
保証人に保証債務の履行を求めても任意の履行を拒否するケースはあります。今回の記事では、そもそも保証人は保証債務の履行を拒めるのか、そのような場合の回収方法などを解説します。
家賃を保証人が支払い拒否することはできる?
賃貸借契約の借家人が賃料を支払わない場合に保証人に支払いを求めたケースで、保証人はそもそも支払いを拒むことができるのでしょうか。この点は「相手が保証人なのか連帯保証人なのか」によって結論が若干異なります。
保証人の場合
保証人の場合は、催告の抗弁権(民法452条本文)、検索の抗弁権(民法453条)という権利を行使して、一時的に支払いを拒むことができる場合があります。
催告の抗弁権
催告の抗弁権とは、「保証人に請求する前に借主本人に催告するよう求める権利」をいいます。
なお、借主本人が破産している場合や、借主本人が失踪するなどして行方が分からない場合には、催告の抗弁権を主張することはできません(民法452条ただし書)。
借主本人が失踪してしまった場合は、探偵に依頼して探してもらうこともできます。探偵へのご依頼は「人探しの窓口」をご覧ください。
検索の抗弁権
検索の抗弁権とは、「保証人ではなく先に借主本人の財産に強制執行することを求める権利」です。なお、当該権利を行使するには、保証人において借主に資力があり、かつ、執行が容易であることを証明する必要があり、ハードルは高いです。
連帯保証人の場合
一方、連帯保証人はこれらの権利を有していないため、上記を理由に支払いを拒むことはできません。連帯保証人は、借家人に未払いがあれば、直ちにこれを支払う(弁済する)義務があります(民法454条)。
保証人が債務履行を拒絶した場合の回収対応
保証人が正当な理由なく任意の義務履行をしない場合、法的手段での回収を検討すべきでしょう。
最も典型的な手続としては、借家人と保証人の両名を相手として訴訟提起することが考えられます。この場合、未払いとなっている賃料と遅延損害金を併せて請求します。賃貸借契約の保証人は借家人の一切の債務を保証していますので、保証人に対して滞納家賃だけでなく遅延利息の請求も可能です。
訴訟手続において和解又は判決により、借家人や(連帯)保証人に家賃支払義務が確定的に認められれば、両名が任意で支払いをするかもしれません。もし、それでも支払いをしない場合は、このような和解や判決の内容を「債務名義」として強制執行手続を申し立て、相手の財産を差し押さえるなどして強制的な回収を図ることも可能となります。
家賃滞納が継続している場合の立退き対応
家賃滞納が長期にわたるような場合、借主に貸家から出ていってもらわなければ、いつまでも賃料収入が途絶えてしまいますので、借主に強制的に出ていってもらうことも検討するべきです。
具体的な手続きの流れは以下のとおりです。
明け渡し請求訴訟を提起する
強制的な手段(執行)をするためには、貸主が借主に明け渡しを求める権利があることを公的に証明する債務名義が必要です(民事執行法22条1項)。
そのため、まずは借主に対して建物明渡し請求訴訟を提起して、明け渡しの権利を確定させる必要があります。
強制執行
上記訴訟手続で債務名義を得られれば、これに基づいて強制執行をすることができます。
具体的には、執行裁判所に対して、「建物明渡し断行の強制執行」を申し立て、裁判所の執行官をして強制的に借家人を排除します。
この手続きでは、借家人が任意に出ていかなければ、執行官は建物を強制的に解錠して建物内に立ち入り、借家人を強制排除します。また、建物の中にある家財も強制的に撤去されます。結果、建物を空にした状態で、貸主に引き渡します。
家賃滞納に関するトラブルは弁護士に相談
家賃滞納に関するトラブルを弁護士に相談すると、以下のメリットがあります、
スムーズな解決が期待できる
知識・経験の豊富な弁護士に依頼することで、交渉対応や書類作成、裁判対応などを一任することができ、スムーズな解決を期待できます。場合によっては裁判を行わずに解決できるかもしれません。
時効などの法的障害にも対応できる
家賃債務には5年の消滅時効があり、何も請求していないと回収不能になってしまいます(民法169条、改正民法166条1項1号)。
また保証人の催告・検索の抗弁権など、請求の支障となるような事情もあるかもしれません。弁護士に依頼することで、このような法的障害が生じている場合も、的確に対応してもらえることが期待できます。
まとめ
滞納家賃を保証人に請求するというケースは実務的にも少なくない事態です。
借家人だけでなく、保証人にも支払いを拒まれたという場合は、早めに弁護士に相談した方が良いでしょう。

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