強制退去は、大家や管理会社が持つ権利のひとつですが、方法を間違えてしまうとさまざまな法律に抵触してしまうリスクがあります。
この記事では、家賃を長期滞納する借家人に対し、法律に抵触するリスクをなくした上で、スムーズに退去・回収する方法をご紹介します。
家賃滞納者を強制退去させたいと考えている方へ
家賃滞納者と話し合いで解決をするのが、最善の選択肢ではあります。
しかし、話し合いで解決出来ず、強制退去させたいと考えている方もいることでしょう。
ただいきなり実力行使に出ると、あなたが警察に逮捕される可能性があります。
強制退去をさせるには、法に基づいた手順通りに行動する必要があるのです。
強制退去をさせたいと考えている方は、弁護士に相談することがおすすめです。
弁護士に相談をすれば強制退去のために、自分が取るべき対応を知ることができるでしょう。
初回相談が無料の弁護士事務所も多数掲載しているので、まずは下記からあなたのお悩みをご相談ください。
早くあの手この手に出たいと思うのが正直なところですが、強制退去の執行は慎重になるべきです。
話し合いで円満解決するに越したことはない
まずは、話し合いの場を設けることが第一と考えましょう。
強制退去の裁判は面倒ですし、時間もかかります。強制退去させることで空き家が出てしまい、室内を修復する手間や、新たに入居者を探すという余計な手間も増えてしまいます。
あまりにも悪質であるという場合をのぞいて、すぐに強制退去に結論付けることはせず、お互いの妥協案等を話し合いながら解決に至らせることが、お互いにとっての最善の選択肢なのです。
本記事では強制退去させる方法を綴っていきますが、あくまでも今記述した『話し合いでの円満解決』が最善の選択肢であることは念頭に置いた上で読み進めていって下さい。
いきなり実力行使に出ると立場が逆転する
くれぐれも、勝手に借主の部屋に入って所持品を処分したり、勝手に鍵を変えたりするなどの実力行使は避けましょう。
もしもこのような行動に出て借家人から通報されてしまうと、以下のような罪に問われることもあり、立場が一気に逆転してしまいます。
勝手に部屋の中に入る:住居侵入罪
退出を要求されているのに、部屋に居座る:不退去罪
大声をあげる、暴力をふるう、脅かす:脅迫罪、強要罪
家財などの持ち物を運び出す、壊す:器物損壊罪
すぐにでも強制退去に踏み切りたいと考えている人は、法に従い次項の手順を踏んでアクションを起こしていくことになります。
家賃滞納が3~4ヶ月も続けば強制退去のアクションに出て良いと言えるでしょう。逆に3ヶ月未満だと、裁判所が強制退去を認めてくれないことがあります。
強制退去をさせるにはこの裁判手続きを行う必要がありますが、まずは任意交渉で自主的な退去を促し、それにも応じない場合、訴訟の準備を行うことになります。その具体的な方法は、以下のとおりとなります。
①家賃支払い通知を送る
まずは手紙や電話などで、家賃を支払って欲しい旨を根気よく何度も伝えるようにしましょう。
とにかく『話し合いでの円満解決』を目指し、借家人が支払いのアクションを見せるまでは粘り続ける必要があります。
また、手紙には「支払わなければ保証人に請求を行います」という旨も記述しておくと良いでしょう。
②連帯保証人への連絡
どれだけ催促を行っても本人から何の反応も得られなければ、連帯保証人に対して、同様に家賃支払いの請求を行いましょう。
③配達証明付きの督促状・内容証明郵便の送付
内容証明郵便で、未払い家賃の支払い督促と、支払いがない場合には賃貸契約解除をする旨の通知を行いましょう。
この内容証明郵便とは、郵便物の内容文書について、いつ、いかなる内容のものを誰から誰へ宛てて差し出したかということを日本郵便が証明する制度です。
解除の通知などを必ず内容証明でする必要があるわけではありませんが、裁判などにおいて解除の通知をした、していないなどで争いとならないようにするためにも、解除の通知は内容証明郵便ですることを強くお勧めします。
この時、滞納家賃の支払い、あるいは建物明け渡しの意志が確認できれば、書面にて合意事項をまとめます。
内容証明の書き方
制限文字
内容証明は、文字数が決まっています。下記の文字数に納める必要があります。
【縦書きの場合】1行20字以内、1枚26行以内
【横書きの場合】1行13字以内、1枚40行以内【2段組】、1行26字以内、1枚20行以内
※句読点、括弧などは、1字として扱います。
用紙
用紙の種類や大きさは自由ですが、送る相手が1人の場合は同じものが3通必要です。(相手、郵便局の保管用、自分用)
印鑑
実印でなくても認められますが、文章が2枚以上になるときはその綴目に契印をしなければなりません。
内容証明郵便を作成した後は、郵便局に書面を持ち込み、郵送してもらうこととなります。
なお、パソコンで作成した書面データを、インターネット上から内容証明郵便で送付できる「電子内容証明」というサービスもあります。
④契約解除
③に記載した請求期間内に滞納家賃の支払いがなければ、賃貸仮契約解除の効力が生じます。
⑤明け渡し請求訴訟
契約解除、明け渡し請求訴訟の提起を行なうことになります。
裁判では、明け渡しに加えて、滞納分の家賃の支払請求も行います。
相手方が裁判に出てきた場合、裁判所から和解できないか提案をされることが多いですが、それでも和解できなかった場合、裁判による判決が下されます。
明け渡し請求訴訟に必要なもの
訴状の他に、以下のものが必要になります。
- 不動産登記謄本
- 固定資産評価額証明書
- 予納郵便切手
- 収入印紙
- 証拠となる書類
- 代表者事項証明書(法人の場合)
⑥強制執行
強制執行とは、法律上の権利、賃金債権、建物明け渡し請求権などを強制的に実現する手続きのことです。
強制執行の際は、強制執行担当の裁判所の職員(執行官)が借家人を退去させることになり、その際は借家人と同居している家族は勿論、家具や動産類を全て運び出して空室の状態にします。運び出した荷物はトラックで倉庫に運んで保管します。
強制執行の費用は自己負担
この回収作業にかかる作業員やトラック代などの費用は、あくまでも自己負担となります。
申立の時に、執行官に対してお金を預けることになりますが、これを予納金と言います。この予納金の中から、実際にかかった費用(執行官の手数料)を差し引き、手続が終わった段階で余りがあれば返してくれます。
建物明渡しの場合、予納金の基本額は65,000円ですが、これは物件1個、相手方1名の場合であり、物件や相手方が増すごとに25,000円が追加されます。
家賃の滞納が起きた時には、初動が肝心です。というのも借金には時効という制度があり、家賃滞納分においても時効の適用対象となるからです。
これは、一定の状態が長期に渡り継続した場合、社会の法律安全の安定を図るために、その状態をそのまま権利関係として認めるという考えや、長年権利を主張しなければ保護する必要がない、という考えに基づくものです。
以下で詳しく時効について解説していきましょう。
家賃を一切支払わずに5年以上が経過していると時効となる
家賃のように毎月定期的に発生するものについては民法169条が適用され、5年で時効によって消滅します。
普通一般的に債権の時効期間は10年とされていて、いわゆるビジネス上の債権の時効期間は5年とされていますが、不動産賃貸業における賃料債権の時効期間も同じく5年とされています。
ただし、4月1日以降に発生した債権に関しては、権利行使可能であることを知ってから5年に統一されました。
≪民法169条(定期給付債権の短期消滅時効)の条文≫
年又はこれにより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、5年間行使しない時は、消滅する。
時効の起算点はいつなのか?
最後に「請求された」もしくは「支払いをした」日から数えます。尚、この数え方ですが、「支払い期限(の翌日)」から5年です。
時効を更新する方法
貸主にとっては、時効が成立してしまってはとても困ります。そこで、法的には貸主には時効を食い止める手段も与えられています。それが時効の更新という、時効の進行を止め、今までの時効期間の進行をすべてなかったことにする制度です。
つまり時効の更新を貸主側から受けると、家賃を滞納し続けても支払い義務はなくならないということです。時効の更新をするには以下のような方法があります。
請求
貸主(債権者)から滞納者(債務者)へは様々な請求を行うことが出来ます。以下が行える請求の一覧になります。
訴状の提出
時間と費用をかけて訴訟を行うこと。
支払催促
債権者が契約書や債務確認書などの証拠品持参し、簡易裁判所に申し立てること。
債務の承認
債務者が1円でも家賃を返済した場合、債務の承認にあたり時効は更新します。
さらに、債務の承認は時効期間が満了した後に行っても時効を更新に類似した効果があり、再び一から時効をやり直すことになります。
差し押さえ
訴訟や支払催促などにより裁判所が債権者に強制執行の許可を出すと、債権者が債務者の財産を差し押さえることが出来、これにより時効は更新します。
強制退去の促しは個人でも行うことが出来ますが、弁護士に依頼することで的確に効率良く進行させることが出来ます。
しかしその際に気になるのが費用面でしょう。以下には、弁護士に依頼した場合の費用に関してまとめていきたいと思います。
相談料
まずは正式な依頼の前に弁護士へ相談を行うことになります。この相談料は、有料であれば30分~1時間で5,000円程度が相場となります。
着手金
正式な依頼を行い、案件に着手した段階で着手金が発生します。1ヶ月の賃料が20万円以下の場合は着手金の相場は10~40万円程度が相場になります。
この着手金も事務所によって金額にかなり差が出るので、複数の弁護士事務所を比較して検討してみるのが良いでしょう。
報酬金
実際に滞納家賃の回収に成功した際には、弁護士に対し報酬金を支払うことになります。
この報酬金の相場は、回収できた金額の総額によりある程度の変動はあるものの、回収できた金額の約10%〜20%程度に設定している弁護士事務所が多いです。
自分で行わずに弁護士に相談し依頼をすると前述したように費用はかかりますが、逆にどのようなメリットが得られるのでしょうか?以下に具体的にまとめました。
滞納に対する抑止力になる
家賃を支払うという行為に対する優先順位が下がるからこそ、ついつい滞納が起きてしまいます。しかし、一度専門家が介入すれば問題解決後も家賃を優先的に支払うようになることが期待できます。
モメずに解決できる
当事者同士の話し合いでは感情的になりがちなため、埒が明かずに全く進展を見せないというケースが多くあるのが滞納トラブルです。弁護士が間に入ることにより、冷静且つ平和的に交渉が進んでいきます。
迅速に回収出来る
専門家が書面などで督促することでプレッシャーを与えられ、それによって速やかな家賃滞納分の回収が見込めます。
回収不能の場合でも、速やかに明け渡しの裁判に移行し、家賃滞納による損害を最小限に食い止めることが出来ます。
すぐにでも!という気持ちを抑え、長い時間をかけて根気よく、然るべき手順を踏んで滞納している借家人と対峙していくしかありません。何度も記述してきたように、『話し合いでの円満解決』が最善の選択なのです。
それでもどうしてもやむを得ない理由があり、早急に強制退去させたいと考えている人は、やはりまずは弁護士などの専門家への相談を推奨します。
強制退去は文字通り“相手の意に反して強制的に行う手続き”になり法律上厳格な規定がありますので、一人で行うことは不可能ではないにしても、それでトラブルになってしまっては元も子もないからです。
本記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
家賃滞納者を強制退去させたいと考えている方へ
家賃滞納者と話し合いで解決をするのが、最善の選択肢ではあります。
しかし、話し合いで解決出来ず、強制退去させたいと考えている方もいることでしょう。
ただいきなり実力行使に出ると、あなたが警察に逮捕される可能性があります。
強制退去をさせるには、法に基づいた手順通りに行動する必要があるのです。
強制退去をさせたいと考えている方は、弁護士に相談することがおすすめです。
弁護士に相談をすれば強制退去のために、自分が取るべき対応を知ることができるでしょう。
初回相談が無料の弁護士事務所も多数掲載しているので、まずは下記からあなたのお悩みをご相談ください。