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代物弁済(だいぶつべんさい)とは、債務者の資産を債権者に譲渡することで債務の弁済をすることを目的とした手続きになりますが、債権者と債務者の間には金銭的な利害が絡むため、両者共に税金の存在を無視することはできません。
主に債務者(弁済者)の方にとって、代物弁済をする上で発生する税金に関する情報は気になるポイントだと思いますが、当記事では代物弁済における債務者、債権者の双方が負担する税金に関する情報をまとめました。
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早速ですが代物弁済を行う上で、債務者が負担する税金について確認していきましょう。
まず、代物弁済によって債務者の債権者に対する債務は全額免除されますが、資産を譲渡する債務者を売主、資産を譲受する債権者を買主、免除される債務を資産の売却価格として考えるため消費税が発生します。
800万円の債務を弁済する目的で、債務者から債権者へ資産を譲渡するために代物弁済が行われた場合を想定してください。
この場合、債務者の資産を債権者が800万円(税込み)で買い取りしたと考えることができるため、発生する消費税は800万円×8%/(100%+8%)=59万2592円です。消費税率8%の計算になりますが、債務者は国税庁へ59万2592円の消費税を納めなければなりません。
また、代物弁済において弁済する目的の資産として不動産が用いられることが多いですが、不動産の引き渡しには建物と土地の両方を考える必要があります。
不動産を債務の弁済に用いる場合、建物に関しては課税売上高に計上されますが、土地に関しては非課税売上高として計上されるため、土地を資産に弁済した場合、消費税は発生しません。課税売上高と消費税の控除に関する内容として詳しくは、以下の記事を参考にしてください。
▶「債権譲渡における消費税と消費税の控除を受ける全手順」
譲渡所得税は、債務者が代物弁済において最も負担の重たい税金でしょう。譲渡所得とは債務者が資産を譲渡することで発生する所得であり、譲渡所得税はそれに伴う税金です。
譲渡所得税は、不動産の場合と動産の場合で取り扱いが異なるため、別々に確認していきましょう。
譲渡所得税を計算するためには譲渡所得価格を算出する必要がありますが、以下の二つの手順を踏んで譲渡所得税を求めるのが一般的です。
①不動産譲渡所得
譲渡所得=不動産の時価評価額(もしくは譲渡価格)-所得費(購入代金・修理費用+譲渡費用)-特別控除
※(1)代物弁済でなく一般の不動産の譲渡(売買)においては、譲渡価格を用いて譲渡所得を計算する。 |
②不動産譲渡所得税
譲渡所得税=譲渡所得×(所得税率+住民税率)
上記の通り、譲渡所得税には所得税と住民税の二つが含まれていますが、売却した年の1月1日から数えて債務者の不動産の所有期間が5年を超える場合(長期譲渡所得)と5年以下の場合(短期譲渡所得)によって税率が変わります。
所得税 |
住民税 |
|
長期譲渡所得 |
15% |
5% |
短期譲渡所得 |
30% |
9% |
③例
例えばですが、とある取引先への1000万円の債務に対して、10年間、所有していた時価評価額700万円の自社の不動産で代物弁済する場合を想定してください。この時、法人同士の代物弁済になるため、控除額はありません。
所得費を、700万円×5%=35万円とすると譲渡所得は、700万円-35万円=665万円になります。所有年数が5年を超えるため、長期譲渡所得として税率がかかることから、譲渡所得税は665万円×(15%+5%)=133万円です。
代物弁済の対象の資産が不動産以外の場合、譲渡所得税は総合課税として計上するため、法人税率を元に計算しなければなりません。そのため譲渡所得税は譲渡所得×法人税率によって求められます。
法人税率は、中小法人と大法人によって取り決めが異なりますが、以下の通りになります。
≪法人税率≫
中小法人 |
年800万円以下 |
19% |
年800万円越 |
23.4% |
|
大法人 |
23.4% |
また、譲渡所得の取り決めは、短期譲渡所得(資産の所有年数5年以下)か長期譲渡所得(所有年数5年超)によって異なりますが、取り決めは以下の通りです。
・短期譲渡所得=譲渡価格-所得費-控除額50万円
・長期譲渡所得=(譲渡価格-所得費-控除額50万円)÷2
《例》
取引先への700万円の債務に対して、8年間、所有していたとある資産(所得費)によって代物弁済する場合を想定してください。この場合、資産によって債務の弁済が行われるため、譲渡価格は400万円になります。
また、所有年数が5年超えているため譲渡所得は、(400万円-200万円-50万円)÷2=75万円です。譲渡人が中小法人でかつ、所得の総額が800万円以下の場合、法人税率は19%となるため、譲渡所得税は、75万円×19%=142500円になります。
参照:「譲渡所得の計算のしかた(総合課税)|国税庁」
不動産など時価評価額が設定される資産を用いて代物弁済を行う場合、債務額と資産の評価額に差額分が生じるケースがほとんどでしょう。
もし資産の評価額に対し債務額が高額であるならば(債務額>資産の評価額)、債務者はその差額分の弁済を免除されたことになります。
会計上、免除された金額を利益(債務免除益)と計上するため、債務者は差額分の金額に課せられる税金(法人税)を納めなければなりません。
先ほどの不動産譲渡所得税の例を用いますと、1000万円の債務に対して時価評価額700万円の不動産にて代物弁済を行っているため、債務免除益は、1000万円-700万円=300万円です。
債務者が中小法人でかつ年間あたりの所得総額が800万円超えている場合、債務免除益によって納める所得税は300万円×23.4%=702000円になります。
では、今度は代物弁済が行われる中で、債権者側が納める税金について確認していきましょう。
債権額(債務額)と資産の評価額に差額が出た場合の代物弁済について説明しましたが、債権額より資産の評価額の方が上回る場合(資産の評価額>債権額)、今度は債権者がその差額分に課せられる税金を納めなければなりません。
この場合、贈与税として税金を納めることになりますが、計算式は以下の通りになります。
贈与税=(資産の評価額-債権額-基礎控除額110万円)×贈与税率-控除額
上式における贈与税率と控除額に関しては、資産の評価額と債権額の差額から基礎控除額を差し引いた金額によって求められますが、以下の表を参考にしてください。
評価額-債権額-基礎控除額 |
税率 |
控除額 |
200万円以下 |
10% |
0円 |
300万円以下 |
15% |
10万円 |
400万円以下 |
20% |
25万円 |
600万円以下 |
30% |
65万円 |
1000万円以下 |
40% |
125万円 |
1500万円以下 |
45% |
175万円 |
3000万円以下 |
50% |
250万円 |
3000万円超 |
55% |
400万円 |
また、債務者が債権者から、清算金(債権額と資産の評価額の差額)を受け取った場合、債権者へ贈与税は発生しません。
とある債権者が600万円の債権を弁済してもらうために、債務者から資産評価額1000万円の不動産にて代物弁済を行ってもらって場合を想定してください。
評価額1000万円-債権額600万円-基礎控除額110万円=290万円のため、贈与税率は15%、控除額は10万円になります。贈与税率は、290万円×15%-10万円=335000円です。
代物弁済において、債権の弁済の対象に、不動産が譲渡されることが多いですが、債権者は不動産を譲り受けたことによって発生する税金として、不動産取得税を納めなければなりません。
不動産取得税=固定資産税評価額×税率
不動産取得税は、上記の式によって求められますが、税率に関しては4%になります。また、建物と土地、それぞれ別々に不動産取得税を求める必要がありますが、土地に関する不動産取得税の税率は、平成30年3月31日までに取得した場合は3%です。
また、住居を目的とした不動産に関しては、土地と建物それぞれにおける不動産取得税の控除を受けることが可能ですが、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
参照:「かんたんに不動産取得税を計算する方法とよくある質問まとめ」
債務者から債権の弁済をしてもらうために、債務者から土地の資産評価額1000万円、建物の資産評価額500万円の不動産を譲受することで、代物弁済を行いました。
この場合、土地に関する不動産取得税は1000万円×3%=30万円、建物の不動産取得税は500万円×4%=20万円のため、債権者は総額50万円の不動産取得税を納める必要があります。
代物弁済において譲渡所得税は、債務者にとって負担の重たい税金だと思いますが、状況や条件次第では非課税となる場合があります。
まず譲渡所得税が非課税になるためには、債務者の資産状況が無資力であることが前提です。その上で強制執行、または破産手続きなど、債務者の意思とは別に強制的に資産の譲渡が行われる場合、譲渡所得税は非課税として扱われます。
債務者の意思で資産の譲渡が行われた場合においても、譲渡所得税が非課税になる場合がありますが、そのためには以下の3つの要件を満たさなければなりません。
一つ目の要件は、資産の譲渡が行われる前に既に、債務者自身が債務超過であることです。債務超過とは債務の総額が資産の総額を上回る状況であり、債務の弁済ができない状態を指します。
資産の評価額が債務額を上回る場合、債務者は債権者から余剰分のお金(清算金)を受取ることが可能ですが、受け取った清算金の全額が他の債務の弁済に充てられることが二つ目の要件です。
清算金を受取らない、または資産の評価額が債務額を下回る場合も同様の扱いになります。
3つの要件は債務者が強制換価を避けられない状況にあることですが、すでに債権者から競売の申立をされている、訴訟や支払督促を受けているなど、今後、強制換価が避けられない状況のことです。
代物弁済において債務者、債権者の双方にとって税金の納付は無視できない問題でしょう。これから代物弁済を行うであろう方々に今回の記事を参考にしていただけたらと思います。
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