
強制執行停止とは、自己の資産を強制執行によって差し押さえられることを回避するための手続きです。強制執行は、個人間と同様に企業間において行われることも、珍しくありません。強制執行は、差し押さえられる側の企業にとっては死活問題であり、そのために現在、差し押さえされる可能性のある企業が強制執行停止の手続きを行うのは必須です。
今回の記事では、強制執行停止の手続きの方法から手順、手続きを行う上での注意点などを紹介していきます。また、差し押さえを目的とする相手側の動きを知るためにも強制執行に関する以下の記事を参考にしてください。
「強制執行で差し押さえするために必要な知識と方法のまとめ」
「強制執行の一連の流れと差押さえまでの手順の解説」
強制執行で財産の差し押えをご検討中の人へ
強制執行し財産の差し押さえが成功すれば、滞納している債権を回収できるかもしれません。その分、タイミングなどが重要になります。財産の差し押さえ(強制執行)をご検討中の方はできるだけ早く弁護士にご相談ください。弁護士に依頼するメリットは以下の通りです。
- 差し押さえのタイミングの検討
- 差し押えの手続き・書類作成
- 差し押え後の債権回収・手続き
- 債務者との交渉 など
弁護士に依頼することで、最大限の金額を回収できる可能性があります。債債務者が破産・再生手続きを行う前に、弁護士にご相談ください。
強制執行停止とは|強制執行停止をする目的
強制執行停止とは強制執行を止めるための法的手続きです。強制執行によって差押さえを受けることは企業にとって死活問題であるため、強制執行停止は行うべきだと紹介いたしましたが、その理由について解説していきたいと思います。
差し押さえによる資金繰りの困窮を回避
まず、一番最初にあげられる理由は、差し押さえにより今後の企業を運営する上での資金繰りが難しくなることです。強制執行には債権を対象にした債権執行がありますが、預金債権を差押さえることができますが、預金債権とはつまりは銀行預金のことを指します。
資金調達を目的に、銀行から融資を受けている企業は多いと思いますが、預金債権を差押さえられるということは、銀行預金は凍結するため、資金調達ができなくなることと同じです。
これは会社の運営資金の元となっている融資を受けられなくなることは、経営上、大きなダメージを与えることになるでしょう。
期限の利益の損失
また、一般的に融資を受ける際に銀行と企業の間で、差押さえを受けた場合、期限の利益を損失する条項を含めた契約内容を結んでいます。期限の利益の損失とは、今まで受けていた融資の返済を、分割で支払う権利を失うことであり、差押さえを受けた段階で銀行側への借入金額を一括で弁済しなければなりません。
取引先の損失の回避
さらに事業を運営する上で、取引先との契約内容に、差押さえを受けた場合には契約解除される項目が含まれていることが一般的です。これは多くの取引先を失いかねないことであり、同時に取引先から会社からの信頼を失うことになるでしょう。
また強制執行では不動産を差し押さえることが可能ですが、運営上、利用していた不動産を差押さえられることは会社にとって大きな損害であることはイメージできます。
強制執行停止の申立の手順と流れ
差押さえされることにより生じるリスクを踏まえた上で、実際に強制執行停止の申立をするための手続きを順追って説明していきます。
強制執行に対する異議申し立て(抗告の申立)
強制執行停止の手続きをするにあたり、強制執行に対する異議申し立てを行われければなりません。そのためには、申立をするタイミングについて理解する必要がありますが、相手側が強制執行の手続きを完了させてしまった後では、強制執行停止手続きが手遅れになるためです。
異議申し立てを行うタイミング
そもそも強制執行をするにたり、相手側は、債務名義を取得しなければなりませんが、債務名義の種類によっての異議申し立ての申請先は変わってきます。
※債務名義とは、公的に債務者(差押さえされる側)に対して債権の存在を公的に証明したものであり、裁判による判決、仮執行宣言付判決、公正証書や調停証書などが債務名義に含まれる。(参照:「債務名義の取得」)
そして異議申し立てを行うタイミングとしては、相手側が債務名義を取得した段階に行うのが一般的です。
申立方法|申立書の書式
企業間における債務名義は、裁判を通して取得することが多いのですが、第一審で判決が確定することがなく、一般的には仮執行宣言付判決が裁判所から下されます。
判決(仮執行付宣言付判決含む)による異議申立に関しては、訴訟記録が高裁に送られるより前であれば、判決を行った裁判所へ申し立てをしなければなりません。
※判決においては異議申立ではなく抗告ですが便宜上、異議申立を使用させていただいています。
また、調停調書や公正証書の場合は、相手側が強制執行を行う執行裁判所へ申し立てを行います。申し立ての際には、異議申立書を申請いたしますが、申立書は相手側が訴訟提起した際に、裁判所から送られてくる際に同封されているか、または裁判所の窓口にて取り寄せることが可能です。
以下、判決における異議申立(抗告)における雛形になりますが、調停調書や公正証書の場合は、保全抗告申立を異議申立、抗告人と欄を債務者に変更することと、宛名は執行裁判所に指定してください。
申立人 株式会社○○ 保全抗告申立書 申立の趣旨 1.原決定の取り消し。 抗告人 株式会社アシロ |
強制執行停止決定申立
強制執行停止をするためには、異議申し立てと同時に、強制執行停止の申立を行わなければなりません。
申立方法:申立書の書式
申立の際には、強制執行停止申立書の正本と副本、疎明資料を添付した上で申請しなければなりません。また、申請の際には印紙代として500円、郵券切手代として1082円がかかります。
申立書のテンプレートして作成の際に、参考にしてください。
申立人 株式会社○○ 強制執行停止申立書 収入 平成○年○月○日 申立の趣旨 (債務名義が仮執行宣言付判決の場合) 申立事由 (債務名義が仮執行宣言付判決の場合) |
また申請書の書式に関しては「申立て等で使う書式例|裁判所」も参考にしていただけたらと思います。
疎明資料の内容
申立の際には、疎明資料を添付する必要がありますが、疎明資料とは強制執行を取り消すに足りる理由を記した書類であり、一般的には、執行によって生じる損害について記述することが多いようです。
この疎明文の内容次第によって、執行停止の判決がおりるかどうかが別れますが、どのような内容が裁判所から執行停止の許可がおりるかは断言できません。そのため、弁護士など法律の専門家へ相談されることをオススメします。
裁判所からの立担保命令から担保金の供託
強制執行停止申請書が裁判所から正式に受理されたら、今度は裁判所から立担保命令がくだされます立担保命令とは、申立者が担保金を法務局へ供託するためのものですが、強制執行停止をすることで、相手方に損害が生じた場合に、相手側が賠償を受けられるための担保金です。
また、立担保命令がくだされない場合もありますが、命令がくだるケースが多いため担保金は供託するものだと思ってください。
申立方法|担保金の相場
担保金と供託するためには、強制執行停止の保証供託書と共に、立担保命令を発令した裁判所の所在地を管轄する法務局へ供託いたします。供託書のフォーマットに関しては、「強制執行停止の保証供託書|法務省」を参考にしてください。
また、担保金の相場として、差押さえ対象になる資産の約2/3の金額が目安になります。
強制執行停止を行う上での注意点
強制執行停止の手続きをする上での、注意点について紹介していきます。
強制執行停止はできるだけ早く申立する
まず、強制執行は債務名義を取得した後に手続きが行われますが、手遅れになる前に強制執行停止の手続きはなるべく早く行うべきです。
債務名義に執行文付与されるまでに申請する
強制執行をする上で、債務名義に執行文付与するための申立を行いますが、執行文とは債務名義に強制執行の効力を持たせるための文書であり、債務名義に執行文が付与された後は相手方の強制執行の手続きを止めることができません。
逆を返せば、執行文付与がされる前に、強制執行停止の申立が受理されれば相手側は手続きを進められなくなるため、なるべく早く手続きは行うべきなのです。
手続きが複雑なため弁護士へ依頼するのが一般的
しかしながら、執行文付与の手続きは時間のかかる手続きではないため、強制執行停止の手続きにすぐ済ませるべきですが、手続きが複雑なため法律の素人で済ませることはあまり現実的ではありません。
そのため弁護士など手続きに慣れている専門家へ依頼することをオススメしますが、企業向けの訴訟対応に慣れた法律事務所に依頼すると手続きがより円滑に進められます。
強制執行停止決定後に相手方に決定書を送付する
次に、強制執行停止決定がでた後は、相手側に決定書を送付しましょう。もし決定後に、差押手続きを相手側が行った場合、停止することができない危険性があるためです。
相手側が行った差押手続きが、善意無過失(停止決定の事実を知らない)だと判断された場合、差押手続きが有効になる可能性があります。逆に、既に決定書を相手側に送っておけば、善意無過失だと判断されることはないため、差押さえされる心配がありません。
もし、相手側が決定書を送られているのにも関わらず、差押手続きを行った場合、悪意重過失(停止決定の事実を知っている)と判断されるため、損害賠償を請求できる上に、相手側の弁護士が懲戒免職になる危険性があるため、差押さえ手続きに踏むこむことはないでしょう。
まとめ
現在、差押さえされるリスクのある企業の方は、当記事で紹介した通り、なるべく早く強制執行停止の手続きを行うべきです。しかしながら、申立に必要な手続きは複雑なため、弁護士に依頼することをオススメします。
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