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財産開示手続きを介して確実に債権回収するために必要な知識

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強制執行とは、裁判所を介して法的に債務者の財産を差し押さえるための手続きです。強制的に回収できるという意味では、債権回収では有効な手段ですが、債権額に見合った回収ができる保証はありません。

なぜなら、債務者がどのような財産を持っているのかが不明確なままだと、いざ差し押さえをしても十分な回収ができない場合があるからです。例えばですが、不動産は高額な資産ですが、すでに不動産に担保がかけられていた場合、住宅ローンの弁済が最優先されるため、十分な回収はできないでしょう。

この通り、財産の有無が不明確なままだとどのように差し押さえをすればいいのかわからないと思いますが、差し押さえの確実性を上げるための法的手続きとして財産開示手続きがあります。

財産開示手続きとは、債務者が所有する財産を開示してもらう手続きです。差押えをする上で、財産開示手続きを利用する債権者は少なくありませんが、今回の記事では財産開示手続きの方法、手続きを利用する上での注意点について紹介していきます。

財産開示手続きが債務者へ与える影響とは

財産開示手続きを申し立てることで、手続きが完了する前に債務者自身が和解交渉に応じるケースは少なくありません。これは財産開示手続きが、債務者にとって、素直に弁済に応じた方が良いと考えるだけの影響力があるからです。

では、財産開示手続きは、債務者に対してどのような影響力があるのか確認していきましょう。

過料の制裁によるプレッシャーがある

まず、債務者は財産開示手続きが行われると、裁判所へ指定の期日に出頭をし、裁判所にて嘘の発言をしないことの宣誓、財産の開示をしなければなりません。

  • 出頭拒否
  • 宣誓拒否
  • 開示拒否
  • 虚偽開示

この際に、債務者は以上の4つのことを禁止されており、この4つの項目の内、どれかを破った場合には、罰則として30万円以下の過料が課されます。

希望しない財産を差し押えされるリスクがある

差し押さえの対象財産を債務者は選ぶことはできません。財産開示手続きが完了すると、債権者は自由に債務者の資産を差し押さえすることになりますが、差し押さえされたくない資産の差し押さえを防ぐためにも、手続きが完了する前に和解交渉に応じるのでしょう。

社会的な面におけるプレッシャー

財産開示手続きが行われると、債務者側は社会的な面で信頼を落としかねません。主に銀行から融資を受けづらくなりますが、これは金融機関がこれから差押が行われるかもしれない相手に融資したくないからです。

財産開示手続きの方法とその流れ

財産開示手続きの影響力を確認したところで、財産開示手続きの手順について説明していきます。

申立要件を確認する

まず、申立をする前に、申立可能なのかどうかを確認してください。財産開示手続きの申立要件は、以下の3点になります。

  • 金銭債権の債権者である
  • 執行文が付与された債務名義を取得している
  • 強制執行を行ったが回収できなかった、または強制執行しても回収の見込みがない状態である

対象の債務名義

債務名義とは、公的に債権の存在を示すためのものであり、強制執行を申し立てるために必要な書証です。財産開示手続きの申立で使用できる主な債務名義として、以下のものがあります。

  • 判決
  • 少額訴訟判決
  • 和解調書
  • 民事調停調書
  • 家事調停調書
  • 家事審判調書

また、以下3点の債務名義は、財産開示手続きの申立に使用することはできません。

<対象外の債務名義>

  • 仮執行宣言付判決
  • 仮執行宣言付支払督促
  • 公正証書

参考:「債務名義の取得

また、債務名義は執行文が付与された状態のものが必要になりますが、執行文付与の手続きの方法は、「債務名義の執行文付与の申し立て」を参考にしてください。

裁判所への申立て

申立要件を確認したら、申立書類を揃えた状態で債務者の所在地を管轄する地方裁判所へ財産開示手続きの申立を行ってください。この際に、申立書に貼る収入印紙代として、2,000円、予納郵便切手代として約6,000円が発生します。

必要書類

また、申立に必要な書類は以下の通りです。

債務名義、送達証明書は財産開示手続が終わるまで返還されません。

参照:「裁判所|財産開示手続

財産開示手続きの開始決定

申立てが受理されると、裁判所から大体1ヶ月後に財産開示期日が指定されます。債務者は、財産目録を開示期日の10日前までに提出しなければなりません。当日は、債務者が虚偽の発言をしないことを宣誓した上で、財産に関する陳述をし、債権者は債務者へ質問することができます。

財産開示手続きする上での注意点と弁護士に依頼する必要性

差し押さえの確実性を上げる方法として財産開示手続きを紹介しましたが、財産開示手続きは万能ではありません。

債務者に対する法的拘束力が弱い

財産開示手続きの債務者に対する法的拘束力が強くないためです。債務者が、禁止されている行為に該当する行為を行った場合に課される過料は、罰金(刑罰)とは違います。つまり、該当する行為を債務者が行っても、前科がつくことはありません。

そのため、30万円以下の過料を支払うよりも差し押さえされた方が債務者にとって損害が大きい場合、開示に応じない可能性があります。また、仮に法定で宣誓をしても、財産を隠ぺいしないとは言いきれないでしょう。

対象とならない財産がある

財産によっては開示手続きの対象に含まれません。

  • 債務者の生活に不可欠な衣類や用具
  • 債務者の1ヶ月間の生活に必要な食料・燃料

主に上記の資産など債務者の生活を保証するための資産は財産開示手続きの対象から外れると思ってください。

開示手続きが無効になる要件とは

状況によっては財産開示手続きが無効になる場合があり、以下の3点が開示手続きの無効要件です。

  • 過去3年以内に対象の債務者について財産開示手続が実施されている
  • 債務者の所在地が不明
  • 倒産手続き(破産、民事再生、会社更生)が既に開始している

判決に記載された住所と、開示手続きを申し立てる際の債務者の住所が異なる場合、住民票、戸籍の附票から移転前と移転先の住所の繋がりを証明する必要があります。

弁護士に依頼する必要性

状況によっては、財産開示手続きを行っても、債務者の資産の差し押さえが困難な場合があります。弁護士に依頼することも、確実に差し押さえをするために効果的な方法です。弁護士事務所と連携している業者へ、債務者の財産調査を行ってもらえます。

調査した財産の中から、最もコストパフォーマンスの高い回収方法を提示してもらえるので、差し押さえられた後に弁済額が債権額に満たなかったという事態を防ぐことが可能です。また、手続きに不慣れな方にとって裁判所の手続きは負担が大きいでしょう。

弁護士に依頼することで、強制執行の申立から、差し押さえが終わるまでの手続きの代理人を行ってもらえます。弁護士費用は、債権額に応じて高額になりますが、詳しくは「弁護士費用の相場」を参考にしてください。

まとめ

財産開示手続きは、差し押さえの確実性を上げるために有効な手続きです。しかし、文中でも紹介した通り、手続きが上手く機能しない場合もあります。確実に債権を回収するためには、専門家の手を借りるのが有効だと思いますが、まずは弁護士事務所に相談してみてはいかがでしょうか。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。

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編集部

本記事はベンナビ債権回収(旧:債権回収弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ債権回収(旧:債権回収弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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