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債権と債務と聞いて、その違いを正確に答えられる人は少ないと思います。この記事では、用語の説明はもちろん、事例を交えて、わかりやすく解説していきます。
まず、債権(さいけん)とは、相手方に特定の行為をさせる権利のことを言い、債務(さいむ)とは、相手方に特定の行動をする義務のことを言います。
では、実生活において、どのようなことが債権・債務の関係になるのでしょうか?
不動産の売買契約を例に、債権と債務の違いを確認してみましょう。
AさんがBさんから不動産を購入した場合、Aさんは金銭を支払う義務(債務)を負い、不動産を受け取る権利(債権)を得ます。
一方、BさんはAさんから金銭を受け取る権利(債権)を得、不動産を引き渡す義務(債務)を負います。
この記事では、債権・債務の定義や違いについて、より詳細にお伝えしていきます。
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では、早速ですが債権と債務の言葉の定義を通じて、両者の違いを確認していきましょう。
まず、債権とはある特定の人に、ある特定の行為、給付を請求することができる権利です。わかりやすい例で説明すると金銭の支払請求、物の引き渡し請求などをあげることができます。
そして債務とはその反対に、ある特定の人へ、ある特定の行為、給付を提供する義務を表す言葉です。債権と債務は対義語であり、特定の行動を請求する人(債権者)と、される人(債務者)の両者が存在することで成立します。
債権を理解する過程で、物権の言葉の意味と混合する人も少なくないでしょう。
この二つの権利の違いは、物権は物に対して発生する権利であり誰に対しても主張することができる権利なのに対して、債権は人に対して発生する権利であり、当事者間でのみ成立する権利だということです。
例えば、①Aさんがある土地の所有者である場合と、②Aさんがある土地をBさんから月額20万円で土地を自由に使用する権利(賃借権)を与えてもらった場合の二つの例を比べてください。
もし、Aさんが第三者のCさんに、その土地を貸したり売却した場合どうなるでしょう。①の場合、Aさんはある土地の所有者であり、土地に対して物権を所有しているため、Cさんに貸したり売却するのはAさんの自由です。
しかしながら②の場合は、土地に対して物権を所有しているのはBさんであり、AさんはBさんとの契約上の範囲内でのみ自由に使用することができるため、第三者へ貸したり売却することはできません。
Aさんは、月額20万円の支払(債務)の代わりに、Bさんに対してのみ土地の使用を要求する権利(債権)を所有しているに過ぎないのに対し、Bさんは誰に対しても土地の所有権を主張することができます。
債権と債務についてより理解するために、シチュエーション別に分けて債権と債務の関係性を確認していきましょう。
まず双務契約における債権債務について確認していきますが、双務契約とは契約を結んだ当事者が双方共に債権者であると同時に債務者である契約です。
主要な例ですと売買契約があげられますが、商品を買う人は商品を売る人に対して、商品の引き渡しを請求する権利(債権)があると同時に、商品の代金を支払う義務(債務)が発生します。
それとは反対に、商品を売る人は、商品を買う人に対して、代金の支払を請求する権利(債権)と同時に、商品を引き渡す(債務)が発生します。
債権 |
債務 |
|
販売者 |
代金の請求 |
商品の引き渡し |
購買者 |
商品の請求 |
代金の支払 |
また、双務契約の一つに労働契約も含まれますが、コンビニとパートの大学生を例に債権と債務をイメージしてみてください。
雇い主であるコンビニは、パートの大学生に対して労働を要求する権利(債権)があると同時に、労働の対価に見合った給与を支払わなければなりません(債務)。
それとは反対に、パートの大学生は、コンビニに対して給与を請求する権利(債権)があると同時に、給与に見合った労働を提供する義務(債務)が発生します。
|
債権 |
債務 |
被雇用者 |
給与の請求 |
労働の提供 |
雇用主 |
労働の要求 |
給与の支払 |
次に片務契約上の債権、債務について確認していきますが、双務契約とは対照的に片務契約では、片方だけが債権者であり、もう片方が債務者であるという契約です。
そのため債権と債務も一つずつになりますが、例えばAさんがBさんに対して、パソコンを無料で譲り渡す契約(贈与契約)を結んだ場合を想定してください。
この場合、AさんはBさんへパソコンを引き渡す義務(債務)が発生する代わりに、Bさんはパソコンの引き渡しを請求する権利(債権)が発生します。
その反対に、AさんはBさんに対して何も請求する権利(債権)がありませんが、同時にBさんもAさんに対して何の義務(債務)を背負う必要がありません。
すなわち債権と債務が一つずつであるため、片務契約だということがわかりますが、消費賃借契約も片務契約の一つに含まれます。消費賃借契約とは、借主が貸主からある物を消費する目的で借り、貸主へ借りた物をそのままの状態で返す契約です。
例えばAさんがデートのランチ代が足りないために友人のBさんから、2000円を借りたとします。
Aさんはその2000円をランチ代で消費しますが、後々、Bさんに対して2000円を返さなければなりません(債務)。それとは反対にBさんはAさんに2000円を要求する権利(債権)が発生します。
反対にAさんはBさんに対して債権を持たず、BさんはAさんに対して債務を持たないため、債権と債務が一つずつの片務契約であることがわかります。
次に、相殺における債権債務を確認していきますが、相殺とは互いに対して発生している別々の同じ性質の債権と債務を帳消しにする行為です。
例えばですが、自社に対して買掛金債務(借金)を抱えたまま取引先が破産手続きを行ったと想定してください。当然、取引先から売掛金債権を回収することは難しくなりますが、この時、その取引先に対して借入金債務(借金)が発生していたとします。
取引先の会社がそのまま破産した場合、取引先への売掛金債権はなくなりますが、反対に借入金債務はなくなりません。しかしながら、互いの債権、債務を相殺することで取引先に対して借入金債務の弁済をする必要がなくなります。
相殺は債務者の了承を得ずに内容証明郵便を送ることでできますが、詳しくは「債務者が破産した場合の債権者の取るべき行動」を参考にしてください。
また、ある取引先の会社へ売掛金債権を所有しているが、その会社を吸収合併することになった場合、取引先の会社への売掛金債権はどうなるのでしょうか。
この場合、債権者(自社)と債務者(取引先)は一つの会社(同一)になるため、自社と取引先が互いに抱えている債権・債務は相殺されます。
もし親族の誰かが亡くなった場合、その人の債権・債務はどうなるのでしょうか。相続人は被相続人の財産を相続する場合、被相続人の債権だけでなく債務も引き継がなければなりません。
そのため相続できる債権と債務の額を比較した上で、相続人になるかを判断するべきです。もし、相続人からの債務を相続したくない方は、「親の借金を肩代わりしない為に出来る5つのこと」を参考にしてください。
では、最後に第三債務者が存在する場合の債権債務の関係について確認していきましょう。第三債務者とは債務者に対する債務者のことであり、一定の要件の下で、債権者は第三債務者から直接弁済を受けられる場合があります。
第三債務者が存在するケースとして、債権執行があげられますが、債権執行とは債務者の債権を差押さえするための強制執行手続きの一種です(参照:「債権執行の申し立ての流れ」)。
例えばですが、会社A(債権者)が取引先の会社B(債務者)に対して未回収の売掛金債権1000万円を所有していていた場合を想定してください。
この時、会社Bは自社の取引先C(第三債務者)に対して、貸付金債権800万円を所有していることが判明したため、AはBのCに対する貸付金債権800万円を差押さえすることにしました。
<債権執行前>
|
会社A |
会社B |
会社C |
会社A |
× |
売掛金債権 |
× |
会社B |
売掛金債務 |
× |
貸付金債権 |
会社C |
× |
貸付金債務 |
× |
もし、債権執行の手続きが無事、完了した場合、AはCから直接、弁済を受けることができますが、今回のケースではCから満額の弁済を受けても1000万円-800万円=200万円のため、元のBへの債権額には届きません。
この場合、Aは残額の200万円をBへ請求することができます。
<債権執行後>
|
会社A |
会社B |
会社C |
会社A |
× |
売掛金債権の残高 |
貸付金債権 |
会社B |
売掛金債務の残高 |
× |
× |
会社C |
貸付金債務 |
× |
× |
次に、第三債務者が存在する例として債権譲渡を紹介しますが、債権譲渡とは債権の内容を変更しないまま、第三者へ債権を移転する手続きであり、債権回収においてよく用いられる手続きです。
上記の例にそのまま当てはめて考えると、会社Aは会社Bから売掛金債権の弁済をしてもらう当てがないため、会社Bが所有する貸付金債権を譲渡してもらうことにしました。この場合、会社Aは譲受した貸付金債権の債務者である会社Cから直接、弁済を受けることになります。
また、会社Cからの弁済額が元の売掛金債権の額に満たなかった場合に備えて、契約書に会社Bから残高の弁済を受けるための文面を加えておきましょう。
債権譲渡によって第三債務者から弁済を受けるためには、満たさなければならない要件があります。
第三債務者が存在する例として債権者代位権について説明しますが、債権者代位権とは債務者が所有する債権を、その債権の(第三)債務者に対して行使することができる権利です。
債権者代位権を行使する要件として、「債務者に対する債権が金銭債権でかつ弁済期を迎えている」、「債権代位権の対象の債権がまだ行使されていない、かつ一身専属ではない」、「債務者に弁済能力がない」があげられます。
先ほどの例にあてますと、会社Aは会社Bから弁済期を過ぎているのに、売掛金債権の弁済が行われない上に、会社Bには弁済能力がないことが判明したため、債権者代位権を行使することで、会社Cから貸付金債権の弁済を受けることになります。
冒頭でも申しましたが、我々の日常のあらゆる状況において債権債務が存在します。当記事を通して債権債務の存在を身近に感じていただけたら幸いです。
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