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貸主側に有利な明渡し合意書の書式例と効力

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佐藤 弘健 弁護士
監修記事
貸主側に有利な明渡し合意書の書式例と効力

明渡し合意書(あけわたしごういしょ)とは、明渡し確認書などと呼ばれることもありますが、土地や建物の明渡訴訟といった法的手続きに至る前に、明渡しの条件等について貸主・借主間で合意した内容を記載した書類のことです。

明渡しについて合意がまとまったときは、明渡しに関する債務名義を得るために、即決和解を利用することもできます(民事訴訟法275条)。

この場合、申立ての前提として相手方との間で事前に合意書を取り交わすことが大切になってきます。

しかしこの合意書の書式については謎だらけで頭を抱えている不動産貸主の方々も多いことでしょう。

弁護士に頼らずに自己知識のみで立ち向かおうとされている方は特に困難であるかと思います。

今回はそんな方のために、書式や作成上のポイントなどを詳しくまとめていきたいと思います

家賃を滞納されてお困りの方へ

明け渡し合意書は弁護士の力を借りなくても、自身で作成することは可能です。

しかし合意書の内容や文言が自身の状況に合っていなければ、後々トラブルを引き起こし貸主側が損をする可能性もあります。

 

家賃を滞納されてお困りの方は、弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。

弁護士に依頼をすれば、以下のようなメリットがあります。

 

  • 滞納している借家人との交渉を任せることができる
  • 明け渡し合意書の作成を任せられる
  • 訴訟に発展した場合の手続き対応 など

 

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初回相談が無料のところもありますので、まずはお気軽にご相談ください。

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明渡し合意書の書き方

合意書は法的な効力を持つものであるだけに、どのような内容にしたら良いのかわからないという方は多くいるかと思います。

そういった方は、以下の書式例や合意書を作成する上でのポイントなどをご参考下さい。

明渡し合意書の書式例

建物賃貸借契約解除および明渡し合意書

 

 

 賃貸人 (以下「甲」という。)と賃借人 (以下「乙」という。) は甲・乙間にて令和 年 月 日に締結した末尾表示記載不動産(以下「本物件」という。)の賃貸借契約(以下「原契約」という。)につき次のとおり合意しました。

 

第一条 甲と乙とは、原契約を令和 年 月 日、合意解除する。

 

第二条 甲は乙に対し、本物件の明渡しを令和 年 月 日まで猶予する。

 

第三条 乙は、甲に対し、前条の期日限り、本物件を原状に復して明け渡す。

2.乙は、本物件を明け渡したときに本物件内に残置された動産の所有権を放棄し、甲において任意にこれを処分しても異議を述べない。なお、その場合の処分費用は乙の負担とする。

 

第四条 乙は、甲に対し、令和 年 月 日から令和 年 月 日までの本物件の未払賃料 円および同年 月 日から本物件の明渡済みまで1か月 万円の賃料相当損害金の支払義務があることを認める。

2.乙は、甲に対し、前項の金員を次のとおり支払う。

(1)令和 年 月から令和 年 月まで毎月末日限り  金  円ずつ

(2)令和 年 月 日限り  金  円

 

第五条 甲は、乙に対し、乙の明渡しの完了日後 日以内に、原契約に基づき、乙が甲に差し入れた敷金の残金(原契約時に乙から甲に差し入れた敷金 円から、前条の金員、原状回復費用および残置物処分費用等の乙が甲に負担する一切の債務を控除した額)を支払う。

 

以上、合意の成立を証するため本書2通を作成し、甲・乙署(記)名押印のうえ各1通を保有するものとします。

 

令和 年 月 日

 

住所              (住所記載)

氏名                   印

 

住所              (住所記載)

氏名                   印

 

 

不動産の表示

所  在            (家屋番号)

建物構造            (部屋番号)

書式に関しては下記のホームページからでもテンプレートをダウンロードすることが出来ます。

裁判所

明渡し合意書作成時のポイント

明渡し合意書は決まった定型文があるわけではありません。

書式例を参考に、誰が、誰と、いつ、どのような内容での合意がなされたかが明記されれば合意書として成立します。

また、作成の際は以下のポイントもご参考下さい。

収入印紙は必要ない

通常、土地の賃借権の設定又は譲渡をおこなう際の契約書を作成する際は、収入印紙(租税の支払や行政に対する手数料の支払のために利用される証憑で、国が租税や手数料を徴収するための手段として収入印紙が用いられています。)の添付が必要になります。

しかし、明渡し合意書は上記契約書には当たらないので、非課税という扱いになり収入印紙の添付は原則として必要ありません

※ただし、継続中の賃貸借契約を合意解除したことに伴い損害金や保証金が発生し、これらの金員の受領の事実を記したいということであれば、これらの金額が5万円以上の場合に200円の印紙税がかかります。

前金は必ずしも必要ではない

貸主側の都合で借家人を立ち退かせる場合は、立ち退き料を前金で支払うケースが多くあります。

しかし、借家人の家賃滞納等、借家人側の都合で退去に至る場合は、貸主側は借家人に対して前金などを支払う義務はありません

貸主側が損をしないために明渡し合意書に記載しておくべき内容

室内に置かれた動産の処分に関して後々トラブルを引き起こし貸主側が損をしないためにも、以下の内容や文言は明渡し合意書に明記しておくと良いでしょう。

  • 本物件の明渡しはいつ(確定日)までにおこなう。
  • 本物件は原状に回復して明け渡す(借家人の所有物は全て収去する)。
  • 貸主に属さない残置物は借家人の費用負担において処分する。

その処分方法に関して借家人は異議をとなえない。

明渡し合意書の効力

明渡し合意書には一体どのような効力があるのでしょうか?以下にまとめました。

権利義務関係が明らかになる

誰(個人・企業)が誰に対し何の占有権限を有しているのかが明確になります。

裁判の有力な証拠となる

借家人が任意に退去しない場合には、裁判所の判決を経て明渡しを強制執行(強制退去)させる手続きが必要となります。

したがって法的に物事を進める、また法的に有利に立つ必要があり、明渡し合意書は裁判をおこなううえで貸主側にとって有益な証拠となってくれます。

心理的なプレッシャーを与えることが出来る

前述したように、合意書は法的に効力のある書類です。

この書類にサインを迫ることにより、たとえば何ヵ月も家賃の滞納をおこなっているような悪質な借家人に対して、心理的なプレッシャーを与えることが期待できます。

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明渡し手続きの解決手段

ここまで本記事に目を通された方は、一刻も早く迷惑な借家人を強制的に退去させたいと考えておられるかもしれませんが、その方法しか解決手段がないわけではありません。

任意交渉

借家人との間で電話や書面のやり取り、あるいは面談をおこない、裁判外で任意の交渉をおこないます。

この任意交渉で穏便に解決が出来ればそれに越したことはありません。

任意交渉からおこなう強制退去の方法は、こちらの記事「強制退去させる方法|強制退去までの流れと注意点」を参考にしてください。

民事調停

簡易裁判所に対し、借家人との間での民事調停を申し立てることができます。

そして調停が成立すると確定判決と同じ効力を有する調停調書が作成され、その調停調書が債務名義となります。

つまり、判決と同様に調停調書に基づき強制執行が可能となります。

しかし、借家人には調停期日に出頭する義務がないので話し合う余地がない場合には、有効な手段とは言えません。

訴訟は最終手段

借家人との任意交渉が難しい場合には、建物明渡しを求めて訴訟を提起します。

訴訟を提起すると、裁判所から借家人に対して訴状が送達されることで、心理的プレッシャーを与えることができます。

その心理的プレッシャーを利用して、交渉を有利に進めることもできます。

合意がまとまらないときは、訴訟手続きを進めて判決を得ます。

自分で明渡訴訟をおこなうリスク

悪質な借家人の場合、訴訟によって強制退去させる手段があることは事実です。

しかし、訴訟を起こすということは訴える側にも以下のようなリスクがあるということを忘れてしまってはいけません。

借家人との関係が悪化する

裁判沙汰になることで、相手との関係が悪化し、話合いによる解決が困難になる可能性があります。

相手が破産する可能性がある

金銭的に困窮して家賃滞納をしている借家人の場合、裁判になることで精神的にも追い詰められ、破産を選択してしまうこともあり得ます。

破産申立て後、免責許可決定が確定すると、通常の金銭債権については「支払わなくても良い」と法的に認められることになるので、以降貸主が取り立てることが不可能となります。

労力がかかる

裁判をおこなうわけですから、当然裁判所に足を運んだり、裁判のための手続きをおこなったりしなければなりません。

弁護士に依頼せずに自身の力でおこなうのであればなおさら時間もかかり、決して楽なものではありません

費用がかかる

裁判をおこなうにも、弁護士に依頼するにも、費用がかかることを覚悟しておかねばなりません。

弁護士に依頼して債権回収をする場合は、着手金(請求する金額が300万円以下の場合は請求金額の8%程度が相場になります)と成功報酬(判決で認められた金額の16%程度が相場になります)が発生します。

また、家賃滞納分を回収するにしても、100%回収可能であるとは言いきれません。

金銭的に余裕がなく、どうやっても支払いは困難という人からは、回収することはできないのです。

明渡訴訟を検討中ならまず弁護士に相談を

合意書の作成も裁判も法の専門家なしでおこなえないことはありませんが、やはり法的なことは知識がない状態で自力でおこなおうとせず、法のプロである弁護士に任せてしまうのが一番賢い方法だと言えます。

弁護士に依頼するメリット

裁判をおこなわなくても解決できる場合がある

あくまでも明渡訴訟は最終手段であり、何も裁判をおこなうだけが術ではありません。

催促や交渉をおこなうことにより建物の明渡しや未払い分の賃料の回収を実現できる場合もあるでしょう。

家賃滞納している借家人の場合|滞納に対する抑止力になる

家賃を支払うという行為に対する優先順位が下がるからこそ、ついつい滞納が起きてしまいます。

しかし、一度専門家が介入すれば問題解決後も家賃を優先的に支払うようになることが期待できます。

家賃の時効成立を防げる

債権(お金を請求する権利)には消滅時効という制度があり、滞納家賃についても消滅時効の適用対象となり、権利を行使することができることを知った時から5年(または権利を行使することができる時から10年間)で時効によって消滅します(民法166条1項)。

滞納家賃を請求する内容証明郵便の送達や裁判所への訴訟提起などにより、一定期間、この時効の完成が猶予されます。

弁護士であればこういった手続きに関してもスムーズにおこなうことができますので、気づかないうちに時効が成立してしまったということにはなり得ません

弁護士への依頼ならば法的業務の全てを行ってもらえる

強制退去に関して弁護士に相談、依頼する人が多い理由は、弁護士は法律に関わる全ての業務をおこなえるからでしょう。

弁護士には重要書類の作成や、裁判の代理人となってもらうことも依頼可能であるのに対して、司法書士や行政書士の可能業務は、法律事務の全般とはされず、限定されています。

司法書士の業務内容としては登記や供託の手続が第一に掲げられており、これらは弁護士にも依頼できる業務です。

また、行政書士の業務内容は、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類の作成などとされています。

これも弁護士にも依頼できる業務になります。

つまり、法的知識がないとおこなえないような書類の作成や裁判に関する手続きなどは、全て弁護士に任せることができるということです。

明渡し請求が得意な弁護士の探し方

インターネットを利用する

一番手っ取り早く、それでいてリスクが低いのは、Q&Aサイトなどで「明渡し」というワードで検索し、実際の体験談や口コミをもとに弁護士事務所を探すことです。

無料法律相談を利用する

ほとんどの市町村や県では、月1回ほどの割合で弁護士による無料法律相談会を開催しています。

広報などで相談の申込方法と日時が知らされているほか、各市町村や県のホームページの「お知らせ」などのコーナーに掲載されているかと思います。

こうした無料相談は事前申込の際に「どんなことを相談したいのか?」を質問されるので「明渡しの合意を得たい」といえば、その分野が得意な弁護士さんを相談相手にセットしてくれる場合もあります。

大学の窓口を利用する

法学部や法科大学院でも、地域への貢献を目的に無料相談窓口を設けている場合があります。

こちらも事前申込をおこなうと、明渡しや債権回収の分野を得意とする弁護士に相談できるように取り計らってくれる場合もあります。

信頼のおける弁護士の選び方

費用・支払い方法が明確か

弁護士費用を口頭で説明してくれたとしても、それを書面で確認できなければ、本来味方であるはずの弁護士ともめてしまうという最悪のケースに発展しかねません。

依頼者の気持ちを汲み取り、親身になって相談に乗ろうとしている弁護士であれば、契約書などの重要書面はしっかりと作ってくれます。

知識・経験・実績が豊富か

弁護士事務所のホームページを見てみて、不動産や賃貸問題の解決を得意分野として謳っているかどうかがポイントになります。

明渡訴訟にまつわる実績が多く掲載されていたり、強制退去に至るまでの費用が事細かく書かれていたり、不動産トラブルに関連する解説が掲載されていれば、それだけ借家人に関する問題解決に注力していることの証明になります。

あなたとの相性の良さ

迅速に借家人に関する問題解決を図るうえで、弁護士の手腕は勿論、依頼者との相性も重要になってきます。

真摯な対応で話を聞いてくれるか、また弁護士側から債務に関しての質問を投げかけてきてくれるか、話しやすさや弁護士が持つ雰囲気も、最終的に依頼をおこなうかどうかのポイントにしましょう。

過去に問題を起こしていないかどうかをチェック

依頼を受けたにも関わらずに放置した、依頼者に説明なくして高額な費用を支払わせたなど、トラブルを起こした弁護士は弁護士会から懲戒を受けることになります。

依頼を検討している弁護士が懲戒されたことがあるかどうかを調べるには、弁護士の懲戒歴を掲載しているWebサイト(弁護士懲戒処分検索センター)を利用することも考えられます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

訴訟は最終手段だと記述しましたが、たとえば長期的な家賃の滞納など、あまりにも悪質な借家人の場合は、”解決を先延ばしにするよりも、一刻も早く出て行ってもらい次の借家人に部屋を貸したほうが得”であることも事実です。

ケースバイケースで最善の策で解決に向けて動き出せるよう、自己知識のみで行動せずに、まずは専門家の判断を仰いでみることを推奨します。

家賃を滞納されてお困りの方へ

明け渡し合意書は弁護士の力を借りなくても、自身で作成することは可能です。

しかし合意書の内容や文言が自身の状況に合っていなければ、後々トラブルを引き起こし貸主側が損をする可能性もあります。

 

家賃を滞納されてお困りの方は、弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。

弁護士に依頼をすれば、以下のようなメリットがあります。

 

  • 滞納している借家人との交渉を任せることができる
  • 明け渡し合意書の作成を任せられる
  • 訴訟に発展した場合の手続き対応 など

 

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この記事の監修者
佐々木総合法律事務所
佐藤 弘健 (東京弁護士会)
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編集部

本記事はベンナビ債権回収(旧:債権回収弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ債権回収(旧:債権回収弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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