
債権とは、債務者に対して何かしらの行為をするよう請求できる権利のことです。
法律上、この債権には多くの種類があり、それぞれルールや特徴などが異なります。
そのため、取引や請求をする際は、この債権ごとの特徴を正しく理解しておくことが重要です。
本記事では、債権について理解したい方に向けて、以下の内容について説明します。
- 債権の種類に関する一覧表
- 発生原因別、目的別の債権の種類
- 債権がもっている主な効力 など
本記事を参考に、債権にはどのような種類があるのかについて詳しくなりましょう。
法律分野の債権の種類を一覧で確認してみよう
債権の種類は、以下のように発生原因別と目的別で分類することができます。
分類方法 | 名称 | 概要 |
---|---|---|
発生原因による分類 | 約定債権 | 契約によって成立する債権 |
法定債権 | 事務管理、不当利得、不法行為など法律によって成立する債権 | |
目的による分類 | 特定物債権 | 特定物の給付を目的とした債権 |
種類債権 | 種類と数量で定められるものの給付を目的とした債権 | |
金銭債権 | 金銭の給付を目的とする債権 | |
利息債権 | 利息の給付を目的とする債権 | |
選択債権 | 複数の給付の中から選択することを目的とした債権 |
発生原因によって分類したときの債権の種類
ここでは、発生原因による分類である約定債権と法定債権について説明します。
1.約定債権|法律でなく契約によって成立する債権
約定債権(やくじょうさいけん)とは、契約によって発生する債権のことです。
日本の民法には契約自由の原則があり、誰とどのような契約を締結するのかは私人間で自由に決められます。
契約によって発生する約定債権は、ほかの債権と比べても特に重要であり、中心的なものだといえるでしょう。
2.法定債権|法律によって成立する債権
法定債権とは、法律(民法)によって成立する債権のことをいいます。
発生原因は3つあり、概要や債権などは以下のとおりとなっています。
発生原因 | 概要 | 債権の例 |
---|---|---|
事務管理 | 他人のために善意でおこなわれる行為 | 費用償還請求権 |
不当利得 | 正当な理由もなく利益を得て、他人に損害を与える行為 | 不当利得返還請求権 |
不法行為 | 故意または過失により他人の権利や利益を侵害する行為 | 損害賠償請求権 |
これらの原因があった場合は、他人に対して何かしらの行為を請求する権利(債権)が発生することになります。
目的別に分類したときの債権の種類
ここでは、目的別に分類した場合の債権について確認しましょう。
1.特定物債権|特定物の給付を目的とした債権
特定物債権とは、特定の個性に着目して取引するものに対する債権のことをいいます。
たとえば、土地や中古品といった代わりのきかないものと考えるとわかりやすいでしょう。
2.種類債権|種類と数量で定められるものの給付を目的とした債権
種類債権とは、種類と数量で定められる「不特定物」の給付を目的とした債権のことです。
たとえば、オレンジジュース1トン、自動車10台などのように代替品のある債権といえます。
3.金銭債権|金銭の給付を目的とする債権
金銭債権とは、一定額の金銭の給付を特定の相手に対して求めることができる債権です。
「1万円の商品を渡したのだから、1万円を支払ってください」と要求するような権利のことをいいます。
なお、この金銭債権には、金額債権、絶対的金種債権、相対的金種債権、特定金銭債権の4種類があります。
金銭債権の種類 | 概要・特徴 |
---|---|
金額債権 | 一定金額の支払いを求める債権のこと |
絶対的金種債権 | 特定の種類の金銭(記念硬貨など)での支払いを求める債権のこと |
相対的金種債権 | 一定の種類の金銭(アメリカドルの1ドル札など)での支払いを求める債権のこと |
特定金銭債権 | 特定の金銭(古銭など)の引き渡しを求める債権のこと |
なお、金銭債権に関する詳しい説明については、以下のページで確認することができます。
利息債権|利息の給付を目的とする債権
利息債権(利息請求権)とは、金銭を貸したときに発生する利息の支払いを求めることができる権利を指します。
利息債権には、大きく以下の2種類があります。
金銭債権の種類 | 概要・特徴 |
---|---|
基本権たる利息債権 | 元本債権から発生する利息債権のこと |
支分権たる利息債権 | 基本権たる利息債権の効果として発生する利息債権のこと |
なお、利息債権を発生させるためには、貸主と借主との間で事前に利息について合意をしておく必要があります。
選択債権|複数の給付の中から選択することを目的とした債権
選択債権とは、複数の給付の中から選択できる債権を指します。
たとえば、パソコンか、海外旅行か、バイクのどれかを受け取れるという債権を指します。
選択権は原則として債務者(渡す側)ですが、債権者(もらう側)や第三者に変更することもできます。
債権者は債権を持つことで何ができる?債権のもつ3種類の効力
ここでは、債権の主な効力について紹介します。
1.給付保持力|債務者の給付を適法に保持できる効力
給付保持力とは、債権者は債務者の給付を適法に保持できる効力のことを指します。
たとえば、A社とB社が10万円の家具の売買をおこない、A社は10万円を、B社は家具を受け取りました。
この場合、相手から返還を要求されたとしても、契約の無効や取消しなどがない限りは返還する必要はありません。
このように、債務者から提供されたものやサービスを適法に保持できる効力のことを債権の給付保持力といいます。
2.請求力(訴求力)|裁判外または裁判上で給付を請求できる効力
請求力(訴求力)とは、債権者が債務者に対し裁判外や裁判上で給付を請求できる効力のことです。
たとえば、A社とB社が売買契約をしたにもかかわらず、B社が10万円の支払いを拒否したとします。
しかし、売買契約が成立しているため、A社はB社に対して代金を支払うように請求することができます。
このように直接請求をはじめ、訴訟、民事調停、支払督促などで給付を請求できる効力を請求力といいます。
3.掴取力|金銭債権に転化させ、強制執行を実現させることができる効力
掴取力(かくしゅりょく)とは、債権を金銭債権に転化させ強制執行を実現させる効力のことです。
たとえば、限定モデルの自動車を購入したAさんに対し、B社がその自動車を用意できなかったとします。
この場合、Aさんの債権を金銭債権へ転化させ、この金銭債権に対して強制執行をおこなえるようにするのです。
このように、債務者が債務を履行できない場合でも、強制執行を実現させることができる効力を掴取力といいます。
さいごに|債権ごとのルールや特徴を理解して取引をおこなおう
債権は、発生原因や目的によって分類することが可能です。
債権の種類によってルールや特徴が異なるため、正しく理解して取引などをおこないましょう。
なお、もし債権に関するトラブルが生じた場合は、できる限り早く弁護士に相談することをおすすめします。

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