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未収金(みしゅうきん)とは、有価証券・固定資産・土地・備品などをはじめとする、営業活動の取引で発生する債権のことで、財務諸表上の正式な表示は未収入金となります。簡単に言うと、自分の会社の商品や自分のお店で出している食べ物など、自社では取り扱っていないものを売った時に生じる「後に代金を受け取る権利」のことです。
未収金の具体例 |
簿記ではこういったツケのことを未収金という資産の勘定を使って表しますが、勘定には類義語がたくさんあるのでまどろっこしく感じてしまう人もいるかもしれません。今回はこの未収金について発生原因から回収方法まで細かくまとめていきたいと思います。
人にお金を貸したら返すのは当然であり、何かを買ったらその対価としてお金を払わなければならないのも当然のことです。冒頭でも述べた通り未収金はツケですから必ず回収しなければならず、その額が高額であれば高額であるほど、回収できなかった時に損をすることになります。まずは未収金をとことん掘り下げて解説していきましょう。
たくさんの「後払い」にまつわる勘定科目があります。簿記や経理に関わる人は特にですが、それぞれの違いはきちんと把握しておきましょう。以下で簡単に解説しておきます。
|
商品売買取引 |
商品売買取引 |
売った側 ▶ |
売掛金 |
未収金 |
買った側 ▶ |
買掛金 |
未払い金 |
売掛金は、商品を販売した・製品を製造して販売した・サービスを提供したなどの営業活動の取引(商品)から生じる債権のことです。売掛金と未収入金はどちらも資産であり、金銭債権でもあります。しかし商品を売り買いしたのか商品でないものを売り買いしたのかによって、分類が異なります。税務上では違いを明確にしなくても法人税額や所得税額に悪い影響を及ぼすことはありません。
未払い金は、営業活動以外の取引(商品)から生じる債務のことで、お金を受け取る権利である未収金とは反対に、この未払い金はお金を支払う義務になります。未収金勘定と同様に、商品を販売して代金を後で支払う場合は買掛金勘定で処理をし、商品以外のもの(有価証券・土地・建物など)の取引は未払い金勘定で処理をします。
買掛金は営業活動の取引(商品)から生じる債務のことで、お金を受け取る権利である売掛金とは反対に、お金を支払う義務になります。
医療機関は、強引に未収金の請求をすると評判も悪くなりますので、強く請求がされていないということが現状です。
・患者の窓口負担金
・返戻・過誤未収金
・自賠責・生活保護・労災関連未収金
「支払い能力がない」という理由が最も多くの割合を占める
保険証を確認できないまま外来受診を継続し、未払い負担金が累積する
治療費を計算せずに預り金で処理してしまったために、清算未了の間は未収金として残る
住所や連絡先が不明確なために後日連絡がとれなくなり未収債権になる
購入した側が支払いを放棄することで、当然ながら売った側には入ってくるはずの金銭が入ってこなくなります。
承諾を完全に得ていない、必要な説明がなされていない、押印やサインをもらっていないなどの理由から、問題が野放しになってしまうことがあります。
企業や個人事業などで未収金トラブルが起きていることは勿論、上記のとおり病院でも“患者が支払いを怠る”といったケースが多発しており、病院側の経営を圧迫しています。(参考:「厚生労働省保険局 未収金に関するアンケート」)未収の理由は複数ありますが、
生活に困っており、自己負担分の支払い資力なし:10.3%
支払い能力はあるが、元々支払う意思なし:9.6%
このように支払いたくても支払えない人と、支払いは可能だが支払わないという人がほぼ同数であることに驚きです。病院のみならず企業や個人事業にとっても未収金トラブルはいつ起きても不思議ではない、身近な問題であるということが容易に推測できます。
取引先へ事業用の複合機を3万円で売却し、翌月に回収する場合。
借方 |
貸方 |
概要 |
未収金 |
事業用備品 |
複合機○○売却 |
※仕訳例、及び勘定科目各概要は個人事業者を対象としたケース
未収金が回収できない=自社の損失となり、金額が高額であればあるほどそれに比例してリスクも高くなります。
未収金には時効があり、1~5年で消滅してしまいます。時効が成立するということは債務者側が“払わなくてもよくなる”ために、取り立てることも困難になってしまうので要注意です。
ただし、4月1日以降に発生した債権に関しては、権利行使可能であることを知ってから5年に統一されました。
取り立て忘れや時効の成立などにより多額の未収金が回収できないままになってしまうと、
・自分自身が借金してしまう
・自社が取引先に対して支払うための資金がショートする
・自社の信用を失う
このような怖い事態に陥ります。
未収金は会社の決算書上は流動資産になり会社としてプラスのものですが、そのプラスの中に不良債権があると数字上ではプラスが大きく見えてしまう事になります。銀行や投資家など外部の人が決算書を見るときには、このような見た目の数字と実際とのズレの部分を気にして見ることになり、時には金銭の管理能力の低い会社だと思われたり、成長性の低い会社だとマイナスの印象を持たれたりすることもあります。こうなると融資の話もスムーズにはいきません。
流動資産:通常1年以内に現金化、費用化ができるもの。(⇔固定資産)
不良債権:回収困難な債権、回収不能な債権。
未収金、売掛金などのツケは、回収不可能という事態に陥る前に、一刻も早く回収するための手段に出ることが肝心です。法的な措置に出るのはあくまでも最終手段ですが、以下には回収するための全手段をまとめましたので、ご参考下さい。
どの弁護士に相談しても、真っ先に「内容証明郵便を出しましょう」と提案してくることが大半なので、回収方法としてはオーソドックスなものであると言えます。内容証明郵便とは、郵便物の内容文書について、いつ、いかなる内容のものを誰から誰へ宛てて差し出したかということを日本郵便が証明する制度です。しかし、この内容証明郵便に法的な拘束力はなく、一通出すのに1,300円くらいかかるので、コストパフォーマンスも良いとは言えません。
内容証明を送った後まずは、債務者との交渉によって回収を目指します。あくまでも交渉になるので、確実に回収できるというわけではありませんが、債務者と角を立てずにかいけつすることも期待できます。
相手に買掛金がある場合、売掛金と買掛金を相殺(そうさい)することで実質的に回収することができます。
相手の同意を得た上で、販売した品を引き揚げる形での回収になります。くれぐれも、同意なく勝手に引き揚げると窃盗罪となってしまうので要注意です。尚、当然ながら、サービス提供の場合は引き揚げることは出来ません。
相手が現金を持っていなくても第三者に対して売掛金や未収金を持っている場合は、それを譲渡してもらうことで回収することがあります。ただし、確実に回収できるかどうかは不透明な方法であると言えます。
①~⑥の方法によっても回収できない場合には、以下の法的手段に出て回収することとなります。中でも代表的な回収方法は、「支払督促」「少額訴訟」「民事調停」となります。
公証人役場で公正証書を作ってもらうと、そこに書かれているとおりに支払いをしなかった場合、裁判所の判決なしでいきなり強制執行が出来るようになります。公正証書を作るには、債務者の実印つき委任状や印鑑証明が要ります。
正式な裁判手続をしなくても、判決などと同じように裁判所から債務者に対して金銭などの支払を命じる督促状(支払督促)を送ってもらえる制度です。
メリット |
デメリット |
・請求金額に上限がなく簡易的な手続きで費用が安い |
・債務者からの異議申し立てにより通常訴訟に移行する |
支払督促に関してはこちらの記事「支払督促とは|申立方法と手順や弁護士選びに必要な知識まとめ」をご参考下さい。
民事事件に関して裁判官及び調停委員会が当事者を仲介し、双方の主張を調整し、その間に和解の成立を図る非公開の手続きです。
メリット |
デメリット |
・第三者が公平な立場で意見調整する |
・調停不調または相手方が話し合いに応じなければ、訴訟へ移行する可能性がある |
簡易裁判所において、60万円以下の金銭を請求する場合に、1回の期日で審理を終えて判決することを原則とする特別な裁判手続きです。
メリット |
デメリット |
・通常訴訟よりも手続きが簡単 |
・請求額に上限がある |
少額訴訟に関してはこちらの記事「少額訴訟マニュアル|少額訴訟の手続き方法と費用徹底解説」をご参考下さい。
強制執行は、自身の判断だけで勝手に行うのは泥棒と一緒です。何を差し押さえるにしても、裁判所の執行官でないと行えません。また、強制執行前にも執行後にも法的に長くて面倒な手続きが沢山あり、お金もかかります。
強制執行をしても、差し押さえたものが換金性のあるものかどうかはわかりません。つまり、お金をかけたにも関わらず、空振りで終わってしまうことも少なくないのです。強制執行はあくまでも、回収不能の際の最後の手段です。
強制執行に関してはこちらの記事「強制執行で差し押さえするために必要な知識と方法のまとめ」をご参考下さい。
様々なビジネスの間に立つ商社は、伝統的に未収金が多く発生する業種です。会社によっては専門的な部署を設けて与信管理や債権保全を行っている会社もありますが、滞納ノウハウが蓄積されているわけではありません。ここでは、そんなビジネスにおける未収金の回収事例をご紹介していきます。
商社Aは建設会社Bに、建設に使用する器具を70万円で販売しましたが、B社は「その商品は元従業員のCが勝手に購入したものだ」と主張し、A社が繰り返し督促するも、支払いを行いません。
B社の会社実印が印された発注書が証拠としてあったため、契約成立の事実は認定することが出来ました。B社にはこの契約の事実を覆すだけの証拠はなく、主張にも正当性がないため、本件は訴訟により行われることになりました。
裁判が開かれると、B社の社長は従来どおり「元従業員が勝手に依頼した」と主張してきます。それに対し裁判官が「原告(訴える側)は、証拠を提出しています。それを見るに契約の成立はしているのではないかというように判断できます。何か被告の主張を裏付けるものはありますか?あるのであれば次回までに提出して下さい。」と指示が出されました。
簡易裁判所では代理人を立てずに本人が出廷して裁判行われることも多いので、こうして裁判官が丁寧に指示を出してくれることがあります。
B社から「和解をしたい」という旨の連絡が入り、分割にはなったものの満額の回収に至りました。このケースのように、証拠がしっかり揃っている場合には、訴訟をしてしまったほうが早いでしょう。証拠の提出に至ることができなかったB社にとっても、和解は懸命な判断であったと言えます。
商社Aは、建設機器等を建設会社に販売する商社です。建設会社BはAから購入した商品代金60万円を、「お金がないから」という理由で支払いませんでした。
まず商社Aは、建設会社Bの資産の調査に着手しました。中小企業であったため、企業調査会社のデータでは登録がなく、登記事項説明書を中心とした調査の結果、建設会社Bの代表者は自宅を保有していたものの、銀行の担保がいくつか設定されている状況でした。
A社はB社の取引先や取引銀行はわからなかったため、B社の社長の連帯保証を獲得することを目指しました。内容証明郵便をまず送り、交渉により譲歩を引き出すという戦略で臨みました。
内容証明郵便の送達後、B社の社長から連絡が入り、以下のやりとりが行われました。
B社:「何とか事業を継続していきたいため、自宅を売却しようとしている。」
A社:「「自宅に担保権を設定させてほしい。連帯保証してほしい。」
B社:「担保権がたくさん付くと、売りにくくなってしまう。連帯保証したら、何もかもとられてしまう。強行的に出てくるなら、破産する!」
A社は、少しだけ待ってみることにしました。
一ヶ月が経過するも、B社の社長は自宅の売却には至っておらず、連帯保証にも難色を示し続けたため、A社は訴訟を提起しました。回収できないならばできないで、はっきりと結論を出す必要があります。
訴状は順調にB社の社長に送達されましたが、裁判日の3日ほど前にB社社長の弁護士から「債務がA社以外にも大量にあり、破産する方針である」と連絡が入りました。このように、B社が開き直らざるを得ないほど追い詰められた状況では、A社も打つ手がありません。
トラブルなく円滑に未収金を回収するために、以下のポイントを頭に入れておきましょう。
過去の滞納履歴をしっかりと管理し、未回収になるリスクが高い人とははじめから取引を行わないようにしましょう。
未収金に限らず、全ての債権に関して言えることですが、支払いが遅れていることに気がついたら、すぐに支払いの催促を行いましょう。滞納している側も、はじめは「早く払わなければ」という焦りが生まれるかもしれませんが、時間の経過とともにその気持ちも薄れ、支払いに応じることが億劫だと感じてしまうので、時間の経過と共に支払わせることが難しくなります。
未収金の支払い遅延の原因別にまとめました。
「期限を忘れていた」「払ったつもりでいた」などの単純なミスならば、電話一本で解決できます。くれぐれも、すぐに裁判沙汰にするのは避けましょう。
今たまたま支払える余裕がないからであるのか、それともずっと支払える余裕がないのかをまずは把握しましょう。物理的に回収が見込めない場合、以下の「最初から悪意があった場合」と同じ手段が必要になるでしょう。
相手に悪意があり、ただ待ち続けているだけでは回収が難しい場合は、上記の未収金を回収する流れの①から順に回収を試みましょう。こちらがどれだけ回収のための催促をしても相手方から何のリアクションも見られなければ、最終的には法的措置に出るしかありません。
現在、未収金をはじめとする債権の回収代行を行える専門家は、国が認可したサービサーと弁護士か認定司法書士のみとなります。このような専門家に依頼した場合のメリットとデメリット、また費用について以下で解説していきましょう。
「法的な手段に出ている」「本気で回収しようとしている」と相手に印象付けることが出来るので、「早く支払わないと」という焦りを生じさせる効果があります。
時効を成立させない為に専門家からは適切なサポートを受けることが出来るので、気が付いたら時効が成立してしまっていたという最悪の結果を免れることが出来ます。
債務者とは、逃げられないだけの距離感を保ちながらシビアな交渉をしていくことになりますが、場合によっては逆に脅されたりなどといったこともあるかもしれません。弁護士に依頼することで、このような精神的負担を肩代わりしてもらうことができます。
当事者だけで話し合いをしても、上手くかわされ、時間だけが過ぎていくということになりかねません。交渉に応じない相手には速やかに裁判所を使った手続きを選択し、迅速な解決が可能になります。
「裁判も辞さない」という意思が相手に伝わることで、以降相手と良好な関係を維持することが困難になる場合もあります。
れ以上返済することが困難であると判断され、精神的にも追い詰められ、相手が破産を選択してしまうこともあり得ます。破産をされると、以降取り立てることが不可能となります。
弁護士に依頼して債権回収をする場合は、着手金と成功報酬が発生します。回収しようとする借金額が小さい場合、弁護士に依頼すると費用倒れになってしまうこともあり得ます。
内容証明郵便を送って交渉をするだけでも、着手金が最低5万円程度はかかります。また、裁判所を使う手続きの場合は、着手金が10万円程度かかるのが一般的です。着手金とは別に、回収が成功した際には成功報酬として、回収できた金額の約20~30%を別途支払います。
ほとんどの弁護士事務所がホームページを所有しているので、以下のポイントをチェックしてみましょう。
・借金回収が得意との明記があるか?
・具体的な事例、実績の明記があるか?
・全体的に内容がわかりやすいか?
・マスメディアや口コミなど、第三者から借金回収に精通した弁護士として評価されているか?
弁護士が取り扱う法律分野は多岐に渡ります。債権回収という分野において、十分な専門性・知識を持つ弁護士を選びましょう。
無料相談を行っている事務所も多くあります。良い結果に繋げる為にも、契約費用が発生する前の段階で弁護士との相性の良し悪しを調べておきましょう。性が良いと思える弁護士が見つかるまで電話での無料相談を何度も活用したりするのも有益と言えます。その際は、以下のポイントをチェックしてみましょう。
・熱心にヒアリングをしてくれるか?
・ヒアリングだけでなく、弁護士側からも質問を行ってくれるか?
・粘り強さがあるか?
・わかりやすく説明してくれるか?
・無料相談であっても契約時の弁護士費用をある程度明確にしてくれるか?
安全策としては、知人に依頼して知っている弁護士を紹介してもらう方法があります。過去にトラブルを起こしたことがある弁護士や悪質な弁護士を避けることが出来、弁護士に対するクレームもその知人を通して伝えて解決することができます。
インターネットで「債権回収 弁護士」というワードで検索してもたくさんの弁護士事務所がヒットしますが、手っ取り早く信頼できる弁護士を探す方法として、「ヤフー知恵袋」や「教えてgoo」などで実際の体験談や口コミを見てみることがオススメです。
各弁護士会では有料(30分5,000円程度)の法律相談を開いているので、そこでの相談後に弁護士を斡旋してもらうのも良い手段と言えます。第二東京弁護士会の場合、通常は法律相談を受けた担当弁護士が事件を受任しますが、希望を出せば他の弁護士にすることもできます。
弁護士費用(着手金、成功報酬)は、少額事件を除き、弁護士会の委員が決めます。弁護士に不都合なことがあれば、依頼者は弁護士会に相談できます。まずは依頼の前に質問をし、経験年数を尋ね、弁護士としての能力を確認しましょう。(参考:「未収金の回収方法|回収に伴うリスクと回収不能時の対策」)
自分の力だけで未収金をはじめとする債権の回収を行おうと思っても、何からどう手をつけたらいいのか、任意での交渉を行うにしてもどのように交渉したらいいのかわからないという人は多くいます。企業にしても個人事業にしても、日頃から弁護士などの専門家からのサポートを受けられるだけの体制を整えておくことが重要だと言えるでしょう。
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