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取引先や、自社のサービスを利用する顧客などから差押えされそうな法人の方は、できるだけ早く手を打った方がいいでしょう。多くの取引先や、他社からの信頼を失いかねないためです。
企業間における取引において、強制執行された時点で契約を破棄する契約内容になっている場合が多く、融資元の銀行が、差押えにでもあえば銀行から融資を受けることができません。これは、会社にとって大きな損害であり、そのために早急に強制執行停止の申立を行うべきです。
では、どのようにして強制執行停止の申立を行うのでしょうか。今回の記事では、強制執行停止の申立をするにあたり、申立の流れとその手順について主に解説していきたいと思います。
参照:「強制執行停止の申立方法の手順と手続きにおける注意点」
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強制執行停止の手続きを行うためには、強制執行への異議申立(控訴の申立)と、強制執行停止の申立、担保金の供託の申立の3つの手続きを行われなければなりません。
この3つの手続きの内、異議申立(控訴の申立)と強制執行停止の申立は同時に行いますが、裁判所から2つの申立が受理された段階で、担保金の供託の申立を行うのが強制執行停止の一連の流れです。
1.強制執行への異議申立(控訴の申立)
2.強制執行停止の申立
3.担保金の供託の申立
強制執行執行停止を行う上で、考えなければならないのが強制執行する相手側がどの債務名義(公的に債権の存在、範囲を証明したもの)を介して強制執行の手続きをするのかであり、それによって申立て先の裁判所や、強制執行停止の手続きの事情が異なります。
参照:「債務名義の取得」
債務名義には、確定判決、仮執行宣言付判決、調停調書、公正証書、仮執行宣言付支払督促がありますが、以下のような違いがあります。
申立先 |
債務名義の執行文付与 |
|
確定判決 |
控訴裁判所(控訴申立) |
○ |
仮執行宣言付判決 |
○ |
|
調停証書 |
執行裁判所(異議申立) |
○ |
公正証書 |
||
仮執行宣言付支払督促 |
簡易裁判所(異議申立) |
× |
少額勝訴判決 |
× |
まず確定判決と仮執行宣言付判決に関しては、一度裁判行われた上で、得られる債務名義のため、強制執行停止の手続きをするためには、控訴の申立と並行して強制執行停止の申立を行わなければなりません。
また、調停証書と公正証書に関しては執行裁判所、仮執行宣言付支払督促に関しては簡易裁判所にて異議申立と共に強制執行停止の申立を行います。
強制執行する側は、債務名義に強制執行の効力を持たせるために債務名義に執行文を付与してもらわなければなりません。そのため、強制執行停止の申立をする側は、債務名義に執行文が付与される前になるべく強制執行停止の申立を済ませるべきです。
しかしながら、少額勝訴判決や仮執行宣言付支払督促に関しては、執行文を付与する必要がありません。
通常、執行文が付与される前に強制執行停止の申立が受理されれば、相手側の強制執行の手続きを中断することができますが、確定判決、仮執行宣言付支払督促に関しては、そのまま強制執行の手続きを進めることができます。
そのため、執行文を付与する必要のない債務名義に関しては早急に強制執行停止の手続きを行うことが必要です。
また詳しくは、「立担保命令から担保金の供託」で解説しますが、強制執行停止の申立が受理された後、裁判所からの命令により申立をした裁判所を管轄する法務局にて申請を行います。
ではより具体的な、強制執行停止の申立方法を、順追って解説していきます。
まず先ほどもお伝えした通り、相手側が取得した債務名義の種類によって申立方法が異なりますが、判決や仮執行宣言付判決の場合、強制執行の判決における抗告として、判決をくだした裁判所へ控訴の申立を行うのが最初の流れです。
また、訴訟記録がすでに高裁に送られている場合、上級裁判所へ申請をしなければなりません。また申立の際には、抗告申立書を申請しますが、申請書の書式などは、「強制執行に対する異議申し立て(抗告の申立)」を参考にしてください。
そして調停調書や公正証書に関しては、現在、相手側が強制執行の手続きを進めている執行裁判所へ申立をしなければなりません。申立の際、異議申立書を申請しますが、申立書は裁判所から送られてくるか、裁判所の窓口に取り寄せることができます。
仮執行宣言付支払督促に関しては、公正証書や調停調書同様に、相手側が督促の申立をした後に、裁判所から異議申立書が郵送されます。書面に必要事項を記入して簡易裁判所へ郵送しましょう。
また、仮執行宣言付督促を受けとった日から数えて2週間が期限なため、期限内に提出をし忘れないように気を付けてください。また督促に関して、以下の記事も参考にしていただけたらと思います。
「督促とは|督促を受けることで起こりうる事態とその対処方法」
強制執行停止の申立ですが、申請先は異議申立(控訴の申立)と同じ裁判所です。
申立をするためには、強制執行停止申立書の正本・副本に加え、疎明資料を添付して申請を行いますが、印紙代の500円、郵券切手代の1082円の手数料がかかります。
申立書の書式に関しては、「強制執行停止決定申立」を参考にしてください。またより正確な書式を希望される方は、「申立て等で使う書式例|裁判所」を参考にしましょう。
申請の際、疎明資料を添付する必要があると記述しましたが、疎明資料とは強制執行を停止するための理由を述べた資料です。差押えされることによって、今後の事業や会社の運営にどのような損害が生じるのかを記述する必要があります。
強制執行停止の申立が裁判所から受理され次第、裁判所から立担保命令が発令されます。立担保命令とは、強制執行停止をしたことにより相手側に損失が生じた時に備え、賠償を受けさせるための担保金であり、必ずしも発令されるとは限りません。
担保金を供託には、立担保命令を発令した裁判所を管轄する法務局へ、強制執行の保証供託書と一緒に法務局へ、担保金を供託します。供託書の書式や雛形については、「強制執行停止の保証供託書|法務省」を参考にしましょう。
担保金額の目安としては、差押対象になっていた資産の約2/3が相場だといわれています。
強制執行停止申立をするためには、弁護士に依頼するのが一般的であり効果的です。
その一番の理由に、強制執行停止申立の手続きをするためには時間が足りないことがあげられます。債務名義に執行文が付与された後は、債務名義の送達証明を送るだけなので、早急に手続きを済ませなければなりません。
参照:「強制執行の一連の流れと差押さえまでの手順の解説」
できることなら、執行文が付与される前に申立を完了させているのがベストですが、先ほども申した通り執行文が付与される前に申立が受理されれば、相手側の強制執行を中断することができるからです。
しかしながら、確定判決や仮執行宣言付支払督促には執行文を付与させなくても、強制執行の効力が発生しているため、手続きを中断することができないため早急に手続きを済ませる必要があります。
とはいったものの、企業間における強制執行に関しては、民事訴訟が行われることが一般的であり、第一審では仮執行宣言付判決がくだされる場合があり、確定判決がくだされることはほとんどありません。
ただ早急に手続きを完了させる必要があることは事実であるため、手続きに慣れている弁護士に依頼するのが賢明な策です。
手続きを早急に済ませるために弁護士に依頼するメリットとして、強制執行停止の手続きが複雑であることがあげられます。特に、企業間の場合の強制執行において、訴訟の手続きに時間を割いている暇はありません。
書類作成から裁判所への手続き(代理人の申請書が必要)だけでも負担が大きいと思いますが、弁護士に委託ことで手続きにかかる負担を大きく減らすことができます。また法定の出廷の際の代理人を任せることもできるため負担を軽減する上で弁護士に依頼することは効果的です。
また、強制執行停止の申立をするということは、前提として強制執行される側であり相手側にとって債務者であることを忘れないでください。
通常、債権者である相手側に法的な正当性があるため、強制執行停止をするためには裁判所への印象は大切です。そのために強制執行停止を受理されるために、申立の際の、疎明資料(強制執行停止する必要性を説いた書類)が占める割合が高いと思います。
案件に慣れている弁護士であれば、裁判所側が申請を受理しやすい訴求ポイントを抑えているはずですので、疎明資料など、裁判所を納得させるための書類を作成する上で、弁護士のサポートは心強いでしょう。
また、強制執行停止の案件を弁護士なら誰でも任せられるわけではありません。弁護士にも各分野によって専門が異なるため、その分野に適した弁護士を選ぶべきでしょう。
そのためにはまず、企業間の訴訟問題を扱っている法人向けの弁護士に依頼するのが賢明だと思います。強制執行含め、企業間同士における債権回収に慣れている弁護士であればお任せして問題ないでしょう。
強制執行を含め債権回収は、強制執行停止は相反する内容ですが、企業間における債権回収に慣れている弁護士であれば相手側の出方も熟知している上に、事業再生における案件を多く取り扱っている場合が多いです。
再三、申し上げますが強制執行停止の申立はなるべく早く行いましょう。また、強制執行停止を検討されている方が、今回の記事を参考にしていただけたら幸いです。
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