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代物弁済による債権回収と注意点について

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代物弁済による債権回収と注意点について

代物弁済(だいぶつべんさい)とは、債務の弁済の代わりに債務者の特定の資産を債権者へ譲渡する手続きです。

債権回収の手段として代物弁済は広く使用されますが、債権回収を目的として代物弁済を使用する際には、満たさなければならない条件や利用する上での注意点がいくつかあります。

今回の記事では、代物弁済における利用方法から、注意点、注意点に対する対処方法までをまとめました。

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この記事に記載の情報は2024年07月22日時点のものです

代物弁済とは|代物弁済を理解するための基礎知識

手始めに代物弁済をおこなうことで、どのような効果が生じるのか、また代物弁済の効果が発生するための要件事実について確認していきます。

代物弁済の効果

冒頭でも申しあげましたが、代物弁済とは債務者の資産を債権者へ譲渡することで債務の弁済をするための手続きです。

代物弁済の効果が発生するための要件事実

代物弁済の効果を発生させるためには、以下3つの要件事実を満たす必要があります。

①債権の存在

まず当たり前のことですが、債権者と債務者の間に債権が存在することが要件のひとつです。

②本来の給付とは異なる給付である

そして元々の給付とは、性質の異なる給付であることも要件の内のひとつになります。

異なる性質というのは、債権の内容が金銭債権であった場合、債務者は金銭を持って債権者に弁済しなければならないところ、金銭で弁済するのが難しいため、債務者が所有する金銭とは異なる財産(不動産、動産、債権)を弁済に用いることです。

③当事者間の契約

これも当たり前かもしれませんが、代物弁済における契約内容が債権者と債務者の間による契約であることも要件のひとつになります。

対象にできる資産

代物弁済では、債務の弁済の代わりに不動産が譲渡されることが多いですが、動産、債権も代物弁済における資産の対象になります。

債権を対象とする場合、債務者が保有する売掛金債権、貸付金債権、動産を対象とする場合は、債務者が自社で保有している商品の在庫が対象になることが一般的です。

代物弁済を利用する上での注意点とその対処方法

代物弁済を行う上で、債権者は事前に注意すべき点がいくつかありますが、注意点と対象方法について確認していきましょう。

対象の資産の価格が弁済額に満たない場合

対象の資産の価値に寄らず債務は消滅する

基本的に資産の価値に関わらず、代物弁済では資産が譲渡された時点で債務の弁済が行われたことになります。そのため資産の価値が債権額に満たない場合でも、債務が消滅した扱いになるのが代物弁済です。

反対に資産の評価価格が債権額を超過する場合は、その差額分を清算金として債権者は債務者へ支払わなければなりません。

対処方法:契約書に特約を設ける

債権者にとって、差額分の弁済も行って欲しいと思われるのは当然のことですが、代物弁済の契約書を作成する際に、残額分の弁済に関する特約を設けることで、債務者に対して残高分の債務を残すことは可能です。

特約に関しては、「契約書の作成」の第4条を参考にしてください。

対象の資産の価格が債権額を著しく上回る場合

譲渡する資産の価格が債権額に対して大きく超過する場合、債務者は債権者へ不当利得返還請求をすることができますが、代物弁済自体が取消になる危険が生じます。

対処方法:譲受する資産の価格を事前に評価しておく

資産の価格と債権額に大きな開きを出さないためにも、事前に資産の価値を定めておくべきです。

譲受する資産が不動産であれば、不動産鑑定士、売掛金債権であるならば債務者と第三債務者(債務者の所有する債権に対する債務者)の契約内容、帳簿にて債権の価値を確認しましょう。

代物弁済する前に第三者に資産を譲渡されるリスク

代物弁済において所有権が債権者へ移転されるまでは、譲渡される資産の所有権は債務者にあります。そのため、債務者が第三者へ資産を譲渡することが可能であり、所有権が移転された場合、代物弁済の効果は発生しません。

特に代物弁済は、経営が傾いてる債務者によって使用される例が多く、より高額な債権を所有している債権者への弁済のために資産を譲渡したいと思うのが債務者側の本音でしょう。

対処方法:代物弁済予約を利用する

第三者に譲渡されるのを避けるためには、所有権の移転の仮登記(代物弁済予約)を利用することをオススメしますが、詳しくは下記の記事を参考にしてください。
 
参照:「代物弁済予約を用いて債権を確実に保全する為の知識のまとめ

代物弁済の対象が他社からの買い付け商品の場合

代物弁済において債務者の商品を対象にすることもできますが、その場合、他社から買い付けた商品かどうか確認してください。

他社からの買い付けた場合、その商品に対して売掛金を残している可能性があるためであり、売掛金債権者から先取特権を主張される可能性があるからです。

売掛金債権者は、先取特許権を主張することで、優先的に、その商品と商品に対する売掛金債権を差し押さえることができます。

参照:「動産売買先特許権による物上代位

対処方法:清算済みの資産か確認する

債務者が保有している商品の在庫を対象にする場合は、他社から買い付けた商品かどうか、または売掛金債権が発生していないか事前に確認しましょう。

代物弁済の効力が発生するまでの手順

代物弁済において資産が譲渡されるまでの手続きの流れを確認していきます。

契約書の作成

債権者と債務者との間で代物弁済の契約を作成するのが最初のステップです。

契約書の雛形

契約書のテンプレートとして、以下の契約書の例を参考にしてください。

 
平成○年○月○日

代物弁済契約書

株式会社A(以下「甲」という)と株式会社B(以下「乙」という)は、以下の通りに代物弁済契約を締結した。
 

第1条【債務】

乙は甲に対して平成○年○月○日に締結した売買契約に基づき発生した、現在、○円の買掛金債務を負担している。
 

第2条【代物弁済】

前条の甲に対する買掛金債務の代物弁済として、乙は乙の所有する後記不動産(以下「本件不動産」)の所有権を甲に移転するものとする。
 

第3条【所有権移転登記】

乙は、本契約締結後、本不動産における所有権移転の申請手続きを行うものとし、その費用は
全て乙が負担しなければならない。
 

第4条【清算】

1.本件不動産の価格が甲の債権額を超える場合、甲は、乙から本件不動産の引渡を受ける際に、超過額を支払うものとする。
2.本件不動産の価格が、債権額に満たない場合、乙は不足額を甲に支払わなければならないものとする。
 
以上の通り本契約が締結したため、本書2通を作成し、甲乙各1通を保有する。
 
 

甲 住所
   指名 株式会社アシロ
   代表 アシロ太郎 印
乙 住所
   氏名 株式会社あしろ
   代表 あしろ二郎 印

【土地の表示】
所在
地番
地目 宅地
地積 ○平方メートル
 

不動産の場合:所有権の移転登記

代物弁済の対象となる資産が不動産の場合は、所有権を移転させるために所有権移転の登記手続きをしなければなりません。

申請書類

登記の申請をするためには、以下の書類を譲渡される不動産を管轄する法務局にて提出する必要があります。

  • ①登記申請書

  • ②登記識別情報

  • ③債務者の印鑑証明書

  • ④債権者・債務者双方の会社謄本

  • ⑤譲渡する不動産の固定資産価格証明書

  • ⑥代物弁済契約書

  • ⑦登記委任状(弁護士・司法書士に依頼した場合)

会社謄本に関しては、法務局にて取り寄せることが可能です。また、登記識別情報とは不動産の所有権を示すための番号であり債務者(移転前の所有者)が保有しているため債務者へ確認しましょう。

登記申請書に関しては、法務局にホームページにて確認することができるため、「不動産登記の申請書様式について|法務局」を参照にしてください。

登録免許税

所有権移転の登記の申請をするにあたり登録免許税を納めますが、土地と建物それぞれ別々に納める必要があり、免許税は以下の通りになります。

  • 土地:不動産価格の20/1000(平成29年3月31日までの場合は15/1000)

  • 建物:不動産価格の20/1000

債権の場合:対抗要件の取得

代物弁済の対象となる資産が、債務者が所有する債権であった場合、当然、その債権が債務者から債権者へ譲渡されますが、債権者が譲受した債権の効力を発生させるためには、対抗要件を取得しなければなりません。

対抗要件とは、第三債務者(譲渡される債権に対する債務者)、第三者(債権者・債務者・第三債務者以外の人)に対して債権の所有者であることを主張するための要件です。

対抗要件を取得するためには、内容証明郵便を介して第三債務者へ債権が譲渡された旨を伝える通知を行うか、債権譲渡登記制度を使用しますが、詳細に関しては「対抗要件を取得するための2つの方法」を参照にしてください。

動産の場合

代物弁済において譲渡される資産が動産である場合、契約書が成立している段階で、所有権は債権者へ移転しています。しかしながら、対象の資産の引き渡しが行われるまで占有権は移転されません。

そのため判例上は、引き渡しが行われる(占有権が債権者へ移転)ことで、初めて債権者へ動産に関する効力が発生します。
 
※占有権:その物の所持・使用するための権利。所有権者以外の第三者に主張できる。

代物弁済に適した弁護士の選び方

では最後に代物弁済を弁護士に依頼する上で、弁護士を選び基準について紹介いたします。

企業間の債権回収の実績

まず、前提として企業間における債権回収の実績に富んだ法律事務所を選びましょう。各事務所、弁護士によって専門性が異なることや、クライアントの傾向が法人か個人かで異なるためです。

法人を対象とした債権回収の実績を確かめる上で、法律事務所のホームページの内容を参考にすることをオススメします。実績のある法律事務所であるほど、事務所の宣伝に活用するためにも、過去の経歴が詳しく掲載されているでしょう。

税理士との連携が取れている法律事務所

代物弁済を行う上で、債権・債務者、それぞれが税金に関する処理をしなければなりません。債権者に至っては、贈与税、不動産が譲受する資産の対象の場合、不動産取得税が発生します。

そのため、代物弁済の手続きを最後まで円滑に進めるためには、税理士としっかり連携の取れている法律事務所に依頼しましょう。代物弁済と税金に関しては、以下の記事を参照にしてください。
 
参照:「代物弁済における税金の知識|非課税になるための要件とは

依頼者の目線に立ってくれる弁護士

依頼者の視点で考えてくれる弁護士に依頼することは、債権回収をする上で大切です。債権回収の方法は、代物弁済以外にも多数ありますが債権者、債権、債務者の状況によって、それぞれ適切な方法は異なります。

そのため依頼者の目線で考えられる弁護士に依頼することは、依頼主の状況に合わせた債権回収の方法を提案してもらう意味でも大切なのです。電話応対、メール、対面時など相談の際に、弁護士と自分との相性を確かめましょう。
 
参照:「債権回収の弁護士費用の相場とは?弁護士費用を安く抑えるコツ

まとめ

以上のことから、代物弁済における利用の手順はおわかりいただけたかと思いますが、より確実に効力を発生させるためには注意すべき点がいくつかあります。より確実な債権回収をする上で当記事を参考にしていただけたら幸いです。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。

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編集部

本記事はベンナビ債権回収(旧:債権回収弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ債権回収(旧:債権回収弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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