除額・切捨額を貸倒損失に計上します。
「事実上の回収不能状態にあるケース」としては、以下のものがあります。
上記に当てはまる場合は、貸倒損失にて処理することができます。なお計上にあたっては、全額を貸倒損失に計上します。
「形式上の貸倒れ状態にあるケース」としては、以下のものがあります。
上記いずれかに当てはまり、支払い督促を行っても弁済がない場合は、貸倒損失にて処理することができます。なお計上にあたっては、備忘価格として1円を残した上で、残りを貸倒損失に計上します。
相手方と連絡が取れない場合など、貸倒れの事実は発生していないものの、売掛金が回収困難な場合は貸倒引当金にて処理を行います。貸倒引当金については、「個別評価」または「一括評価」で計上を行い、どちらで行うかは貸倒れになる可能性の大きさによって判断します。
売掛金が貸倒れになる可能性が大きい場合、個別評価にて計上を行います。また個別評価については以下3つに分類され、それぞれ該当条件や計上方法が異なります。
区分 |
条件(いずれかに該当) |
計上方法 |
50%基準による場合 |
・再生手続き開始の申立て ・更生手続き開始の申立て ・破産手続き開始の申立て ・特別精算開始の申立て ・手形交換所取引停止処分 |
50% (取立見込額・担保は除外) |
取立て見込みがない場合 |
・災害等による損害の発生 ・債務の超過状態が続き、業績好転の見込みがない |
回収不能となる見込額 |
弁済猶予等がある場合 |
・再生計画認可の決定 ・更生計画認可の決定 ・特別精算に係る協定認可 |
5年経過するまで弁済されない部分 (回収見込み部分は除外) |
売掛金が貸倒れになる可能性が小さい場合、一括評価にて計上を行います。また一括評価については、実績基準額または法定基準額を用いて計算を行います。
原則、計算時は「実績基準額」を適用しますが、期末の資本金または出資金が1億円以下の企業など、一定要件に該当する企業は「法定基準額」を適用することも可能です。要件の詳細については「No.5501 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の設定|国税庁」より確認できます。
ここでは、一括評価における「実績基準額」「法定基準額」を用いた計算方法を紹介しますが、他の方法と比べると複雑性が高いため、具体的な計算は税理士に相談することをおすすめします。
実績基準額にて計算する場合、計算式は以下の通りです。
一括評価金銭債権の額×貸倒実績率 |
なお、貸倒実績率については以下の計算式で求めます。
{ (A1+A2-A3)×(12/各事業年度の合計月数)}÷B A1:過去3年の貸倒損失の合計額 A2:各事業年度の個別評価分の貸倒引当金繰入額 A3:各事業年度の個別評価分の貸倒引当金戻入額 B:過去3年の一括評価金銭債権などの合計額÷事業年度の数 |
法定基準額にて計算する場合、計算式は以下の通りです。
(一括評価金銭債権の額-実質的に債権とみられない金額)×法定繰入率 |
なお、法定繰入率については業種ごとに定められており、以下の通りです。
業種 |
法定繰入率 |
卸売業・小売業 |
1.0% |
製造業 |
0.8% |
金融業・保険業 |
0.3% |
割賦小売業 |
1.3% |
その他 |
0.6% |
売掛金が回収不能な場合の対応としては、仕訳対応のほか、「行政による融資制度の活用」なども選択肢としてあるでしょう。融資制度の一つとしては、日本政策金融公庫が行う取引企業倒産対応資金があります。
取引企業倒産対応資金では、一定の要件を満たした企業について、最大1億5,000万円の融資を行っており、特に「回収不能によって事業に支障が生じている」という場合などは効果的でしょう。なお該当要件や申込み先など、詳細については「取引企業倒産対応資金|日本政策金融公庫」より確認できます。
回収不能時の仕訳対応について不明点がある場合は、税理士に相談すると良いでしょう。
ただし、企業によって「回収不能」と判断されるものの中には、合理的な理由がないまま早期に判断されるケースもあります。そのようなケースについては、貸倒損失として計上することはできません。
「自社が持っている売掛金は回収不能か否か」について客観的な判断が難しい場合は、債権回収に注力している弁護士に相談することで、有効な回答が期待できるでしょう。また、もし回収可能性が残っているような場合は、書類作成や裁判手続きなど、回収対応の代理なども依頼することができます。
売掛金が回収不能な場合は貸倒損失にて仕訳対応を行います。
なお、仕訳対応にあたっては「法律上の貸倒れ」「事実上の回収不能」「形式上の貸倒れ」いずれかのケースに該当している必要があり、該当条件や計上方法はそれぞれ異なります。また、売掛金が回収困難な場合は貸倒引当金にて仕訳対応を行います。
仕訳に関する不明点については、税理士に相談すると良いでしょう。ただし、売掛金の回収可能性などの不明点については、債権回収に注力している弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士であれば、回収可能性に関するアドバイスがもらえる上、回収対応に関するサポートも受けられ、速やかな問題解決が望めます。
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