家賃滞納者を強制退去させることは可能です。しかしそのためには、いくつかの条件をクリアし、法的にきちんとした手順で進行していく必要があります。
強制退去:借家人を法的な強制力をもって部屋から退去させることで、具体的には建物明渡請求を行い、明け渡しの勝訴判決を受けて執行されるもの。
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現在、賃貸経営をしていて家賃滞納者に頭を悩ませているという方も、これから賃貸経営を始めたいと思っている方も、本記事をぜひ参考にしていただければと思います。
家賃を滞納する居住者にお困りの方へ
家賃・管理費の回収は長引けば長引くほど、大きな損になります。
あまりにも悪質な滞納の場合は強制退去などを検討しなければなりません。
できるだけ早く回収するには、弁護士に相談することがベストです。
弁護士に依頼することで以下のような事も望めます。
- 督促状の作成・送達を依頼できる
- 訴訟の手続きを依頼できる
- 債務者と交渉してもらえる
- 各書類の作成・送達を依頼できる
- 立ち退く場合、立ち会いしてくれる
債務者が自己破産・再生手続きをおこなうと、滞納分を回収できなくなる可能性があります。
初回相談が無料の弁護士事務所も多数掲載しているので、まずはお気軽にご相談ください。
まずは、賃貸経営をしている方にとって絶対に欠かせない強制退去にまつわる基礎的な知識を以下にまとめていきましょう。
家賃が支払われないからといって、すぐに家賃滞納者の強制退去が可能になるわけではありません。あくまでも強制退去は法的手段=最終手段であるということを念頭に置きながら、以下の強制退去の条件についてもしっかりと確認しておきましょう。
大家と借家人の信頼関係が崩れている
あたりまえのことですが、一方が部屋を貸すかわりに、部屋を借りるもう一方は賃料を支払わなければなりません。この取り決めは「賃貸借契約」(ちんたいしゃくけいやく)といい、大家と入居者の双方の合意のもとで成立し、お互いに権利と義務を持つことでバランスが取れるものになります。
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義務
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権利
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大家
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部屋を貸す
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家賃をもらう
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借家人
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家賃を支払う
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部屋を使う
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しかし、このバランスが崩れてしまうようなことがあると、”信頼関係が失われた”とみなされ、契約は解約となります。つまり、例えば借家人が家賃を支払うという義務を怠ると、大家側も部屋を貸すという義務を放棄することができる、すなわち強制退去が可能になるということです。
家賃滞納が3ヶ月以上続いている
家賃滞納が発生しても、すぐに家賃滞納者を強制退去させることは出来ません。法的に一定の決まりがあるわけではありませんが、目安としては最低3ヶ月以上家賃滞納が継続してからでないと、強制退去は困難と言われています。
強制退去に至るまでの手順や段階については次項で詳しく解説していきますが、訴訟の提起からはおよそ5ヶ月で強制退去(強制執行)を断行することが出来ます。すぐに出て行ってほしくても、実際は手続きにはこれだけの期間がかかるということも事前に覚えておきましょう。
家賃滞納をしている借家人が失業中、またはそれ以外のやむをえない理由があった場合、大家側の「権利の濫用」とみなされ強制退去が認められないケースもあります。
権利の乱用:権利の行使において、その正当な範囲から逸脱して、正当な行使と認められない状態のこと
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また、いくら借家人の家賃滞納が原因であったとしても勝手に部屋に入って所持品を売却処分したり、借家人が家に入れないようにするたにめ勝手に鍵を変えたりするなど、個人的な実力行使があった場合は以下のような罪に問われることもあり、立場が一気に逆転してしまいます。
住居侵入罪
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勝手に部屋の中に立ち入る
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不退去罪
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退出を要求されているのに居座る
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脅迫罪、強要罪
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大声をあげる、暴力をふるう、脅す
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器物損壊罪
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家財などの持ち物を運び出す、壊す
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あまりにも悪質であるという場合を除きますが、まずは以下のような手法を用いて個人間でよく話し合いを行いながら解決に至らせることが、お互いにとっての最善の選択肢です。
《主な交渉の仕方》
電話請求
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電話は距離を克服でき、回収にかかるお金も通話料のみという一番手軽な回収方法です。まずは相手に対して電話を断続的にかけることから始めましょう。
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督促状/請求書
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電話番号が不明な場合、または料金未納で通じなくなってしまったなどで請求したくても請求できないときには、督促状や請求書を書きましょう。
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内容証明の送付
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内容証明郵便(いつ、いかなる内容のものを誰から誰へ宛てて差し出したかということを日本郵便が証明する制度)を活用しましょう。内容証明は、裁判でも必ず必要な書証類となります。
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家への訪問
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相手が訪問できる圏内に住んでいるのであれば、実際に訪問してみましょう。労力はかかりますが、対面で目を見ながら心へ訴えかけることが出来るので、人の心を動かす上でかなりのメリットがあります。
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参考
▶「債権回収を個人で行うために必要な知識と方法のまとめ」
▶「家賃滞納者に対する督促行為と督促状の作成方法に関する知識」
▶「家賃滞納問題を解決するために必要な内容証明の知識」
・電話請求
・督促状/請求書
・内容証明の送付
・家への訪問
上記の任意の交渉を行っても何も進展が得られないという場合は、強制退去をさせるための法的手続きを踏んでいくしか道はありません。以下にはその手順、また発生する費用について記載していきます。
参考
▶「強制退去の進め方|家賃滞納による強制退去を行う全知識」
内容証明や督促状などに記載した期間内に滞納分の家賃の支払いがなければ、賃貸仮契約解除の効力が生じます。契約解除後は、次に述べる明け渡し請求訴訟の提起を行うことになります。
強制執行の際に、建物の明け渡しに加えて、部屋の中に残っているものを売却して滞納家賃に充てることも可能にするため、裁判では、建物の明け渡しに加え、滞納家賃等の支払いも請求します。
参考
▶「明け渡し請求の全手順|家賃滞納による建物明け渡し請求の方法」
被告(借家人、保証人)が裁判所に出頭してきた場合は、話し合いによって和解に至ることもあり、その際には判決と同様の強制力を持つ和解調書が作成されます。和解内容に従わなかった時は、改めて訴訟を提起することなく強制執行をすることができます。
▶参考
「貸主側に有利な明け渡し合意書の書式例と効力」
明け渡し請求訴訟に必要なもの
1.不動産登記簿謄本
2.固定資産評価額証明書
3.代表者事項証明書(法人の場合)
4.予納郵便切手
5.収入印紙
6.証拠書類
・ 建物賃貸借契約書
・ 内容証明郵便
・ 配達証明書
明け渡し請求訴訟の費用
収入印紙代:訴額に応じた手数料を収入印紙で納付
予納金の基本額:65,000円
(物件や相手方が増すごとに25,000円が追加)
予納郵便切手:約6,000円
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強制執行とは、法律上の権利・賃金債権・建物明け渡し請求権などを強制的に実現する手続きのことで、強制退去はこの強制執行に含まれます。執行の際は、強制執行担当の裁判所の職員(執行官)が借家人を退去させることになります。
借家人退去までの流れ
1、ポストや電気、ガスメーターなどから居住状況を確認する
2、職員が室内に呼びかけを行い、応答がなければ開錠技術者により強制的に鍵を開けて室内に入る
3、借家人、同居している家族がいれば家族、室内の家具や動産類を運び出し空の状態にする
4、運び出した荷物をトラックで倉庫に運んで保管する
5、最終的に大家が荷物の処分を検討する
6、断行期日を記載した催告書・公示書を室内の壁に貼り付ける
強制執行(強制退去)の費用
解錠技術者費用:1回約2万円~
荷物の運搬費用:1Rの場合で約10万円~
(一般家庭の場合は約30~50万円)
廃棄処分費用:約2~4万円
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強制執行(強制退去)には債務名義が必要
明け渡しは、必ず判決に基づいて行われることになります。したがって、判決、及び判決に準ずる以下の債務名義(請求権の存在、範囲、債権者、債務者を表示した公の文書のこと)と呼ばれるもののいずれかが必要になります。
債務名義
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確定判決
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裁判所に支払い請求の訴訟を起こした際に出された判決
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仮執行宣言付判決
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『仮執行の宣言』のついた判決
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執行証書
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金銭の一定額の支払、またはその他の代替物、または有価証券の給付を目的とする請求についての内容を公証人が作成した公正証書
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和解調書|調停調書
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裁判中に和解した場合と訴え提起前の和解の場合に作成されるもの、または調停委員会で合意した場合に作成されるもの
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「債務名義の取得」
参考
▶「強制退去させる方法|強制退去までの流れと注意点」
民事執行法第42条には、「強制執行の費用で必要なものは債務者の負担とする」と定められており、家賃滞納者を強制退去させるのにかかった回収作業費や裁判費用は、はじめは債権者である大家が支払いを行いますが、後に債務者である借家人に請求することが出来ます。
しかし、借家人に支払いが行えるだけの財産がない場合は、回収することは困難を極めるでしょう。強制退去をさせることは出来ても、費用面はマイナスで収束ということにもなり兼ねませんので、予め覚悟の上で強制退去の計画を立てなければなりません。
また、手続きをするのにサポートを弁護士に依頼した場合の弁護士費用に関しては、請求することは出来ません。請求が可能なのはあくまでも強制執行を実行する上で発生した費用のみとなります。弁護士費用がいくら発生するかについては次項で解説していきます。
法的な措置に関しては、法の専門家である弁護士に依頼をするのが一番的確で迅速な方法になります。ここでは、弁護士に強制退去を依頼した場合の知識について解説していきましょう。
弁護士へ依頼するメリット・デメリット
メリット
・家賃滞納に対する抑止力になる
・揉めずに解決できる
・早期解決ができる
・わずらわしい手続きを自分で行わずに済む
デメリット
・債務者との間柄が険悪になる
・借家人が自己破産する場合がある
・費用がかかる
参考
▶「強制退去を弁護士に依頼した際の費用とメリット・デメリット」
弁護士費用には一定の決まりがあるわけではありませんが、大体の目安は以下の通りとなります。
相談料
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無料または1時間5,000円程度
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着手金
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賃料が20万円以下の場合は10~40万円程度
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報酬金
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回収できた金額の約10%程度
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相場の詳細については以下の記事も参考にしてみて下さい。
▶「強制退去の費用の目安と強制退去の費用を安く抑える方法」
無料相談を活用する
前述したように、正式に依頼をせずとも相談料が発生する場合があります。しかし近年では無料相談を行ってくれている弁護士事務所も多くあり、こちらを活用することで相談料を抑えることができます。
分割払いが可能かを相談する
弁護士費用そのものが安くなるというわけではありませんが、一括で支払うことが困難である場合は、交渉次第で分割払いが可能になることもあります。
法テラスの制度を活用する
弁護士費用が工面するのが難しい人が取るべき手段の一つとして、法テラスの民事法律扶助制度の利用があります。
民事法律扶助制度:低所得者に向けて設けられた制度。制度を介して法テラスから弁護士費用の立て替えをしてもらえる。立て替えた費用分は、強制退去の完了後に、法テラスへ月々5000円ずつ返済していく。
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※低所得者を対象とした制度であるため、ある一定以上の所得水準を超える人は利用することができません。
家賃滞納者に頭を抱える賃貸経営者は多くいますが、すぐに強制退去に走ることなく、まずは根気よく任意による交渉を行うことが大原則となります。また、いざ強制執行を行う場合は、専門的な手続きになるために法的な知識がない方が一人で行おうとするのは困難です。
本当に強制退去させるしか方法がないのか?
強制退去させるにあたりどのような書類を手配すべきか?
など、まずは弁護士への無料相談を行ってみましょう。
家賃を滞納する居住者にお困りの方へ
家賃・管理費の回収は長引けば長引くほど、大きな損になります。
あまりにも悪質な滞納の場合は強制退去などを検討しなければなりません。
できるだけ早く回収するには、弁護士に相談することがベストです。
弁護士に依頼することで以下のような事も望めます。
- 督促状の作成・送達を依頼できる
- 訴訟の手続きを依頼できる
- 債務者と交渉してもらえる
- 各書類の作成・送達を依頼できる
- 立ち退く場合、立ち会いしてくれる
債務者が自己破産・再生手続きをおこなうと、滞納分を回収できなくなる可能性があります。
初回相談が無料の弁護士事務所も多数掲載しているので、まずはお気軽にご相談ください。