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債権者破産を利用する4つのメリットと申立に必要な知識のまとめ

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債権者破産を利用する4つのメリットと申立に必要な知識のまとめ

債権者破産とは、債務者ではなく債権者側が債務者に代わって行う破産手続きです。破産手続きと聞くと債務者の債務を整理するために行うイメージがあると思いますが、債権者にとって債権者破産にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

今回の記事では債権者破産がどのような目的で行われるのか、申立方法や申立要件など債権者破産について解説していきます。なお当記事で紹介する債権者破産には、破産手続きだけではなく民事再生や会社更生も含まれています。

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債権者破産の申し立ては一般的ではない

まず前提として破産手続きは債務者側が自社の債務を免除するための手続きであり、債権者が債務者に代わって債権者破産の手続きを行うことはあまり一般的ではありません。

もちろん、債権の状況、債務者の関係性によって債権者にとって債権者破産が有益な場合もありますが、基本的には債権者にメリットがない手続きだと思ってください。

満額の債権を回収することはできない

債権者である以上、債務者から未回収の債権を満額で弁済して欲しいと思うのが一般的ですが、破産手続きは債務を免除するための手続きであるため債権回収からは一番、遠い立ち位置です。

配当という形式での債権回収

破産手続きを通して、債務者は裁判所から所有資産を全て没収されますが、没収された資産は全て現金に換金されます。換金された資産は免除する債務の代わりに債権者達へ配当されますが、配当金は全ての債権者に平等に分けられる(債権額に応じて)仕組みです。

そして債務者の資産を抵当にかけている債権者(担保権者)の場合は、抵当にかけた資産における処理を優先的に行う権限がありますが、債権者破産を行ったからといって他の債権者と比べ優遇されることはありません。

そのため、債権者破産を行っても弁済される債権の割合は微々たるものであり、債権者破産が一般的でない理由の一つです。

債権者が行う破産手続きは面倒

また、債権者破産が一般的でない理由として、債務者が破産手続きを行うよりも手間と時間がかかることがあげられます。破産手続きは本来、債務者の意思で行うべきものなので、裁判所側が慎重に手続きを進めるためです。

申立債権者と債務者の双方へ尋問が行われる

まず通常の破産手続きでは債務者に対してのみ尋問が行われますが、債権者破産では申立人が債権者であるため申立をした債権者と債務者の双方へ尋問が行われます。

債権者自ら債務者の情報を収集しなければならない

また、破産手続きの中で、破産する債務者の債務や資産の状況など手続きに必要な債務者の情報を裁判所へ提示することが必要です。

債務者が申立人の場合、債務者自身の情報なので問題ありませんが、債権者破産においては、債権者がわざわざ債務者の情報を収集しなければなりません。

債務者の債務状況については全ての債務の情報が必要になりますが、自身の債権以外の債権者達の債務に関する情報を集めるのは特に大変です。

債務者からの反論で時間がかかる

債務者によっては、債権者の意思で破産手続きが行われることを不本意だと感じますが、そういった債務者の多くが、債権者破産の手続きに協力的な姿勢を見せません。

分割払いの提案

そのため手続きに余計な手間と時間を取られることがありますが、債務者の中では債務の弁済を分割払いで提案することで手続きを長引かせようとします。

破産管財人へ協力的でない

また、破産管財人に非協力的な姿勢を見せる、裁判所からの尋問の際、債権者に反論をするなど、申立後に発令される開始決定までに通常の破産手続きより時間が長引くことが多いです。

予納金が高額かつ債権者負担になる

債権者破産では、満額の債権の回収ができるわけではないのに、裁判所への申立費用は申立債権者が負担しなければなりません。

中でも予納金が占める割合が高くなりますが、予納金は、債務者が抱える全ての債務を対象に債務額に応じて高額になるため、申立債権者への負担は大きいでしょう(「債権者破産申立費用」にて後述)。

それでも債権者破産を利用する4つのメリット

上記のことから、債権者破産は一般的な手続きではないことがわかりましたが、債権者破産を申し立てる債権者は一定数、存在します。債権者破産をあえて利用するメリットはどこにあるのでしょうか。

不良債権を損金することが可能

まず債権者にとって債権者破産を用いるメリットの一つは、不良債権を損金できることです。例え不良債権(弁済が見込めない未回収の債権)でも、会計上は売上計上に含めなければならないので、債権者は弁済されない債権のために余計に法人税を納めなければなりません。

法人税は地方税を含めると実効税率が35%近くになるので、債権者破産によって不良債権を損金することで納税における債権者の負担を緩和することができます。

直接償却

また、不良債権を損金することで、債権者のオフバランス化をすることができます。オフバランス化とは、会計上のリスクのある取引を賃借対照表から消すことで企業価値を高めることであり、債権者(企業)の他の取引先からの信頼を得る、または損なわないためにも不良債権を損金することは重要です。
 
※賃借対象表とは:企業の資産、負債、純資産を元に、企業の財務状況を計るための財務諸表の一つ。

債務者の総資産が対象である

破産手続きにおいて、債務者の総資産が配当の対象になりますが、債権者破産をあえて行うメリットの一つでもあります。

財産を特定する必要ない

通常の裁判所を介した債権回収では、強制執行手続きによって債務者の財産を差し押さえることで未回収の債権の回収を行います。その際、差し押さえの対象となる債務者の財産を特定する必要がありますが、債権の額に見合った財産を差し押さえらないケースは少なくありません。

その反面、破産手続きでは債務者の全ての資産が配当の対象になるので、配当の割合によりますが、他の債権者への債務額次第では、強制執行より多くの債権回収が見込める場合があります。

破産管財人を介して債務者の資産・財務状況の調査

また、債権者破産の開始決定後、破産管財人から債務者へ資産・財務状況の調査が入りますが、破産管財人は債務者へ説明義務や財産開示義務を課すことが可能です。

もし義務違反した場合、債務者へ刑事罰の対象とされるため、結果的に債務者の全ての財産を対象にすることができます。

詐害行為(債務者の財産の処分)の否認権行使

しかしながら、債務者の中には倒産状態であるにも関わらず、債務者の資産を贈与や売却をする場合があります。債権者の立場からすると、弁済される配当金が少なくなるので、債務者が勝手に資産を処分することは避けたいところです。

そこで破産管財人は、そのような債務者の詐害行為を否認する権利を持っているため、債権者が不利益を被らないためにも否認権を行使します。

債務者の経営が良好であれば民事再生も可能

また負債が多くても経営自体が良好であれば、民事再生によって債務の整理をすることが可能です。

民事再生とは裁判所を介して多額の負債を抱えた会社(債務者)の債務(全ての債務が対象)を減額することで経営を立て直し、民事再生後の債務の残高を債権者達へ返済するための手続きになります。

参照:「民事再生法とは|倒産した企業に過払い金請求する為の知識
 
債務の残高は経営によって発生した利益を元に弁済が行われますが、本来、弁済してもらうはずであった債権の額よりも低額です。しかしながら債務超過で首が回らない状況で債権を回収するよりも、回収にかかる手間が容易でかつ高額な債権の回収が望めるでしょう。

M&Aを目的とした場合に最適

また、債権者破産の対象になる会社(債務者)の技術やノウハウを取り入れたいがために吸収・合併したい場合においても、経営自体が悪くなければ民事再生は最適です。

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債権者破産の具体的な申立ての流れや必要書類、申立てにかかる費用について解説します。

債権者破産の具体的な流れ

 

債権者破産の申立方法と申立の要件

では、最後に債権者破産の申立方法について確認していきましょう。

破産手続開始の原因となる事実の疎明

一般的な破産手続きでは、申立の際、申立書とは別に、添付書類として「債権者一覧」、「債務者一覧」、「資産目録」、「債務者の商業登記簿謄本」「取締役の同意書」が必要です。しかしながら、債権者破産では債権者側が申立を行うため、上記の添付書類を揃えるのは難しいでしょう。
 
そのため債権者破産では一般的な破産手続きとは異なり、「債務者の支払不能の疎明」、「債務者の債務超過の疎明」を申立書に添付します。

債務者の支払不能の疎明とは、債務者が債権者に対して弁済できないことを裁判所に納得させるための文書であり、債務者の債務超過の疎明とは、債務者の総資産に対し負債の総額が上回ることを裁判所に納得させるための文書です。
 
これら二つの文書を作成するためには、債務者の負債状況と資産状況について疎明しなければなりません。
 
※疎明:裁判所にそれが真実であると納得させるために必要な行為

負債の疎明

債務者の負債を疎明する上で、債務者の全ての債務が対象になります。しかしながら、自身の債権以外の債権者の債務の存在を調べることで債務者の負債の疎明をすることは現実的ではないでしょう。

なので、債務者所有の不動産の登記事項証明書を入手した上で、不動産に設定された抵当権の内容を元に、債務者の負債を疎明するのが一般的です。

資産の疎明

資産の疎明に関しては、負債の疎明以上に難しいと言われております。実際に債務者の協力がなければ債務者の資産の情報を直接、調べる手段はありません。そのため、裁判所を介して財産開示手続きを利用することで債務者の財産を開示してもらう方が現実的です。

財産開示手続きには確定判決、和解調書、調停調書などの申立債権者の債権における債務名義が必要になりますが、詳しくは「強制執行を通して費用倒れせずに債権回収する方法」を参考にしてください。

債権者破産申立費用

債権者破産における申立費用は、収入印紙代20000円と、郵券切手代14100円、予納金に分けることができます。

通常の破産手続きでは収入印紙代は1000円、郵券切手代は4100円のため高額になりますが、予納金に関しては債務者の負債の総額に応じて変動するため以下の表を参考にしてください。

債務者の総負債額

予納金

5000万円未満

100万円

5000万円~1億円未満

200万円

1億円~5億円未満

300万円

5億円~10億円未満

400万円

10億円~50億円未満

500万円

50億円~100億円未満

700万円

100億円~250億円未満

800万円

250億円~500億円未満

1000万円

500億円~1000億円未満

1000万円以上

1000億円以上

1000万円以上

まとめ

債権者破産は、債権者の状況によっては会社を運営していく上で必要な手続きかもしれません。また債権者破産の手続きは、通常の裁判所の手続きよりも複雑なため、もし債権者破産を検討されているのであれば、まずは弁護士に相談することをオススメします。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。

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編集部

本記事はベンナビ債権回収(旧:債権回収弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ債権回収(旧:債権回収弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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