自分達の会社に対する債務が残っている会社に対して債権回収をしようとしたところ、相手の会社が支払い能力がない、つまり財産がない場合に遭遇されたことはありますか?
もしもこのような事態に巻き込まれてしまった場合、その企業は債権をもう2度と回収することができないのでしょうか?諦めるしかないのでしょうか?
そんなことはありません。実はこうした不測の事態への債権者保護のために、本来の債務者とは違う、「第三者」から代わりに債権を回収できる権利があるのです。
この記事では、第三債務者について解説するとともに、第三債務者に対する債権回収の手続や流れについてご紹介します。
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「第三債務者」とは
「第三債務者」とは
債権者は債務者である相手方の財産の中に他者の債権があることが判明した場合、その債権を差し押さえることができます。
このように、本来の債務者である相手方に対して債務をもつ者を「第三債務者」と呼びます。
債務者である相手方が支払い能力が無い、あるいは不足している場合は諦めず、第三債務者に対して債権回収を試みてみましょう。
例えば、債務者の銀行預金を差し押さえるとしましょう。 銀行預金は、法律上は銀行に対して預金したものを返してもらう債権となります。
そのため、預金者は預金債権の債権者であり、銀行は預金債権の債務者です。 債務者に対する売買代金の債権回収のために、債務者の預金債権の差し押さえを行う場合には、この関係を説明する際に「債務者」という存在が2つのパターンでてきます。
債権回収をしようとしている債権者をA、債権回収の対象となっている債務者をBとします。 そして、回収対象となっている債権についての債権者はBで、債務者はCとします。 この三者の関係を説明するにあたって、用語として「債務者」という言葉を使うと、Bのことを指しているのか、Cのことを指しているのか、わからなくなってしまうことがあります。
そのため、債権回収の対象者である債務者Bが債権者としての地位を有している債権の差し押さえをする場合に、混同を避けるためにCを「第三債務者」という呼び方をします。
債権を差し押さえる場合の第三債務者
債権回収のケースでは、債権を差し押さえる場合に、第三債務者という用語を利用します。 ここまで例えでお伝えしている銀行預金を差し押さえる場合には、銀行は第三債務者となります。
また、債務者が取引先に有している売掛債権に債権執行をする場合には、売掛債権の債務者はこの3者の関係を説明するのに第三債務者と呼ばれます。 なお、裁判前に債務者の財産の保全のためにおこなわれる仮差押えにおいて、債権の差押えをする場合でも、同様に差押え対象の債権に債務者がいるので、第三債務者という表現を使います。
債権者代位権における第三債務者
あまり多い例ではないのですが、債権回収の手段として債権者代位権という権利を行使することがあります。 債権者代位権とは、民法423条に規定されている権利で、債務者に属する権利を債権者が代わりに行使することが認められている場合の権利です。
例えば、債務者が第三債務者に対して金銭請求を有しており、すでに履行期を到来したにもかかわらずこれを行使しないような場合に、債権者が債務者のかわりに第三債務者に対して行使をすることが認められています。
この場合にもやはり債務者が債権者としての地位を有している場合の債務者のことを第三債務者といいます。
債権質における第三債務者
担保の一つの種類として、債権質という方法が民法に規定されています。 債権を質にいれることで金銭を借りたり、発生している債務についての担保をつけたりする方法です。 債権質をする場合にも、質物となる債権の債務者に対して通知をする必要などがあり、第三債務者という用語が利用されます。
相殺(そうさい)における第三債務者
債権回収の方法として、こちらから請求している債権と、相手から請求される債権がある場合、これらを一方的に消滅させる相殺(そうさい)という民法の制度があります。
たとえば、AはBに対して100万円の金銭請求権をもっていて、BはAに対して同じく100万円の金銭請求権をもっているとします。 AがBに対する100万円の金銭請求権の債権回収を検討する場合に、BがAに対して有する金銭請求権(Aからすれば金銭債務)と差し引き計算をするのが相殺です。 簡易な決済方式として利用することが想定されるのですが、債権回収方法としても利用されます。
Bの財務状態が悪くなると、AがBに対して100万円を払ったにもかかわらず、BはAに対して100万円の返済ができなくなるということが発生しえます。 このような場合に、相殺によって100万円の返済を免れることで、自社の100万円の債権回収を行います。
この際にAが、Bの債務者Cというもう一方に対する債権を差押えており、CはBに対して債権を有しているようなケースでは、差押え前にBとCの間で債権が向かい合っている状況にあります。
この場合、CはBに対する相殺を主張して、この差押えを免れることができます。 しかし、Cが差押え後にBに対して取得した債権で相殺することは、AによるBへの債権の差押えを無にすることになるので、民法で禁止されています。
このときに、AとCとの関係を説明するのに、Cを第三債務者と呼んでいます。 具体的には、民法511条で、第三債務者は債権が差押えられた場合に、差押え後に取得したBに対する債権をもって相殺したと、債権者に主張することはできない、という内容で規定されています。
(差押えを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止)
第五百十一条 差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる。 引用:民法
この規定は、2020年4月1日の民法改正により規定されたもので、従来は判例で認められていたもの(最高裁は昭和45年6月24日判決 )を実務上の用途があることから明文で認められたものです。
債権回収をするときに第三債務者とはどのように関わるか
債権回収をする際に債権者は第三債務者と次のように関わります。
債権者代位権の行使
債権者代位権を行使する場合には、債権者としての地位に基づいて第三債務者と直接交渉をすることになります。 また、第三債務者からの弁済を代わって受領することもあります。
この第三債務者からの弁済は債務者に帰属するものなので、債権者が引き渡しをうけた場合には債務者に返還する必要があります。 ただ、これが金銭債権である場合には、返還すべき義務と回収しようとしている金額を相殺することができるので、これによって債権回収を終えることが可能です。
訴訟をするときに債権の仮差押えをする
訴訟をするときには、債権の仮差押えを行うことがあります。 第三債務者に債務者に対する返済を禁止する命令などは、担当をする裁判官が行うことになります。
そのため、債権者は第三債務者と直接関わることはありません。 第三債務者についての手続きがあるとすると、商業登記事項証明書の取得や、仮差押えに必要な情報の提供(銀行であるような場合には支店の住所・名称の記載されたものを添付する)を行うことがある程度です。
債権執行を行う
債権執行を行う際には、裁判所に申立をした後に、債権者は第三債務者から支払いを受けます。 支払い方法などを巡って債権者と第三債務者は協議をすることになるので、直接関わります。
時期としては、裁判所に申立書を提出した後に、第三債務者に債権差押命令が送達され、第三債務者は差押債権の有無などが記載された陳述書を作成して裁判所に提出します。 差し押さえるべき債権が存在する場合に、債権者は第三債務者と連絡をとって支払いを受けます。
債権質を設定する場合
債権質を設定する場合には、債務者が第三債務者に対して通知を行います。 ですので、債権質の設定段階では債権者と第三債務者は関係がありません。
債権質を行使する場合、債権者は第三債務者に対して、担保されている範囲で直接取り立てを行ったり、供託をさせたりすることができます。 債権質を行使する段階で、債権者は第三債務者と直接やりとりをすることになります。
債権者代位権を行使した場合に第三債務者が拒否するとどうなるか
債権者代位権を第三債務者は拒否することもできれば、拒否できない場合もあります。 その理由は次のとおりです。
債権者代位権は債権者の権利を行使するもの
前提として、債権者代位権において債権者が行使するのは、その債権において債権者である債務者の第三債務者に対する債権を行使するものです。
そのため、第三債務者は債権の行使に対して履行を拒否できる事由がある場合には拒否できますが、拒否できる正当な事由がなければ拒否することは債務不履行となります。
第三債務者が履行を拒める場合
第三債務者が履行を拒める場合としては、履行期がきていない・同時履行の関係にある債務の履行がされていない、といったことが挙げられます。 まず、履行期がきていない債権については、債務者は履行を求められても履行を拒むことができます。
例えば、11月末日が履行期の債権について、11月1日に履行を求められても履行を拒むことが可能で、これは債権者代位権を行使されたからといって変更されるものではありません。
また、売買契約などで同時履行の抗弁権が発生しているような場合にも、第三債務者は履行を拒むことが可能で、こちらも債権者代位権を行使されたからといって変更されるものではありません。
履行を拒めないにも関わらず拒否した場合
以上のような事由がなければ、債権者から請求をされた場合には、履行を拒むことはできません。 もし債務者が履行を拒む場合には、債務不履行責任を負うことになります。
第三債務者は供託をすることがある
第三債務者は債権者代位がされているような場合には、供託をすることで債権者からの請求を免れることが可能です。 供託とは、供託所に金銭を預けて弁済をした効力を受けることができる制度です。 この場合、債権者は供託された金銭から弁済を受けることになります。
債権の仮差押えを第三債務者が拒むとどうなるか
債権の仮差押えをした場合に第三債務者がこれを拒んで本人に返済しても、返済効力は生じません。
債権の仮差押えでは第三債務者に仮差押決定書が送られる
債権の仮差押えが命じられると、裁判所から第三債務者に対して仮差押えを決定した旨の通知が送られます(仮差押決定書)。
陳述催告を無視するとこれによって生じた損害を賠償する責任がある
債権の仮差押えがされると、第三債務者は債務に対する陳述をする必要があります。
仮差押えがされた第三債務者が、債権があるのかないのか・どのような債権なのかを裁判所に陳述するもので(民事保全法50条5項・民事執行法147条)、裁判所から第三債務者に催告することから陳述催告と呼ばれています。 これを無視したり虚偽の内容を陳述したりした場合には、これによって発生した損害を賠償する必要があります。
第三債務者が仮差押えを拒んで支払いをした場合には無効
債権は第三債務者が債務者に返済しても無効です。
そのため、後に本案の訴訟が終わって本差押えがあった場合に「すでに返済をしたので債権は消滅している」と主張しても、債権者には通用せず、再度支払いをする必要があります。 債権が銀行預金で、第三債務者が銀行である場合には、銀行は預金を引き出せなくするので、ATMで下ろすときはもちろん、銀行の窓口に言っておろす場合でも預金を引き出せなくなります。
銀行預金の差し押さえは効果が高い債権回収方法
なお、この債権の仮差押えは、効果の高い債権回収方法です。 このように、銀行預金の仮差押えは、裁判が始まる前の早い段階から、債務者の取引銀行に直接効力を及ぼします。
そのため、銀行や取引先に、トラブルになっているということがわかってしまうので、以後の融資などを受けることを考えると、早くこのトラブルを解消しなければならないと判断するのが通常です。 そのため、債権回収のための交渉がすすむことが期待できます。
債権執行を第三債務者が拒むとどうなるか
強制執行として債権を差し押さえる債権執行を第三債務者が拒んだ場合にも、債権者にはその旨は主張できません。
債権執行をすると第三債務者に債権差押命令が送られる
債権執行を行って債権の差押えを行うと、仮差押えと同様に債権差押命令が第三債務者に対して送られます。
陳述催告を無視するとこれによって生じた損害を賠償する責任がある
債権執行をすると裁判所から第三債務者に対して陳述催告がされるのは仮差押えと同様です。 そのため陳述催告を無視したり虚偽の内容を陳述したりすれば損害賠償義務を負うことになります。
第三債務者がこれを拒んで支払いをした場合には無効
債権執行がされると第三債務者は自分の債権者である債務者に対して弁済しても無効で、債権者に対しては弁済したと主張しても意味はありません。 そのため、債権者から差押えた債権の返済を請求されてもこれを拒むことができなくなります。
第三債務者は供託をすることもできる
第三債務者として債権者と関わりたくない場合は、債権者代位権の場合と同じく供託をすることが可能です。 供託をすれば、第三債務者は弁済をしたものと扱われます。
債権回収は弁護士に依頼するのがよい
最後に、債権回収は弁護士に依頼するほうがよいことを知っておいてください。 債権回収は法律の制度を知っているだけでは成功するのは難しく、債権回収のための制度を知っている上でそれを使うタイミングが非常に大事になります。
第三債務者は債務者の味方であることが多く、タイミングよく債権者代位権・仮差押え・差押えを行わなければ、債権回収もおぼつかないことが多いです。 債権回収に慣れている弁護士に依頼をすれば、法律面でのサポートが得られることはもちろん、手続きもスムーズに行ってもらい、適切なタイミングを逃さないことが重要です。
効果的な方法を弁護士に選択してもらうことで債権回収の可能性はあがる
このページでは、債権者代位権・仮差押え・債権執行を模索するにあたって、第三債務者とはどのような人なのかを中心に解説しました。 ただ、債権回収をするためには、他にもたくさんの方法があり、場合によってはこれらの方法よりも適切であることがあります。
弁護士に相談・依頼して、適切な方法でタイミングを逃さずに確実に債権回収を行うようにしましょう。
財産の差し押えをご検討中の人へ
差し押さえは相手の権利を大きく制限する手続きです。
従って差し押さえをするには複雑なルールがあり、問答無用で相手の財産を取り上げられるものではありません。
また差し押さえを検討中の方は、弁護士に相談・依頼するのをおすすめします。
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