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現在、未回収の債権を抱えている債権者の方であれば、債権者と債務者の関係性について多少は理解しておくべきでしょう。債権者と債務者を一口で語るのは難しく、両者の関係性には色々なパターンが存在しますが、シチュエーションごとに債権者と債務者の状況は異なります。
今回の記事では、債権者と債務者について理解するために、例をとって解説していきますが、債権回収を希望されている債権者の方にとっても、債権者と債務者の関係性を知る事は役立つと思います。
まず最初に、債権者と債務者の関係について理解するためにも、債権者と債務者の言葉の定義から確認していきましょう。
両者の言葉を定義するためには、債権者と債務者を結びつける「債権」について理解する必要がありますが、債権とは、特定の人Aが別の特定の人Bに対して財産における行為αを請求することができる権利です。
ここで請求する側の人(A)を債権者、請求される側の人(B)を債務者といいます。つまりは債権を主張することができる人が債権者であり、債権における行為をする義務を負う人を債務者と認識してください。
ちなみに債権者、債務者は個人である場合もあれば、法人である場合もあります。
では、債権者と債務者の関係性をより理解するために、いくつか例をとって双方の関係性について見ていきましょう。
まずは、定番の例として売買契約における債権者と債務者の例を確認していきますが、500円の商品Aの売買を想定してください。この例において買主と売主の二つが存在しますが、双方の内どちらが債権者、または債務者に当たるのでしょうか。
実は、この例においては買主と売主は、両者共に債権者であり債務者になります。買主は500円の代金を支払う義務がありますが、同時に商品を受け取る(請求)する権利があります。
そして売主は500円の代金を受け取る(請求)する権利があると同時に、商品を買主に渡さなければなりません。つまりは商品を引き渡しにおいて買主は債権者、売主は債務者であり、代金の支払において売主が債権者、買主が債務者になるということです。
売買契約においては双方が債権者、債務者になりえますが、このような契約を双方契約と呼びます。
商品Aの引き渡し |
500円支払 |
|
買主 |
債権者 |
債務者 |
売主 |
債務者 |
債権者 |
双方契約は、売買契約だけではありません。賃貸借契約、委任契約(有償の場合のみ)、寄託契約(有償の場合のみ)、雇用契約なども双方契約に含まれます。
賃貸借契約:アパートの賃貸契約やレンタカーの賃貸契約など物の貸し借りにおける契約
委任契約:弁護士・司法書士への法律行為の案件を委任する際の契約
寄託契約:貴重品を預けるなど物を保管する代わりに、物(料金)を受取る契約
雇用契約:労働の対価として給料をもらう契約
いずれの契約にしても、物体はないにせよ、ある種のサービスを提供(義務)している代わりにお金(あるいはそれに代わる物)を受取る(権利)という意味では、双方に義務と権利が発生しているため、双方契約だということがわかります。
次に、金銭消費賃借契約おける債権者と債務者の関係性について確認していきましょう。消費賃借契約とは借りたものを消費する目的で、将来的に借りたものと同じもの、または同じ量を弁済することを約束した契約であり、金銭の賃借における契約が金銭消費貸借契約です。
金銭消費賃借契約では、貸主が債権者であり借主が債務者に該当しますが、借主は金銭を消費する代わりに貸主との契約の元、弁済しなければいけません。そして貸主にとって、借主へ金銭の弁済の請求をする権利が債権になります。
住宅ローンなどの金銭消費賃借契約では、債務者の財産が抵当にかけられる場合がありますが、これは債権者が債務者から債権を回収できない事態を避けるための行為です。
※抵当:債務者が弁済不能になった場合、それに代わる財産で弁済してもらうために債務者の財産を特定する行為。
住宅ローンにおいて銀行(債権者)は、住宅を抵当にかけることが一般的ですが、債務者がローンを返済できなくなった場合、住宅を競売にかけることができます。
金銭消費賃借契約に限った話ではありませんが、債権者は債務者が弁済不能になるリスクに備えて、債務者の財産に抵当をかけることは合理的といえるでしょう。
それは、もし債務者が破産手続きを行った場合、債権者は破産手続きを通して債務者の財産を配当金という形でしか債権を回収する手段がないためです。換金された債務者の財産は、数ある債権者へ平等に分配されますが、分配された配当金は元々の債権額に到底、及びません。
その反面、債務者と契約時に、債務者の財産を抵当にかけていた場合、他の債権者よりも優先的に抵当にかけた財産の配当を受け取ることができるため、リスクを回避する意味で合理的なのです。
また、主に金銭消費賃借契約において用いられますが、債務者の弁済不能に備え、契約時に債務者から保証人を用意してもらいます。もし債務者が弁済できない、または破産手続きなどを行った際、債権者は保証人へ債権の主張をすることができるためです。
では次に債権者と債務者が同一になる場合を見ていきますが、主な例として子会社に対して貸付金が発生している親会社を想定してください。この場合、貸付金債権において親会社は債権者での立場であり、子会社は債務者になります。
もし親会社が子会社を吸収した場合、決算の際、親会社と子会社は別々に決算するのではなく、同一の企業として決算をしなければなりません。さらに債権者(親会社)と子会社(債務者)は同一になるため、債権と債務は相殺されてなくなるのが原則です。
これは債権が発生している企業間における合併においても同様です。
債権回収において債権の弁済をするために、債務者の所有する債権が債権者の手元に渡る場合がしばしばあります。
今まで債権者と債務者の関係性について触れてきましたが、この場合、債権者と債務者の債権だけでなく債務者の所有する別の債権も絡んでくるため、新たな(第三)債務者の存在についても考えなければなりません。
第三債務者が関わる例として、債権執行をあげることができますが、債権執行とは裁判所へ申立てる強制執行の手続きの一種であり、債務者の債権を差し押さえるための法的手段です。
債権執行は、債務者が債権の弁済に応じない場合、未回収の債権を回収するために手続きを行いますが、申立が裁判所から正式に受理された後は、差し押えた債権の第三債務者から直接、弁済を受けることができます。
債権執行を行うためには、まずは債権者と債務者との間の債権の存在を公的に証明するための債務名義が必要です。債務名義を取得するためには、訴訟や支払督促、民事調停などの法的手続きをするか、債務者との同意の元に公証役場にて公正証書を作成します。
次に第三債務者が関わる例として、債権譲渡を紹介していきますが、債権譲渡とは債権の内容を変えないまま債権を別の者へ移転する手続きであり、債権回収するために用いられる方法です。
例えば、ある債権者と債務者の間に売掛金債権が発生しているのに関わらず、債務者は返す手立てがありません。そこで債務者から直接、弁済してもらうのではなく、売掛金の返済に充てる目的で債務者が所有している別の貸付金債権を譲渡してもらいます。
この際、債務者から譲受した債権には第三債務者が存在しますが、債権者は第三債務者から直接、弁済を受けることができます。
債権譲渡を利用するためには、まずは債務者との間で債権譲渡の契約書を結ばなければなりませんが、同時に譲り受けた債権に関して第三債務者と第三者への対抗要件を取得しないと債権を行使することはできません。
対抗要件とは、譲り受けた債権に関して主張するための法的要件になりますが、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
【参照】
▶「債権譲渡で債権回収をするために必要な知識と手続きの手順」
▶「債権譲渡の通知の重要性と対抗要件を満たすための2つの方法」
そして第三債務者が関わる例として最後に債権者代位権について紹介しますが、債権者代位権とは債権者が債務者の所有する債権を、債権者の名目で行使するための権利です。
債権者代位権を行使するためには、
債務者が無資力である
債務者に対する債権が金銭債権である
債務者に対する債権が弁済期に達している
債務者が第三債務者に対する債権を行使する前
債務者の第三債務者に対する債権が一身専属権ではない
ことが要件になります。一身専属権とは性質上、権利の所有者を移転すべきでない権利であり、養育費や慰謝料の支払などがあげられます。債権者代位権について以下の記事も参考にしてください。
参照「債権者代位権を行使することで債権回収するための知識のまとめ」
債権者と債務者の関係性は、債権の内容や債権者または債務者の状況によって変わってきます。債権回収をする上で当記事がお役に立てたら幸いです。
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