取引先から売掛金等の債権を回収したいけど、相手の会社が倒産しそう、あるいは、倒産をしてしまって債権を回収できない。といったお悩みをお持ちではないでしょうか?
債務者である相手企業が、自社以外にも複数の会社に対して債務を抱えていた場合、自社の債権を回収できない場合が存在します。
そのようなリスクを防ぐために、先取特権を行使することができます。
この記事では、先取特権を行使して優先的に自社の債権を回収する方法や先取特権の種類等についてご紹介します。
これらを把握することで正しく先取特権を行使することができますので、ぜひご一読ください。
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先取特権を行使して債権を回収したい方へ
債務者である相手企業が、自社以外にも複数の会社に対して債務を抱えていた場合、自社の債権を回収できない場合が存在します。
先取特権を行使すれば、優先して自社の債権を回収できる可能性があります。
ただ先取特権には種類があり、満たさなければならない条件も存在するのです。
債権を回収したい方は、弁護士に依頼するのがおすすめです。
弁護士に依頼すると、下記のようなメリットが存在します。
- 自身の状況にあった回収方法を提案してもらえる
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先取特権を行使して優先的に債権を回収するには?
冒頭でも述べましたが、先取特権とは債権を他の債権者より優先して回収できる権利です。
債務者が破産した場合は、債権者平等の原則により債権者は手元にある財産を借金している人たちに平等に振り分けます。
債権者平等の原則=債権者は債務者の財産を均等に分けること
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この原則によれば、他の債権者より債権が多い場合であっても、全員が平等に財産を振り分けることになります。つまり債権が多い人が回収できる金額が少なくなり、不利になってしまいます。
このような債権者を保護する目的として先取特権があります。
先取特権を使うことにより、破産法第2条に基づき、他の債権者を差し置いてお金を取り戻すことが可能です。
例)債務者が破産し300万円の財産を保有していた場合
3人の債権者がいた場合、通常、債権者平等の原則により破産手続きで債権者1人あたりに配当される金額は100万円です。
しかし、1人の債権者が先取特権を行使した場合は、この債権者に300万円全額が配当されます。
第二条 この法律において「破産手続」とは、次章以下(第十二章を除く。)に定めるところにより、債務者の財産又は相続財産若しくは信託財産を清算する手続をいう。
9 この法律において「別除権」とは、破産手続開始の時において破産財団に属する財産につき特別の先取特権、質権又は抵当権を有する者がこれらの権利の目的である財産について第六十五条第一項の規定により行使することができる権利をいう。
(引用:破産法第2条9項)
先取特権には3種類ある
先取特権は細かくすると3つの種類に分けられます。
- 一般の先取特権
- 動産を回収する特別の先取特権
- 不動産を回収する特別の先取特権
1つずつ確認していきましょう。
①総財産を回収する一般の先取特権
一般の先取特権には優先順位があり、以下の順番で総財産を回収できる人が決まります。
- 共益の費用…別の債権者と利益のために払った費用のこと。強制執行などの費用を払った債権者
- 雇用関係…給料を受け取れなかった従業員など
- 葬式の費用…負担した葬式費用の回収に困っている債権者
- 日用品の供給…ガス代や電気代などの日用品の支払いを負担した債権者
(一般の先取特権)
第三〇六条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。
一 共益の費用
二 雇用関係
三 葬式の費用
四 日用品の供給
(引用:民法第306条)
②動産を回収する特定の先取特権
動産先取特権とは、債務者の持っている財産価値のある特定の動産のことです。お金を払わない債務者がいる場合には、以下を担保として現金に換えます。
- 不動産の賃貸借…土地にできている果物
- 旅館の宿泊…泊まった時の荷物
- 旅客または荷物の運輸…もらえるはずの荷物
- 動産の保存…もらった商品
- 動産の売買…売った商品
- 種苗または肥料…種苗または肥料でできた果実など
- 農業の労務…仕事によって作られた果物など
- 工業の労務…仕事によって作られた制作物など
(動産の先取特権)
第三一一条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の動産について先取特権を有する。
一 不動産の賃貸借
二 旅館の宿泊
三 旅客又は荷物の運輸
四 動産の保存
五 動産の売買
六 種苗又は肥料(蚕種又は蚕の飼養に供した桑葉を含む。以下同じ。)の供給
七 農業の労務
八 工業の労務
(引用:民法第311条)
③不動産を回収する特定の先取特権
不動産関連の費用を負担したのであれば先取特権により、建物・土地を売ることでお金の回収が可能です。
なお不動産の先取特権をもっている債権者が、他にいる場合には以下の費用を貸した人を優先します。
- 不動産の保存…家を建てるときの費用を貸した債権者
- 不動産の工事…家を建てるのにかかる予定額を貸した債権者
- 不動産の売買…家を売り買いしたときに費用を貸した債権者
(不動産の先取特権)
第三二五条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の不動産について先取特権を有する。
一 不動産の保存
二 不動産の工事
三 不動産の売買
(引用:民法第325条)
(不動産の先取特権の順位)
第三三一条 同一の不動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百二十五条各号に掲げる順序に従う。
2 同一の不動産について売買が順次された場合には、売主相互間における不動産売買の先取特権の優先権の順位は、売買の前後による。
(引用:民法第331条)
先取特権は場合によっては抵当権より先に行使できる
土地の所有権である抵当権が先取特権より強力に思えます。しかし、337条・338条を満たせば339条により、抵当権より先に先取特権を利用することが可能です。
(不動産保存の先取特権の登記)
第三三七条 不動産の保存の先取特権の効力を保存するためには、保存行為が完了した後直ちに登記をしなければならない。
(引用:民法第337条)
(不動産工事の先取特権の登記)
第三三八条 不動産の工事の先取特権の効力を保存するためには、工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければならない。この場合において、工事の費用が予算額を超えるときは、先取特権は、その超過額については存在しない。
2 工事によって生じた不動産の増価額は、配当加入の時に、裁判所が選任した鑑定人に評価させなければならない。
(引用:民法第338条)
(登記をした不動産保存又は不動産工事の先取特権)
第三三九条 前二条の規定に従って登記をした先取特権は、抵当権に先立って行使することができる。
(引用:民法第339条)
債権者が先取特権を使えないケース
動産先取特権は、第三者が先取特権対象の動産を買い取るなどして引渡しを受けた場合、当該動産には行使できないとされています。この場合は動産の売買代金債権に物上代位(※)により権利行使することになります。
(先取特権と第三取得者)
第三三三条 先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない。
(引用:民法第333条)
(※)物上代位(ぶつじょうだいい) |
第三者に先取特権対象の動産を買い取りで引き渡し場合は、売った代金を請求できる権利。 |
まとめ
先取特権は、債務者の借金が財産を上回ったときに利用できる他の債権者を差し置いて優先的にお金を回収できる権利です。
また不動産の先取特権は、家を建てるときにかかった費用・家を建てる前の予定額として貸したお金の2つの条件をクリアすることで抵当権より先に現金回収できます。
先取特権を行使して債権を回収したい方へ
債務者である相手企業が、自社以外にも複数の会社に対して債務を抱えていた場合、自社の債権を回収できない場合が存在します。
先取特権を行使すれば、優先して自社の債権を回収できる可能性があります。
ただ先取特権には種類があり、満たさなければならない条件も存在するのです。
債権を回収したい方は、弁護士に依頼するのがおすすめです。
弁護士に依頼すると、下記のようなメリットが存在します。
- 自身の状況にあった回収方法を提案してもらえる
- 交渉だけで解決できる可能性が高まる
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